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中学時代の思い出 6
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カレーは意外にもめちゃくちゃ旨かった。
佐々木は頻繁に饅頭効果をアピールしていたが皆に却下されていた。饅頭の甘さがカレーをまろやかにしたのか、饅頭の量が少なかったのでカレーの味に影響がなかったのか分からないが、取り敢えず安心した。一応用意しておいたカップ焼きそばは必要なさそうだ。
キャンプファイヤーで訳の分からない歌を歌い終わると肝試しの時間だ。班ごとに肝試しを行わなければならない。
「女子、怖かったら俺が手を繋いでやってもいいぞ」
「あんたの手汗ばんでそうだから嫌だわ」
「ちゃんと拭いたから大丈夫だわっ」
また佐々木と真鍋。
「お前らうるさいぞ、今から肝試しの説明するからな」
馬場先生が呆れて注意する。
「先生早く行こうよ。俺こんなの怖くないから」
「まあそんなに焦るな。肝試しは山の中だから危ないんだ。
誰かが迷ったり、ケガしたらダメだろ」
「安心してください。俺が皆を守りますから」
自信ありげに胸を張る佐々木。
「先生も佐々木がいるから心配はしてないんだが……、な……」
先生の顔がみるみる曇っていく。
「どうしたんすか?」
「実はな……、先生は肝試しに反対していたんだ」
「反対?」
「取り憑かれてしまう生徒がいるんだよ」
空気が一瞬で重くなった。
「またまたぁ、俺達を怖がらせたいだけでしょう?」
佐々木がジャスチャーを交ぜながら微笑む。
「佐々木っ!」
先生の鋭い声に空気が引き締まった。先生はすぐにはっとした顔をする。
「悪い……、うん悪かった。お前達にはケガをして欲しくなくてな」
「何があったんですか?」
真鍋さんが心配そうな顔で先生を見つめる。
「話そうかどうか迷っていたんだが」
先生は夜空を仰ぐと、遠い眼をしながら語りだした。
「白い服を着た女の人が手を振っていた、男の叫び声が聞こえたという話は毎年のよう
に訊いていた。私は幽霊とかお化けとか、そういう類のことを信じていないから恐怖心
からくる見間違いか何かだと思って取り合っていなかったんだ。三年前までは」
「三年前?」
先生が苦笑して頷く。
「そう、三年前に。先生自身が見てしまったんだ」
ざわめいた。誰かが言葉を発した訳ではないが、ざわめきを感じた。
「三年前も私は二年生を担当していて、ここに来たんだ。そしてその年も恒例の肝試し
を開始した。肝試しは順調に進んでいたんだが、最後に問題が起きた。最後の班員の女
生徒が一人いなくなっていたんだ。班員に訊くと肝試しから戻ってきた時にはいたはず
だと口を揃える。ある女生徒に至っては今まで会話をしていたとまで言った」
「ただ単にはぐれただけじゃないすか?」
「私もそう思って他の先生方と手分けをして探すことにしたんだ。電気もない真っ暗な
空間で迷うことは非常に危険だからな。生徒の話から肝試しのゴール付近にいる可能性
が高いと判断して複数の先生に探してもらい、私は肝試しのコースを逆走して探すこと
にした。
懐中電灯で周囲を照らしながらしばらく歩くと、体操座りをしている女生徒を見つけ
た。ひとまず安心して声をかけたんだが、彼女はぶつぶつと独り言のようなことを呟い
