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番外編
精霊塔術師長
しおりを挟む枢が就任する話。
♢♦︎♢
水の三の月の十五日。燦燦と太陽が輝き、カラリと晴れた空が彼らを見つめるその日、枢たちは謁見の間にいた。
集まっているのは諸大臣から貴族、そして精霊塔の者たちだった。
「ヘルベール・ルグラン、カナメ・ナカタニ、前へ」
宰相の声に促され、二人は玉座に座るウィリアムの前へと歩み出た。
「ーーこれより、精霊塔術師長承継の義を行う」
……本日集められたのは、ヘルベールから枢へ、精霊塔術師長の座を引き継ぐためだった。
雪祭り前にヘルベールから打診されたこの話を、考えさせて欲しいと保留にしていた枢。
それが己の命が危機に晒されたり、副術師長であったエドガーの犯罪行為、幽閉などを経験し、ついに決心することが出来た。
この大役を受けると伝えたのは自身の誕生日を過ぎた頃だったが、国王の祝い事が終わるまでは、とヘルベールがその任に就いていたのだ。
それが今日、ようやく終わる。
向かい合って互いに見つめると、ヘルベールは優しく微笑んだ。
「……カナメ様。決断してくださってありがとうございます。この日を迎えられたこと、本当に嬉しく思いますぞ」
「術師長様……。ッ、僕も嬉しいです。術師長様みたいに立派になれるか分かりませんが、精一杯頑張りますね」
「えぇ。精霊塔を、みんなをよろしくお願いいたしますね」
「……はいっ!!」
短い言葉を交わすと、ヘルベールは己の首にかかっていたストラを外す。そしてふんわりと枢へかけた。
「貴方に、精霊の御加護があらんことを」
言い終わると、ぽつりぽつりと拍手が鳴り、そして大きな音になる。
「ヘルベールよ、長い間お疲れだった。そしてカナメ。これから精霊塔をよろしく頼む」
「はいっ!!」
ーーそうして引き継ぎは終わる。
終了後、謁見の間にはウィリアムとミレイア、アシュレイと枢、そして護衛の二人が残った。
「なんだか、とても寂しくなりますね……」
シュンとしたように枢が言うと、カラカラとヘルベールは笑う。
「こんな老いぼれ、いなくなった所でどうということはありますまい。それに、私は術師長の座をおりはしましたが、精霊魔法の使い手ではありますからな。一術師として、ちょこちょこ顔は出させて頂きます」
「ホントですか!? よかった~!」
「私も寂しくなりますわ。術師長様が来られる時には必ず教えてくださいましね? 必ず精霊塔に参りますから」
「はっはっは! こんなに慕っていただけて光栄ですなぁ」
枢とミレイアにそう言われて、ヘルベールは嬉しそうにしている。その様子を残りの面々は微笑ましそうに見ていた。
翌日から枢は毎日精霊塔へ通い、術師長として働くことになる。
忙しくしているようだが、その表情は輝いており。楽しく日々を過ごしているその様子に、誰もが明るい気持ちになったという。
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