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秘密と彼女
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牢獄生活三日目。
牢獄に入れられてから三日間、クロウは自分の力がどんな効果があるのかを考え鉄格子を見つめたり壁を見て何かいい方法は無いかと考えていた。
そんな事をしていながらシーロの事も考えていた。
確かに自分は幼い頃からずっと一人でいた訳ではない。
幼いながらにも友と呼べる人は居た。花売りの娘マオ、鍛冶屋の息子ロックス他にも何人も居た。その中で唯一他の村から移住して来た男の子とはいつも一緒に居た。
(名前…何だっけ…?そう言えば聞いてなかったな。)
久しぶりに思い出す昔の事。
そんな過去を振り返って居た時、小さな声がした。
声のした方を向くと誰も居ない。
クロウは耳をよく澄まして聞いた。
「確か…ここに…」
声の主は、城に棲みつくネズミだった。まさか動物の声が聞こえるとは…と驚いたクロウは、驚きつつも問いかけた。
「あなた、何してるの?」
「へ?きゃぁぁぁぁ!?たっ食べないでっ!!」
「私はそんなつもりないわ。安心して少し聞きたい事があるだけなの。」
「きっ聞きたい…こと?ですか?」
「えぇ。あなた此処に住んでいるんでしょ?ならここから出る方法を知らないかしら?」
「え…えっと…」
ネズミは、必死に考えた。間違った事を言ってしまったら食べられると思い必死に考えた。
ぐぅぅぅ…
ネズミから小さな空腹の音がした。ネズミは顔を伏せブルブルと震えていた。クロウは毎日鉄格子前に置かれている食事をネズミに渡した。ネズミは面喰らった様子だったかクロウから与えられた食事を涙ながらに食べた。後からネズミから聞いたがこの時まで何も食べて居なかったらしい。
ネズミは、食事のお礼にとクロウの牢を自慢の歯と爪で開けた。
「ありがとう。あなたのおかげで出られたわ。あなた名前は?」
「いえいえ、私こそ助かりました!私の名前はチユです。」
「ありがとうチユ。それじゃぁさよなら。」
ネズミのチユに別れを言い、その場を離れようとするとクロウの肩にチユが乗って来た。
「ちょっどうしたのよ?」
「もう少し私に出来ることはありませんか!お役に立ちたいのです。」
クロウはチユの申し出を断ろうと考えたがチユの目があまりに真っ直ぐだった為チユに騎士団長の居る場所に行き情報を聞き出して欲しいと頼んだ。チユは、任せて下さいと言いシーロが行った方と同じ方向に向かって走って行った。
(多分ネズミなら、見つからずに済むはず。)
「私は脱獄に専念しなきゃね。ギンの言ってた事も気になるけれど、今は見つからずに」
城の中は、剣や槍を持った騎士がいる。そう思い出来るだけコソコソと移動する。
時には、騎士に見つからないように他人の部屋に入り身を潜めたり、あえて別方向に物を投げ入れ音を立てて気配を消した。
そんなこんなでようやく、門付近まで辿り着く事が出来た…がしかし門には一人の騎士が立って居た。
「ギン…」
「クロウ。やっぱり出られたのですね。僕は出来ればあなたと戦いたくありません。」
「私もよギン。でも…」
「えぇ、分かっています。あなたは止める事が出来ない。あなたと旅をしてよく実感しています。」
「…」
「クロウ、まだ他の隊にはあなたが此処に来た事を言ってません。ですから少しだけ話しを聞いて下さい。僕は何の為に此処に居るのか、クロウに嘘はつきたくないですから。」
「…分かったわ。聞いても私は変わらないだろうけど聞かせて。私と離れてから何があったのかを。」
時は3日前に遡る。
