【完結】皇帝との密会映像が、手違いで全世界に流出しました ~「拷問されている」と元婚約者が騒いでいますが、これただの溺愛です~

チャビューヘ

文字の大きさ
16 / 22

新婚生活と恩返しは、綴られていた

しおりを挟む
【帝国宮廷官報 帝国歴四〇三年 冬 第二の月 12日】

-----

 結婚式典より4日が経過いたしました。

 皇帝陛下と皇后殿下は、現在「婚礼後の祝期」中でございます。

 つきましては、通常業務につきまして、以下の通りご案内申し上げます。

 一、緊急案件:皇后殿下が決裁
 二、重要案件:皇后殿下が決裁
 三、通常案件:皇后殿下が決裁
 四、軽微案件:皇后殿下が決裁

 なお、皇帝陛下は「皇后殿下の膝枕」にて公務中でございます。

 各省庁におかれましては、書類は全て皇后殿下へご提出ください。

    帝国宮廷府

-----

【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 同日 午前9:00】

-----

 結婚式から4日。

 帝国は、静かに崩壊しかけていた。

 いや、違う。

 崩壊しかけているのは、私の胃だ。

 陛下が、執務室に来ない。

 正確には、来ているのだが、仕事をしない。

 皇后殿下の膝の上で、書類を眺めているだけだ。

 眺めているだけで、サインをしない。

「陛下」

 私は、恐る恐る声をかけた。

「こちらの書類、ご決裁を」

「うむ」

 陛下は、視線を上げなかった。

 皇后殿下の膝枕から、一歩も動かない。

「陛下」

「聞こえている」

「では、サインを」

「今は無理だ」

「なぜでございましょう」

「手が塞がっている」

 私は、陛下の両手を見た。

 右手は、皇后殿下の左手を握っている。

 左手は、皇后殿下の右手を握っている。

 両手で、両手を握っている。

「……陛下」

「何だ」

「どちらかの手を離していただければ」

「嫌だ」

 即答だった。

「ティアラの手は、余の両手で守らねばならぬ」

「一本でも守れるかと」

「左右のバランスが崩れる」

「バランス」

「余の愛に、偏りがあってはならぬ」

 私は、天を仰いだ。

 この国は、どこへ向かっているのだろう。

「陛下」

 皇后殿下が、くすりと笑った。

「ハインリヒが困っておりますわ」

「困らせているのではない。守っているのだ」

「何からですか」

「書類の山から」

「……なるほど」

 皇后殿下は、陛下の銀髪を優しく撫でた。

「では、私が代わりに決裁いたしますわ」

「そうか」

「ええ。陛下は、そのまま休んでいてくださいませ」

「うむ」

 陛下は、目を閉じた。

 完全に、皇后殿下に委ねている。

 私は、書類の束を皇后殿下に差し出した。

「殿下、こちらを」

「ありがとうございます」

 彼女は、片手を陛下から離した。

 陛下の眉が、ぴくりと動いた。

「ティアラ」

「お仕事ですわ」

「余の手が冷える」

「すぐに戻しますから」

 皇后殿下は、手早く書類に目を通した。

 そして、次々とサインを入れていく。

 その速度は、陛下の3倍はあった。

「北部の橋梁工事、承認。南部の穀物備蓄、増量を指示。東部の税収報告、確認済み」

 書類が、次々と処理されていく。

「商業連合との通商条約改定案、条件付き承認。闘技大会の予算、削減。宮廷料理人の増員、承認」

「殿下」

 私は、思わず声を上げた。

「お早いですね」

「慣れましたわ」

 彼女は、にこりと笑った。

「陛下の代わりに決裁するのも、4日目ですもの」

 4日間。

 つまり、結婚式の翌日から。

 この国は、実質的に皇后殿下が動かしているのだ。

「はい、終わりましたわ」

 書類の束が、私に返された。

「次の分をお持ちください」

「畏まりました」

 私は、一礼して執務室を出た。

 廊下で、財務大臣と鉢合わせした。

「ハインリヒ殿」

「大臣」

「陛下のご様子は」

「膝枕です」

「また、ですか」

「はい」

 財務大臣は、深いため息をついた。

「国政は」

「皇后殿下が動かしております」

「そうですか」

 彼は、胃を押さえた。

「我々の胃は」

「限界です」

「そうですか」

 二人で、しばらく沈黙した。

「……でも」

 財務大臣が、ぽつりと言った。

「陛下が幸せそうなのは、良いことです」

「……ええ」

 私も、頷いた。

「あれほど笑う陛下を、初めて見ました」

「ですね」

 財務大臣は、遠い目をした。

「先代陛下の頃から仕えておりますが、あの方が心から笑ったのを見たのは、皇后殿下がいらしてからです」

「そうでしたか」

「ええ。だから、まあ」

 彼は、苦笑した。

「胃痛くらい、我慢します」

「同感です」

 私たちは、胃薬を分け合った。

 これが、帝国の日常になりつつあった。

-----

【映像ログ016-A 帝国宮殿 皇后のサロン 同日 午後2:00】

-----

送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:良好
配信範囲:帝国内限定

-----

    (映像開始)

