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209 小さな砂粒。
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たかが知恵熱を出しただけ。
生死に関わる事じゃない。
アレだけ言ってくれているんだし、ただ納得すれば良いだけじゃないか。
考え過ぎ。
気にし過ぎ。
ウジウジしてウザい。
私なら、直ぐに会いに行くのに。
《シイラの中の、正論を投げ付ける者達、か》
『そうだね』
「そうやって、ずっと、自分を責め続けちゃうんですよね」
《碌な見本が身近に居なかったから、自分から吸収するしか無かった、良いも悪いも全て》
『全ての言葉に目を通し、文章を受け取った、自身の事として』
「だから、対処も、独自の対処法になった」
『そうだね』
でも、言ってくれる誰かが居ただけマシ。
折角、言って貰ったんだから、相手の為にも立ち直るべきだ。
傷付けておいて、傷付いたムーブはウザい。
可哀想なのは熱を出したヒナの方だ。
いきなり、そこまで言う必要は無かったんじゃないか。
相手は子供なのだし、大人ならもっとちゃんと様子を見て、徐々に言うべきだった。
嘘でも良いから分かった、協力します、そう言えば良いだけだったのに。
構って欲しかったのか。
そんなに注目を浴びたいのか。
大袈裟だ。
もっと配慮しろ。
大人げない。
性格が歪み過ぎだ。
前世の業だ。
徳を積んで無いからだ。
バカだ。
アホだ。
だから、自業自得だ。
だから消えろ。
居るだけ害悪だ。
お前が居ようが居まいが世界は回る。
寧ろ居ない方が良い。
何でまだ生きてるの。
役立たず。
だから親に愛されなかったんだ。
だから構われなかったんだ。
だから友達だって出来無かった。
だから誰にも助けて貰えなかった。
だから、全部自業自得。
成人したなら親のせいにするな。
親が居るだけマシ。
暴力が無いだけマシ。
性加害が無いだけマシ。
その程度で折れるとか、最初から生きる耐性が無さ過ぎる。
弱いのが悪い。
強くなれないのが悪い。
学校に行けてたなら学べる筈、察せられる筈、鈍感なのが悪い。
気付けた筈。
分かった筈。
なのに、そうやって何でも逃げるからダメなんだ。
逃げるから成長しない。
逃げたから成長しなかった。
嫌でも関わるべきだった。
学習するべきだった。
それが生きるって事だ。
だから、自業自得。
だから、また誰かを傷付けた。
《全部、こんなの邪論だろ》
「ですよね」
『けれど経験の無い者、想像力の無い者、愚か者は正論だと言う』
「コレ全部、自身に跳ね返っても、元が軽口だから言った事すら忘れてるんですよね」
『けれど、外部に漏らした時点で、全ては証拠になる』
《シイラは俺達と全く同じ世界、その先の人間なんだな》
『そうだね』
レンズの死後、ネットは急速に収束するに至った。
切っ掛けは、色恋沙汰。
そして暴露合戦が始まると。
雑誌社、遺族、加害者の三つ巴の果てに政府が動き。
色恋沙汰や性的な暴露の記事、ニュースが一時的に取り扱い禁止となり。
以降、弁護士を通しての暴露以外は、全てフェイクニュース扱いとする法案が提出された。
けれど、沈静化の前にネットは氾濫した。
誰かが作ったプログラムにより、ネット上の情報が全て紐付き、本名を入力するだけで本人の書き込みが見れる様になると。
動画サイト、SNS、電子掲示板のコメントを削除する流れが起こった。
けれど、まだ沈静化はしなかった。
魚拓、と呼ばれるスクリーンショットが既に保存されており、そのサイトで検索が可能となると。
そのサイト主に、懇願と共に削除要請のメールが殺到。
けれど、それらも開示され。
サイト主は訴えられる事となった。
提訴の理由は名誉毀損。
