【完結】皇帝との密会映像が、手違いで全世界に流出しました ~「拷問されている」と元婚約者が騒いでいますが、これただの溺愛です~

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結婚式と逆転は、記録されていた

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【帝国宮廷官報 帝国歴四〇三年 冬 第二の月 8日】

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本日、皇帝陛下・皇后殿下の結婚式典を執り行います。

 各国代表の皆様におかれましては、入場時より「愛の防御具」の着用を義務とさせていただきます。

 これは推奨ではなく、義務です。

 昨日のリハーサルにおいて、陛下の足元から半径3メートルに霜が発生する現象が確認されました。

 本日の式典では、より強い魔力反応が予測されます。

 ご理解とご協力をお願いいたします。

 なお、式典中に発生した凍結、失明、心臓発作等につきましては、帝国は一切の責任を負いかねます。

    帝国宮廷府

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【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 同日 午前10:00】

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 ついに、この日が来た。

 帝国歴四〇三年、冬、第二の月、8日。

 皇帝陛下と皇后殿下の、結婚式。

 私は、大広間の片隅で記録を取っていた。

 会場には、各国の要人が整列している。

 全員が、黒眼鏡を着用していた。

 ネルヴァス商業連合の代表、マルクス。
 闇国の使節団。
 周辺諸国の大使たち。

 一人残らず、黒眼鏡。

 昨日の前夜祭よりも、さらに異様な光景だった。

 なぜなら、全員が正装なのだ。

 豪華なドレス。
 煌びやかな勲章。
 そして、黒眼鏡。

 まるで、裏社会の幹部会議のようだった。

 しかし、誰も気にしていない。

 全員が、真剣な表情で祭壇を見つめている。

 歴史的瞬間を見届けるために。

 そして、正気を保つために。

「殿下のご入場です」

 司会の声が響いた。

 大広間の扉が、ゆっくりと開く。

 その瞬間。

 息を呑む音が、会場を包んだ。

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【映像ログ015-A 帝国宮殿 大広間 同日 午前10:30】

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送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:良好(光量過多のため一部補正)
配信範囲:全世界(公式配信)

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    (映像開始)

 大広間の入り口。

 光が、溢れ出していた。

 ダイヤモンドダストを織り込んだドレス。
 朝日を受けて、無数の星が瞬いている。

 ティアラが、一歩を踏み出した。

 その瞬間、会場全体がざわめいた。

「美しい」

 誰かが、呟いた。

「なんという」

 別の誰かが、言葉を失った。

 蜂蜜色の髪が、光の中で揺れている。
 翠色の瞳が、真っ直ぐに前を見つめている。

 彼女の唇が、弧を描いていた。

 穏やかに。
 優雅に。
 完璧に。

 花嫁の道を歩くたびに、ドレスが光を放つ。

 まるで、星空を纏った女神のようだった。

 そして、祭壇には。

 ジークハルトが、立っていた。

 彼の目が、ティアラだけを見つめている。

 その足元には。

 霜が、広がっていた。

「陛下」

 隣に立つ神官が、小声で囁いた。

「祭壇が、凍っております」

「知っている」

 ジークハルトの声は、低かった。

「止められぬ」

 一歩、ティアラが近づくたびに。
 霜が、厚くなっていく。

 パキン。
 パキン。
 パキン。

 氷の結晶が、階段を這い上がる。

 しかし、ティアラは止まらなかった。

 凍った床を、優雅に踏みしめて。
 一歩、また一歩。

 彼女のドレスの裾が、氷の上を滑る。
 星屑と氷の結晶が、混ざり合う。

 まるで、冬の夜空を歩いているかのようだった。

「ティアラ」

 ジークハルトが、手を差し伸べた。

「お前が来た」

「ええ」

 彼女は、その手を取った。

「参りましたわ、私の陛下」

 二人の手が、重なった瞬間。

 会場の温度が、さらに下がった。

 招待客たちの吐く息が、白く染まる。

 しかし、誰も寒さを感じていなかった。

 心だけが、熱くなっていたからだ。

    (画面隅に小窓が現れる:記録官が「眩しい」と呟いている)

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【映像ログ015-B 大広間 式典進行中 同日 午前11:00】

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送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:良好
配信範囲:全世界(公式配信)

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    (映像開始)

