【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました

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第40章 スパイの捕獲

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 フェルゼンに、怪しい人物が現れた。

 グレンが警戒を強め、監視を続けていた。

 そして、ついに尻尾を掴んだ。

 早朝、グレンが執務室に駆け込んできた。

 息を切らしている。

 顔には、緊張が浮かんでいた。

 私は、書類から顔を上げる。

「グレン、どうしたの?」

 グレンが、深呼吸をした。

 落ち着こうとしている様子だった。

「お嬢様、スパイを発見しました」

 私の手が、止まった。

 心臓が、早鐘を打ち始める。

 ついに、来たのだ。

 予想していた事態が、現実になった。

「どこに?」

 声が、少し震えていた。

 グレンが、報告書を広げる。

「農地です。四圃式の測量をしていました」

「偽名を使い、旅の商人を装っています」

 私は、立ち上がった。

 椅子が、音を立てる。

「確実なの?」

 グレンが、力強く頷いた。

「間違いありません」

「部下が、三日間監視しました」

「測量道具、図面、全て確認しています」

 拳を、握りしめる。

 怒りが、胸を満たした。

 だが、冷静にならなければ。

 感情だけでは、スパイを捕らえられない。

「カイルは?」

 グレンが、扉の方を見た。

「既に、お呼びしております」

 その時、扉が開いた。

 カイルが、入ってくる。

 その表情は、厳しかった。

「話は聞いた。スパイだな」

 私は、頷く。

「ええ。農地で四圃式を測量していたそうです」

 カイルが、グレンを見る。

「現在の居場所は?」

 グレンが、地図を広げた。

「宿屋に滞在しています」

「ここです」

 指で、場所を示す。

 王都への街道沿いの宿だった。

 カイルが、地図を見つめる。

 目が、鋭く光っていた。

「逃げる準備をしているな」

 私も、同じことを考えていた。

 情報を手に入れたら、すぐに王都へ向かうつもりだろう。

 カイルが、私を見た。

「エリナ、どうする?」

 私は、深呼吸をした。

 頭の中で、計画を練る。

 スパイを捕らえるだけでは、不十分だ。

 背後にいる者を、暴かなければならない。

「泳がせましょう」

 私の言葉に、グレンが目を見開いた。

「泳がせる……ですか?」

 私は、頷く。

「今捕らえても、背後は分かりません」

「誰が送り込んだのか」

「それを知る必要があります」

 カイルが、微笑んだ。

 満足そうな表情だった。

「さすがだな、エリナ」

「私も、同じことを考えていた」

 グレンが、不安そうに言う。

「しかし、情報が流出してしまいます」

 私は、首を横に振った。

「流出させます。ただし……」

 カイルが、続けた。

「偽の情報を」

 グレンの顔が、明るくなった。

「なるほど!」

 私は、計画を説明し始めた。

「スパイに、偽の図面を掴ませます」

「四圃式の改良版、と見せかけて」

「実際には、役に立たない情報を」

 カイルが、補足する。

「そして、彼が王都に向かう時」

「途中で捕らえる」

「その時、背後の人物も明らかになるだろう」

 グレンが、深く頷いた。

「素晴らしい作戦です」

「すぐに、準備いたします」

