【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました

チャビューヘ

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第39章 フェルゼンへの帰還

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 王都への出発準備を進めていた矢先、急使が到着した。

 カイルからの手紙だった。

 私は、執務室で封を切る。

 カイルの几帳面な文字が、目に飛び込んできた。

『エリナ、君の決意は嬉しい。

 だが、今すぐ王都に来る必要はない。

 私がフェルゼンに戻り、そこで作戦を練る。

 君には、フェルゼンを守ってほしい。

 ここが攻撃されたら、全てが水の泡だ。

 リオンは狡猾だ。君が王都に来ることも、

 計算に入れているかもしれない。

 その隙に、フェルゼンを襲う可能性がある。

 信じてくれ。必ず、二人で戦おう。

 カイル』

 私は、手紙を握りしめた。

 拳が、小さく震える。

 カイルの言葉は、正しい。

 フェルゼンを空けることは、あまりにも危険すぎる。

 一年かけて築き上げた、この領地。

 七千人の住民たち。

 彼らを、無防備に晒すわけにはいかない。

 だが、カイルを一人で戦わせることも……。

 胸が、締め付けられた。

 グレンが、そっと口を開いた。

「お嬢様、カイル閣下のお考えは正しいかと」

「この領地を守ることも、戦いの一部です」

 オスカーも、頷く。

「フェルゼンは、お嬢様の最大の功績です」

「ここを失えば、カイル閣下への信頼も揺らぎます」

 私は、深く息を吐いた。

 窓の外を見つめる。

 畑で働く農民たち。

 市場で笑い合う商人たち。

 彼らの笑顔が、目に浮かんだ。

 そして、頷いた。

「……そうね。私はここで、戦う準備をする」

 マリアが、ホッとした表情を見せた。

「お嬢様……」

 私は、拳を握りしめる。

「カイルが戻ってきたら、二人で作戦を立てる」

「ここフェルゼンを拠点に、リオンの陰謀を打ち砕く」

 グレンが、力強く頷いた。

「お供いたします」

 三日後、カイルがフェルゼンに戻ってきた。

 王都での調査で、リオンの陰謀の一端を掴んだという。

 だが、カイルの表情は険しいままだった。

 まだ、戦いは終わっていない。

 領主館の門が開く。

 馬車が、ゆっくりと中庭に入ってきた。

 私は、玄関で待っていた。

 胸が、早鐘を打っている。

 カイルが、無事に戻ってきた。

 それだけで、安堵が胸を満たした。

 馬車が止まる。

 扉が開いた。

 カイルが、降りてくる。

 その顔を見た瞬間、私は駆け寄っていた。

「お帰りなさい、カイル」

 カイルが、私を見つめる。

 その目には、疲労が滲んでいた。

 だが、柔らかく微笑んだ。

「ただいま、エリナ」

 私は、カイルの胸に飛び込んだ。

 カイルが、私を抱きしめる。

 その腕が、とても温かかった。

「心配をかけた」

 カイルの声が、耳元で響く。

 私は、首を横に振った。

「無事で、良かった」

 涙が、溢れそうになる。

 だが、私は堪える。

 カイルは、もっと疲れているはずだ。

 私が、しっかりしなければ。

 カイルが、私の頭を撫でる。

「王都で、リオンの動きを調査した」

「彼は、まだ諦めていない」

 私は、カイルを見上げた。

「それなら、まだ危険が……」

 カイルが、眉をひそめる。

 その表情が、暗かった。

「ああ。陰謀は、さらに深いようだ」

 心臓が、ざわついた。

 まだ、危険が残っている。

 カイルが、私の手を取る。

「中で話そう」

 二人で、執務室へと向かった。

 執務室には、グレンとオスカーが待っていた。

 二人とも、深刻な表情だった。

 カイルが、椅子に座る。

 私も、隣に座った。

 グレンが、口を開く。

「閣下、お疲れ様でございました」

「王都での調査、ご苦労様です」

 カイルが、頷く。

 だが、表情は晴れない。

「ありがとう、グレン」

「だが、リオンの陰謀は想像以上に根深い」

 オスカーが、報告書を広げた。

「お嬢様、こちらにも続報が入りました」

 私は、その書類を見る。

 目を通すと、背筋が凍った。

「リオン様が、商業ギルドと接触……?」

 オスカーが、頷く。

「はい。カイル閣下への経済的圧力を企んでいるようです」

 グレンが、別の報告書を差し出した。

「それだけではありません」

「貴族たちも、リオン様を中心に集まっています」

 私は、息を呑んだ。

 前世の記憶が、蘇ってきた。

 二周目の人生で、カイルが失脚に追い込まれた。

 貴族たちの陰謀によって。

 あの悪夢を、繰り返してはいけない。

 拳を、握りしめる。

「リオンは、まだ諦めていないのね」