 祭壇。

 神官が、厳かに式次第を読み上げている。

「皇帝ジークハルト・フォン・ヴァルトシュタイン陛下」

「うむ」

「ティアラ殿下を、生涯の伴侶として迎え入れることを誓いますか」

 ジークハルトが、深く息を吸った。

 彼の目が、ティアラを見つめる。

「誓う」

 その声は、低く、深く、揺るぎなかった。

「余は、この女性を生涯愛し、守り、幸せにすることを誓う」

 会場が、静まり返った。

「たとえ世界が敵に回ろうとも」

 ジークハルトの声が、響く。

「余は、この女性の味方であり続ける」

 足元の霜が、さらに広がった。

「それが、余の誓いだ」

 神官が、頷いた。

「では、ティアラ殿下」

「はい」

「皇帝陛下を、生涯の伴侶として受け入れることを誓いますか」

 ティアラが、静かに目を細めた。

「誓いますわ」

 その声は、澄んでいた。

「私は、この方を生涯愛し、支え、共に歩むことを誓います」

 彼女は、ジークハルトの手を握り締めた。

「たとえ、何が起きても」

「私は、この方の隣にいます」

 会場から、すすり泣く声が聞こえた。

 黒眼鏡の奥で、涙を流している者がいた。

「では、指輪の交換を」

 神官が、指輪を差し出した。

 ジークハルトが、それを受け取る。

 その手が、わずかに震えていた。

「陛下」

 ティアラが、小声で囁いた。

「深呼吸ですわ」

「……うむ」

 ジークハルトは、目を閉じた。

 深く息を吸い、吐き出す。

 そして、ゆっくりと。

 彼女の薬指に、指輪を嵌めた。

 銀色の環が、彼女の指に収まる。

 次は、ティアラの番だった。

 彼女は、指輪を受け取り。
 彼の手を、そっと持ち上げた。

「陛下」

「何だ」

「この指輪は、私の心ですわ」

 彼女の瞳が、優しく光った。

「どうか、受け取ってくださいませ」

 指輪が、彼の指に嵌まった。

 その瞬間。

 会場の扉が、勢いよく開いた。

    (映像が揺れる)

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【映像ログ015-C 大広間 混乱 同日 午前11:15】

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送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:不安定(急な動きあり)
配信範囲:全世界(公式配信)

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    (映像開始)

