【完結保証】落ちこぼれ巫女とタタリガミ

キリン

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「第十三話」ゲンさん

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 偽りの【水神】の神域、その内部にて。
 反響する波紋と水の音、それらを五感が事細かに知覚している側で、私は第六感とも言うべき新たな感覚によって違和感を覚えていた。

 (この水、霊力が込められてる)

 冷静に考えてみれば分かることだが、あの【水神】の力の全てをたかが蛇畜生が扱えるわけがないのだ。
 巨大な湖にいくら水が溜まっていても、人の手で掬えるのはほんの一口程度……それと同じ話だ。

 故にあの偽【水神】は最初から仕込んでいたのだろう。自分の霊力を水に染み込ませ、生物としての力量差を緩和するために。……まぁ、それでも本物の【水神】様には遠く及ばないだろうが。

 波紋。足元に張られた水面に伝わる、波。
 それは私を中心に広がっていくものではなかった。むしろそれは向こう側から響いてくるものであり、重なり重なり……それの大きさ、振動数はみるみるうちに近づいていく。

 ──侵入者だと思って来てみれば、先程の小娘ではないか。

 ちゃぽん、ちゃぽん。
 薄暗い向こう側からやってきたのは、あくまで人としての姿形を保っている偽の【水神】……否、今となってはただの簒奪者、蛇畜生に他ならない。
 
 ──折角”アレ”に逃がしてもらったというのに、わざわざ戻ってくるとは愚の骨頂だな。それともなんだ? 私を殺す算段でもついたのかな? うん???
 (……汚いな)

 今の私だからこそ分かる。眼の前にいるこいつは、神様には程遠いような歪んだ”流れ”の中にその存在と命を巡らせていたのだ。 

 元々はちゃんと蛇としての肉体と魂の形を保っていたのだろうが、最早あの化物は神でも動物でもましてや真っ当な命ですらないかもしれない。グッチャグチャの臓物を無理やりぬいぐるみに詰め込んで体裁だけ整えたような、見栄に見栄を張ったがゆえの醜悪がそこにある。

 ──おいおいどうした巫女よ、私を殺すのではなかったのか?

 錆び付いた鉾。神聖だったはずの”流水の鉾”を撫で回しながら、畜生はニマニマと私を舐るように見つめていた。

 ──なんだ、怖気づいたか? ああ、上質な恐怖は味が濃く実に美味だからな……いいぞ、この私をもっと畏怖するといい、今度こそお前を一呑みにしてやろう。
 「……最後に一つだけ、聞かせてほしい」

 どうしても、気になっていた。
 眼の前にいる異形の”流れ”の中には、なにか全く別のなにかが……しかも複数、二桁に収まるかどうかという”なにかたち”が互いに絡み合いながら巡っている。 

 あれは、【水神】とあの蛇の混ざりものだけではない。
 では、他になにを取り込んだのだろうか。 

 「あんた、いったい何人食ったの?」
 ──あぁ、なんだそんなことか。

 十人、二十人とかじゃ済まないような質量が腹に収まっている。
 どれだけの命を、人々を丸呑みにして、自分の肥やしにしていたんだ、こいつは。

 ──あー、あれだ。いっぱいだ。

 いっぱい。
 具体的な数ではなく、いっぱい。

 「……覚えて、ないんだね」
 ──奇妙なことを聞く女だな。神がいちいち飯の顔を覚えるとでも思ったか? くだらん、時間の無駄だ。

 神。
 いまこいつは、自らを一柱の神だと自称した。

 「そっか、そうだよね」

 生贄の、喰った人間の、もっともっと明日があったはずの人たちを喰っておいて。
 そのくせ、神として定められた責務責任の全てを放棄して、こいつは言った。

 くだらない。
 時間の無駄。
 感謝そのものに対して、仮にも感謝の権現とも言える神を自称する存在が、唾を吐き捨てたのだ。

 ──さて、問答は終わりだ。貪られる覚悟はできたか食料。お前を食い殺したあとに、あの村の連中も、人間なんぞに身を堕とした愚かな【水神】もすべて呑み込んでくれる。

 ああ、よかった。
 これでようやく、なんの気負いも躊躇いもなく、透明な心で刃を震える。

 ──死ねぇい女! この【水神】たる私に逆らったこと、私の腹の中で後悔しながら死ぬんだなぁ!!!!

