穢れた僕を綺麗な君が喰らう

ゆるふわ詩音

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悪魔

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 甘い、酸っぱい。

でも、あっさりしていて物足りない。

また齧ると、口の中に甘さと酸っぱさが広がる。


それはまるで……オリベみたいだ。


  「イチジクはあなた、シノちゃんでございますよ」

コハクさんいつの間にか僕を抱き、首の後ろに吸い付く。

コハクさんからほんのりと甘い香りがして、変な気持ちになる。

ヤバい、油断した。

「イチジクの甘露煮が出来るまでに、あなたはわたくしのものにいたします」

オリベより温かく、柔らかい身体に包まれている違和感を感じるのに逃れられない。

「悪魔の本領発揮、ってやつ……?」

何もされていないのに、息が荒くなる。

頑張れ、僕。

抑えながら言う僕をコハクさんはふふふと声を上げて嘲笑する。

僕の血を吸った事件の後、スオウさんは純粋な吸血鬼、あとはみんなハーフだと紹介してくれたんだ。

ラシャさんは人間と

アサギさんはインキュバスと

オリベはメデューサと

そして、コハクさんは……悪魔と。


   「わたくしは優しい方でございます……どちらかが純粋であったなら、あなたはすでにわたくしのものへと完璧にしておりましたのに」

いつの間に解いたのかわからないけど、下ろしたこげ茶の髪が僕の首をくすぐる。

メデューサではないのに、なんか髪の毛に掴まれている気がするんだ。

そして、僕の身体を手とクジャクのような羽で覆うコハクさん。

さすが、アドラメレク。

「イチジクの花は中にございます。赤く熟れてくると咲きますので下の方が膨らみ、白い液を出すのでございます」

このようにと、右の羽が僕の下半身の膨らみを撫でると、ジワリと黒い染みが出来る。

「んあッ、イ、アアッ……だアッ」

ツンツンと刺激されて快楽が頭の中を占めそうになる。

だけど、オリベを裏切りたくなかった僕は身をよじる。

負けちゃだめだ。

僕はオリベのものだから。


 「本当に嫌だと思っておりますか?」

これこそ悪魔の囁きだというように耳元で言うコハクさん。

「こんなに気持ち良さそうにして……いけない子でございます」

襟足から首の付け根まで縦に何度も舐めるコハクさんに少しずつ洗脳されていく。

僕は、オリベの。

ペチャペチャ

「あなたは悪い蛇に無理やり愛を教えこまれただけでございます」

水音がオリベの髪の蛇に血を吸われた時の音へと聞こえてきた。

「まだやり直せますよ。わたくしとならもっと穏やかな幸せを過ごしていけます。いや、過ごしましょう……共に」
 
 鼻歌を少し鳴らすコハク、さん。

"あなたとともに"と。

あれ……一緒にカラオケに行ったのはコハクとだったっけ?

僕を助けてくれたのは……コハクか。

「あなたとならどこまでも堕ちていきましょう、永遠に」

ああ、僕はーー。

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