嫌われ者は異世界で王弟殿下に愛される

希咲さき

文字の大きさ
34 / 50
番外編

精霊塔術師長

しおりを挟む

枢が就任する話。

          ♢♦︎♢

 水の三の月の十五日。燦燦と太陽が輝き、カラリと晴れた空が彼らを見つめるその日、枢たちは謁見の間にいた。
 集まっているのは諸大臣から貴族、そして精霊塔の者たちだった。

「ヘルベール・ルグラン、カナメ・ナカタニ、前へ」

 宰相の声に促され、二人は玉座に座るウィリアムの前へと歩み出た。

「ーーこれより、精霊塔術師長承継の義を行う」

 ……本日集められたのは、ヘルベールから枢へ、精霊塔術師長の座を引き継ぐためだった。

 雪祭り前にヘルベールから打診されたこの話を、考えさせて欲しいと保留にしていた枢。
 それが己の命が危機に晒されたり、副術師長であったエドガーの犯罪行為、幽閉などを経験し、ついに決心することが出来た。

 この大役を受けると伝えたのは自身の誕生日を過ぎた頃だったが、国王の祝い事が終わるまでは、とヘルベールがその任に就いていたのだ。
 それが今日、ようやく終わる。

 向かい合って互いに見つめると、ヘルベールは優しく微笑んだ。

「……カナメ様。決断してくださってありがとうございます。この日を迎えられたこと、本当に嬉しく思いますぞ」
「術師長様……。ッ、僕も嬉しいです。術師長様みたいに立派になれるか分かりませんが、精一杯頑張りますね」
「えぇ。精霊塔を、みんなをよろしくお願いいたしますね」
「……はいっ!!」

 短い言葉を交わすと、ヘルベールは己の首にかかっていたストラを外す。そしてふんわりと枢へかけた。

「貴方に、精霊の御加護があらんことを」

 言い終わると、ぽつりぽつりと拍手が鳴り、そして大きな音になる。

「ヘルベールよ、長い間お疲れだった。そしてカナメ。これから精霊塔をよろしく頼む」
「はいっ!!」

 ーーそうして引き継ぎは終わる。

 終了後、謁見の間にはウィリアムとミレイア、アシュレイと枢、そして護衛の二人が残った。

「なんだか、とても寂しくなりますね……」

 シュンとしたように枢が言うと、カラカラとヘルベールは笑う。

「こんな老いぼれ、いなくなった所でどうということはありますまい。それに、私は術師長の座をおりはしましたが、精霊魔法の使い手ではありますからな。一術師として、ちょこちょこ顔は出させて頂きます」
「ホントですか!? よかった~!」
「私も寂しくなりますわ。術師長様が来られる時には必ず教えてくださいましね? 必ず精霊塔に参りますから」
「はっはっは! こんなに慕っていただけて光栄ですなぁ」

 枢とミレイアにそう言われて、ヘルベールは嬉しそうにしている。その様子を残りの面々は微笑ましそうに見ていた。

 翌日から枢は毎日精霊塔へ通い、術師長として働くことになる。
 忙しくしているようだが、その表情は輝いており。楽しく日々を過ごしているその様子に、誰もが明るい気持ちになったという。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。