 ”流水の鉾”が水面を裂くように振るわれる。水飛沫はそのまま弾丸として放たれ、前という前を右から左まで全てから迫りくる。
 そのどれもが回避不能。一撃一撃が当たれば死ぬというのを、私は刀の柄に手をかけながら理解した。

 「……」

 しかし、しかし。
 私は先程から落ち着いていた。冷静に、凪いだ水面のように、奇妙なほど物静かに。
 故に私は回避も迎撃も選ばず、ただ眼の前の畜生との間合いを歩いて詰めることに決定した。棒立ち、無防備どころではないガラ空きのまま。
 
 ──ははっ、血迷ったか! いいだろう、一瞬で肉団子になる、とい……い……? は?

 結論から言うと、即死級の威力であったはずの水飛沫は、私を削り殺す前に手前の水面に還っていったのだ。糸の切れた操り人形のごとく、急に。

 (単純な”流れ”だな……)

 刃を振るわず、体を動かさず、私はただ”流れ”を知覚していた。
 
 私と、空に漂うそれ以外を介して繋がる飛沫に込められた霊力。ただそこに、伝播するように霊力を流し、相殺しただけのことだ。……推進力も威力も、全ては霊力依存だった。故に水の弾丸雨はその効力を失った、それだけの話だ。

 ──なにをした……なにをしたのだ? 

 私はその滑稽な様子を笑わず、むしろ哀れだと思ってしまった。
 経緯はどうあれほぼ無尽蔵の力の源泉を得たにも関わらず、”流れ”を初めとした霊力の本質や基本を理解していないがゆえに、慢心し、客観視できず、こうやって無様に動揺する。

 もう、いい。──終わらせよう。
 私のゆったりとした歩みに激昂する道化は、再び無数の水撃を従えて私に突っ込んでくる。

 ──この私の、【水神】の”権能”をなにもせずに相殺するだと……? 認めぬ、認めぬ認められぬ認めてはいかぬっっ!!!!!

 それら全てが威力、範囲に関係なく私の間合いに入った途端にただの水として還っていく。それを見るたびに道化は怒り、同時に恐怖する……知らないという”未知”に包まれた私は、偽りの神の目からはなにに見えているのだろうか。
 
 ──わたしは、わたしはっ……私はぁ神なのだぁああああああああああああああああああ!!!!!!

 威厳もなにもかもをかなぐり捨てたのか、とうとう道化はその錆び付いた”流水の鉾”を両手でしっかりと握りしめたまま殴りかかってきたのだ。
 神としての余裕はなく、獣としての生存本能と野蛮さだけが、その目に血走っていた。

 すとん、と。
 振るった太刀筋は激流による水壁をも”流れ”ごと断ち切って、そのまま赤黒い鮮血が生首と一緒にぼしゃん、と落ちた。

 ──なん、なのだ、ぁぁ、ちくしょう、めが、めのまえ。
 「ねぇ」

 首だけになり、その儚い命をもうすぐ終えようとしている道化に、今一度問うてみる。

 「神様ごっこは楽しかった?」

 畜生の顔は強張ったまま、私を睨みつけながらゆっくりと灰にになっていった。
 偽りの神の肉体が完全に消滅する頃には、血みどろの水鏡に私の顔が綺麗に映り込んでいた。

 


 ◇



 死んだ蛇畜生の腹の中からは、沢山のしゃれこうべが出てきた。
 とにかく、人を沢山食い殺したのだろう。私は神域を出るやいなや、すぐに土を掘ってその人達を埋葬した。どうか安らかに、次は少しでも楽しい人生を送れるように祈りながら。

 「奇跡だべなぁ、ほんと」

 焚き火を見張るゲンさんの隣には、ボロボロではあるがまだ生きている少年がいた。
 体のあちこちが酸で爛れてはいたものの、その命の灯火はまだ明るく揺らめいている。か細い呼吸を繰り返しながら、いずれ目を覚ますだろう。

 「ええ、本当に……この子だけでも助けることができて良かったです」
 「”神隠シ”が流行っているとは聞いてたが、まっさかこんなに人が食われてるとはなぁ……南無南無」

 両手を合わせるゲンさんは、その印象に見合わないほど暗い顔をしていた。
 まぁ、無理もない。むしろこれぐらい責任を感じていてくれないと、私はこの人にも刃を振るわなくてはいけなかった……まぁ最も、そうさせないでいてくれたおかげで、私達は平和に同じ焚き火を囲めているのだが。