 私は、オスカーを呼んだ。

 彼が、すぐに現れる。

「お嬢様」

「偽の図面を作ってください」

「四圃式の改良版、という名目で」

「ただし、致命的な欠陥を含めて」

 オスカーが、目を輝かせた。

「かしこまりました」

「すぐに取り掛かります」

 カイルが、グレンに指示を出す。

「監視を続けろ」

「だが、気づかれないように」

「彼が情報を持ち出す瞬間を、見逃すな」

 グレンが、敬礼した。

「了解いたしました」

 作戦が、動き始めた。

 三日後、スパイが動いた。

 深夜、彼は宿を抜け出した。

 農地の倉庫に、忍び込む。

 そこには、偽の図面が置いてあった。

 私たちが、わざと残したものだった。

 グレンの部下が、影から見守っている。

 スパイは、周囲を確認した。

 誰もいないことを確かめる。

 そして、図面を手に取った。

 月明かりで、内容を確認している。

 満足そうに、頷いた。

 図面を、懐に仕舞う。

 足音を忍ばせ、倉庫を出る。

 宿へと、戻っていった。

 翌朝、スパイは宿を発った。

 馬車に乗り、王都への街道を進む。

 その後を、グレンと部下たちが追っていた。

 私とカイルも、別の馬車で追跡する。

 街道は、森の中を通っていた。

 木々が鬱蒼と茂り、日光を遮っている。

 人通りの少ない場所だった。

 絶好の捕獲ポイントだった。

 カイルが、合図を出す。

 グレンの部下たちが、動いた。

 前後から、街道を塞ぐ。

 スパイの馬車が、急停止した。

 御者が、驚いて叫ぶ。

「何だ、貴様ら!」

 グレンが、前に出た。

 剣を抜いている。

「フェルゼン領主の命により」

「貴様を逮捕する」

 スパイが、馬車から飛び降りた。

 逃げようとする。

 だが、四方を囲まれていた。

 部下たちが、剣を構える。

 スパイは、観念したようだった。

 肩を落とし、その場に座り込む。

「……くそ」

 小さく、呟いた。

 私とカイルが、馬車から降りる。

 スパイの前に、立った。

 スパイが、顔を上げる。

 私を見て、目を見開いた。

「エリナ・アルトハイム……」

 私は、冷静に答える。

「そうです。フェルゼン領主です」

 スパイが、唇を噛んだ。

 悔しそうな表情だった。

 カイルが、前に出る。

 その眼光が、鋭かった。

「誰に雇われた?」

 スパイが、口を閉ざす。

 答えようとしなかった。

 カイルが、さらに問い詰める。

「答えなければ、国家反逆罪で処刑だ」

 その声が、冷たく響いた。

 スパイの顔が、青ざめる。

 震え始めていた。

 やがて、観念したように口を開いた。

「……リオン様だ」

 私は、息を呑んだ。

 カイルの顔が、さらに厳しくなった。

「やはり、リオンか」

「王都での調査で疑っていたが……」

 私も、胸が締め付けられた。

 確証が、得られたのだ。

 リオンが、本当にカイルを陥れようとしていた。

 技術を盗み、汚職を捏造し、全てを奪おうとしていた。

 カイルの顔が、怒りで歪んだ。

 拳を、強く握りしめている。

 だが、声は冷静だった。

「リオンが、技術を盗もうとしていたのか」

 スパイが、頷く。

「はい……四圃式農法の詳細を」

「そして……」

 言葉を濁した。

 カイルが、睨みつける。

「そして、何だ?」

 スパイが、視線を落とす。

 言いたくない様子だった。

 だが、カイルの圧力に負けた。

「閣下の汚職を、捏造する計画も……」

 私は、驚愕した。

 汚職の捏造?

