エイトゲヘナ~出会って秒で食べられました、けど今は凄く幸せです~

中谷 獏天

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203 施設。

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 ココには幾つかの施設があります。
 女の子だけの施設、男の子だけの施設、それと男女混合の施設です。

『お邪魔します、私はヒナです、この子を連れて来ました』

 アンバーの友人は、男女混合の施設へ入れられる事になっていると聞いたので、付き添いも兼ねて初めて来ましたが。
 あまり職員や子供は居ない様に見えます。

《あぁ、もしかして、リコリスちゃんかしら》

「はい」
《合わないご家庭でさぞ大変だったでしょう、もう大丈夫。ココのルールはとっても簡単だから、ソレに従うだけで大丈夫よ》
『私も見学して良いでしょうか』

《勿論、どうぞ》
『ありがとうございます、ではご説明を宜しくお願いします』

《はい》

 1 体質に合わせ決められた消灯時間、起床時間を守る事。
 2 食事も同様に決められた時間内に摂る事、尚、体調不良の場合や事前に不必要な場合は申請する事。
 3 帰宅時間を守る事。

 上記が守られなかった場合、最悪は転寮、若しくは退寮になるそうです。

『お風呂などはどうなりますか』
《使用する湯量等は正確には決められてはいませんが、明らかな無駄遣い、常軌を逸した使用方法は約束が守られなかった場合と同等の対処になりますね》

『何回破ると転寮ですか』
《そこはお教え出来無いんです、後何回は破れるな、だなんて思う子を生み出すワケにはいきませんから》

『他に何か注意すべき事は有りますか』
《家族との共同生活ですから、相応の配慮をお願いしています。意地悪は勿論、悪事の見て見ぬフリ、手助けをしない。なんて事は、絶対に、許されませんから》

 反応し、泣いています。
 多分、何度も繰り返し行ったのでしょう。

『退寮だとどうなりますか』
《社会とは共同生活が基本です、出来無いとなれば、オセアニア送りか独立ですね》

 オセアニアは他国の真ん中に、超自由主義国家として存在しています。
 法律も宗教も何も無い、とても自由な場所です。

『独立の方法を教えて下さい』
《後見人となって頂ける方が居れば、直ぐに申請出来ますよ》

『後見人への審査は有りますか』
《はい、勿論、虐げられない為にも申請後は先ず審査が入ります》

『里親制度はどうなっていますか』
《ソチラにも審査が有りますし、望まれるのでしたら申請致しますが、申請なさいますか?》

 まだ、戻れると思っているのでしょうか。

「分かりません」
《まだ初日ですからね、いつでも申請が可能ですから言って下さい》
『だそうです、では、失礼します』

 アンバーやご家族に報告すべきか分からなかったので、今回は家に帰る事にしました。
 まだ私には分からない事が多いです。



《おぉ、お帰り、早かったな》
『アンバーの友人に介入しようと思ったのですが、もしかしたら遅過ぎたのかも知れません』

 どちらかと言うと、落ち込んでるのか。

《どうした》
『家族では無くなりました、今は施設に居ます』

《そうか》
『リコリスと言うそうです、彼女の父親はzmoraズモラ、精霊種の夢魔属です』

《ほう》
『ズモラには復讐者の面が有ります、不当な扱いをされた者が成る、ともされています。ですので、彼女とは合わない、最悪は傷付けてしまうと判断したのだと思います』

《つまり、最悪は傷付けてしまうから、とは言わなかったワケだな》
『はい。ズモラは復讐者でもあり、ズモラは欲深く執着する、だがズモラの要求に従わねば去る事になる。ズモラを部屋に入れない術も、閉じ込めたり追い出したり出来る術も有ります』

《離れる他に無かったんだな》

『ですが、彼女は分かっていた筈なのに、愚行を続け期限切れとなりました。優しくない者には優しくない、間違いを認めない者を認めない事を知っていた筈だ、そう言われていました』

《たった1つの出来事だけじゃ無いんだろ》
『はい、ですが改めて目の前にすると、もう少し何か出来たのでは無いかと答えを探してしまいます』

《ヒナが気付いて直ぐに、次の日に話し合いに行ってたら、何か変わったと思うか?》

『いいえ、きっと話し合いから逃げられて終わりだったと思います。そしてアンバーと話し合ってから、そこで、運命が変わっていたかどうかだと思います』
《ヒナは今、親とは関われなくなったばかりの相手と関わった、多分悲しみに影響されてるんじゃないか》