 皇后のサロン。

 午後の柔らかな光が、窓から差し込んでいる。

 ティアラは、ソファに腰掛けていた。

 その向かいには、一人の女性が座っている。

 結婚式で救われた、元婚約者候補の女性だ。

 彼女は、緊張した面持ちでティアラを見つめていた。

「リラックスしてくださいませ」

 ティアラが、穏やかに言った。

「お茶でも、いかが」

「あ、ありがとうございます」

 女性は、ぎこちなく頷いた。

 侍女が、紅茶を運んでくる。

 二人の間に、しばしの沈黙が流れた。

「あの」

 女性が、口を開いた。

「本当に、よろしいのでしょうか」

「何がですか」

「私のような者が、皇后様にお目通りするなど」

 彼女の声は、震えていた。

「私は、結婚式を台無しにしようとした女です。本来なら、牢に入れられても文句は言えません」

「まあ」

 ティアラは、首を傾げた。

「台無しになどなっておりませんわ」

「え」

「むしろ、おかげで素敵な式になりました」

 ティアラは、にこりと笑った。

「フェリックス殿下との和解も進みましたし、陛下の評判も上がりましたわ。感謝しておりますの」

「感謝」

 女性は、目を丸くした。

「私に、感謝を」

「ええ」

 ティアラは、紅茶を一口飲んだ。

「それで、今日はどのようなご用件でしょう」

「あ、はい」

 女性は、姿勢を正した。

「皇后様に、恩返しがしたいのです」

「恩返し」

「はい。借金を肩代わりしていただいて、新しい生活の場まで与えていただいて。私は、何もお返しできておりません」

 彼女の目には、真剣な光があった。

「何でもいたします。掃除でも、洗濯でも。皇后様のお役に立ちたいのです」

 ティアラは、しばらく彼女を見つめていた。

 その翠色の瞳が、何かを見定めるように細められた。

「お名前を、教えていただけますか」

「リリィと申します」

「リリィさん」

 ティアラは、ゆっくりと頷いた。

「一つ、お聞きしてもよろしいですか」

「何でしょう」

「アルベルトのこと、最初から疑っていらっしゃいましたか」

 リリィの顔が、わずかに曇った。

「……いいえ」

 彼女は、視線を落とした。

「最初は、信じておりました。あの方は、優しくて、気さくで。私のような身分の低い者にも、分け隔てなく接してくださいました」

「そうですか」

「でも、いつからか、変わりました。急に冷たくなって。他の女性と親しくするようになって」

 リリィの声が、震えた。

「そして、ある日突然、『もう用はない』と」

「辛かったでしょう」

「はい」

 彼女は、こくりと頷いた。

「でも、皇后様の方がずっとお辛かったはずです。国中から悪女と呼ばれて、命まで狙われて」

「いいえ」

 ティアラは、首を横に振った。

「私には、陛下がいらっしゃいましたから」

「陛下が」

「ええ」

 ティアラの目が、遠くを見た。

「あの方がいなければ、私は今頃、野垂れ死にでもしていたでしょうね」

「……皇后様」

「リリィさん」

 ティアラは、彼女の方を向いた。

「貴女は、アルベルトのことを『最初は信じていた』と仰いました。私も、同じでしたわ」

「え」

「最初は、信じていたのです」

 ティアラの声が、少し低くなった。

「あの方が、本当に私を愛してくれていると。私たちは、幸せになれると」

 リリィは、息を呑んだ。

「でも、現実は違いました」

 ティアラは、紅茶のカップを見つめた。