そして裏の事情は、書き込み内容が婚約者にバレ、婚約破棄をされた事が理由。
そして、とある提訴は托卵がバレ離縁となった為、損害賠償請求。
虚言がバレ、大口を叩いている事がバレ、提訴。
そうした情報すらも、サイト主と思われる者が捕まった後も、全て開示され。
削除や閲覧規制を幾ら施しても、また、新たな全く同一のサイトが現れるだけ。
けれど増殖はせず、常に唯一無二の存在。
そう認識された頃、殺人事件が起こった。
自称サイト主、を殺したと宣言する、正義の味方と名乗る者が現れ。
世間を騒がせる筈だった。
けれど、もう誰も、擁護はしない。
騒動を起こした者は捕まり、名前が出た。
そして書き込みを、幾人もが閲覧したが、擁護者は僅か。
ただ、不思議な事に、自分が書き込んだ筈の文章が無い。
そうした都市伝説の様な書き込みに、幾つもの同意が有った。
サイトは、全てを開示しているワケでは無かった。
サイトの基準に従い、暴言と見做されるモノだけが、そこには開示されるとの告知が書かれ。
裁判は取り下げられ、法案は成立。
乗っ取られたと言っていた者達も、ネットに嫌気が差していた者達も、アカウントを削除し始め。
そして、ネットは静かになった。
以前より、優しい世界になった。
「最も、ネットの闇が深い世代に生まれ、育ったんですね」
《出来るだけ多くを知るには、見なきゃ良い、は通用しない。玉石混交の中から正しいだろう言葉を探し、自分に落とし込み、他に間違いは無いか更に探し続ける》
「誰にもフィルタリングされない、説明も噛み砕く事も、誰もしてくれないのに。無理ですよ、情報の取捨選択にも基礎や基準は必要なのに、シイラさんは野晒しで彷徨い続けた」
『まさに地獄だった。小さな砂粒の様な言葉でも、勢い良く柔らかな部分に当たったったなら』
「切れて、裂けて、抉られる」
『本来、守られる筈の家が機能しなかった。盾が無かった、服も無かった、誰も守ってはくれなかった』
剝き身の肉に、骨に、神経に。
無数の砂粒が勢い良く吹き付ける。
地獄だ、言葉が地獄を作った、生き地獄を作った。
「レンズさん、ヒナちゃんは」
《ネネが居る》
まだ、心配されている。
「すみません、けどもう本当に、大丈夫なので」
《説得に来たワケじゃない、ただお前は、人間サンドブラストだったんだと言いたかっただけなんだ》
「あの、一体」
《たった1人の軽口でも、1000個も集まればどうなる。それが幾ら小さな砂粒でも、勢い良く眼球に、歯茎や鼓膜に当たったらどうなると思う》
だから、サンドブラスト。
「凄く、痛そうなのは分かりましたが」
《俺には友人知人が居た、それこそ弟だって居た、修正したり肯定してくれる誰かが居た。けどシイラは、誰も居なかったんだろ、本当にずっと独りだった》
「それは、私が愚かなので」
《避けられ、除け者にされたとしても、ネットだけの情報で何とかなるだなんてのは机上の空論だ。文章や言葉はあくまでも予習、実践で応用を利かせつつ失敗しないだなんて、妄想か物語の中だけだ。正直、俺も想定が甘かった、単なるコミュ障だと思ってた》
「いや、単なるコミュ障ですが」
《違うだろ、ガキの頃に失敗したからって、ネットのあらゆる言葉を目にしてたんだろ》
「アナタは、何を教えたんですか」
『君を責め立てる言葉達、それと君が居なくなった後、ネットに何が起きたか』
《俺の言った通りだったぞ、正論厨は自爆した》
『正確には極論、曲論、若しくは邪論だけれどね』
《その殆どが言葉を取り消そうとした、けど吐いた唾は吞めない、寧ろ倍になって還っていった》
『コレで、少しは知る気になったよね』
あの先に、何かが。
《はぁ、そこもか》
「何で、今更急に」
『あの時は、知ろうとはしなかった。まだ、全てを受け入れるには早かったから、けれど今は違う筈』