「お、お願いです!」

 女の声が、会場に響いた。

「私の話を、聞いてください!」

 招待客たちが、一斉に振り返る。

 扉の前に、一人の女性が立っていた。

 ボロボロのドレス。
 乱れた髪。
 涙に濡れた頬。

 彼女は、よろめきながら前に進んだ。

「お願いです……!」

 警備兵が、彼女を止めようとする。

 しかし、彼女は叫んだ。

「皇后殿下! 私は、アルベルト王子に捨てられた女です!」

 会場が、ざわめいた。

「何だと」

「アルベルトの元婚約者候補か」

「なぜ、この場に」

 招待客たちが、囁き合う。

 その中で。

 フェリックスが、静かに微笑んでいた。

 計算通りの展開。

 彼女が皇后に何を言おうとも、ティアラは窮地に立たされる。

 冷たくあしらえば、「冷酷な悪女」。
 受け入れれば、式の進行は台無し。

 どちらを選んでも、フェリックスの勝利だった。

「殿下」

 女性が、祭壇に向かって歩いてきた。

「お願いです……私を、許してください……!」

 彼女は、ティアラの前で膝をついた。

「私は、何も悪いことをしていないのに……アルベルト様に捨てられて……身を持ち崩して……」

 涙が、彼女の頬を伝う。

「貴女だけが、幸せになるなんて……許せない……許せないの……!」

 会場が、息を飲んだ。

 フェリックスは、じっとティアラを見つめていた。

 さあ、どうする。

 この哀れな女性を、どう扱う。

 しかし。

 ティアラは、動かなかった。

 いや。

 動いた。

 彼女は、祭壇を降りた。

 凍った階段を、優雅に歩いて。

 女性の前に、立った。

「よく来てくださいました」

 ティアラは、女性を抱きしめた。

「え……」

 女性が、目を見開いた。

「貴女は、私の大切な客人ですわ」

 ティアラの声は、穏やかだった。

「よく、ここまで来てくださいました」

 会場が、静まり返った。

「殿下……?」

「貴女は、何も悪くありませんわ」

 ティアラは、女性の肩を抱いた。

「アルベルトに人生を狂わされた、哀れな被害者。私と同じですわ」

「私と……同じ……?」

「ええ」

 ティアラの表情が、柔らかくなった。

「私も、彼に人生を壊されそうになりました。貴女の気持ちは、痛いほど分かりますわ」

 女性の目から、新たな涙が溢れた。

「でも……私は、貴女を傷つけようとして……」

「傷ついてなどおりませんわ」

 ティアラは、首を横に振った。

「むしろ、感謝しております」

「感謝……?」

「ええ」

 ティアラは、フェリックスの方を向いた。

 そして、満面の笑みを浮かべた。

「フェリックス殿下」

 名前を呼ばれ、フェリックスの表情がわずかに変わった。

「ありがとうございます」

「……何のことでしょうか」

「この方を、保護してくださっていたのでしょう?」

 ティアラの目が、優しく輝いた。

「兄上の罪を償うために。この哀れな方を救い出すために。あえてこの場に連れてきてくださった」

 会場が、ざわめいた。

「ご自分の評判を落とす覚悟で、彼女を救おうとなさった」

 ティアラは、深々と頭を下げた。

「なんと、慈悲深い方でしょう」

 フェリックスの目が、見開かれた。

「……は?」

 彼の計算が、音を立てて崩れていく。

「殿下、お待ちになって」

「フェリックス殿下は、アルベルトとは違いますわ」

 ティアラは、招待客たちに向き直った。

「兄の犯した罪を、弟が償おうとしている。なんと立派な心がけでしょう」

「おお」

 招待客の一人が、感嘆の声を上げた。

「確かに」

 別の誰かが、頷いた。

「アルベルト王子とは、大違いだ」

「さすがは、新しい王位継承者」

「フローレンスの未来は明るいな」

 称賛の声が、フェリックスに向けられた。

 彼は、呆然と立ち尽くしていた。

 ティアラの視線が、彼を捉える。

 その目の奥に、何かが光っていた。

 勝利の光。

 そして、もう一つ。

 慈悲の光。

「フェリックス殿下」

 ティアラは、静かに言った。

「この方の借金は、いくらですか」

「……三千金貨です」

 フェリックスは、乾いた声で答えた。

「それほどですか」

 ティアラは、祭壇の上のジークハルトを見上げた。

「陛下」

「うむ」

 ジークハルトが、一歩前に出た。

 彼の声が、会場に響いた。

「この女性は、帝国の賓客である」

 威厳に満ちた声だった。

「その負債は、余が引き受ける」

 会場が、どよめいた。

「おおおお!」

「なんという寛大さ!」

「これぞ、帝国の威光!」

 拍手が、鳴り響いた。

 女性は、信じられないという顔でティアラを見上げた。

「殿下……本当に……?」

「ええ」

 ティアラは、彼女の手を握った。

「貴女は、もう誰の駒でもありませんわ」

 女性の目から、涙が溢れた。

 今度は、悲しみの涙ではなかった。

「ありがとう……ございます……!」

 彼女は、ティアラの足元にひれ伏した。

「皇后様……! なんと……なんとお優しい……!」

「顔を上げてくださいませ」

 ティアラは、彼女を立たせた。

「これからは、帝国で新しい人生を始めましょう。貴女には、その資格がありますわ」

 女性は、何度も頷いた。

 涙を拭いながら、何度も、何度も。

    (映像が安定する)

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【映像ログ015-D 大広間 式典再開 同日 午前11:30】

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送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:良好
配信範囲:全世界(公式配信)

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    (映像開始)