「彼は、最初から私を利用するつもりだった。公爵家の財産と、魔導通信技術。それが目当てでした」

「そんな」

「分かっていたはずでしたのに」

 ティアラは、かすかに笑った。

「私は、馬鹿でしたわ。あの頃は」

 沈黙が、サロンを包んだ。

 リリィは、何も言えなかった。

 目の前の皇后が、かつて自分と同じ苦しみを味わっていたことに、言葉を失っていた。

「リリィさん」

 ティアラが、静かに言った。

「恩返しがしたいと、仰いましたね」

「は、はい」

「では、一つ、お願いがありますわ」

 ティアラは、立ち上がった。

 そして、窓辺に歩み寄った。

「帝都には、私と同じように傷ついた者たちがいます」

「傷ついた者たち」

「ええ。アルベルトに捨てられた者。マリアに陥れられた者。フローレンスに故郷を追われた者」

 ティアラは、振り返った。

「彼らを、助けてあげてほしいのです」

「私が、ですか」

「ええ。貴女なら、彼らの気持ちが分かるでしょう。同じ痛みを知っているからこそ、寄り添えることがあります」

 リリィは、しばらく黙っていた。

 そして、ゆっくりと立ち上がった。

「皇后様」

「はい」

「私に、できるでしょうか」

「できますわ」

 ティアラは、穏やかに微笑んだ。

「貴女は、強い方です。あれだけの絶望から、ここまで来たのですから」

 リリィの目に、涙が滲んだ。

「ありがとうございます」

「いいえ」

 ティアラは、彼女の手を取った。

「これから、よろしくお願いいたしますわ。リリィさん」

「はい」

 リリィは、深く頭を下げた。

「皇后様のために、全力を尽くします」

    (映像終了)

-----

【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

-----

【速報】陛下、膝枕がないと書類にサインできない体になる

1:名無しの帝国民
 結婚式から4日

2:名無しの帝国民
 陛下が執務室に来ないらしい

3:名無しの帝国民
 来てはいる

4:名無しの帝国民
 来てるのか

5:名無しの帝国民
 皇后様の膝の上で

6:名無しの帝国民
 仕事しろ

7:名無しの帝国民
 国が回らないだろ

8:名無しの帝国民
 それが回ってるんだよな

9:名無しの帝国民
 >>8
 え

10:名無しの帝国民
 皇后様が全部やってる

11:名無しの帝国民
 は?

12:名無しの帝国民
 陛下の代わりに決裁してる

13:名無しの帝国民
 有能すぎないか

14:名無しの帝国民
 帝国、実質皇后様が動かしてる説

15:名無しの帝国民
 否定できない

16:名無しの帝国民
 陛下は何してるんだ

17:名無しの帝国民
 膝枕

18:名無しの帝国民
 それだけ?

19:名無しの帝国民
 あとは皇后様の手を握ってる

20:名無しの帝国民
 両手で

21:名無しの帝国民
 両手で?

22:名無しの帝国民
 左右のバランスが崩れるらしい

23:名無しの帝国民
 何のバランスだよ

24:名無しの帝国民
 愛のバランス

25:名無しの帝国民
 知らんわ

-----

【皇后様、元婚約者候補を救済】

26:名無しの帝国民
 結婚式で乱入してきた女性いたよな

27:名無しの帝国民
 いた

28:名無しの帝国民
 あの人どうなったんだ

29:名無しの帝国民
 皇后様に仕えることになったらしい

30:名無しの帝国民
 マジ?

