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オリジナル
64.元ヤン×巻き込まれ(美形×平凡)
しおりを挟む中学時代めちゃめちゃヤンキーやってた美形(美樹也)。超強くて負け知らずだったけど、唯一勝てないのが、元レディース総長の姉。
その姉が『お前この学校行け』と言って見せてきたパンフはなんと、超有名な金持ち全寮制男子校であった。
美樹也の姉はドのつく腐女子。リアルBLが見たい!ということで、実の弟を生贄にすることにしたのだった。
「って、なんでだよ!そんなバカ高ぇガッコなんて行けるか!」
「行ける!アタシがどうにかしてやる!てかどうにでもなる!!」
「……どういうイミ?」
「ぶっちゃけると、アタシの今彼あの学園の理事長らしい。あいつアタシにベタ惚れで、結婚したいってずっと言ってて。お前入れてくれたらしてやってもいいって言ったら、即OKだったわ」
「はぁぁぁあ!?有り得ねーだろ!そんなん裏口入学ってやつじゃねーか!」
「うるっせぇ!つべこべ言わずお前はここに入んだよ!金はアタシが出す!」
「いや、そんな……おれ馬鹿だし無理じゃん」
「無理じゃねえやんだよ。カテキョ雇ってやっから今から猛勉強しな」
……こうして無理やり姉に勉強させられた美樹也。地頭は悪くなかったこともあり、きちんと試験に受かって学校に入学することに。
「ほんとは変装させて、The☆王道転入生!って感じでぶち込みたかったけど、入学式からそれじゃ意味無いもんな」
と言う姉の謎の言葉により、素顔のままで入学したのだが、これが間違いだった。
入学してからすぐに色んな人間に声をかけられまくるし、上級生からも絡まれるし、そのどれもが
『抱いてください』『抱いてやろうか』
といったゲスいものばかり。
男しかいないこの学校でそんなこと言われて気持ち悪くて、キレ散らかしたい美樹也。
けれど姉から『問題起こしたらコロす』と言われているので、それは出来ない。
イライラムカムカする美樹也。そんな彼の癒しというのが、唯一あった。
「たでーま」
「あ、おかえり美樹也くん」
扉を開ければいい匂いが鼻をくすぐる。奥から顔を覗かせたのは、寮の同室の平凡(楓奏)だった。
可もなく不可もなく。平々凡々な顔の楓奏は、料理上手でおっちょこちょいで、めちゃめちゃピュアなやつだった。
入寮当初、美樹也の顔や言葉遣いにビビって、距離を置いてた楓奏。けれどすぐに美樹也に慣れ、よく話をしたり、ご飯を作ってくれるようになった。
クラスの違う2人は、ほとんど寮でしか会話しない。それでも美樹也はその時間が何よりも楽しくて、癒しの時間になっていた。
「あ~、今日も飯うめー」
「ほんと?やった、嬉しいな~!いっぱい食べてね!」
「いつもあんがとな」
ワシワシ頭を撫でてやれば、擽ったそうにはにかむ楓奏。そんな顔もかわいいな~なんて思って。
だんだんこの学校の空気に毒されてきた気もしないでもない美樹也。
姉への定期連絡でも「その子、落としなよ」とか言われて、そんな世界もありか……?なんて思っていた頃、姉いわくの一大イベントが発生した。
「黒井姫乃っていうんだ!よろしくな!」
もっさり頭に瓶底メガネ……。
そう『王道転入生』という奴がやってきたらしい。
らしい、というのは楓奏から聞いたからである。その転入生は楓奏のクラスにやって来て、イケメンな生徒たちとすぐに仲良くなったとか。
すぐに姉に連絡すれば大喜び。観察しとけ!との指示を受け、めんどくさいと思いつつ了解した。
それから美樹也はすぐに、観察どころか接触することになる。
「お前かっこいいな!名前はなんて言うんだ!?」
癒しの空間に足を踏み入れたはずなのに、聞こえてきたのはキンキン声。
驚いて目を見開く美樹也に、駆け寄ってきたのは小汚い格好の男だった。
「あ、あの美樹也くん……」
「楓奏、コレなに?」
「その……」
「オイ!俺を無視すんなよ!!コレって失礼だろ!姫乃だっ!!」
「うっせ。うっぜ」
耳障りな声にイライラが募る美樹也。なんで部屋にコイツが?と思えば、目の前のもじゃもじゃが勝手に喋り出す。
いわく、楓奏と友達になったらしいもじゃもじゃ。『友達だからな!お前の部屋に行ってやるよ』と思ってやってきたのだとか。
「なるほど意味わからん。だからさっさと出ててけ」
「ハッ!?おい、ちょっ……!?」
「もう二度と来んなよー」
頭おかしい発言に考えることをやめた美樹也は、転入生をさっさと部屋から追い出して鍵を閉めた。しばらく扉を叩く音が聞こえていたが、無視していたらいつの間にか鳴り止んでいた。
「美樹也くん、ごめんね……?」
