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メーティの決断~その後~(最終話)
しおりを挟む「メーティ、本当にこれで良かったの?シリウスの事、愛していたんでしょう?メーティ?私はあなたがどんな決断をしても応援するわ。」
テティは、メーティが心配になり、優しく言った。
「お母さん……うん。私、シリウスが好き。でも、好きだけじゃどうにもならないんだよね?アルテ皇后が言っていた通り、寿命も人間とは違う……私の寿命はこの泉の寿命なんだよね?それに、私はもうこの泉から出られないんじゃなかったの??」
メーティは諦めたように、少し涙を浮かべながら言った。
「メーティ…そうね、私達の寿命はこの泉と同じ。確かに、この泉からも出られないわ。だけどね、この泉から出る方法が1つだけあるの。さっきアルテも言っていた禁忌…よ。
良く…聞いてね?
この泉の奥底にある、聖水が湧き出ている場所、その湧き出ている虹色の聖水をこの瓶で汲んできて、水面に上がってから一気に飲み干す。そうすると、あなたはシリウスと同じ人間になれるの。水中だけれど、この瓶には魔法がかけられているから、湧き出ているところにこの瓶を当てるだけで中に虹色の聖水だけが自然に入ってくるの。
けれど、この聖水を飲んでしまうと、あなたは二度と精霊には戻れない。寿命も人間と同じ。この泉にも入ることは出来ないわ。」
(そんな方法があったのね。禁忌を侵してまでって、そういう事…。2度と精霊に戻れないからなのね…この聖水を飲んでしまうと、お母さんとはまた離ればなれになっちゃうのかな…)
メーティは、どうしたら良いのか分からなくなっていた。2人ともメーティにとっては凄く大切な人…どちらかなんて選べる筈がない。
「シリウスと同じ人間に…でも、そうなるとお母さんはどうなるの?また、独りになっちゃう。」
メーティの顔はもう、涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「優しいメーティ…私の事は気にしなくて良いのよ。もう会えないと思っていたあなたに会えただけで十分。
シリウスもずっとあなたを探していたんだから。それに、メーティと私が会えたのはシリウスのお陰。シリウスが探してくれなかったら、メーティとずっと会えなかったと思うもの。」
そう言うと、メーティをぎゅっと抱き締めた。
「お母さん…本当に良いの?」
メーティは、母を見詰める。
「…良いのよ。…あなたが望むようにしなさい。」
テティもそんなメーティを愛おしそうに見詰めていた。
―数日後―
メーティは、泉の底に居た。虹色の聖水を汲むためだ。泉の底は暗くて良く見えなかったが、一際輝く場所があった。
行ってみると、岩と岩の間から虹色の聖水が湧き出ていた。
「これがお母さんが言ってた……」
そう呟くと、テティに言われた通り瓶の蓋を開け、湧き出ているところに当てた。すると、虹色の聖水だけが瓶の中に入ってきた。瓶が一杯になると溢れることなく、自然に止まった。
(…不思議…綺麗……)
その聖水はうっとりする程の虹色の光を放っていた。メーティは、瓶を持って水面に戻る。
水から顔をあげると、そこにはテティ、アルテ、シリウスが居た。テティが呼んでいたのだ。
「メーティ、お疲れ様。皆で、あなたが人間になるのを見届けようと思って。」
(もう、後戻りは出来ない。)
メーティは決心し、ぎゅっと母に抱きついた。
「お母さん…っ。これ…で、人間になるんだよね?そしてもう、戻れない…もう、抱き締めてもらうことも…っ。」
メーティは、また涙を流しながら言った。
「そう、もう…抱き締めることも出来ないわ。その分、いっぱいシリウスに愛してもらいなさい。幸せになるのよ。」
ね?と、テティも涙を浮かべてメーティをぎゅっと抱き締めた。
「お母さん、ありがとう。少しの間だけど、一緒に過ごせて本当に嬉しかった。…幸せになるね。」
と、聖水を一気に飲み干した。
すると、メーティの身体が中に浮き、眩い光がメーティを包み込んだ。そして…雫の花が消え、ゆっくりと地上に降りた。
「メーティ、良く頑張ったな…決断するのも辛かったよな?絶対に幸せにするからな。」
シリウスは思い切りメーティを抱き締めた。
「シリウス…ただいま…。」
メーティはそう呟くのが精一杯だった。
テティはその様子を見ながら、
「シリウス、あなたにメーティは任せたわよ。メーティ、あなたに加護がありますように…。離れてても、あなたを守ることは出来るわ。人間としてのメーティと、精霊として契約しましょう。それが今の私に出来る精一杯よ…。」
テティは、そう言うとメーティに向けて光を放つ。その光はメーティを包み込み、泉の花がメーティの額に浮き上がった。
「お母さん…これは…」
メーティは、テティの方を振り向く
「契約は成功したわ。額の泉の花がその印。いつもは見えないから、安心してね。あなたに力は宿ったはずよ。…それに、ここに来ればいつでも会えるわ。
さあ!もう行きなさい。ここに長く居て駄目…離れがたくなってしまうから…」
「お母さん…」
メーティは寂しそうに言った。
そんなメーティを見て、シリウスはメーティを抱き締め、テティの方を向き頭を下げた。
「テティ様、メーティの事、この命をかけて守り抜き、生涯愛し続けます。」
シリウスはテティにそう約束し、メーティも
「お母さん、きっと…きっと…絶対に幸せになるから見ててね!」
そうテティに向かって言い、
メーティ、シリウス、アルテ皇后の3人は泉を後にした。
―その後―
アルダバラ城へ戻り、盛大な結婚式が行われ、メーティも無事、国民に認められた。
地球でも社長夫人として世間に認められ、忙しい日々を過ごしていた。
そして、メーティのおなかには新しい命も宿っていた。
「…メーティ…」
「どうしたの?改まって。」
「メーティが俺の所に戻ってきてくれたことを思い出していたんだ。俺は幸せ者だな。愛するメーティと一緒に居られて…きっと…否、絶対、メーティのこの選択を後悔させたりしない。この幸せを守ってみせる。一生な。」
シリウスは、メーティのおなかを愛おしそうに撫で、メーティを優しく抱き締めた……
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