『仕方の無い事だと理解しているのに、何かが引っ掛かります』

 あのお嬢さん、見た目じゃ何も分からないが。
 この感じからしても、精霊の影響が薄いか、ほぼ無かったんだろうな。

《それはヒナが賢くて、その、リコリスって子が少し幼く愚かだからだ。ヒナなら気付けた、それこそアンバー嬢やヴァイオレット嬢でも、そもそもそんな間違いは起こさないんじゃないか》

『はい』
《けど、その子は問題を起こした。我慢するのと、単に見過ごす事、何かする勇気と結果として何かを成すのは違うだろ。気付かないならまだしも、敢えて見逃した、何かを成さなかったんじゃないか》

『はい』

 あぁ、出来無かったんじゃない、しなかった側か。

《出来無かった、しなかった、違いは大きい》
『はい』

 まだ納得は難しいか。
 だよな、保身の為に関わらない、それが分からない側だしな。

《数字で言うなら、するのとしないのは、0と1の違いでしか無い。けど、もし価値なら、しかも変動型の価値ならどうなる》

『大きく損をしたり、小さく得をしたりします』
《そう、そのリコリス嬢は多分、小さい得だと思った。周りがどんなに言っても、どんなに親が言い聞かせても、その時の自分の価値観では得を取ったと思ってたのは何故か》

『はい』
《親は万能でも神でも無い、その事を良く理解してた、けど理解を超えて舐めてたんだろうな》

『私はレンズを舐めてません』
《おう、尊敬だとかの念が有る。けど、その子からは、もしかしたら感じ取れなかったんだろうな》

『尋ねてみても良いんでしょうか』
《そこを尋ねてからだな、昼寝は、無理か》

『はい、行ってきます』
《おう》

 態々、不安で戻って来たんだな。
 可愛いと言うか、本当に偉いなヒナは。



《あぁ、いらっしゃい、どうしたのかしら?》
『施設に無事に入った報告もですが、リコリスの事をお尋ねしても宜しいでしょうか』

 次代の女王だからこそ、では無い。
 そして、この子が居たからこそ、あの子は大人しく施設へ向かってくれたのでしょう。

『構わない』
《そうね、どうぞ》
『ありがとうございます。私には知識の欠けが有ります、リコリスはお2人を舐めていましたか、尊敬や敬いは有ったのでしょうか』

『いいや、年々薄くなっていった』
《そうね、少しずつ、けれども大人が気付くには十分だった》
『それは何故だと思いますか』

『親は神でも万能でも無い、だが、遥かに経験と知識を持っている』
《その事に気付けなかった、周囲と馴染む為、その事実を無視し他者に阿り過ぎてしまった》
『それは何故だと思いますか』

『血の混ざりが悪かったのだろう、アレはあまりに人種らしい人種、その性根と産まれだった』
《私達だけではなく、大人全てに対して、何処か斜に構えていたの》
『それは何故だと思いますか』

『分からない事への恥、不安、それら焦燥感が故だろう』
《私が自尊心を育て過ぎてしまったのかも知れない、間違いを直ぐに認める素直さ、尋ねる事への抵抗感を。私が、もう少し》

『いや、アレはどうにもならなかった』
《でも、元は私が求めた子、本当にごめんなさい》

 親子の相性が悪くとも、それなりに暮らせると思っていた。
 けれど、あの子は年々、私達の言葉を聞き入れる事をしなくなった。

『手放したくは無かったのですね』
《勿論よ、けれど》
『いずれまた、あの子は間違いを犯す、次は更に家族を巻き込むかも知れない』

『何故そう思うのでしょうか』
『己の間違いに苦しむより、あの子は捨てられる事に苦しんだ』

 それではダメなのです。
 後悔の念が薄い子なら、縁を切る。

 子を産み育てる事は、大きな決断。
 だからこそ、約束が有った。

 夫との大切な約束。

『辛い事を尋ねてすみませんでした』
《良いのよ、ありがとう、ごめんなさい》

『いえ。また、もし分からない事が有ったら、尋ねに来ても良いでしょうか』

『あぁ、構わない』
《そうね、子育てを失敗してしまったけれど、それで良ければどうぞ》
『ありがとうございます、では今日は失礼します』

『あぁ』
《はい、またね》

 この子の様に素直なら、自尊心が育ち過ぎなければ。
 けれど、私が育てた子、私達から産まれた子。

『運だ、組み合わせ、その賭けに負けただけだ』

《ありがとう、ごめんなさい》
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