 祭壇。

 式典が、再開されていた。

 女性は、ハインリヒに付き添われて席に案内された。

 彼女の顔には、まだ涙の跡が残っていた。
 しかし、その目には希望が宿っていた。

「フェリックス殿下」

 ティアラが、彼の方を見た。

「この場にお越しいただき、ありがとうございました」

 フェリックスは、しばらく沈黙していた。

 そして。

 彼は、静かに笑った。

「……完敗だ」

 その声は、どこか晴れやかだった。

「貴女の慈悲には、敵いません」

 彼は、祭壇の前に進み出た。

 そして、片膝をついた。

「皇帝陛下、皇后殿下」

 会場が、静まり返った。

「フローレンス王国第二王子、フェリックスとして申し上げます」

 彼の声は、はっきりとしていた。

「これまでの非礼を、心よりお詫び申し上げます」

 ざわめきが、広がった。

「私は、貴女方を試そうとしました。その浅はかさを、恥じております」

 フェリックスは、頭を下げた。

「しかし、今日、私は理解しました」

「何を理解したのですか」

 ティアラが、穏やかに尋ねた。

「貴女は、敵を倒すのではなく、救うのですね」

 フェリックスは、顔を上げた。

「私の策を、そのまま『善意』に変えてしまった。私を、『悪役』ではなく『協力者』にしてしまった」

 彼は、苦笑した。

「……参りました」

 そして、静かに頭を振った。

「見事です。これほど鮮やかな逆転は、初めて見ました」

「あら」

 ティアラは、首を傾げた。

「私は、ただ結婚式を最高のものにしたかっただけですわ」

「ええ、分かっております」

 フェリックスは、立ち上がった。

「だからこそ、私は正式に提案いたします」

 彼は、ジークハルトに向き直った。

「フローレンス王国と、ヴァルトシュタイン帝国の同盟を」

 会場が、どよめいた。

「兄の失態により、両国の関係は悪化しました。それを修復するのは、私の責務です」

「同盟、か」

 ジークハルトが、低く言った。

「余は、お前を信用できるのか」

「正直に申し上げます」

 フェリックスは、真っ直ぐに皇帝を見た。

「私は、今日まで貴方の妻を試し続けていました。その愚かさを、恥じております」

 会場が、息を呑んだ。

「しかし、私は負けました。完膚なきまでに」

 彼は、わずかに笑った。

「そして、悟りました。彼女を敵に回すより、味方につけた方が賢明だと」

「それは、損得勘定か」

「もちろんです」

 フェリックスは、頷いた。

「私は、感情で動く人間ではありません。利益を重視します」

 しかし、と彼は続けた。

「今日、私は一つだけ感情で動きました」

「何だ」

「彼女の『本気』を見たかったのです」

 フェリックスの目が、ティアラを見た。

「そして、見届けました。私の策を、どう潰すか。その瞬間を」

 彼は、深く息を吐いた。

「満足です。悔いはありません」

 沈黙が、会場を包んだ。

 ジークハルトが、口を開いた。

「フェリックス」

「はい」

「お前は、正直な男だな」

「そう、でしょうか」

「敵としては厄介だが、味方としては心強い」

 ジークハルトは、ティアラを見た。

「どう思う」

「私は」

 ティアラは、穏やかに頷いた。

「フェリックス殿下を、信用いたしますわ」

「なぜだ」

「だって」

 彼女は、フェリックスに向き直った。

「彼は、正々堂々と負けを認めましたもの。そういう方は、信頼に値しますわ」

 フェリックスの目が、わずかに見開かれた。

「……感謝します」

「いいえ」

 ティアラは、手を差し出した。

「これからは、良き隣人として。よろしくお願いいたしますわ、フェリックス殿下」

 フェリックスは、その手を取った。

「こちらこそ」

 彼は、静かに頭を下げた。

「末永く、お幸せに」

 その言葉は、心からのものだった。

    (映像終了)

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【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

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【神回】結婚式、神演出の連続で伝説へ

1:名無しの帝国民
 今日の式典見たか

2:名無しの帝国民
 見た

3:名無しの帝国民
 やばかった

4:名無しの帝国民
 何がやばかったって全部やばかった

5:名無しの帝国民
 まず皇后様のドレス

6:名無しの帝国民
 星空を纏ってた

7:名無しの帝国民
 眩しすぎて黒眼鏡しててもギリギリだった

8:名無しの帝国民
 あれダイヤモンドダストだろ

9:名無しの帝国民
 凍らせた宝石を織り込んでるらしい

10:名無しの帝国民
 陛下の魔力で

11:名無しの帝国民
 愛が服になってて草

12:名無しの帝国民
 物理的に愛を纏ってる

13:名無しの帝国民
 陛下、緊張で祭壇凍らせてたな

14:名無しの帝国民
 >>13
 見た

15:名無しの帝国民
 一歩歩くごとにパキパキいってた

16:名無しの帝国民
 皇后様があの凍った床を優雅に歩いてたのすごい

17:名無しの帝国民
 滑らないのかな

18:名無しの帝国民
 >>17
 魔法の靴らしい

19:名無しの帝国民
 準備万端かよ

20:名無しの帝国民
 陛下の緊張は計算済み

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【フェリックス王子、ただの善人だった件】

21:名無しの帝国民
 フェリックスの評価爆上がりしてるんだが

22:名無しの帝国民
 >>21
 何があった

23:名無しの帝国民
 アルベルトの元婚約者候補を保護してたらしい

24:名無しの帝国民
 マジ?