 カイルが、私の手を握った。

「今回は、そうはさせない」

 その声が、力強かった。

 私は、カイルを見つめる。

 その目には、揺るぎない決意があった。

 胸が、温かくなる。

 カイルがいる。

 二人なら、どんな困難も乗り越えられる。

 グレンが、前のめりになった。

「では、どのような対策を?」

 カイルが、私を見る。

「エリナ、君の意見を聞きたい」

 私は、深呼吸をした。

 頭の中で、考えを整理する。

 前世の経験、今の状況、そして未来。

 全てを、天秤にかける。

 やがて、私は口を開いた。

「まず、リオンの陰謀の全容を掴む必要があります」

 全員の視線が、私に集まった。

 私は、続ける。

「商業ギルドとの接触、貴族たちの動き」

「全てを監視し、証拠を集める」

 オスカーが、頷く。

「情報戦ですね」

 私は、首を縦に振った。

「そして、決定的な証拠を掴んだら」

「国王陛下の御前で、全てを暴く」

 グレンが、目を輝かせる。

「なるほど……リオン様を、公の場で」

 カイルが、私の肩に手を置いた。

「君は、本当に頭がいい」

 その言葉が、胸に響いた。

 私は、立ち上がった。

 窓辺に立ち、外を見つめる。

 フェルゼンの街並みが、広がっていた。

 緑豊かな畑、活気ある市場、幸せそうな人々。

 私が、一年かけて築いた風景だった。

「カイルを守るためなら」

 振り返る。

 三人が、じっと私を見つめていた。

「私は、何でもします」

 カイルが、立ち上がった。

 私の隣に、立つ。

「エリナ、ありがとう」

 カイルの声が、温かかった。

 私も、カイルを見つめる。

「二人なら、必ず勝てます」

 グレンが、立ち上がる。

「では、王都に情報網を広げます」

「リオン様たちの動きを、徹底的に監視いたします」

 オスカーも頷いた。

「私も、商業ギルドのルートを探ります」

 カイルが、深く頷いた。

「頼む。そして、決定的な証拠を掴んだら」

「私が王都に戻り、全てに決着をつける」

 私は、カイルの手を握った。

 その手が、温かかった。

「私は、ここでフェルゼンを守ります」

 カイルが、私を抱きしめた。

「ありがとう、エリナ」

「君がいれば、私は何も恐れない」

 翌日、グレンとオスカーが動き始めた。

 王都への情報網構築。

 商業ギルドへの潜入調査。

 全てが、静かに進行していく。

 私は、フェルゼンの運営を続けた。

 農地の視察、市場の確認、住民との対話。

 日常を守りながら、戦いの準備を進める。

 カイルは、領主館で書類を整理していた。

 リオンの過去の動き、貴族たちの関係図。

 全てを、丹念に調べ上げていく。

 夜、私たちは執務室で向き合った。

 カイルが、地図を広げる。

「リオンは、王都の貴族五家と繋がっている」

 私は、その地図を見つめた。

 貴族たちの名前が、書き込まれている。

「この五家を、抑えれば……」

 カイルが、頷く。

「リオンの陰謀は、崩れる」

 私は、深く息を吐いた。

 戦いは、これからだ。

 だが、私たちには勝算がある。

 カイルの知略と、私の経営知識。

 そして、何より……。

 カイルが、私の手を握る。

「エリナ、君と一緒なら」

「どんな困難も乗り越えられる」

 私も、カイルの手を握り返す。

「私も、同じ気持ちです」

 二人で、静かに微笑み合った。

 窓の外には、星空が広がっている。

 満天の星が、煌めいていた。

 一週間後、グレンが重要な情報を持ち帰った。

 執務室に集まった私たちに、報告する。

「リオン様が、フェルゼンにスパイを送り込む計画です」

 私は、息を呑んだ。

 ついに、動き出したのだ。

 カイルが、鋭い目をした。

「目的は?」

 グレンが、書類を広げる。

「四圃式農法の技術盗用」

「そして、カイル閣下の汚職捏造のための証拠作り」

 私の拳が、震えた。

 怒りが、胸を満たす。

 だが、これはチャンスでもある。

 私は、カイルを見た。

 カイルも、同じことを考えていた。

「スパイを泳がせる」

 私たちは、同時に言った。

 グレンが、目を見開く。

「泳がせる……ですか?」

 私は、頷く。

「今捕らえても、証拠にはなりません」

「スパイに偽の情報を掴ませ」

「王都に向かう途中で捕獲する」

 カイルが、続ける。

「そして、リオンとの繋がりを白日の下に晒す」

 オスカーが、興奮した様子で言う。

「完璧な作戦です」

 グレンが、深く頷いた。

「すぐに、準備いたします」

 作戦が、動き始めた。

 罠は、既に仕掛けられている。

 リオンは、まだ気づいていない。

 自分が、追い詰められていることに。

 新たな戦いが、始まろうとしていた。
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