クロウが牢に入れられてからシーロはある人から呼ばれて応接間に居た。
「今更何の用ですか?」
そこに居たのは、長いローブを身に纏った魔法使いのザクロスだった。
魔法界では一・二を争う程の力と知恵を持つ女魔法使いだった。騎士団は彼女の全面的なバックアップの元クロウを捕獲したのだ。
「よぅ、来たか。待ちくたびれたわい。」
「用件は?」
「つれんの、面白味が無いぞ?お前。何か余裕がなさそうな顔をして居るなぁ~あぁ、そうか!幼い頃から好意を持って居たクロを捕獲した事が辛かったのかっ、こりゃ傑作じゃな」
「…うるさい。用件を早く言えよ」
「おぉ怖い怖い。…3日後クロウが脱獄する。魔法界の魔術師は皆総出で脱獄者を探し今度は魔法国で捕獲し直ちに研究を開始しこちらで処分する。それを伝えに来たんじゃ」
「クロウは私達騎士団で管理する筈じゃなかったんですかっ!魔法国に何か渡せないと…だから私とギンはっ」
ザクロスは、くつくつと笑い出した。
「あんたは昔から変わらないのね。全くただの人間風情がっ誰が手を貸してあげてたと思ってんのか!!貴様ら人間が奴を生かして居るから上から討伐対象にされたんだろうが?!」
元は、騎士団で捕獲し管理をする。そしてもし、人間社会が彼女を利用しようとした時には彼女を殺すという約束を魔術師とした。魔法国は、彼女の存在をそれだけ恐れて居る。
この事を知って居るのは、シーロとザクロスとギンの三名だ。
”社会への変化をもたらすだろう異物を処理する。”
それを回避する。その為にクロウを捕らえたというのに…
「分かった。僕が彼女を止める。お前達には渡さない!彼女は騎士団が守る。」
「けっ、失敗は許されんからな?失敗したら魔法国が彼女を預かり始末するからな?心しておけっ」
そう言い残しザクロスは、異空間を広げ魔法国へ帰って行った。
(時間は無いのか…でもやらなくては…彼女の為に)
「誰か居ないか!!ギンを連れて来てくれ、今すぐ」
続く
牢獄に入れられてから三日間、クロウは自分の力がどんな効果があるのかを考え鉄格子を見つめたり壁を見て何かいい方法は無いかと考えていた。
そんな事をしていながらシーロの事も考えていた。
確かに自分は幼い頃からずっと一人でいた訳ではない。
幼いながらにも友と呼べる人は居た。花売りの娘マオ、鍛冶屋の息子ロックス他にも何人も居た。その中で唯一他の村から移住して来た男の子とはいつも一緒に居た。
(名前…何だっけ…?そう言えば聞いてなかったな。)
久しぶりに思い出す昔の事。
そんな過去を振り返って居た時、小さな声がした。
声のした方を向くと誰も居ない。
クロウは耳をよく澄まして聞いた。
「確か…ここに…」
声の主は、城に棲みつくネズミだった。まさか動物の声が聞こえるとは…と驚いたクロウは、驚きつつも問いかけた。
「あなた、何してるの?」
「へ?きゃぁぁぁぁ!?たっ食べないでっ!!」
「私はそんなつもりないわ。安心して少し聞きたい事があるだけなの。」
「きっ聞きたい…こと?ですか?」
「えぇ。あなた此処に住んでいるんでしょ?ならここから出る方法を知らないかしら?」
「え…えっと…」
ネズミは、必死に考えた。間違った事を言ってしまったら食べられると思い必死に考えた。
ぐぅぅぅ…
ネズミから小さな空腹の音がした。ネズミは顔を伏せブルブルと震えていた。クロウは毎日鉄格子前に置かれている食事をネズミに渡した。ネズミは面喰らった様子だったかクロウから与えられた食事を涙ながらに食べた。後からネズミから聞いたがこの時まで何も食べて居なかったらしい。
ネズミは、食事のお礼にとクロウの牢を自慢の歯と爪で開けた。
「ありがとう。あなたのおかげで出られたわ。あなた名前は?」
