入れ替わった彼女

チャロコロ

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中学時代の思い出 5

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 「よーしテント立てるぞー」
 佐々木がやる気いっぱいに駆け出していった。
 「佐々木、テントは設営してあるって何回も言っただろー」
 子供のように走る後ろ姿に馬場先生がキレた。
 
 キャンプ場は思ったより涼しかった、肌寒いくらいだ。
 夜になると厚着が必要になるかも知れない。
 「マイナスイオンハンパねえな」
 佐々木が大きく息を吸い込みながら俺の肩を叩いた。やっぱウザキャラだ。
 だが俺のテンションも上がってきた。玉ねぎ、じゃがいも、にんじんをわし掴みにすると野外の調理場に向かう。
 「うまいカレー作ろうぜ、頼むぞ班長」
 声をかけると、班長こと佐々木が大げさに頷いた。
 「俺がこの班にいる以上、間違いなく一番うまいカレーを作れるぜ。
  何てったってカレーに関してはプロだからな」
 「待ってました」
 月野さんが合いの手を入れる。
 「信じてるわよ」
 「あんたの指示に従うわ」
 「バーカ」
 他の女子も声援を送っている。
 「玉ねぎはこれくらいの大きさで、じゃがいもは大きめに切るんだぞ」
 ざっくりと説明する班長。
 「そうなんだー」
 「勉強になるね」
 「単細胞」
 一部野次が混じっているが佐々木は全く動じない。鋼のハートは健在だった。野次を飛ばしたのは真鍋冴子さんだった。
 「真鍋さん言うねっ」
 月野さんに囁く。いつもとは違う環境のおかげで自然と話しかけることができた。 
 「冴子さすがね。佐々木君に対抗できるのはあの娘くらいね」
 イタズラっぽく舌を出した月野さんに胸がときめいた。
 ずっとこの顔を見ていたい。この顔を見れるなら何もかも捨てられる。そんな気がした。
 「俺の悪口が聞こえた気が……」
 「女子がキャーキャー言ってるぞ」
 「そうか、俺は幸せ者だ。もう死んでもいい」
 さよなら班長。佐々木いじりは一旦終わりにして、カレー作りに専念しよう。
 他の班員は既に野菜を切っている、俺も手伝わなければ。残った野菜があるか確認すると
 「本田君、じゃがいも切るの手伝ってくれない?」
 月野さんがじゃがいもを手渡してきた。
 男子中学生の拳大と同じくらいの泥つきじゃがいもを受け取ると、流水で汚れを落としてから皮むきをしたが、これが中々難しい。
 そこらじゅうがでこぼこになっているので手を切りそうになりながら包丁を使い、何とか剥き終わるとボウルに入れる。班員は他の具材を入れた鍋を温め始めている。これは急がないと。
 「じゃがいもって他の野菜に比べて切りにくいのよね」
 月野さんが頬を膨らませているが、怒っているようには見えない。
 「佐々木にも手伝ってもらおうか?」
 「彼と話すのは十分くらいでいいかも、あのテンションについて行くのは大変だから」
 「確かに、常に口が動いてるね」
 「口が動かないのは寝てる時くらいね」
 「あいつは寝てる時も動いているよ。
  この前授業中に『やっぱにんじんよりも饅頭だよね』って言ってたから」
 「その選択肢おかしいでしょ」
 じゃがいもを剥きながら彼女が笑う。
 「何やってんのあんたー?」
 同じ班員の真鍋さんが絶叫した。佐々木とケンカしている。
 「カレーの隠し味は饅頭だって言ってんだろ!」
 「そんなもん入れて美味しくなる訳ないでしょ」
 「何だとコノヤロー、これはコシあんなんだぞ」
 ……そういうことだったのか。
 「佐々木だけ肝試し一人だかんね」
 「きー、呪ってやるからなー」
 掴み合いになりそうな二人を周りが止めている。
 このままでは男子対女子のケンカになってしまう。足を踏み出そうとすると皆で佐々木をポカポカ叩いていた。良かった、何事もなかったみたいだ。
 「伊吹助けてー」
 背後から聞こえる声を無視して皆のいる場所にじゃがいもを持って行こうとすると、月野さんが呟いた。
 「もう少しだけ、じゃがいもを切っていたかったな」
 「えっ?」
 「ううん、何でもない。早く持っていこ」
 じゃがいもが入ったボウルを手にすると、スタスタと先を歩いていった。
 へえ、月野さん料理好きなんだ。それともじゃがいもを剥くことで料理に目ざめたのかな?
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