 そこまでするつもりだったのか。

 カイルが、低い声で言った。

「……そこまでするのか」

 その声は、怒りと失望が混じっていた。

 スパイが、続ける。

「他にも……商業ギルドと結託して」

「経済的圧力をかける計画が……」

 私は、カイルを見た。

 彼の顔も、蒼白だった。

 リオンは、本気だったのだ。

 カイルを失脚させるために。

 そして、私を……。

 カイルが、私の手を握った。

 その手が、震えていた。

 怒りを、必死に抑えている様子だった。

「他には?」

 スパイが、首を横に振る。

「知っているのは、それだけです」

「計画の全容は、リオン様しか……」

 カイルが、グレンに目配せした。

 グレンが、頷く。

「こいつを、王都へ護送します」

「国王陛下に、全てを報告します」

 部下たちが、スパイを縛り上げた。

 馬車に、押し込む。

 グレンが、私たちに敬礼した。

「では、行ってまいります」

 馬車が、王都へと向かっていった。

 私とカイルは、その場に残された。

 静かな森の中で、二人きりだった。

 カイルが、深く息を吐いた。

 その肩が、少し震えている。

 私は、カイルの腕に触れた。

「カイル……」

 カイルが、私を見る。

 その目には、複雑な感情が浮かんでいた。

「エリナ、済まない」

 私は、首を傾げる。

「何を謝るの?」

 カイルが、視線を落とした。

「君の元婚約者が……」

「こんなことをしていたなんて」

 私は、カイルの手を取る。

 強く、握りしめた。

「リオンのしたことは、リオンの責任です」

「カイルは、何も悪くありません」

 カイルが、私を見つめる。

 その目が、少し潤んでいた。

「エリナ……」

 私は、カイルを抱きしめた。

 その背中が、温かかった。

「私は、カイルの味方です」

「どんな時も、そばにいます」

 カイルが、私を抱きしめ返す。

 その腕が、強かった。

「ありがとう、エリナ」

 その声が、震えていた。

 私は、カイルの胸に顔を埋める。

 心臓の音が、聞こえてくる。

 早く打っていた。

 カイルも、動揺しているのだ。

 でも、私がいる。

 二人なら、乗り越えられる。

 しばらく、抱き合っていた。

 森の静けさが、私たちを包んでいた。

 鳥のさえずりが、遠くで聞こえる。

 風が、木々を揺らしていた。

 やがて、カイルが口を開いた。

「王都に戻り、この陰謀を暴く」

 私は、顔を上げる。

「私も一緒に行きます」

 カイルが、首を横に振った。

「いや、君はここにいてくれ」

 私は、眉をひそめる。

「どうして?」

 カイルが、私の頬に手を添えた。

「フェルゼンを守ってほしい」

「私が王都にいる間、ここを任せられるのは君だけだ」

 私は、反論しようとした。

 だが、カイルの目を見て、止まった。

 その目には、信頼が込められていた。

 私を、必要としてくれている。

 フェルゼンを、任せてくれている。

 私は、ゆっくりと頷いた。

「……分かりました」

「フェルゼンは、私が守ります」

 カイルが、微笑んだ。

 その笑みは、優しかった。

「ありがとう、エリナ」

「君がいれば、安心だ」

 私も、微笑む。

「カイル、気をつけて」

「リオンは、危険です」

 カイルが、私の額にキスをした。

 温かい唇の感触に、胸が高鳴る。

「必ず、戻ってくる」

「君のもとへ」

 私は、カイルを抱きしめた。

 その体温を、記憶に刻む。

「待っています」

 二人で、静かに抱き合った。

 別れの時が、近づいていた。

 その日の夕方、カイルは王都へ向けて出発した。

 領主館の門前で、私は見送った。

 馬車が、ゆっくりと動き出す。

 カイルが、馬車に乗り込む前に振り返った。

「エリナ、必ず戻る」

「そして、全てを終わらせる」

 その目には、揺るぎない決意があった。

 国王陛下の御前で、リオンの陰謀を白日の下に晒す。

 カイルと私を引き裂こうとした全ての企みを、打ち砕く。

 それが、カイルの覚悟だった。

 私は、力強く頷いた。

「信じています」

 カイルが、窓から手を振っていた。

 私も、手を振り返す。

 馬車が、遠ざかっていく。

 やがて、見えなくなった。

 私は、一人残された。

 胸に、不安が広がる。

 カイルは、大丈夫だろうか。

 リオンとの対決は、どうなるのか。

 マリアが、そばに来た。

「お嬢様、大丈夫ですか?」

 優しい声だった。

 私は、首を横に振る。

「大丈夫じゃないわ、マリア」

「でも、私はここで待つしかない」

 マリアが、私の肩に手を置いた。

「カイル様は、必ず戻ってこられます」

「お嬢様を、一人にはしません」

 その言葉が、少し心を軽くしてくれた。

 私は、領主館に戻る。

 執務室の椅子に、座った。

 机の上には、書類が積まれている。

 フェルゼンの運営、商会設立の計画。

 やるべきことは、山ほどあった。

 私は、ペンを取る。

 カイルが戻るまで、ここを守る。

 それが、私の役目だった。

 窓の外、夕日が沈んでいく。

 オレンジ色の空が、美しかった。

 だが、私の心は晴れなかった。

 カイル、無事でいて。

 心の中で、何度も祈った。

 王都では、嵐が待っていた。

 カイルは、リオンとの対決に向かう。

 陰謀を暴き、エリナを守るために。

 戦いの火蓋が、切って落とされようとしていた。



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【作者コメント】

この作品をお読みいただき、ありがとうございました。

感想やご意見などございましたら、お気軽にお寄せください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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