31:名無しの帝国民
 恩返しがしたいって

32:名無しの帝国民
 いい話じゃん

33:名無しの帝国民
 アルベルトに捨てられた者同士か

34:名無しの帝国民
 皇后様も昔は苦労したんだろうな

35:名無しの帝国民
 でも今は幸せそう

36:名無しの帝国民
 陛下に溺愛されてるしな

37:名無しの帝国民
 勝ち組

38:名無しの帝国民
 最強の逆転劇

39:名無しの帝国民
 アルベルトざまぁ

40:名無しの帝国民
 「隠遁」してるからセーフ

-----

【映像ログ016-B 帝国宮殿 執務室 同日 午後4:00】

-----

送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:良好
配信範囲:帝国内限定

-----

    (映像開始)

 執務室。

 ジークハルトは、相変わらずティアラの膝の上にいた。

 ただし、今は目を開けている。

 手には、一通の書状があった。

「フローレンスからの使者が来ている」

 ジークハルトが、低く言った。

「フェリックスからの手紙だ」

「まあ、そうですか」

 ティアラは、書状を受け取った。

 封を開け、中身を読み始める。

 その表情が、わずかに変わった。

「どうした」

「……いえ」

 彼女は、かすかに笑った。

「懐かしいものが見つかったようですわ」

「懐かしいもの」

「ええ」

 ティアラは、手紙を読み上げた。

「『皇后殿下へ。同盟の件、順調に進めております。ところで、兄の部屋から貴女の日記が見つかりました。私信につき、返却いたします。使者に託しましたので、ご査収ください』」

「日記」

 ジークハルトの目が、鋭くなった。

「お前の日記を、アルベルトが持っていたのか」

「のようですわね」

「なぜだ」

「さあ」

 ティアラは、肩をすくめた。

「私がフローレンスを発つ時、置いていったものでしょう。まさか、あの方が保管しているとは思いませんでしたけれど」

「読まれたのか」

「おそらく」

 ジークハルトの表情が、冷たくなった。

「気に入らんな」

「陛下」

「お前の私的な記録を、あの男が読んでいたというのか」

 氷が、床に広がり始めた。

「許せん」

「陛下、落ち着いてくださいませ」

 ティアラは、彼の頬に手を添えた。

「もう、過去のことですわ」

「しかし」

「それに」

 彼女は、くすりと笑った。

「今は、陛下が私の全てをご存知ですもの。日記の中身など、取るに足りませんわ」

 ジークハルトの表情が、わずかに和らいだ。

「……そうか」

「ええ」

「お前の全て、か」

「はい」

 ティアラは、彼の銀髪を撫でた。

「陛下は、私の過去も、現在も、未来も、全てをお持ちですわ」

 ジークハルトは、目を閉じた。

「嬉しいことを言う」

「本当のことですもの」

 しばらく、沈黙が流れた。

「ティアラ」

「はい」

「その日記、読んでみたいか」

「……どうでしょう」

 ティアラの目が、遠くを見た。

「懐かしくもあり、恥ずかしくもありますわ」

「恥ずかしい」

「ええ。あの頃の私は、夢見がちな少女でしたから」

 彼女は、苦笑した。

「今とは、全く違いますわ」

「そうか」

 ジークハルトは、ゆっくりと起き上がった。

「余は、知りたい」

「何をですか」

「お前の過去だ」

 彼は、ティアラの手を取った。

「お前が、どんな日々を過ごしてきたのか。どんな想いを抱えてきたのか」

「陛下」

「余は、今のお前しか知らない」

 ジークハルトの瞳が、真剣だった。

「だが、今のお前を作ったのは、過去のお前だ。余は、その全てを知りたい」

 ティアラは、しばらく黙っていた。

 そして、静かに頷いた。

「分かりましたわ」

「ティアラ」

「今夜、お話しいたします」

 彼女は、彼の手を握り返した。

「私の昔のこと。そして、陛下と初めてお会いした夜のこと」

「初めて会った夜」

「ええ」

 ティアラの目が、どこか懐かしげに細められた。

「あの夜のことを、お話しいたしますわ」

    (映像終了)

