エイトゲヘナ~出会って秒で食べられました、けど今は凄く幸せです~

中谷 獏天

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204 友人との別れ。

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 私とリコリスの事を気にして下さった結果、ヒナ様は思わぬ事に巻き込まれてしまった。

《すみません、私の友人が》
『アンバー、今でもリコリスは友人ですか』

《いえ、でもまだ、少し心残りが有る気がします》
『どんな色で、どんな形でしょうか』

 私の中のリコリス。
 その色と、形。

《内側は、最初は明るい色で、キラキラしてフワフワしてました》

 でも、ちょっとずつ外側が固くなっていって。
 最後には、触れるのが嫌な位にピリッとして、とても嫌な色になっていた。

『亡くなるとお葬式が有ります、お友達とのお別れは、すべきでしょうか』

《そう、ですね、はい。付き添って頂けますか?》
『はい、コレはアンバーとアンバーのご家族の為でもあります』

《ありがとうございます》

 それから私はヒナ様と共に、リコリスの居る養護施設へ向かい。

「何」

《まだ、今さっきまで、迷ってたの》

「何を」

《アナタと縁を切るかどうか、改めて考えたの》

「分かった」
《ただ誤解しないで欲しいのは、養護施設に入ったからじゃないの。何、って不機嫌に言ったから、もう昔のリコリスは居ないんだと思えたから》

「何で、今なの」
『それはアナタがアンバーの友人だったからです』
《ごめんなさい、コレはケジメです、私の勝手でごめんなさい》

『いえ、話し合いの機会を伺っている限りは、コレは先延ばしになる問題だと思います』

《うん、そうだっと思って、早く終わらせたかったんだ。自分勝手でごめんね》

 昔の優しかったリコリスなら、許してくれた。
 けど、もう。

「ごめん」
《大変な時にごめんなさい、でも、私もあの時は本当に辛かった。辛かったけど、何で、どうしてもう関わりたくないのか知りたかった》

「私も、本当にごめん」
《ううん、今までありがとう、さようなら》

 小っちゃい頃から仲良しだった。
 だから、ずっと、仲良しで居られると思ってた。

『後悔していますか』
《ううん、違うんです。思った通りに、ならなくて、悲しくて》

『家にはレンズが居ます、だから相談してみましょう、そこまで我慢して下さい』

《はい》



 まさか、ヒナの友人から本気で相談を受けるとはな。

《人間関係は生き物、いつか相性が悪くなる時が来るかも知れない、今回はそれだと思うがな》

《私は、どうすれば良かったんでしょうか》

 この子も、かなりしっかりしてるしな。
 アンバー嬢がどうのと言うより、寧ろリコリス嬢が、だろうに。

 けどいくらしっかりしてても、認めるのは難しいか。

《落ち着いて予想してみよう、先ずだ、いつから変わった》

《多分、学校に入ってからだと思います》

『リリーやローズのせいですか』
《それは》

《いや、認めても問題無い。性質や気質なら、いつか必ず、引き出される事になった筈だ》

《それでも、私が何か》
《親御さんでも難しいのに、同じ年の、しかも面倒事を背負いたがる相手は必ず見下す》
『どうして言い切れますか』

《俺は得になると思ったら、直ぐに実行した、けど実行出来無かった事も有る。少しでも損すると思えた事は、どんな事でも1度立ち止まった、で実行しない場合も有った》

 まぁ、戻ってからだけどな。

『損得勘定の事でしょうか』
《おう、リコリス嬢は、少なくとも損得の計算は多少は出来ただろ》

《はい》
《誰がどんなに間違いだと言っても、コレは裏技だから、抜け道だからと考えてたらどうなる》

《寧ろ、私が間違いだ、と》
《その通り、だから自信満々だったろ、申し訳無さは大して無かった筈だ》

《私から見て、ですが、はい》
《で、問題はココからだ、リコリス嬢は人種らしい人種。けどアンバー嬢は違う、それこそヒナも、ヴァイオレット嬢もだ。でも、ガキの俺よりは、リコリス嬢は大人な方。悪意が有ったかは分からない、けど単に幼い人種なだけ、とも受け取れる》

《幼いから、それだけで本当に良いのでしょうか》
《俺も悩んだ、けど人種らしいって事は、それだけ幼稚なんだ。だから引け目が有った、けど素直さも賢さも足りなかった、親との相性も悪かった》

《だからこそ、私は、もう少し待つべきだったのではと》
《余裕が有る時は誤魔化せる、だからアンバー嬢は勘に従い、誤魔化せない状態のリコリス嬢に会いに行った。自分を守る為、正しい本能に正しく従った》

《でも》
《最も基礎に立ち返ろう、相手が嫌がるだろう事、自分がされて嫌な事はしない》

 これだけ優しいアンバー嬢が、決断するに至ったんだ。
 言語化は難しくても、嫌だと思ったんだろ、何かが。

《リコリスは、本当に変わってしまったんですね》
《誰だって少しずつ変わる、それが合うか合わないか、コレは本当に仕方の無い事だと思う》

 関係性も人格も、悪く言えば変質する。
 ただ、その変化が受け入れられるかどうか。

 確かに、例え親子だろうと、相性次第だよな。
 子供は急激に成長して、あっと言う間に変化する。

《私には、何も出来無かった》
《有るには有るが、こうなると知らぬまま、そこまで身を賭けられたか?それに、喪失感や後悔から、判断が鈍って無いか》

 俺なら、間違い無くココじゃ施設行きになりそうだが。
 人種だから、とは限らないんだよな、様子を見に行ったが精霊種っぽいのも居たしな。

《多分、無理でした》
《消化するには時間が掛かる事だ、少なくとも他に問題が無いなら、ゆっくりでも良い筈じゃないか》

《ヒナ様、私がもし間違いそうになったら、教えてくれますか?》
『はい、ですがアンバーは間違いそうに有りません』
《だな、聞くに素直さに違いが有るし、こんな俺でも敬いを忘れないしな》

