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番外編
③
しおりを挟む「お前たちは色々とやってくれていたようだ。職務放棄、情報漏洩、親衛隊を使っての暴行……。どれをとっても最低の一言に尽きる」
「そんなこと、してな……」
「してない?そんなことは言わせないぞ。この二週間程で調べさせてもらったが、出るわ出るわ。よっぽど嫌われてるんだなお前たち」
「っ、」
「生徒会の仕事は自分たちの親衛隊に押し付けて遊び呆け、それゆえ本来なら生徒会内部だけで取り扱うべき情報が親衛隊伝いで外に漏れる。何のための生徒会か。今は引き継ぎ後だから、多少マシなのか、それとも次代もお前たちと同じでクズの集まりか。それは今後確認するとして。……お前ら親衛隊を使って生徒に暴行していたな?精神的、肉体的……そして性的に」
びく、とその時初めて稔が身じろいだ。男か宥めるように強く肩を抱くと、ホッと表情を緩めその体にすり寄っている。
「……ここにいる稔は、私のパートナーだ。彼からお前たちから受けた仕打ちについて全部聞いている」
その言葉に瑞希の動悸は激しくなった。
(そんな気はしてたけどやっぱり……ッ!やばいやばい…!っ、でも、直接は手を下してないから、もしかしたらーー)
全ては親衛隊がやった事、なにか詰められたらそう言って逃げようと、そう考えた。
「ーー特にお前、白戸瑞希。お前がしつこく稔に付き纏っていたそうだな?」
「や、ちが……っ!俺は稔の友達で……」
「黙れ。稔の名前を呼ぶな。稔は違うと否定し続けたのにお前がしつこかったと聞いている。だいたい、お前たちがいくらシラを切ろうが、稔に付けていた護衛が全部見ているから言い逃れなんて無理なんだがな」
「な……っ!?」
「色んな音声データもあるぞ?聞きたいか?」
「っ、や……めて、ください……」
「まぁどうでもいいんだが。……ところでだがお前たち、稔の前にも一人虐めてたそうだな?しかもソイツは死んだらしいじゃないか」
男の冷ややかな視線に、壇上の誰もが動くことが出来ない。
「可哀想になぁ。こんなクソみたいな奴らのせいで死ぬなんて。……稔にしたことも含めて、お前たちには地獄を見せてやる」
「っひ……」
先程の表情とは一変して笑顔を見せる。それに恐怖して声を漏らしたのは誰だったか。
静寂を裂くように誰かの携帯が鳴る。と、次々に着信音が響き出す。いずれも壇上に居る元生徒会メンバーのものだ。
そしてもちろん、瑞希の携帯も。
「…………もしもし」
『お前!何をしたんだ!?出資を打ち切ると先方から連絡があったぞ!』
「っ、そ…れは……」
『おまけに裁判を起こすと通達が来た……!本当に何をしたんだお前……!』
生まれてこの方親に怒られたことなどなかった。それが今、烈火のごとく怒声を浴びせられている。
視線を巡らせれば、元生徒会の皆も同じように携帯を手にしたまま項垂れていた。
「お前たちの家は終わりだよ。提携先からも切られ、今後融資してくれる所なんてない。それに散々暴力行為をしてきたからな。その証拠も順調に集まってる。それを使ってお前たち一人一人を法的に裁いてやるから覚悟しておけ。この学園にも、外にも、お前たちの居場所なんてない。せいぜい自分たちの犯した罪の重さを思い知るがいい」
その言葉に今朝の夢を思い出す。
(……この事だったんだな…)
あの光るモノたちは自分を許さないと言っていた。ステージから下を見下ろしても、自分たちを助けようとする人間も、擁護しようという声も何も無い。これが愚かな行いをした報いなのだろう。
(なんでこうなった……?俺は何を間違えた……?稔を襲うように仕向けたから?ターゲットに選んだのがマズかった?それとも……)
ズルズルと体育館から連れ出されながら考える。
「それとも、枢……?」
これから自分に降かかる不幸を嘆いても今更遅い。
彼らが稔に、そして枢にした仕打ちは消えはしないのだから。
この日学園から5名の退学者が出た。
卒業を間近に控えた者達だったが、その後社会で彼らの名を聞いた人間はいない。
そも彼らの実家が取り潰されたことにより、彼らの存在自体、いずれ忘れ去られることとなる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
番外編第一弾でした。
要望が多かった瑞希のざまぁ展開。こんな感じで良いのか????という不安しかないですが、ひとまず彼らに制裁を加えられて満足です。
☆精霊たちは未来に起こることを瑞希に伝えているだけで、彼が直接なにかしている訳じゃないです。聖なる生き物ですからね。枢のことが大好きなので、瑞希を怖がらせてやろう!くらいの感じです。
☆生徒会メンバーは名前出すのも面倒だったのでざっくりとした表記です。稔の恋人も同じく。
時期的に引き継ぎ後なので、「元」がいっぱいついてて読みにくかったかと思いますが、ご勘弁を。
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