《凄いぞ、托卵がバレて離婚、軽口が過ぎて婚約破棄。匿名性を勘違いしてる奴らは、全部、痛い目を見た》
『勿論、幼く軽微な軽口は無視された』
《けど、結果としてコメントを消した、それはそれで証拠になるんだけど。まぁ、笑って許される範囲じゃない、それは確実に残ってた》
私が願った様な世界。
でも向こうは、そんな願いが叶う様な世界じゃなかった。
なのに。
「レンズさん、信じてるんですか。本当に、そんな事が起きたって」
《おう》
「違う世界、違う場所かも知れないのに」
《じゃあ確かめに行くか?けど、そこが本質じゃない、シイラが正しいかどうかだ》
「私は、もう」
《諦めるのは良く分かる、傷付かない最善の選択は、深追いせず立ち止まる事》
「すみません」
《いや、それも正解なんだよ。アレ、川に着水した飛行機事故が有っただろ》
「既に起きる前提でのみ、川に着陸せずに済むシミュレーションだけが、成功した」
《知ってるんだな、流石、ネットの申し子》
「いや」
《俺とも時差が有るんだよな、だから俺の事も、向こうのヒナの事も知ってる》
「はい」
《ヒナの事、詳しく良いか?》
またか、と思った。
けれど、内容があまりにも酷くて、一通り読んでしまった。
それがあの子だ、と知ったのは知り合った後。
「父親も母親も、お互いに責任逃れをし。元義母となった方だけが、自身にも何か出来たんじゃないか、と後悔していました」
《で、祖父は既に死亡》
「はい、心筋梗塞で、長い昏睡状態の果てに。だそうです」
《刑はどうなった》
「15年、父親は7年です」
《はぁ、2人で30年、1人で15年か》
「はい、大阪での置き去り死亡事件を元に、判決が下されたのではと言われていました」
《けど、ヒナの母親も26とかだろ、大体40で出所か》
「やり直せちゃいますよね、まだ産める」
《父親の方もな》
「ですね」
無理だとは分かってますが、明らかに死に至らしめたなら去勢して欲しい。
けれど、生きる者の権利は強い。
死んだら負け、そんな場合も有る。
《無理にじゃない、使命感からでも、義務からでも無い。構いたいから、構いたいだけ、それ以外を含むなら関わらなくても良い》
「はい」
《嘘がバレない魔法か、けどそれ、単に魔道具や何かが反応しないだけだろ》
そうだね。
「何の事か」
《俺は魔道具だけで嘘を見抜けるワケじゃないのは、勿論、分かってるよな》
「はい」
《他人を傷付けない為の嘘は、他の誰かを傷付ける、サレオスが悲しむんじゃないか》
「最悪は、嫌なら離れれば良いんですよ」
《お前なぁ》
「皆さんが居るじゃないですか、合う合わないも有りますし、今回は」
《お前は本当に可哀想なヤツだ》
「なん、急に」
《どうせ、たった1度、たった1回の怪我だとでも思ってんだろ》
そうだね。
「かも、知れませんが」
《けど散弾銃も1発は1発だ、発射口までの距離は、体格や年齢はどうなる》
『しかも、大きな風穴に、砂粒サイズの球が無数に吸い込まれた』
《そうそう、サンドブラストで抉れた傷だぞ、そう簡単に治るワケ無いだろ》
「でも、掠り傷と言えば掠り傷ですし」
《それはシイラが強いからだ、死ななかった》
「それこそ傷は、浅く小さく」
《破傷風、敗血症って知ってるか、見えない小さな傷でも死ぬ。しかも骨までいってたら、骨だって修復に時間が掛かるだろ、それに必須栄養素もだ》
「愚かで弱いから、その小さな粒で傷付く、賢く強い方は身を守ったり反撃だって余裕かと」
《無神経でバカもな》
「そうですね」
《あのなぁ》
「分かってます、大丈夫です。本当にすみませんでした」
《ありがとうございます、だろうが》
「ありがとうございます」
《本当に、分かってくれてるんだな》
「はい」
《よし、じゃあまたな》
「はい、また」
シイラは、逃げ出す事は簡単に出来る。
それは既に後悔を背負っているから、簡単に選べる道。