-----

【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 同日 午後6:00】

-----

 フローレンスから、正式な使者が到着した。

 フェリックス殿下からの手紙と、同盟締結に関する草案。

 そして、一冊の日記。

 私は、その日記を皇后殿下にお届けした。

 殿下は、それを受け取り、しばらく表紙を見つめていた。

「懐かしいですわ」

 彼女は、静かに呟いた。

「この日記を書いていた頃、私はまだ何も知りませんでした」

「殿下」

「愛することの難しさも、裏切られる痛みも。そして、本当の幸せも」

 殿下は、日記を胸に抱いた。

「でも、もう大丈夫ですわ」

「大丈夫、ですか」

「ええ」

 彼女は、穏やかに笑った。

「今は、陛下がいらっしゃいますから」

 私は、何も言えなかった。

 ただ、頷くことしかできなかった。

 皇后殿下は、強い方だ。

 どんな過去があっても、それを乗り越えて、今を生きている。

 そして、陛下はその全てを受け止めようとしている。

 二人の絆は、揺るぎない。

 私は、そう確信した。

-----

【映像ログ016-C 帝国宮殿 中庭 同日 午後7:00】

-----

送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:良好(夕暮れ補正)
配信範囲:帝国内限定

-----

    (映像開始)

 中庭。

 夕日が、空を橙色に染めていた。

 リリィが、一人で佇んでいる。

 その手には、一枚の書類があった。

「リリィさん」

 声をかけられ、彼女は振り返った。

 ハインリヒが、歩み寄ってくる。

「ハインリヒ様」

「その書類は」

「はい」

 リリィは、書類を差し出した。

「皇后様から、お仕事をいただきました」

「お仕事」

「はい。帝都で困っている人たちを助ける仕事です」

 ハインリヒは、書類に目を通した。

「なるほど。救済事業の補佐官、ですか」

「はい。私に、務まるでしょうか」

「務まりますよ」

 ハインリヒは、にこりと笑った。

「皇后殿下がお選びになったのです。間違いはありません」

「……ありがとうございます」

 リリィは、深く頭を下げた。

「あの」

「はい」

「ハインリヒ様は、皇后様のことを、どう思っていらっしゃいますか」

 ハインリヒは、しばらく考えた。

「恐ろしい方です」

「恐ろしい」

「ええ。そして、優しい方です」

 彼は、夕日を見上げた。

「敵を味方に変え、憎しみを感謝に変える。それができる方は、そうはいらっしゃいません」

「……はい」

「でも、最も恐ろしいのは」

 ハインリヒは、リリィの方を向いた。

「殿下は、決して油断なさらないことです」

「油断」

「ええ。どんなに有利な状況でも、どんなに平和な日々でも。殿下は、常に次の一手を考えていらっしゃる」

 彼は、静かに笑った。

「だからこそ、我々は安心して仕えることができるのです」

 リリィは、黙って頷いた。

 自分が仕えることになった方が、どれほどの人物なのか。

 少しずつ、分かり始めていた。

    (映像終了)

-----

【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

-----

【考察】皇后様の過去が気になる件

41:名無しの帝国民
 フローレンスから日記が返却されたらしい

42:名無しの帝国民
 日記?

43:名無しの帝国民
 皇后様がフローレンスにいた頃の日記

44:名無しの帝国民
 アルベルトが持ってたのか

45:名無しの帝国民
 気持ち悪いな

46:名無しの帝国民
 捨てた元婚約者の日記を保管って

47:名無しの帝国民
 アルベルトらしいといえばらしい

48:名無しの帝国民
 皇后様、昔はどんな人だったんだろうな

49:名無しの帝国民
 今は完璧超人だけど

50:名無しの帝国民
 最初からああだったわけじゃないだろ

51:名無しの帝国民
 追放されて帝国に来たんだしな

52:名無しの帝国民
 その前は普通の令嬢だったのかも

53:名無しの帝国民
 アルベルトに騙されてた時期もあったんだろうな

54:名無しの帝国民
 想像できない

55:名無しの帝国民
 でも、あの女性(リリィ)と同じだって言ってたぞ

56:名無しの帝国民
 >>55
 マジ?