「いえいえ、私こそ助かりました!私の名前はチユです。」
「ありがとうチユ。それじゃぁさよなら。」
ネズミのチユに別れを言い、その場を離れようとするとクロウの肩にチユが乗って来た。
「ちょっどうしたのよ?」
「もう少し私に出来ることはありませんか!お役に立ちたいのです。」
クロウはチユの申し出を断ろうと考えたがチユの目があまりに真っ直ぐだった為チユに騎士団長の居る場所に行き情報を聞き出して欲しいと頼んだ。チユは、任せて下さいと言いシーロが行った方と同じ方向に向かって走って行った。
(多分ネズミなら、見つからずに済むはず。)
「私は脱獄に専念しなきゃね。ギンの言ってた事も気になるけれど、今は見つからずに」
城の中は、剣や槍を持った騎士がいる。そう思い出来るだけコソコソと移動する。
時には、騎士に見つからないように他人の部屋に入り身を潜めたり、あえて別方向に物を投げ入れ音を立てて気配を消した。
そんなこんなでようやく、門付近まで辿り着く事が出来た…がしかし門には一人の騎士が立って居た。
「ギン…」
「クロウ。やっぱり出られたのですね。僕は出来ればあなたと戦いたくありません。」
「私もよギン。でも…」
「えぇ、分かっています。あなたは止める事が出来ない。あなたと旅をしてよく実感しています。」
「…」
「クロウ、まだ他の隊にはあなたが此処に来た事を言ってません。ですから少しだけ話しを聞いて下さい。僕は何の為に此処に居るのか、クロウに嘘はつきたくないですから。」
「…分かったわ。聞いても私は変わらないだろうけど聞かせて。私と離れてから何があったのかを。」
時は3日前に遡る。
クロウが牢に入れられてからシーロはある人から呼ばれて応接間に居た。
「今更何の用ですか?」
そこに居たのは、長いローブを身に纏った魔法使いのザクロスだった。
魔法界では一・二を争う程の力と知恵を持つ女魔法使いだった。騎士団は彼女の全面的なバックアップの元クロウを捕獲したのだ。
「よぅ、来たか。待ちくたびれたわい。」
「用件は?」
「つれんの、面白味が無いぞ?お前。何か余裕がなさそうな顔をして居るなぁ~あぁ、そうか!幼い頃から好意を持って居たクロを捕獲した事が辛かったのかっ、こりゃ傑作じゃな」
「…うるさい。用件を早く言えよ」
「おぉ怖い怖い。…3日後クロウが脱獄する。魔法界の魔術師は皆総出で脱獄者を探し今度は魔法国で捕獲し直ちに研究を開始しこちらで処分する。それを伝えに来たんじゃ」
「クロウは私達騎士団で管理する筈じゃなかったんですかっ!魔法国に何か渡せないと…だから私とギンはっ」
ザクロスは、くつくつと笑い出した。
「あんたは昔から変わらないのね。全くただの人間風情がっ誰が手を貸してあげてたと思ってんのか!!貴様ら人間が奴を生かして居るから上から討伐対象にされたんだろうが?!」
元は、騎士団で捕獲し管理をする。そしてもし、人間社会が彼女を利用しようとした時には彼女を殺すという約束を魔術師とした。魔法国は、彼女の存在をそれだけ恐れて居る。
この事を知って居るのは、シーロとザクロスとギンの三名だ。
”社会への変化をもたらすだろう異物を処理する。”
それを回避する。その為にクロウを捕らえたというのに…
「分かった。僕が彼女を止める。お前達には渡さない!彼女は騎士団が守る。」
「けっ、失敗は許されんからな?失敗したら魔法国が彼女を預かり始末するからな?心しておけっ」
そう言い残しザクロスは、異空間を広げ魔法国へ帰って行った。
(時間は無いのか…でもやらなくては…彼女の為に)
「誰か居ないか!!ギンを連れて来てくれ、今すぐ」
続く
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