【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました

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第36章 王室への謁見

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 王宮の大広間は、一年前の卒業式以来だった。

 あの時、リオンに婚約破棄された場所。

 今、私はカイルと共に、国王陛下に謁見する。

 扉が開く。

 大広間は、多くの貴族で溢れていた。

 視線が一斉に私たちに集まる。

 ざわめきが波のように広がった。

「あれは……エリナ・アルトハイム?」

「財務大臣と一緒に……」

「一年前、婚約破棄されたあの令嬢か」

 囁き声が耳に届く。

 胸が少し締め付けられた。

 だが、カイルが私の手を握る。

 その温もりが、私を支えてくれる。

「大丈夫だ。私がいる」

 カイルが小さく囁いた。

 私は頷いた。

 もう、一年前の私ではない。

 一歩ずつ、大広間を進む。

 赤い絨毯が、玉座まで続いている。

 貴族たちの視線が、私を追う。

 好奇、驚き、羨望、軽蔑。

 様々な感情が入り混じっていた。

 だが、私は顔を上げる。

 カイルが隣にいる。

 恐れることは、何もない。

 玉座の前で、私たちは立ち止まった。

 国王陛下が、私たちを見下ろしている。

 威厳に満ちた表情だった。

 カイルが片膝をつく。

 私も同じように、膝をつく。

「陛下、お召しにより参上いたしました」

 カイルの声が、大広間に響いた。

 国王陛下が、ゆっくりと口を開く。

「カイル、顔を上げよ」

 私たちは立ち上がった。

 国王陛下の視線が、私に向けられる。

 心臓が早鐘を打った。

 国王陛下が、静かに言った。

「カイル、今日は何の用で参内した?」

 カイルが一歩前に出る。

 背筋が伸び、凛とした姿勢だった。

「陛下、私からお願いがございます」

 大広間が静まり返る。

 貴族たちが、息を呑んで見守っていた。

 カイルが続ける。

「私は、エリナ・フォン・アルトハイムとの婚約を」

「お認めいただきたく存じます」

 どよめきが起こった。

 貴族たちが、ざわめき始める。

「財務大臣が、婚約を……?」

「あの追放された令嬢と?」

「四大公爵家の娘だぞ」

 囁き声が、耳に届く。

 だが、国王陛下は動じなかった。

 ゆっくりと、私を見つめる。

「ほう……財務大臣カイルが、ついに婚約か」

 国王陛下の声には、驚きはなかった。

 むしろ、満足そうな響きがあった。

 国王陛下が、私に問いかける。

「エリナ・アルトハイム」

「フェルゼンでの改革、見事だ」

「一年で荒れ地を、豊かな領地に変えた」

「その手腕は、王国中に知れ渡っている」

 胸が熱くなった。

 国王陛下が、私の努力を認めてくれた。

 涙が溢れそうになる。

 だが、私は堪える。

 深く頭を下げた。

「恐れ入ります、陛下」

「全ては、カイル様のご指導のおかげです」

 国王陛下が、柔らかく笑った。

「謙虚だな。だが、それは君の力だ」

「カイル、よい伴侶を選んだな」

 カイルが、私の隣に立つ。

「はい、陛下」

「彼女は、私の全てです」

 カイルの声が、大広間に響く。

 私の手を、そっと握った。

 国王陛下が、頷く。

「カイル、彼女を幸せにせよ」

「それが、王国への最大の貢献だ」

 カイルが、深く頭を下げる。

「必ず」

 その声は、揺るぎない決意に満ちていた。

 国王陛下が、玉座から立ち上がる。

「では、ここに宣言する」

「カイル・ヴェルナーと」

「エリナ・フォン・アルトハイムの婚約を」

「王室として、正式に承認する」

 拍手が起こった。

 貴族たちが、一斉に手を叩く。

 祝福の言葉が、あちこちから聞こえてくる。