57:名無しの帝国民
 「私も信じていた」って

58:名無しの帝国民
 皇后様にもそんな時期があったのか

59:名無しの帝国民
 切ない

60:名無しの帝国民
 でも今は幸せだからいいだろ

61:名無しの帝国民
 陛下に溺愛されてるしな

62:名無しの帝国民
 人生大逆転

63:名無しの帝国民
 過去編、見てみたいな

64:名無しの帝国民
 陛下との出会いとかな

65:名無しの帝国民
 絶対ロマンチックだろ

-----

【極秘ログ──送信者不明】

-----

記録日時:帝国歴四〇三年 冬 第二の月 12日 深夜11:59
ファイル名:[解析不能]
送信元:[解析不能]
送信先:[解析不能]

-----

    (音声のみ)

 本のページをめくる音。
 古い紙の匂いが漂う気配。

「懐かしいですわね」

 女の声。
 独り言のような、静かな響き。

「この日記を書いていた頃の私は、本当に何も知らなかった」

 ページをめくる音が止まる。

「でも、今は違いますわ」

 女の声が、少し低くなった。

「リリィさんは、良い駒になるでしょう。いえ、駒ではありませんわね。同志、と呼ぶべきかしら」

 くすりと笑う気配。

「彼女はアルベルトに捨てられた。マリアに人生を壊された。私と同じですわ」

 立ち上がる気配。
 窓辺に歩み寄る足音。

「だからこそ、彼女は私の最も忠実な協力者になる。同じ痛みを知る者同士の絆は、何よりも強いもの」

 窓を開ける音。
 夜風が入り込む気配。

「救済事業、と名付けましたわ。表向きは慈善活動。でも本当の目的は、帝都に流れ着いたフローレンスの被害者たちを、私の網に取り込むこと」

 女の声が、冷たくなった。

「彼らは皆、アルベルトかマリアか、あるいはフローレンスそのものを恨んでいる。その恨みは、いつか私の剣になりますわ」

 窓を閉める音。

「ふふ。私は本当に、悪い女ですわね」

 振り返る気配。

「でも、構いませんわ。陛下のためなら、私はいくらでも悪女になりますもの」

 扉が開く音。

「陛下」

 女の声が、ふわりと柔らかくなった。

「まだ起きていらっしゃいましたか」

「待っておった」

 低い男の声。

「その日記、読んだか」

「少しだけ」

 苦笑する気配。

「恥ずかしくて、とても最後まで読めませんわ」

「どんなことが書いてあった」

「……夢見がちなことばかりですわ」

 女の声が、少し揺れた。

「アルベルト様と結婚して、幸せになりたいとか。子供を三人産んで、庭に薔薇を植えたいとか」

「そうか」

「愚かでしょう?」

「いや」

 男の声が、優しくなった。

「愚かではない。当然の願いだ」

「陛下」

「お前は、幸せになりたかった。それだけだ」

 沈黙。

 衣擦れの音。
 近づく気配。

「ティアラ」

「はい」

「その願いは、余が叶える」

 女の息が、詰まる気配。

「子供を三人でも五人でも、産んでくれ。庭には薔薇でも向日葵でも、好きなだけ植えろ」

「陛下」

「余は、お前の全ての夢を叶える」

 衣擦れの音。
 抱きしめる気配。

「だから、もう泣くな」

「……泣いて、おりませんわ」

「嘘をつくな」

 女の声が、震えていた。

「お前の頬は、濡れている」

 しばらく、沈黙が続いた。

 やがて、女の声が聞こえた。

「陛下」

「何だ」

「私の昔の話、聞いてくださいますか」

「もちろんだ」

「長くなりますわ」

「構わん」

 男の声が、温かくなった。

「お前の話なら、一晩でも聞いていられる」

 女が、小さく笑う気配。

「では、お話しいたしますわ」

 本を閉じる音。

「私がまだ、何も知らなかった頃のこと」

 深く息を吸う音。