ているだけで、まるで私の存在に気付いていないようだった。耳元で声をかけても反応
がなかったので両肩を揺らして声を掛け続けたんだ。彼女は恐怖のあまり、現実逃避を
しているのかと思って更に強く身体を揺すった途端、或るモノに気付いてしまったんだ」
「あるもの?」
「そうだ、彼女の肩に置いている私の手を何かが触ったんだ。少しぬめっていて、冷た
くて、いや、冷たいというより温度がないと言った方が適切かも知れない。それが私の
手をさするように何度も何度も触るんだ。その度にめちょり、めちょりっていう気色悪
い感触が伝わり、全身に悪寒が走った。違和感を覚えて女生徒を見るが、女生徒は膝
の前で手を組んでいる。思わず動きを止めて耳を澄ますと、女生徒のすぐ後ろからザザ
ッ、ザザッ、ザザザッという音がしていたんだ。この時私は気付いてしまった、さっき
から聞こえていた女生徒の独り言だと思っていたものは、実はその後ろから聞こえてい
た音だったことを……」
班員は完全に静まり返っていた。唾を飲む音がはっきりと感じる。
「『彼女の後ろに何かがいる』そう直感した私は彼女の横に廻り、ゆっくり背後を確認し
た。そこには、三歳くらいのおかっぱ頭をした男の子が立っていた。男の子は私の方を
見ながら、私の手を両手でさすっていたんだ。それはさっきよりも確実な感触で、子供
の手とは思えない。まるで皺がれてささくれ立ったおばあちゃんの手のようだった。背
筋に氷水をぶっかけられたような悪寒が全身を襲い、全ての髪の毛が逆立った気がした
よ。
人間というのは、本当の恐怖を感じた時大声は出せないものだと実感したよ。私は『ひ
えっ』っていう情けない声を上げると全力で手を払いのけたが、腰が抜けてしまって立
ち上がれなくなった」
「それマジでやばいやつだ」
佐々木が呟いた。
「のけぞったまま動けなくなった私に男の子がゆっくり近付いてきたんだ。小さな足を
のそのそ動かしながら。普段なから可愛いと感じる動きも、その時の私にとっては恐怖
でしかなかった。男の子は真っ直ぐ私を見つめていた。赤ちゃんのような純粋な眼で。
見てはいけないと思いつつも、本能は眼を逸らすことを許さない。何でかは分からない
が、ここで眼を逸らすと死が訪れると感じたんだ。吸い寄せられるように男の子の眼を
凝視していると、突然頭の中で映像が流れてきた」
肝試しに行くのが心底嫌になってきた。涙ぐんでいる女子もいる。
「まるで昔のフィルム映像のようだった。映像の中ではお父さんとお母さんと男の子の
三人家族が仲良く記念写真を撮る映像が流れてきた。そしてすぐに別の映像に切り替わ
って髪の長い女の人が俯きながら正座している映像、するとすぐに三人家族の映像に戻
る。しばらくすると、また髪の長い女性が座っている映像、その繰り返しだった。何の
目的で作られた映像なんだろう?そう思っていると、次第に映像の切り替わる時間が
短くなっていき、またたく間にパラパラ漫画のようになった。
眼の回るような繰り返しに吐き気を催し始めたところ、映像が少しずつ変化し始めて
きたんだ。正座していた女が少しずつ立ち上がった。三人家族は何かに気付いたように
こちらを凝視し始める。立ち上がった女は十年以上歩いていなかったかのようにたどた