けれど、それは本当に正しいのか。
『休もう』
「はい」
生死に関わる事じゃない。
アレだけ言ってくれているんだし、ただ納得すれば良いだけじゃないか。
考え過ぎ。
気にし過ぎ。
ウジウジしてウザい。
私なら、直ぐに会いに行くのに。
《シイラの中の、正論を投げ付ける者達、か》
『そうだね』
「そうやって、ずっと、自分を責め続けちゃうんですよね」
《碌な見本が身近に居なかったから、自分から吸収するしか無かった、良いも悪いも全て》
『全ての言葉に目を通し、文章を受け取った、自身の事として』
「だから、対処も、独自の対処法になった」
『そうだね』
でも、言ってくれる誰かが居ただけマシ。
折角、言って貰ったんだから、相手の為にも立ち直るべきだ。
傷付けておいて、傷付いたムーブはウザい。
可哀想なのは熱を出したヒナの方だ。
いきなり、そこまで言う必要は無かったんじゃないか。
相手は子供なのだし、大人ならもっとちゃんと様子を見て、徐々に言うべきだった。
嘘でも良いから分かった、協力します、そう言えば良いだけだったのに。
構って欲しかったのか。
そんなに注目を浴びたいのか。
大袈裟だ。
もっと配慮しろ。
大人げない。
性格が歪み過ぎだ。
前世の業だ。
徳を積んで無いからだ。
バカだ。
アホだ。
だから、自業自得だ。
だから消えろ。
居るだけ害悪だ。
お前が居ようが居まいが世界は回る。
寧ろ居ない方が良い。
何でまだ生きてるの。
役立たず。
だから親に愛されなかったんだ。
だから構われなかったんだ。
だから友達だって出来無かった。
だから誰にも助けて貰えなかった。
だから、全部自業自得。
成人したなら親のせいにするな。
親が居るだけマシ。
暴力が無いだけマシ。
性加害が無いだけマシ。
その程度で折れるとか、最初から生きる耐性が無さ過ぎる。
弱いのが悪い。
強くなれないのが悪い。
学校に行けてたなら学べる筈、察せられる筈、鈍感なのが悪い。
気付けた筈。
分かった筈。
なのに、そうやって何でも逃げるからダメなんだ。
逃げるから成長しない。
逃げたから成長しなかった。
嫌でも関わるべきだった。
学習するべきだった。
それが生きるって事だ。
だから、自業自得。
だから、また誰かを傷付けた。
《全部、こんなの邪論だろ》
「ですよね」
『けれど経験の無い者、想像力の無い者、愚か者は正論だと言う』
「コレ全部、自身に跳ね返っても、元が軽口だから言った事すら忘れてるんですよね」
『けれど、外部に漏らした時点で、全ては証拠になる』
《シイラは俺達と全く同じ世界、その先の人間なんだな》
『そうだね』
レンズの死後、ネットは急速に収束するに至った。
切っ掛けは、色恋沙汰。
そして暴露合戦が始まると。
雑誌社、遺族、加害者の三つ巴の果てに政府が動き。
色恋沙汰や性的な暴露の記事、ニュースが一時的に取り扱い禁止となり。
以降、弁護士を通しての暴露以外は、全てフェイクニュース扱いとする法案が提出された。
けれど、沈静化の前にネットは氾濫した。
誰かが作ったプログラムにより、ネット上の情報が全て紐付き、本名を入力するだけで本人の書き込みが見れる様になると。
動画サイト、SNS、電子掲示板のコメントを削除する流れが起こった。
けれど、まだ沈静化はしなかった。
魚拓、と呼ばれるスクリーンショットが既に保存されており、そのサイトで検索が可能となると。
そのサイト主に、懇願と共に削除要請のメールが殺到。
けれど、それらも開示され。
サイト主は訴えられる事となった。
提訴の理由は名誉毀損。
そして裏の事情は、書き込み内容が婚約者にバレ、婚約破棄をされた事が理由。
そして、とある提訴は托卵がバレ離縁となった為、損害賠償請求。
虚言がバレ、大口を叩いている事がバレ、提訴。