25:名無しの帝国民
 式典に連れてきて、皇后様に救ってもらう算段だったって

26:名無しの帝国民
 兄の罪を弟が償おうとしてたのか

27:名無しの帝国民
 アルベルトとは大違いだな

28:名無しの帝国民
 アルベルトはクズ

29:名無しの帝国民
 フェリックスはいい奴

30:名無しの帝国民
 同じ血とは思えない

31:名無しの帝国民
 皇后様がフェリックスに感謝してたのが印象的だった

32:名無しの帝国民
 「なんと慈悲深い方でしょう」って

33:名無しの帝国民
 あれ聞いて俺も泣いた

34:名無しの帝国民
 フェリックス、最後は同盟申し出てたな

35:名無しの帝国民
 帝国と友好関係築くって

36:名無しの帝国民
 これでフローレンスも安泰だな

37:名無しの帝国民
 アルベルトが消えて良かった

38:名無しの帝国民
 >>37
 「隠遁」な

39:名無しの帝国民
 はいはい隠遁隠遁

40:名無しの帝国民
 詳しくは聞かない

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【陛下、誓いのキスまだ?】

41:名無しの帝国民
 誓いのキスはまだなのか

42:名無しの帝国民
 ハプニングで中断してたからな

43:名無しの帝国民
 これから再開するらしい

44:名無しの帝国民
 黒眼鏡の準備は万全か

45:名無しの帝国民
 もちろん

46:名無しの帝国民
 予備も持ってきた

47:名無しの帝国民
 失明覚悟

48:名無しの帝国民
 でも見届けたい

49:名無しの帝国民
 歴史的瞬間だからな

50:名無しの帝国民
 愛の爆発を目撃する

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【映像ログ015-E 大広間 誓いのくちづけ 同日 正午】

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送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:過剰光量により一部白飛び
配信範囲:全世界(公式配信)

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    (映像開始)

 祭壇。

 神官が、厳かに宣言した。

「皇帝陛下、皇后殿下」

 二人は、向かい合っていた。

「ここに、永遠の契りを交わされました」

 ジークハルトの手が、ティアラの頬に触れた。

「では、誓いのくちづけを」

 会場が、息を止めた。

「ティアラ」

「はい」

「お前は、余のものだ」

「ええ」

 ティアラの目が、温かく輝いた。

「私は、貴方のものですわ」

「そして、余は」

 ジークハルトの声が、低くなった。

「お前のものだ」

 彼女の目が、わずかに潤んだ。

「……陛下」

「永遠に」

 ジークハルトは、彼女の顔を両手で包んだ。

「余は、お前だけを愛する」

 そして。

 彼は、彼女の唇に口づけた。

 その瞬間。

 光が、弾けた。

 祭壇を覆っていた霜が、一斉に輝き始める。

 氷の結晶が、光を反射して。
 虹色の光が、会場全体を包み込んだ。

 ダイヤモンドダストが、舞い上がる。

 ティアラのドレスと、祭壇の霜が、共鳴していた。

 まるで、星空の中で二人がキスをしているようだった。

「うわあああ!」

 招待客の一人が、叫んだ。

「眩しい!」

「黒眼鏡が!」

「追加の黒眼鏡を!」

 混乱が、広がった。

 しかし、誰も目を逸らさなかった。

 あまりにも美しかったからだ。

 二人のくちづけは、長く、深く続いた。

 永遠を誓うかのように。

 やがて。

 二人が、唇を離した。

 光が、ゆっくりと収まっていく。

 しかし、会場には虹色の残光が漂っていた。

 ダイヤモンドダストが、祝福のように降り注いでいた。

「皇帝陛下、皇后殿下」

 神官が、震える声で宣言した。

「ここに、婚姻の成立を宣言いたします」

 拍手が、鳴り響いた。

 歓声が、上がった。

 そして、鐘が。

 帝都中の鐘が、一斉に鳴り始めた。

「おめでとうございます!」

「皇帝陛下万歳!」

「皇后殿下万歳!」

 声が、重なり合う。

 ジークハルトは、ティアラの手を取った。

「行くぞ」

「はい」

「余の妻よ」

 ティアラは、彼に寄り添った。

「私の陛下」

 二人は、花嫁の道を歩き始めた。

 今度は、来た道を逆に。

 新しい人生へ向かって。

    (映像終了)