どしい動きで身体を左右に揺らしながらゆたゆたと前進してくる。その女は映像が切り
替わるに連れてどんどん近づいてきたんだ。
『来るな、来るな』私は必死に叫んでるつもりなんだが、肝心の声が出ない。その間
にも女は揺らめきながら確実に歩み寄ってくる。彼女は俯いたままばさばさの長い黒髪
を振り子のように左右に振り、手足はだらりと伸びきって力を感じさせない。『やめてく
れ、頼む、来ないでくれ』私の懇願をあざ笑うように女はズザ、ズザザ、ズザザという
不快な足音を立てている。
恐怖で心臓がボールのように弾んで腹痛まで併発してきた。気持ちは後ずさりをして
いるが、両手で顔をわし掴みにされているように映像から逃れることができない。女は
眼と鼻の先まで来ていた、低いうめき声のような息遣いが耳にまとわりつく。女は動き
を止めるとゆっくり顔を上げた。私はそこから眼を離すことができなかった。眼を閉じ
ることも……。見ておかなければいけないと思ったんだろうな。女の額、眉毛、瞼が順
番に視界に入ってくる。女は眼を閉じているようだった。
女の顔が明らかになるにつれて、私は違和感を覚えた。この女どっかで見たことがあ
る……」
話し疲れたのか、先生が一度深呼吸をした。佐々木は自分の顔に懐中電灯の灯りをあてて点滅させている。真顔なのが不気味だ。
「女は完全に顔を上げて、私と顔を合わせた。この時分かったんだ。この女はもう一つ
の映像に出てきた三人家族のお母さんだ、って。その顔は家族でいた時とは別人のよう
にやつれていた。この家族には何かがあったのか?そう思った瞬間、女が閉じていた眼
を大きく見開いて言ったんだ。
『ユ・ル・サ・ナ・イ』って」
女子のキャーという絶叫が響いた。耳を塞いでいる生徒や、他の生徒の腕にしがみつく生徒もいる。
「ふと気がつくと、ポケットの中に入れていた携帯電話が震えていた。妻からの着信だ
ったんだ。私と女生徒は気を失っていたんだ。あわてて辺りを伺ってみたが、男の子も
女もいなくなっていた。あれは夢だったのか?そう思いながら電話に出ると、妻は開口
一番『大丈夫?』と訊いてきたんだ」
「何で?」
真鍋さんが両腕を擦る。
「妻が言うには『寝ていた息子が突然起きて、私にさようならと言ってお辞儀をした』
と言うんだ。それがどうしたんだ?単に寝ぼけていただけだろうって言うと、妻は『前
お父さんが亡くなった時も息子が同じことをした』と言ったんだ、それで嫌な予感がし
て電話してみたんだと」
「それって……」
月野さんが安堵して微笑む。
「そう、女に殺されそうになった私を妻は救ってくれたんだ。私は自分に起きたことを
伝えるか迷ったが、妻を怖がらてもいけないと思い、大丈夫だと応えて電話を切ろうと
すると、ガーという耳触りなノイズが電話口から聞こえてきたから、何となく耳を傾け
たんだ。すると、はっきりとした声で言ったんだ。
『何だ、死ななかったんだ』
ってな。それは明らかに映像の中に出てきた女の声だった」
話を訊き終えた佐々木が絶叫した。
「先生の奥さんマジ怖えっ!」
最後まで話訊けよと言われながら皆にポカポカ叩かれる佐々木。
おいおい、こんな話を聞かされた後に肝試しに行くのかよ。
いや、別に全然怖くなんかねえんだけどよ。
今日は日柄も悪いことだし、カレーも旨かったし。
ねえ、みんな?肝試しは中止にしよう?