そうした情報すらも、サイト主と思われる者が捕まった後も、全て開示され。
削除や閲覧規制を幾ら施しても、また、新たな全く同一のサイトが現れるだけ。
けれど増殖はせず、常に唯一無二の存在。
そう認識された頃、殺人事件が起こった。
自称サイト主、を殺したと宣言する、正義の味方と名乗る者が現れ。
世間を騒がせる筈だった。
けれど、もう誰も、擁護はしない。
騒動を起こした者は捕まり、名前が出た。
そして書き込みを、幾人もが閲覧したが、擁護者は僅か。
ただ、不思議な事に、自分が書き込んだ筈の文章が無い。
そうした都市伝説の様な書き込みに、幾つもの同意が有った。
サイトは、全てを開示しているワケでは無かった。
サイトの基準に従い、暴言と見做されるモノだけが、そこには開示されるとの告知が書かれ。
裁判は取り下げられ、法案は成立。
乗っ取られたと言っていた者達も、ネットに嫌気が差していた者達も、アカウントを削除し始め。
そして、ネットは静かになった。
以前より、優しい世界になった。
「最も、ネットの闇が深い世代に生まれ、育ったんですね」
《出来るだけ多くを知るには、見なきゃ良い、は通用しない。玉石混交の中から正しいだろう言葉を探し、自分に落とし込み、他に間違いは無いか更に探し続ける》
「誰にもフィルタリングされない、説明も噛み砕く事も、誰もしてくれないのに。無理ですよ、情報の取捨選択にも基礎や基準は必要なのに、シイラさんは野晒しで彷徨い続けた」
『まさに地獄だった。小さな砂粒の様な言葉でも、勢い良く柔らかな部分に当たったったなら』
「切れて、裂けて、抉られる」
『本来、守られる筈の家が機能しなかった。盾が無かった、服も無かった、誰も守ってはくれなかった』
剝き身の肉に、骨に、神経に。
無数の砂粒が勢い良く吹き付ける。
地獄だ、言葉が地獄を作った、生き地獄を作った。
「レンズさん、ヒナちゃんは」
《ネネが居る》
まだ、心配されている。
「すみません、けどもう本当に、大丈夫なので」
《説得に来たワケじゃない、ただお前は、人間サンドブラストだったんだと言いたかっただけなんだ》
「あの、一体」
《たった1人の軽口でも、1000個も集まればどうなる。それが幾ら小さな砂粒でも、勢い良く眼球に、歯茎や鼓膜に当たったらどうなると思う》
だから、サンドブラスト。
「凄く、痛そうなのは分かりましたが」
《俺には友人知人が居た、それこそ弟だって居た、修正したり肯定してくれる誰かが居た。けどシイラは、誰も居なかったんだろ、本当にずっと独りだった》
「それは、私が愚かなので」
《避けられ、除け者にされたとしても、ネットだけの情報で何とかなるだなんてのは机上の空論だ。文章や言葉はあくまでも予習、実践で応用を利かせつつ失敗しないだなんて、妄想か物語の中だけだ。正直、俺も想定が甘かった、単なるコミュ障だと思ってた》
「いや、単なるコミュ障ですが」
《違うだろ、ガキの頃に失敗したからって、ネットのあらゆる言葉を目にしてたんだろ》
「アナタは、何を教えたんですか」
『君を責め立てる言葉達、それと君が居なくなった後、ネットに何が起きたか』
《俺の言った通りだったぞ、正論厨は自爆した》
『正確には極論、曲論、若しくは邪論だけれどね』
《その殆どが言葉を取り消そうとした、けど吐いた唾は吞めない、寧ろ倍になって還っていった》
『コレで、少しは知る気になったよね』
あの先に、何かが。
《はぁ、そこもか》
「何で、今更急に」
『あの時は、知ろうとはしなかった。まだ、全てを受け入れるには早かったから、けれど今は違う筈』
《凄いぞ、托卵がバレて離婚、軽口が過ぎて婚約破棄。匿名性を勘違いしてる奴らは、全部、痛い目を見た》
『勿論、幼く軽微な軽口は無視された』
《けど、結果としてコメントを消した、それはそれで証拠になるんだけど。まぁ、笑って許される範囲じゃない、それは確実に残ってた》