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【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 同日 午後2:00】

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 式典が、終わった。

 私は、控え室で一息ついていた。

 胃が、痛い。

 しかし、それは悪い痛みではなかった。

 全てが、うまくいった。

 フェリックス殿下の策は、完全に裏目に出た。

 いや、裏目というより。

 殿下自身が認めていた。

 「完敗」だと。

 しかし、不思議なことに。

 彼は、満足そうだった。

 負けることを、楽しんでいるようにさえ見えた。

 私には、理解できない。

 しかし、結果は良かった。

 フローレンスとの同盟。
 アルベルトの被害者の救済。
 そして、何より。

 陛下と殿下の、幸せそうな顔。

 それだけで、十分だ。

「ハインリヒ様」

 声をかけられ、振り返った。

 フェリックス殿下が、立っていた。

「殿下」

「少し、話してもよろしいですか」

「もちろんです」

 私は、椅子を勧めた。

 フェリックス殿下は、ゆっくりと腰を下ろした。

「今日は、大変でしたね」

「ええ、まあ」

「特に、貴方は」

 殿下は、わずかに笑った。

「私の策に、振り回されたでしょう」

「……殿下」

「謝罪します」

 彼は、頭を下げた。

「貴方にも、迷惑をかけました」

「いえ」

 私は、首を横に振った。

「結果的に、良い方向に収まりました」

「そうですね」

 殿下は、窓の外を見た。

「私は、彼女に救われました」

「救われた、ですか」

「ええ」

 彼の目が、遠くを見つめていた。

「兄の尻拭いをするだけの道化になるところを、英雄にしてくれた」

「殿下」

「正直に言います」

 フェリックス殿下は、私に向き直った。

「私は、彼女を試していました。彼女の弱みを握り、交渉材料にしようとしていた」

「……存じております」

「ええ、分かっています。貴方は、彼女の共犯者だ」

 私は、言葉を失った。

「でも、大丈夫です」

 殿下は、肩の力を抜いて笑った。

「私は、もう彼女の敵ではありません」

「本当に、ですか」

「ええ」

 彼は、立ち上がった。

「今日から、私は彼女の味方です」

 その言葉には、偽りがなかった。

 私には、分かった。

「殿下」

「はい」

「……末永く、よろしくお願いいたします」

「こちらこそ」

 フェリックス殿下は、部屋を出ていった。

 私は、しばらくその背中を見つめていた。

 不思議な男だ。

 敵として現れ、味方として去っていった。

 しかし、一つだけ確かなことがある。

 殿下もまた、彼女に魅了されたのだ。

 あの、恐ろしくて美しい女性に。

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【映像ログ015-F 大広間 披露宴 同日 午後3:00】

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送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:良好
配信範囲:全世界(公式配信)

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    (映像開始)