 ああ、そうだ。

 「これ、返します」
 「ん?」

 私が差し出したのは、一振りの錆び付いた鉾。
 あの蛇畜生が死んで消え失せても、この”流水の鉾”は消えることなく残っていたのだ。

 「……ありゃまぁ」

 参ったな、と。ゲンさんは頭をポリポリと掻きながら、凪いだ湖面を見つめる。

 「どっから気づいてたべ?」
 「霊力の扱いを教えてもらった時から、ですかね。それにあの神域に閉じ込められていた状況でカゲル……ああ、私の契約してる神様以外であんなことができるとしたらまぁ、そうだよなって」
 「……そうでっかぁ」

 ゲンさんはこっちを見なかった。ただ、湖面を眺めるばかりで私と目を合わせようとしなかった。……無論、これが責任逃れとか現実逃避の意味を持つものではないことは、彼が教えてくれた”流れ”から容易に判断できる。

 「ヒトと、ずぅっと寄り添って生きてきました」

 語る。それはもう”ゲンさん”としてではない者としての視点から。

 「生贄を泣く泣く捧げてくるあの人らに申し訳ねぇなぁって思いながら、しょうがねぇんだと言い聞かせて水を与えた。無力だと思っただよ、なーにが五行神の一角【水神】なんだって」

 だがなぁ。

 「ヒトは、強いべなぁ。与えられなくても、仕方なくても、それでも強く生きていこうと手を取り合うことができる……辛くても、苦しくても、いつも変わらず頑張ってんだ」
 「……だから、その輪に入りたかったんですか?」
 「ははは、まぁ……そんなとこだべ」

 笑っているだけで、全然楽しそうではなかった。
 むしろ、今にもそのまぶたから血の涙が溢れ出そうなほどに、ビキビキと血管と”流れ”が早まっていく。

 「愚かな神。ああ、あの蛇さんの言う通りだべ。……オラの身勝手のせいで、あんだけのヒトが死んじまった。この子も、心と体に残る傷を負ってしまった」

 ああ、あの畜生の言葉に賛同するのは些か苦いものがあるが、この一点だけに関しては同意せざるを得ない。
 ヒトを見つめ続け、ヒトに憧れ、自らに与えられた使命と力を放棄してまでその輪に加わろうとして……その輪の中の住人を大勢傷つけた。

 「なのにオラはぜーんぶ元通りにしてやることは、できねぇ。……オラは、無責任だ」

 身勝手で、簡単には許されないことだとは思う。──だが。

 「無責任なんかじゃないですよ」

 そこにだけは、言っておかねばならなかった。

 「あなたは確かに、身勝手に自分の力と地位を捨てて……そのせいで大勢の人を傷つけてしまった。でもあなたは、それを理解して反省したうえでもう一度責任を果たそうとしている、そうでしょう?」

 完全に悪くないとは言わない。でも、完全にこのヒトが悪いだなんて絶対に言わせない。
 ちゃんと罪の意識を持って。その上で、そんなに自分を責めないでほしい。

 「だから、受け取ってください。そしてもう一度、神としての責務を果たしてください」

 ああなんて、矛盾した願いをぶつけているんだろう。
 自覚してなお、私は鉾をずいっと差し出す。
 
 「……とても楽しい、人間ごっこだったべなぁ」

 手が、軽くなる。
 顔を上げるとそこには、懐かしむように鉾を握りしめたゲンさんがいた。──”流水の鉾”はみるみるうちにその錆を溶かしていき、神器としての本来の姿……黄金に輝くその全てを覚醒させていった。

 「ヒナタさん。最後に、あなたのような巫女に、”ヒト”として出逢えたこと、オラはこの先の百年千年後でも忘れないだよ」

 ありがとう。
 水面に響く水音が弾けたような感じがして、気がつけばゲンさんはどこにもいなかった。

 「……私も、あなたのような神様に出逢えたこと、忘れません」

 私は湖面を見つめる。感知できるだけの”流れ”のその先には、先程までは無かったはずのとても大きな大きな”なにか”が、湖面のど真ん中に佇んでいるように感じた。

 「さようなら、ゲンさん。……【水神】玄冥流水神様」

 焚き火を始末し、まだ寝ている息子さんを背負い、村へと帰る。
 ああ、さようなら。背中側から、そう聞こえた気がした。
 
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