「そして、陛下と初めてお会いした、あの舞踏会の夜のこと」

「舞踏会」

「ええ」

 女の声が、どこか遠くを見ているようだった。

「あの夜、私は絶望の淵にいましたわ。アルベルト様に裏切られ、全てを失い、国中から悪女と呼ばれて」

「うむ」

「でも、あの夜、私は貴方と出会った」

 衣擦れの音。
 寄り添う気配。

「あの時、陛下は私に何と仰いましたか」

「覚えている」

 男の声が、低くなった。

「『退屈そうだな』と」

「ええ」

 女が、くすくすと笑う気配。

「私は、あの言葉に救われましたわ」

「救われた」

「はい。誰もが私を『悪女』『裏切り者』と見ていた中で、陛下だけが違いました」

 女の声が、温かくなった。

「陛下は、ただ『退屈そうだな』と。まるで、私の評判など何も知らないかのように」

「知っていた」

「え」

「お前の評判は、知っていた」

 男の声が、静かになった。

「だが、興味がなかった」

「興味が」

「噂など、どうでもよかった。余が見たのは、お前自身だ」

 沈黙。

「あの夜、お前は美しかった」

 男の声が、揺れていた。

「誰もがお前を避ける中、一人で凛と立っていた。その姿が、余の目に焼きついた」

「陛下」

「だから、声をかけた」

 抱きしめる力が、強くなる気配。

「そして、余は正しかった」

「正しかった」

「ああ。お前は、余の人生で最も正しい選択だった」

 女の息が、震える気配。

「陛下、私」

「言わなくていい」

 男の声が、穏やかになった。

「今夜は、お前の話を聞く番だ。続けてくれ」

「……はい」

 深呼吸する音。

「では、最初から。私がフローレンスで生まれた日のことから、お話しいたしますわ」

「聞かせよ」

「ええ」

 女の声が、物語を紡ぎ始めた。

「私は、公爵家の一人娘として生まれました。両親は、とても愛情深い方々でした」

「うむ」

「でも、8歳の時、両親は流行り病で亡くなりました。私は一人になりました」

 男の息が、詰まる気配。

「それから、叔父が後見人になりました。でも、叔父は私よりも、公爵家の財産に興味がありました」

「……続けろ」

「はい。そして、12歳の時、アルベルト王子との婚約が決まりました」

 女の声が、少し冷たくなった。

「あの時は、嬉しかったのですわ。王子様と結婚できると。夢のようでした」

「夢」

「ええ。でも、夢は覚めるものですわ」

 苦笑する気配。

「17歳になった時、全てが変わりました。マリアという女性が、現れたのです」

「マリア」

「はい。あの方は、本当に天使のようでしたわ。優しくて、美しくて、誰からも愛されて」

 沈黙。

「そして、アルベルト様は、彼女に夢中になりました」

「……ティアラ」

「私は、どんどん孤立していきました。王宮での立場も、婚約者としての地位も。全てが、崩れていきました」

 女の声が、震えていた。

「でも、私は諦めませんでしたわ。諦められなかった。だって、アルベルト様以外に、頼れる人がいなかったから」

 抱きしめる気配。

「もういい」

「陛下」

「今夜は、ここまででいい」

 男の声が、優しかった。

「お前は、十分に話してくれた」

「でも、まだ途中で」

「続きは、明日聞く」

 衣擦れの音。

「お前は疲れている。今夜は、眠れ」

「……はい」

 女の声が、小さくなった。

「ありがとうございます、陛下」

「礼を言うのは、余の方だ」

「え」

「お前の過去を、話してくれた。それだけで、余は嬉しい」

 抱きしめる気配。

「おやすみなさいませ、私の陛下」

「ああ。おやすみ、余の妻」

    (ログ終了)
    (このファイルは自動消去されました)