 大広間。

 披露宴が、始まっていた。

 テーブルには、豪華な料理が並んでいる。

 そして、会場の中央には。

 5メートルのウェディングケーキが、鎮座していた。

「どうやって運んだんだ、あれ」

 マルクスが、呆然と呟いた。

「壁を透過させました」

 財務大臣が、疲れた声で答えた。

「陛下の魔力で」

「壁を透過?」

「はい。氷の結晶構造を応用して、物質の境界を曖昧にする技術です」

「……帝国は、恐ろしいところだな」

 マルクスは、ケーキを見上げた。

「あのケーキ、まだ凍ってないか?」

「凍っております」

「食べられるのか?」

「食品用の永久凍結です。口に入れると溶けます」

「……そうか」

 マルクスは、黒眼鏡を直した。

「まあ、いい。美味ければ」

 会場の中央で、ジークハルトとティアラがケーキを切っていた。

 二人の手が、一緒にナイフを握っている。

「陛下」

「何だ」

「ケーキが、凍りすぎていますわ」

「余が凍らせたのではない」

「分かっておりますわ」

 ティアラは、くすりと笑った。

「でも、ナイフが入りませんわ」

「……少し待て」

 ジークハルトが、手を翳した。

 ケーキの表面の氷が、わずかに溶けた。

「今だ」

 二人は、一緒にナイフを入れた。

 サクリと、音がした。

 招待客から、拍手が起きた。

「見事だ!」

「さすが、陛下!」

「自分で凍らせて自分で溶かすのか」

「効率的だな」

 ケーキが、切り分けられていく。

 最初の一切れは、新婚夫婦へ。

「ティアラ」

「はい」

「口を開けろ」

「え?」

「あーんだ」

 会場が、ざわめいた。

「陛下!?」

「人前でそれは!」

「でも見たい!」

 ティアラは、頬を染めながら口を開けた。

「あ、あーん」

 ジークハルトが、ケーキを口に運んだ。

 彼女が、それを受け取る。

「美味しいですわ」

「そうか」

「陛下も、どうぞ」

 今度は、ティアラがフォークを持った。

「あーん」

 ジークハルトが、黙って口を開けた。

 ケーキが、彼の口に入る。

 彼は、ゆっくりと咀嚼した。

「……甘いな」

「ケーキですもの」

「違う」

 ジークハルトは、彼女を見つめた。

「お前が、甘い」

 会場が、悲鳴を上げた。

「駄目だ!」

「黒眼鏡が!」

「追加の黒眼鏡を!」

「もうない!」

「誰か! 誰か黒眼鏡を!」

 混乱が、広がった。

 しかし、誰も本気で困ってはいなかった。

 全員が、幸せそうに笑っていたからだ。

    (映像終了)

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【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

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【速報】陛下「お前が甘い」で会場壊滅

51:名無しの帝国民
 もう無理

52:名無しの帝国民
 死んだ

53:名無しの帝国民
 黒眼鏡が足りない

54:名無しの帝国民
 帝国の黒眼鏡生産追いつかない説

55:名無しの帝国民
 ケーキ入刀で「あーん」は反則

56:名無しの帝国民
 あれ全世界配信だったんだぞ

57:名無しの帝国民
 各国の要人が黒眼鏡で「あーん」見てるの想像したら草

58:名無しの帝国民
 闇国の使節団も見てたんだろ

59:名無しの帝国民
 >>58
 闇国が明るくなってしまう

60:名無しの帝国民
 それはまずい

61:名無しの帝国民
 「お前が甘い」で何人失明したんだ

62:名無しの帝国民
 数え切れない

63:名無しの帝国民
 帝国の医療費増大

64:名無しの帝国民
 でも経済は潤う

65:名無しの帝国民
 黒眼鏡特需

66:名無しの帝国民
 製造業者大喜び

67:名無しの帝国民
 結論:陛下の愛は経済を回す

68:名無しの帝国民
 これが帝国の強さか

69:名無しの帝国民
 愛で国が豊かになる

70:名無しの帝国民
 最強夫婦だな

-----

【元婚約者候補の女性、帝国で新生活へ】

71:名無しの帝国民
 あの女性どうなったんだ

72:名無しの帝国民
 帝国が借金全部払ったらしい

73:名無しの帝国民
 三千金貨だっけ

74:名無しの帝国民
 陛下にとっては端金

75:名無しの帝国民
 帝国で仕事も紹介されるって

76:名無しの帝国民
 良かったな

77:名無しの帝国民
 アルベルトに人生壊されかけたのに

78:名無しの帝国民
 皇后様に救われた

79:名無しの帝国民
 これが本当の慈悲だよな

80:名無しの帝国民
 フェリックス王子が連れてきたんだっけ

81:名無しの帝国民
 >>80
 らしい

82:名無しの帝国民
 兄の罪を償おうとしてたのか

83:名無しの帝国民
 良い奴じゃん

84:名無しの帝国民
 アルベルトとは大違い

85:名無しの帝国民
 フローレンスの未来は明るい

86:名無しの帝国民
 同盟も結んだしな

87:名無しの帝国民
 帝国とフローレンスが仲良くなるなんて

88:名無しの帝国民
 皇后様のおかげだな

89:名無しの帝国民
 世界平和をもたらす女

90:名無しの帝国民
 最強

-----

【極秘ログ──送信者不明】

-----

記録日時:帝国歴四〇三年 冬 第二の月 8日 深夜11:59
ファイル名:[解析不能]
送信元:[解析不能]
送信先:[解析不能]