「あ?なんで楓奏が謝んの?お前悪くねーじゃん」
「う……。でも、勝手に部屋にあげちゃったし」
「いやアレは日本語通じねーだろ。気にしなくて良くね?それより今日の飯なに?」
「あ、うん!今日のご飯はね……」
いつも通りの癒し時間に戻ってホッとする2人。
こんな日々が続けばいいな~なんて思っていたけれど、そう上手くいかなかった。
翌日から美樹也は転入生に絡まれることになる。
休み時間はクラスに楓奏を連れてやってくるし、学校が終われば勝手に寮の部屋にやって来て、いつまでも居座ろうとする。どんなにキレて怒鳴っても響いた様子はなく、それどころか転入生に惚れているらしい生徒会や、その他のイケメンどもから美樹也は睨まれる始末。
「は~~うっぜ。アイツどうにかなんねーかな……キレそ」
不機嫌な顔を隠しもせず、イライラしっぱなしの美樹也。
ジュースでも買おうかと廊下を歩いていれば、誰かのあとをついていく楓奏の姿が見えた。
「楓奏?」
なんだか嫌な予感がして、楓奏が消えていった方へ向かう美樹也。
しばらくすると数人の声が聞こえるため、物陰からそっと覗くと、そこには数人に囲まれた楓奏がいた。
「あんたいったい何様?」
「なんで会長様たちの近くにいるわけ?」
「美樹也君にもまとわりついてるみたいだし、ほんと迷惑」
俯いたままの楓奏の肩が小さく震えているのがわかる。
(これって、制裁ってやつか!?)
姉からの教育により、いくらかBL用語にも詳しくなった美樹也。すぐに現状を理解した。
姉に連絡後、すぐにスマホで録画を始めて様子を伺っていれば、楓奏は小さな声で反論し始めた。
「僕は別に、まとわりついてなんてない。美樹也くんは、寮の同室なだけだし、会長たちの近くだって、無理やり黒井くんに連れて行かれてるだけだし……」
「はぁ?口答えすんの?会長様たちも、黒井も、あんたが勝手に付いてきてるって言ってるけど?」
「っ、そんなのうそ……!」
「嘘なんて言うはずないだろ!黙れよ!」
パシッと乾いた音がして、それから楓奏の体がフラついた。
(ーー!!)
「もういい。どうでもいいや。二度と会長様にも他の人達にも近付けないようにしてやるから」
楽しそうな声のあと、美樹也が隠れているのと別の方から数人の男たちが出てくる。
なにをしようとしてるのか、理解した瞬間美樹也は飛び出していた。
「お前ら何してんの」
「っ!?」
「美樹也君!?」
「なんでっ」
楓奏を取り囲んでいた面々が慌てる中、当の本人はゆっくりと顔を上げた。
「……美樹也、くん?」
美樹也を見るその瞳には、今にも溢れんばかりの涙の粒が。
「ーーテメェら、覚悟は出来てんだろうな」
優しく笑う顔が、今は悲しみに歪んでいる。美味しい料理を作ってくれる手が、恐怖に震えている。
そう思った瞬間、目の前が真っ赤になって、今すぐ楓奏を傷つけた奴らを潰してやろうとしたのだが。
「ーーそこまで」
凛とした声が響き渡った。
見ればそこには風紀委員が。
……こうして大事になることなく楓奏への制裁は終わったのだが。
「楓奏大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫……」
「ゴメンな、もっと早く俺が来てれば」
「そんな、美樹也くんは悪くないよ!悪いのは僕ーー」
「んなわけあるか。お前はなんにも悪くない。……痛かったよな」
「美樹也くん……ンン!?」
辛そうな顔をして、楓奏の叩かれた頬を撫でていた美樹也。
なんでそんな顔をするのかな、なんて思っていたら、ちゅ。と柔らかいものが頬に触れた。
「は、ぇ……?」
「守ってやれなくてゴメンな。可愛い顔に傷つけるとか、アイツらマジで許さねぇ」
「ふぁ!?あの?美樹也くん!?」
ちゅ、ちゅ。叩かれた頬から額、鼻の頭。色んなところにキスを落としまくる美樹也。
突然のことに涙も止まった楓奏は、アワアワするしかない。
「楓奏。これからは俺がずっと守ってやるからな。安心しろよ」
「~~!?」
最後にチュッと唇にキスされて。
キャパオーバーな楓奏はそのまま気を失ったのだった。
それから。
姉が正式に理事長と婚約したのをいい事に、美樹也は理事長の義弟と大声で言ってまわり、周りから手出しできないようにした。
風紀にも自ら入って、制裁しようとするヤツらや、諸悪の根源の転入生をとっちめ、楓奏が安心して過ごせる学園を作るために尽力しましたとさ!
『王道転入生はいいけどアンチはダメだわ。使える権力全部使って大切な子守りな』
制裁現場で送ったメールに返ってきた、姉の言葉である。
CP名:設楽美樹也×大井楓奏
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