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番外編
彼と騎士と侍従長④
しおりを挟む※スピンオフ④。彼らの出会いのお話。
♢♦︎♢
「……はぁ」
「どうしたんですか? ユリウスさん」
「っ、カナメ様!」
誰にも聞かれていないと思っていれば、すぐ後ろから声をかけられた。
今は浄化魔法を使うため、外に出ている枢の護衛をしているのだ。
そんな最中に大きなため息をつくとは……。
「も、申し訳ございません! 気が緩んでいたようです……っ」
「大丈夫ですよ、そんなに慌てなくて。もうほとんど浄化も終わってます」
「ッそうでございましたか……」
どれくらいボーッとしていたのか。あたりの穢れはほぼなくなっており、もう少しで作業は終わりそうだった。
「ねぇ、ユリウスさん? 近頃ため息が増えてますけど、なんか悩み事でもあるんですか?」
「……いえ、そういう訳では」
「原因は、ロイドさん?」
「ッ!!」
ビクッと肩が揺れる。視線を逸らしたユリウスを見て、それから枢は作業中の術師たちに声をかけた。
「みなさん、それが終わったら少し休憩にしましょう。時間を置いてから城には戻ります。どうぞ、ゆっくりしてください」
それに返事が聞こえると、枢はまたユリウスに向き直って声をかけた。
「ユリウスさん、ちょっとお話しましょう? 何があったか聞かせてください」
優しく微笑んだ彼に、ユリウスは眉を下げながらも従うのだった。
♢♦︎♢
ーーそれは四年前のこと。
騎士団に入団したばかりのユリウスは悩んでいた。
というのも騎士に憧れ志し、そして念願叶って入団したはいいが、自身は精霊魔法が使えることだった。
騎士に比べ術師の数は少ない。本来であればそちらに移動した方が、この国のためには良いのではないか、まだ若かったユリウスはそう思っていた。
とある夜、なかなか寝付けず外に出てぼーっとしていたら、不意に声をかけられた。
「君、そこで何してるんだい?」
「っ、わぁ!?」
飛び上がるほど驚いて振り返ると、見知らぬ男が立っていた。
「ひ、ぇ? あの、誰……」
「俺? 俺はこの城で侍従をやってる、ロイドっていうんだ」
「侍従……。王族の方々の身の回りのお世話をする方でしたか。失礼しました! 俺、っ私はユリウス・カルヴェインと申します」
年上で王族と近しい人物だと気づき、ユリウスは慌てて立ち上がる。頭を下げると、暖かいものが触れた。
「っ?」
「そんな畏まらなくていいよ、顔を上げて。それで君は、こんな夜更けにボーッと座って何をしてたのかな?」
ポンポンと二度頭を撫でられたのと、優しく掛けられた声に、ユリウスはゆっくりと顔を上げる。
そうして、出会ったばかりの男に悩みを相談し始めたのだった。
「ーーという感じで、俺はどうした方がいいんだろうって……」
「んー。そんなの、どっちも頑張るしかないんじゃない?」
「え……?」
話し終えたあと、返された言葉に目を瞬かせる。
「騎士になりたかったんだろ? だったらそれは手を抜けない、抜いちゃいけないことだ。でも、君は精霊魔法も使える。……それは使わなきゃもったいない。手を抜くなんて有り得ない。どちらも極めれば、君は戦場で活躍出来る」
「戦場で、活躍……」
「そうだ。攻守両方、さらには治癒まで出来る。オールマイティな存在なんだ君は」
「……オールマイティ」
そう言われて初めて、ユリウスは視界が開けた気がした。
『どちらか』ではなく『どちらも』。幼いがゆえに気づけないでいたことに気づかせてくれた。会って間もないのに、ユリウスの中でロイドは"頼れる大人"になっていた。
「っ、ありがとうございますロイドさん……!! 俺、頑張ります!」
「おー。元気だねぇ。いいよ、その意気」
薄闇の中でも分かるほど、表情を明るくしてキラキラとロイドを見つめてくる。
それに楽しそうに笑うと、ロイドはまた励ますように頭を撫でてくる。
「こ、子供じゃないんですから、やめてください……ッ」
「ん~? いや、可愛いなぁって」
「かわっ!?」
「あははは! ほら、悩みは解決したんだろ? 早く戻って寝なよ。仕事に差支えるよ」
「あっ! そうでした……! ホントに、こんな話に付き合ってもらってありがとうございました……!!」
ペコリと頭を下げると走って宿舎へと戻っていく。その背を、ロイドはじっと見ていた。
♢♦︎♢
「ーーそれから、度々話をするようになったんです。剣の鍛錬の休憩時間に、精霊魔法の練習後に、部屋に戻る前に……。見かけたら向こうから声をかけてくれたり、私から近寄ってみたりしてたんです」
懐かしむように、それでいて嬉しそうにユリウスは言った。
「仲良かったんですね、やっぱり」
「え? ぁ、っええ。そうですね」
枢の言葉にハッとすると、先程までの表情を消し、またなんとも言えない顔をした。
「……よく、してもらったと思います。休みが被れば、時々街に連れて行ってもくれましたし。でも……」
「でも?」
「……そうやってロイドさ……、っロイド殿の時間を、私が奪ってはいけないと気付いたんです」
「ユリウスさん……」
何かを耐えるような顔をしたユリウスに、枢は一瞬口を噤んでしまう。それを見逃さず、ユリウスはまくし立てた。
「さぁカナメ様! 大分休憩しましたよ。そろそろ城へ戻りましょう! 殿下が首を長くして待ってますよ」
「あ、ちょっと、ユリウスさんっ」
「術師のみなさん! そろそろ戻りましょう!!」
引き留めようとするが笑顔でいなして、ユリウスはそのまま帰り支度を始める。
ーー結局その後、ユリウスの口から何があったかは聞くことが出来なかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ということでスピンオフ四話目です。
まだ続きます。二人の出会いはこんな感じでしたが
何があったのか……。
彼らがどうなるのか、見守っていただけると嬉しいです。
ちなみに二人の現在の年齢は
ユリウス→22歳
ロイド→26歳
です。なので出会った当時は18歳と22歳。
今の枢とアシュレイと同じような
年齢の時に出会ってました。
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