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オリジナル
㊷狼男×へっぽこ吸血鬼(美形×平凡)
しおりを挟む平凡な見た目で、まともに食事にもありつけないへっぽこ吸血鬼(シュリ)。
何日も血を飲んでいなくてヘロッヘロ。
昼間は外には出られないし、夜には人通りが少なくなるし、どっかの家に入り込んで血を頂きたくても、招かれないと入れないし…………。
「うっうっ……お腹空いたよぉ」
メソメソしながらご飯を探して夜道を歩いていれば、公園のベンチに座って眠っている美人を発見する。
(これは……!)
無防備に寝ている姿を見て、チャンスだと思い近づくシュリ。
起きませんように……と祈りつつ、首筋に牙を立てようとしたら、目の前の美人が身動ぎする。
「っ!!」
「ン、うぅ……ん」
飛び退くように体を離すシュリ。するとすぐに美人の目が見開かれる。
「ん、キミは……」
「あ、えぇと!通りすがりの者だよッ!君がこんなところで眠っていたから心配でね!?」
まさに危害を加えようとしていた張本人が何を言うかというところだが、シュリはそう言ってこの場を凌ごうとする。
「あ、そうなんだ!ゴメンねありがとう!散歩していたら眠くなっちゃって、ここでついウトウトしてしまったんだ」
「そ、そうなのか。まぁ、夜は色々危険だからね、気をつけた方がいいよ。それじゃ……」
へっぽこ過ぎて魅了も上手く使えないシュリは、これ以上ここにいても血は貰えないと思いここから立ち去る事に。
(あーあ……。今日もダメだった……うぅ、ひもじい……)
泣きそうになりながら歩き出せば、その背に声を掛けられた。
「ねえ待って!」
「……うぇ?」
「キミにお礼がしたいんだ!良かったら家に来てくれない?」
「は……え?」
これはなんという奇跡か。自ら家に招いてくれるとは。
(家なら人目につかないし、いざとなったら眠ったところ狙えばワンチャン……)
礼などされる立場ではないが、降って湧いたチャンス。乗っからないはずはなかった。
「特に何もしてないけど、君がそう言うなら、お言葉に甘えて……」
「ありがとう!嬉しいよ!!」
ニコニコしながら言う美人(ロラン)。立ち上がって歩き出すため、その後について行く。
(この人、美人だけど意外とおっきいな……。男かな?まぁ、なんでもいいけど。美味しそうな匂いもしてるし。血が飲めるなら関係ない)
この後のことを期待しながら歩き、そうして一軒の家に辿り着く。
「ここだよ!さあ入って!」
「では、お邪魔します……」
「はーい!…………じゃあお礼、しようね♡」
「はへ?」
カプ。と後ろから優しく首筋に噛み付かれたシュリ。途端に体の力が抜けて座り込みそうになる。
「安心して。そんなに強く噛んでないし、あんた人間じゃないから、狼男にはならないよ」
「おおかみ、おとこ……?」
「そ。今からあんたを食べちゃう、わるーい狼男♡」
振り返った視線の先。ピンと立った獣の耳と、彼の背後で揺れるふさふさの尻尾。
ニンマリ笑ってシュリを見る彼の目は、獲物を狙う捕食者のそれだった。
ーーこうして綺麗な狼男に捕まったシュリ。食事をするどころか、自分が食べられてしまったわけで。
「なんでこうなったの!?」
「まあまあ。ほら、俺の血あげるから落ち着きな」
「っホント!?」
「(こいつちょれ~)」
なんだかんだと流されて絆されて。一生食事には困らなくなったのでした。
美人狼男×へっぽこ平凡吸血鬼。
CP名:ロラン×シュリ
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