-----

    (音声のみ)

 グラスを置く音。
 琥珀色の液体が揺れる気配。

「終わりましたわね」

 女の声。
 満足げな響き。

「フェリックス殿下は、完全に私たちの味方になりました」

 椅子が軋む音。
 窓辺に移動する気配。

「彼を『悪役』にするのは簡単でしたわ。でも、それでは意味がありませんの」

 窓を開ける音。
 夜風が入り込む気配。

「敵を倒しても、また新しい敵が現れる。それでは、きりがありませんもの」

 息をつく音。

「だから、敵を味方に変えるのですわ」

 女の声が、冷たくなった。

「フェリックス殿下は、もう私に逆らえない。私に『善人』の烙印を押されてしまいましたから」

 くすりと笑う気配。

「彼が私を裏切れば、世界中が彼を非難する。『皇后様を裏切った恩知らず』として」

 グラスを傾ける音。

「これで、フローレンスは完全に手中ですわ」

 窓を閉める音。

 別の部屋に入る気配。

「陛下」

 女の声が、柔らかくなった。

「まだ起きていらっしゃいましたか」

「待っておった」

 低い男の声。

「今日は、大変だったな」

「いいえ」

 布団に潜り込む気配。

「とても、楽しい一日でしたわ」

「そうか」

 抱き寄せる気配。

「ティアラ」

「はい」

「今日から、お前は余の妻だ」

「ええ」

「公式に」

「ええ」

「世界中が、認めた」

 男の声が、震えていた。

「余は、幸せだ」

 女の息が、詰まる気配。

「陛下」

「お前がいてくれて、本当に良かった」

 沈黙。

 衣擦れの音。
 抱きしめる気配。

「私も、ですわ」

 女の声が、揺れていた。

「私も、幸せです」

 静かな笑い声。

「おやすみなさいませ、私の陛下」

「ああ。おやすみ、余の妻」

    (ログ終了)
    (このファイルは自動消去されました)

-----

【次回予告】

結婚式が終わり、新婚生活が始まる。

「陛下、そろそろ仕事に戻りませんと」
「嫌だ」
「国政が」
「お前がいないと仕事にならぬ」

ハインリヒ「陛下が執務室に来ません」
財務大臣「皇后様と離れたくないそうです」
ハインリヒ「国は」
財務大臣「動いております。皇后様が」

一方、救われた元婚約者候補の女性は、帝都で新しい人生を歩み始める。

「皇后様に、恩返しがしたいのです」
「では、私たちの仲間になりませんか?」

そして、フローレンス王国からの使者が到着する。

「フェリックス殿下より、お手紙です」
「あら、何かしら」

同盟の正式な締結に向けた、新たな動きが始まる。

第16話「新婚生活と恩返しは、記録されていた」

-----

【おまけ:帝国宮殿 衣装部屋 同日 深夜】

-----

 深夜の衣装部屋。

 星のドレスが、月明かりの中で輝いていた。

 その前に、二つの影があった。

 侍女のエルザと、新人侍女だ。

「……無事に終わりましたね」

 エルザが、呟いた。

「はい」

 新人侍女が、頷いた。

「このドレス、保管はどうするんですか」

「永久凍結庫へ」

「永久凍結」

「はい。ダイヤモンドダストが溶けないように」

 新人侍女は、ドレスを見上げた。

「……陛下の愛を、凍結保存するんですね」

「そうとも言えますね」

 エルザは、わずかに笑った。

「でも、溶けませんよ」

「なぜですか」

「陛下の愛は、永遠に凍結されたままですから」

 新人侍女は、首を傾げた。

「永遠に凍結?」

「ええ。皇后様への愛は、決して溶けないのです」

「……なるほど」

 新人侍女は、ドレスを見つめた。

「だから、ダイヤモンドダストも溶けないんですね」

「その通り」

 エルザは、ドレスに手を伸ばした。

「さあ、丁寧に運びましょう」

「はい」

 二人は、ドレスを持ち上げた。

 月明かりの中で、星屑が静かに瞬いていた。
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