-----

【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 翌日 午前8:00】

-----

 新婚生活5日目。

 陛下は、相変わらず膝枕から動かない。

 しかし、今日は少し様子が違った。

 陛下の目が、どこか真剣だったのだ。

「ハインリヒ」

「はい」

「皇后の過去について、お前は何か知っているか」

「殿下の、過去ですか」

「ああ。フローレンスにいた頃のことだ」

 私は、少し考えた。

「公式記録では、追放される前の詳細は不明です。ただ」

「ただ」

「噂では、かなり辛い日々を過ごされていたと」

「そうか」

 陛下は、目を伏せた。

「余は、知らなければならん」

「陛下」

「あの女性の全てを。過去も、現在も、未来も」

 その声には、揺るぎない決意があった。

「余は、あの女性の味方だ。永遠に」

 私は、深く頷いた。

「畏まりました」

 陛下と皇后殿下の絆は、日に日に深まっている。

 そして、その絆を深めるために、過去と向き合おうとしている。

 これは、記録に残すべき歴史だ。

 二人が、どのようにして出会い、どのようにして結ばれたのか。

 その全てを、私は記録しなければならない。

 記録官として。

 そして、彼らの側近として。

-----

【次回予告】

皇后の過去が、少しずつ明らかになる。

「あの舞踏会の夜、私は死のうと思っていましたわ」
「……何」
「でも、陛下に会って、考えが変わりました」

フローレンスでの日々。
マリアの登場。
そして、運命の舞踏会。

「なぜ、お前は笑っていた」
「笑う以外に、方法がなかったのですわ」

陛下と皇后の出会いの真実が、語られ始める。

「あの夜、余はお前に一目惚れをした」
「……陛下」
「だから、お前を帝国に連れてきたのだ」

過去と現在が交錯する、回想の物語。

第17話「舞踏会の夜は、記録されていなかった」

-----

【おまけ:帝国宮殿 厨房 同日 深夜】

-----

 深夜の厨房。

 料理長が、一人で作業していた。

「皇后殿下のための夜食か」

 声をかけられ、振り返る。

 財務大臣が、立っていた。

「大臣。こんな時間に」

「眠れなくてな。胃が痛い」

「お察しします」

 料理長は、鍋をかき混ぜた。

「ホットミルクを、作っております」

「陛下用か」

「いえ、皇后殿下用です」

「皇后殿下」

「はい。今夜は、陛下と長話をなさっているようで。お体を冷やさないように、と」

 財務大臣は、しばらく黙っていた。

「……皇后殿下は、幸せそうか」

「はい」

 料理長は、にこりと笑った。

「お二人とも、とても幸せそうですよ」

「そうか」

 財務大臣は、窓の外を見た。

「なら、胃痛も我慢できるな」

「大臣も、ホットミルクを飲まれますか」

「……頼む」

 二人は、並んでホットミルクを飲んだ。

 深夜の厨房に、穏やかな時間が流れていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

王太子に求婚された公爵令嬢は、嫉妬した義姉の手先に襲われ顔を焼かれる

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。 『目には目を歯には歯を』 プランケット公爵家の令嬢ユルシュルは王太子から求婚された。公爵だった父を亡くし、王妹だった母がゴーエル男爵を配偶者に迎えて女公爵になった事で、プランケット公爵家の家中はとても混乱していた。家中を纏め公爵家を守るためには、自分の恋心を抑え込んで王太子の求婚を受けるしかなかった。だが求婚された王宮での舞踏会から公爵邸に戻ろうとしたユルシュル、徒党を組んで襲うモノ達が現れた。

3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~

放浪人
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、1度目は悪役令嬢として断罪され処刑、2度目は改心して聖女となり国に尽くしたが過労死……という悲惨な最期を遂げた。 記憶を持ったまま3度目の人生が始まった瞬間、彼女は固く決意する。 「もう絶対に働きません! 今世は部屋から一歩も出ず、睡眠と趣味に命をかけます!」 最強の拒絶結界『絶対領域』で部屋に籠城し、婚約破棄イベントも夜会も全て無視して惰眠を貪ろうとするエリザベート。 しかし、彼女の「働きたくない」一心からの行動――適当な農業アドバイスや、安眠妨害への容赦ない迎撃――が、周囲には「国を憂う深慮遠謀」「慈愛に満ちた奇跡」として超好意的に解釈されてしまう!? ヤンデレ化した元婚約者の王太子、物理で愛を語る脳筋騎士団長、効率厨の隣国王子、さらには古代の引きこもり少年までをも巻き込み、事態は国家規模の大騒動へ。 部屋ごと空を飛んで戦場を浄化し、パジャマ姿で古代兵器を操り、地下牢をスイートルームに変えながら、エリザベートは究極の安眠を手に入れることができるのか? 塩対応すればするほど愛され、逃げれば逃げるほど伝説になる、最強引きこもり令嬢の勘違いドタバタ溺愛ファンタジー、ここに完結!

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

処理中です...