《それは、ヒナ様が認めたお兄様ですし、的外れな事は仰らないからかと》

 小さい子供に褒められるのは、何だかむず痒いな。

《ありがとう。よし、後悔した時は人助けだ、ヒナを寝かし付けてくれないか?》
『ウサギの着ぐるみが有ります、着心地も良いです、試してみませんか』

《ウサギの着ぐるみ、ですか》
『私が偶に着るので新品では無いのですが、嫌でしょうか』

《いえ、でも先ず、お見せ頂けますか?》
『はい喜んで』



 美幼女と、ウサギの着ぐるみを着た可愛い幼女の、昼寝姿の肖像画。
 コレが、尊い、ですか。

《シイラ、コレやるよ》

「レンズさん、コレ、お幾らですか」
《相談料の前払いだ》

「何を相談する気ですか」
《前の件だ、ヒナについて》

「あぁ」
《最初に比べ、かなり優しくなった、気遣いが出来る様になったんだが。同時に俺の中で不安も湧いてる、この前は俺に尋ねに来て、また問題解決に戻ったんだ》

「安全地帯、ですか」
《ほら、普通は、と言うか平和に育った若いのは直ぐには思い至らないからな》

「オタクの基礎では」
《オタクでも何でも良いが、話が通じ易いのがマジで助かる》

「いやオタクじゃないですが、期待値が高いと、逃げたくなるんですが」

《お前のは謙遜かマジか分からん》
「偉そうに」

《褒めてる》
「夜王の褒めの態度偉そう、まさに俺様キャラ」

《やっぱりオタクか》
「俺様キャラはオタク用語じゃないでしょうよ」

《オタクを知らなければ判断は付かない筈だが》
「理詰め、何とかハラスメント」

《ロジハラ》
「ゼクハラ」

《結婚を迫るヤツな》
「ヌーハラ」

《アレは本気で意味が分からない、寧ろ啜るなって言う方に当て嵌めるべきだろ》
「知恵の宝石箱ですね。相槌だけって苦手なんですけど、どうすれば良いですか」

《オチが出せないと不安か》
「ですね、どちらかと言えば、道化師側でしたから」

《上辺だけの共感は、そもそもあんまりされなかったか》

「まぁ」
《だから寧ろ、アドバイスや結論が欲しい。女なのに珍しいな、頭が良いのに勿体無い、無理してるんじゃないか?》

 私が、向こうで言われた事を。

「私の過去、本当に知りませんよね」
《おう、凄いだろ》

 嘘は、無いんですよね。

「でも、もう、予測は有りますよね」
《けど問題だとは思って無いが、どうにかしたいなら力になる》

 殆ど解決してるんですよね。
 でも、確かにまだ問題は有る。

「本当に、問題だとは思って無いんですか」
《おう、俺がクソ泣いた向こうの本だ、コレ読んでみろ》

「準備が良い」
《おう》

 その薄い本の中には、少年兵の独白が書かれていた。
 とても薄いのに、とても強い衝撃で、思わず。

「コレ、劇薬が過ぎますよ」
《悪い事だと知らなかった、悪い事だと知っていても、それしか道が無かった。種類は違えど、どちらも辛いだろうし、後悔は残って当たり前じゃないか》

 初恋の思い出、家族との再会。

 そして戦争で何をしたか。
 如何に、どうしようも無かったか。

「ですが、本当に、劇薬過ぎますよ」
《さっきの事もだが、そのままで良いと思うし、変えたい部分が有れば変えれば良いと思う。けどもし、変に変わりそうになったら、言葉でぶん殴ってやる》

 根っからのお兄ちゃん。
 器用で不器用で、教えたがり。

「あ、マンスプレイニング」
《ウーマンスプレイニング》

「脊髄反射ですか」
《お前もな、引っ込んだか》

「はい、何とか。あの、ヒナちゃんの事が、逸れたかと思うんですが」
《あぁ、だな、どう思う》

「問題無いのでは、成熟度が高い世界ですし、安全地帯が正常に稼働し始めただけでは」

《だよな、うん、助かった》

「こんなんで良いんですか」
《全く無いより、有った方が良いだろ、同意や肯定》

「オッサンでも、不安になるんですね」
《世界観も何も違うからな》

「あぁ、まぁ、ですよね」
《そもそも、俺は嘘は言わない派だ》

「でも不細工でも褒められるんですよね」
《可愛く見える派の視点に立って褒める、どんな客にもだ》

「流石プロ」
《おう》

 レンズさんでも不安なんですよね。
 ならネネさんは。

「あ、ネネさんには」
《勿論、用意して有る》

「あぁ、じゃあ受け取ります」
《おう、じゃあな、また来る》

「あの、この本は」
《納得出来るまで読め、じゃあな》

 コレ、多分、あの天使で悪魔の目の前で読まされるんですが。

『シイラ』

「劇薬を受け取りました、反応を試してみますか」
『是非、そうさせて貰うよ』

 やっぱり、コレはレヴィアへの貢ぎ物だったんですね、何て策士。
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