私が願った様な世界。
でも向こうは、そんな願いが叶う様な世界じゃなかった。
なのに。
「レンズさん、信じてるんですか。本当に、そんな事が起きたって」
《おう》
「違う世界、違う場所かも知れないのに」
《じゃあ確かめに行くか?けど、そこが本質じゃない、シイラが正しいかどうかだ》
「私は、もう」
《諦めるのは良く分かる、傷付かない最善の選択は、深追いせず立ち止まる事》
「すみません」
《いや、それも正解なんだよ。アレ、川に着水した飛行機事故が有っただろ》
「既に起きる前提でのみ、川に着陸せずに済むシミュレーションだけが、成功した」
《知ってるんだな、流石、ネットの申し子》
「いや」
《俺とも時差が有るんだよな、だから俺の事も、向こうのヒナの事も知ってる》
「はい」
《ヒナの事、詳しく良いか?》
またか、と思った。
けれど、内容があまりにも酷くて、一通り読んでしまった。
それがあの子だ、と知ったのは知り合った後。
「父親も母親も、お互いに責任逃れをし。元義母となった方だけが、自身にも何か出来たんじゃないか、と後悔していました」
《で、祖父は既に死亡》
「はい、心筋梗塞で、長い昏睡状態の果てに。だそうです」
《刑はどうなった》
「15年、父親は7年です」
《はぁ、2人で30年、1人で15年か》
「はい、大阪での置き去り死亡事件を元に、判決が下されたのではと言われていました」
《けど、ヒナの母親も26とかだろ、大体40で出所か》
「やり直せちゃいますよね、まだ産める」
《父親の方もな》
「ですね」
無理だとは分かってますが、明らかに死に至らしめたなら去勢して欲しい。
けれど、生きる者の権利は強い。
死んだら負け、そんな場合も有る。
《無理にじゃない、使命感からでも、義務からでも無い。構いたいから、構いたいだけ、それ以外を含むなら関わらなくても良い》
「はい」
《嘘がバレない魔法か、けどそれ、単に魔道具や何かが反応しないだけだろ》
そうだね。
「何の事か」
《俺は魔道具だけで嘘を見抜けるワケじゃないのは、勿論、分かってるよな》
「はい」
《他人を傷付けない為の嘘は、他の誰かを傷付ける、サレオスが悲しむんじゃないか》
「最悪は、嫌なら離れれば良いんですよ」
《お前なぁ》
「皆さんが居るじゃないですか、合う合わないも有りますし、今回は」
《お前は本当に可哀想なヤツだ》
「なん、急に」
《どうせ、たった1度、たった1回の怪我だとでも思ってんだろ》
そうだね。
「かも、知れませんが」
《けど散弾銃も1発は1発だ、発射口までの距離は、体格や年齢はどうなる》
『しかも、大きな風穴に、砂粒サイズの球が無数に吸い込まれた』
《そうそう、サンドブラストで抉れた傷だぞ、そう簡単に治るワケ無いだろ》
「でも、掠り傷と言えば掠り傷ですし」
《それはシイラが強いからだ、死ななかった》
「それこそ傷は、浅く小さく」
《破傷風、敗血症って知ってるか、見えない小さな傷でも死ぬ。しかも骨までいってたら、骨だって修復に時間が掛かるだろ、それに必須栄養素もだ》
「愚かで弱いから、その小さな粒で傷付く、賢く強い方は身を守ったり反撃だって余裕かと」
《無神経でバカもな》
「そうですね」
《あのなぁ》
「分かってます、大丈夫です。本当にすみませんでした」
《ありがとうございます、だろうが》
「ありがとうございます」
《本当に、分かってくれてるんだな》
「はい」
《よし、じゃあまたな》
「はい、また」
シイラは、逃げ出す事は簡単に出来る。
それは既に後悔を背負っているから、簡単に選べる道。
けれど、それは本当に正しいのか。
『休もう』
「はい」
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