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裏切りと裏切り
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「おはよう、クロウ。気分はどうだい?やはり、君は獣なんだね。両眼が紅く光っている。」
声に驚き目を覚ます。目の前には冷たい鉄格子に暗い闇の空間。
クロウの方を見下ろす奴だけがいるこの状況。こいつは確か騎士団の…なら此処は…そうか…
(…ギンに売られたのね。あの子は大丈夫かしら)
暗い中にあるベッドの端にもたれ片膝を抱える。やはり裏切りは怖く苦しいものだ。
身を抱き寄せる。すると…懐かしい匂いと足音がした。
クロウの耳と尻尾がピンと立つ。
「こらこら、出て来てはいけない。」
「いえ、僕が悪いので」
「ギン…なの?」
クロウは、不安げに顔を挙げる。そして矢が放たれた様に鉄格子に駆け寄る。
影に目を向け上から下までくまなく見る。目の前には、ギンが立っていた。彼は、無事だったらしい。表情はやや暗いが身体には怪我もなく無事の様だ。
ギンと出会って一緒にいた長く時間は無いが…クロウは自分が狙われたことよりギンの方が心配になっていた。ギンをもう一人の家族の様に感じていた。だからこそ…
「ごめんなさいクロウ。僕が…ごめん」
「いいわよ。もう気にしないで。」
「っでも!!」
「そうですよ。ギン。恨むなら私を恨む筈ですよ。」
クロウの尾が膨らむ。こいつはヤバイと本能が察知した、よって臨戦態勢に入ったのだ。
だからこそ、クロウは冷たく言った。
「あんたは、騎士団長のシーロ」
「はい。お久しぶりです。クロウさん。いやクロと呼んだ方がよろしいでしょうか?」
「あんた、殆ど初対面に向かって愛称を呼ぶなんて、なんなのよ!」
「残念ながら貴方とは、知り合いですよ。覚えていませんか?シロと呼ばれて居ましたね。お互い白黒で仲良いのか悪いのか?本当にあの頃が懐かしいです。」
「あんた!何勝手に言ってっ!!」
クロウが飛びかかろうとしたが両手足を鎖で繋がれ身動きが取れない。そんなシーロの元に騎士の一人が近づいて来た。
「隊長…」
「どうかしましたか?」
「それが…あの方が呼んでおられます。今すぐ応接間へ」
「あぁ、分かった。クロ、また後で続きを。ギン」
「待ちなさいっ!!あんたが何もんなのかは知らない。知りたくも無い!でもギンを巻き込むなら私が許さないっ!」
シーロは、クロウに笑顔を見せ騎士と共に姿を消した。
すると、鉄格子越しに見つめるギンの表情が変わった。ギンは、小さな声でシーロに気づかれないように言った。
「クロウ…僕は僕のやり方でクロウを助けるから…今は此処にいて…じゃぁ、また来るよ」
去り際に聞こえた声は、蚊の鳴くような声…
”無事で居て”
(それは…私の言葉だよギン。)
ガシャン…
牢屋に鍵が掛けられた。もう逃げられない。完璧に捕まってしまった。
私に出来ることは…何か考えなくては。何もしないでギンに頼るわけにはいけない。
クロウは、人を苦しめる存在だ。獣の力…これは言わばクロウだけの呪いの様な物だ。これにギンを巻き込む訳にはいかない。
ラウは、クロウを守る為にクロウと一つになった。祖母は、村人たちを守る為に孫であるクロウを売った。母さま達は、幼いクロウを守る為に犠牲になった。
皆んながそれぞれの守る物の為に嘘も裏切りも重ねた。そうしなくちゃ守れない物がある。だから今度は私が…私がギンを守るんだ。
希望ある者を守る。…その為には先ず此処を抜け出さなくてはいけない。
暗い牢屋で一人策を練るクロウであった。
続く
声に驚き目を覚ます。目の前には冷たい鉄格子に暗い闇の空間。
クロウの方を見下ろす奴だけがいるこの状況。こいつは確か騎士団の…なら此処は…そうか…
(…ギンに売られたのね。あの子は大丈夫かしら)
暗い中にあるベッドの端にもたれ片膝を抱える。やはり裏切りは怖く苦しいものだ。
身を抱き寄せる。すると…懐かしい匂いと足音がした。
クロウの耳と尻尾がピンと立つ。
「こらこら、出て来てはいけない。」
「いえ、僕が悪いので」
「ギン…なの?」
クロウは、不安げに顔を挙げる。そして矢が放たれた様に鉄格子に駆け寄る。
影に目を向け上から下までくまなく見る。目の前には、ギンが立っていた。彼は、無事だったらしい。表情はやや暗いが身体には怪我もなく無事の様だ。
ギンと出会って一緒にいた長く時間は無いが…クロウは自分が狙われたことよりギンの方が心配になっていた。ギンをもう一人の家族の様に感じていた。だからこそ…
「ごめんなさいクロウ。僕が…ごめん」
「いいわよ。もう気にしないで。」
「っでも!!」
「そうですよ。ギン。恨むなら私を恨む筈ですよ。」
クロウの尾が膨らむ。こいつはヤバイと本能が察知した、よって臨戦態勢に入ったのだ。
だからこそ、クロウは冷たく言った。
「あんたは、騎士団長のシーロ」
「はい。お久しぶりです。クロウさん。いやクロと呼んだ方がよろしいでしょうか?」
「あんた、殆ど初対面に向かって愛称を呼ぶなんて、なんなのよ!」
「残念ながら貴方とは、知り合いですよ。覚えていませんか?シロと呼ばれて居ましたね。お互い白黒で仲良いのか悪いのか?本当にあの頃が懐かしいです。」
「あんた!何勝手に言ってっ!!」
クロウが飛びかかろうとしたが両手足を鎖で繋がれ身動きが取れない。そんなシーロの元に騎士の一人が近づいて来た。
「隊長…」
「どうかしましたか?」
「それが…あの方が呼んでおられます。今すぐ応接間へ」
「あぁ、分かった。クロ、また後で続きを。ギン」
「待ちなさいっ!!あんたが何もんなのかは知らない。知りたくも無い!でもギンを巻き込むなら私が許さないっ!」
シーロは、クロウに笑顔を見せ騎士と共に姿を消した。
すると、鉄格子越しに見つめるギンの表情が変わった。ギンは、小さな声でシーロに気づかれないように言った。
「クロウ…僕は僕のやり方でクロウを助けるから…今は此処にいて…じゃぁ、また来るよ」
去り際に聞こえた声は、蚊の鳴くような声…
”無事で居て”
(それは…私の言葉だよギン。)
ガシャン…
牢屋に鍵が掛けられた。もう逃げられない。完璧に捕まってしまった。
私に出来ることは…何か考えなくては。何もしないでギンに頼るわけにはいけない。
クロウは、人を苦しめる存在だ。獣の力…これは言わばクロウだけの呪いの様な物だ。これにギンを巻き込む訳にはいかない。
ラウは、クロウを守る為にクロウと一つになった。祖母は、村人たちを守る為に孫であるクロウを売った。母さま達は、幼いクロウを守る為に犠牲になった。
皆んながそれぞれの守る物の為に嘘も裏切りも重ねた。そうしなくちゃ守れない物がある。だから今度は私が…私がギンを守るんだ。
希望ある者を守る。…その為には先ず此処を抜け出さなくてはいけない。
暗い牢屋で一人策を練るクロウであった。
続く
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