 私は、涙を堪えきれなかった。

 やっと、認められた。

 王室に、婚約を承認してもらえた。

 カイルが、私の手を強く握る。

「エリナ、おめでとう」

 私も、カイルを見つめる。

「ありがとう、カイル」

 二人で、深く頭を下げた。

 謁見が終わり、私たちは大広間を出ようとした。

 その時、声が聞こえた。

「エリナ……」

 振り返ると、リオンが立っていた。

 元婚約者。

 一年前、私を婚約破棄した人。

 複雑な表情で、私を見つめていた。

 カイルが、私の前に立つ。

 だが、私は首を横に振った。

「大丈夫です、カイル」

 私は、リオンと向き合う。

 もう、恐れることはない。

「リオン様」

 私の声は、冷静だった。

 リオンが、唇を噛む。

 視線が、少し泳いでいた。

「その……おめでとう」

 リオンの声が、震えていた。

 顔色が、少し青ざめている。

「財務大臣との婚約、本当に……」

 言葉が、途切れた。

 拳が、小さく震えていた。

 私は、静かに答える。

「ありがとうございます、リオン様」

 カイルが、私の肩に手を置く。

 その仕草は、とても自然だった。

「彼女は、私の婚約者だ」

 カイルの声が、大広間に響く。

 リオンが、一瞬顔を歪めた。

 唇を強く噛んでいる。

 視線が、カイルと私の間を行き来した。

 やがて、リオンが小さく頷く。

「そうか……」

 その声は、諦めに満ちていた。

 リオンが、私から目を逸らす。

 拳を握りしめたまま、背を向けた。

 俯いた背中が、小さく震えている。

 私には、リオンの心が見えた気がした。

 後悔。

 そして、自分の選択への問いかけ。

 だが、私はもう振り返らない。

 私の未来は、カイルと共にある。

 遠くから、誰かが見ていた。

 セリアだった。

 一年前、リオンが選んだ相手。

 彼女は、静かに立っていた。

 視線が、私たちに向けられている。

 複雑な表情だった。

 羨望と、少しの寂しさが混じっていた。

 唇が、小さく動く。

「エリナさん、本当に幸せそう……」

 その声は、誰にも聞こえなかった。

 セリアは、そっと視線を落とした。

 私たちは、大広間を出た。

 廊下に出ると、カイルが私を見つめる。

「辛かったか?」

 優しい声だった。

 私は、首を横に振る。

「いいえ。カイルがいるから」

「むしろ、すっきりしました」

 本心だった。

 もう、過去に囚われることはない。

 カイルが、柔らかく微笑んだ。

「そうか。では、次は社交界だ」

 私は、首を傾げる。

「社交界……?」

 カイルが、私の手を取った。

「婚約披露パーティーを開く」

「王都中に、私たちの婚約を知らしめる」

 その言葉に、期待が膨らんだ。

 だが、少しの不安もある。

「貴族たちは、受け入れてくれるでしょうか」

 カイルが、私の頭を撫でる。

「君は、王国の英雄だ」

「誰もが、君を称賛するだろう」

 その言葉が、胸に響いた。

 私は、カイルの手を握り返す。

「一緒なら、どこまでも行けます」

 カイルが、私を抱きしめた。

 温もりが、私を包む。

 王宮の廊下で、二人は静かに抱き合った。

 窓の外には、王都の街並みが広がっている。

 一年前、この街から逃げるように去った。

 でも今、私は胸を張って戻ってきた。

 カイルと共に。

 遠くで、噂が広がり始めていた。

「財務大臣の婚約が、王室に承認されたぞ」

「相手は、エリナ・アルトハイム」

「あの追放された令嬢が、財務大臣と……」

 王都中が、この話題で持ちきりになる。

 貴族社会が、ざわついていた。

 そして、一週間後。

 王都で、盛大な婚約披露パーティーが開かれることになる。

 新たな人生が、始まろうとしていた。
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