佐々木は頻繁に饅頭効果をアピールしていたが皆に却下されていた。饅頭の甘さがカレーをまろやかにしたのか、饅頭の量が少なかったのでカレーの味に影響がなかったのか分からないが、取り敢えず安心した。一応用意しておいたカップ焼きそばは必要なさそうだ。
キャンプファイヤーで訳の分からない歌を歌い終わると肝試しの時間だ。班ごとに肝試しを行わなければならない。
「女子、怖かったら俺が手を繋いでやってもいいぞ」
「あんたの手汗ばんでそうだから嫌だわ」
「ちゃんと拭いたから大丈夫だわっ」
また佐々木と真鍋。
「お前らうるさいぞ、今から肝試しの説明するからな」
馬場先生が呆れて注意する。
「先生早く行こうよ。俺こんなの怖くないから」
「まあそんなに焦るな。肝試しは山の中だから危ないんだ。
誰かが迷ったり、ケガしたらダメだろ」
「安心してください。俺が皆を守りますから」
自信ありげに胸を張る佐々木。
「先生も佐々木がいるから心配はしてないんだが……、な……」
先生の顔がみるみる曇っていく。
「どうしたんすか?」
「実はな……、先生は肝試しに反対していたんだ」
「反対?」
「取り憑かれてしまう生徒がいるんだよ」
空気が一瞬で重くなった。
「またまたぁ、俺達を怖がらせたいだけでしょう?」
佐々木がジャスチャーを交ぜながら微笑む。
「佐々木っ!」
先生の鋭い声に空気が引き締まった。先生はすぐにはっとした顔をする。
「悪い……、うん悪かった。お前達にはケガをして欲しくなくてな」
「何があったんですか?」
真鍋さんが心配そうな顔で先生を見つめる。
「話そうかどうか迷っていたんだが」
先生は夜空を仰ぐと、遠い眼をしながら語りだした。
「白い服を着た女の人が手を振っていた、男の叫び声が聞こえたという話は毎年のよう
に訊いていた。私は幽霊とかお化けとか、そういう類のことを信じていないから恐怖心
からくる見間違いか何かだと思って取り合っていなかったんだ。三年前までは」
「三年前?」
先生が苦笑して頷く。
「そう、三年前に。先生自身が見てしまったんだ」
ざわめいた。誰かが言葉を発した訳ではないが、ざわめきを感じた。
「三年前も私は二年生を担当していて、ここに来たんだ。そしてその年も恒例の肝試し
を開始した。肝試しは順調に進んでいたんだが、最後に問題が起きた。最後の班員の女
生徒が一人いなくなっていたんだ。班員に訊くと肝試しから戻ってきた時にはいたはず
だと口を揃える。ある女生徒に至っては今まで会話をしていたとまで言った」
「ただ単にはぐれただけじゃないすか?」
「私もそう思って他の先生方と手分けをして探すことにしたんだ。電気もない真っ暗な
空間で迷うことは非常に危険だからな。生徒の話から肝試しのゴール付近にいる可能性
が高いと判断して複数の先生に探してもらい、私は肝試しのコースを逆走して探すこと
にした。
懐中電灯で周囲を照らしながらしばらく歩くと、体操座りをしている女生徒を見つけ
た。ひとまず安心して声をかけたんだが、彼女はぶつぶつと独り言のようなことを呟い
ているだけで、まるで私の存在に気付いていないようだった。耳元で声をかけても反応
がなかったので両肩を揺らして声を掛け続けたんだ。彼女は恐怖のあまり、現実逃避を
しているのかと思って更に強く身体を揺すった途端、或るモノに気付いてしまったんだ」
「あるもの?」
「そうだ、彼女の肩に置いている私の手を何かが触ったんだ。少しぬめっていて、冷た
くて、いや、冷たいというより温度がないと言った方が適切かも知れない。それが私の
手をさするように何度も何度も触るんだ。その度にめちょり、めちょりっていう気色悪
い感触が伝わり、全身に悪寒が走った。違和感を覚えて女生徒を見るが、女生徒は膝
の前で手を組んでいる。思わず動きを止めて耳を澄ますと、女生徒のすぐ後ろからザザ
ッ、ザザッ、ザザザッという音がしていたんだ。この時私は気付いてしまった、さっき
から聞こえていた女生徒の独り言だと思っていたものは、実はその後ろから聞こえてい
た音だったことを……」
班員は完全に静まり返っていた。唾を飲む音がはっきりと感じる。
「『彼女の後ろに何かがいる』そう直感した私は彼女の横に廻り、ゆっくり背後を確認し
た。そこには、三歳くらいのおかっぱ頭をした男の子が立っていた。男の子は私の方を
見ながら、私の手を両手でさすっていたんだ。それはさっきよりも確実な感触で、子供
の手とは思えない。まるで皺がれてささくれ立ったおばあちゃんの手のようだった。背
筋に氷水をぶっかけられたような悪寒が全身を襲い、全ての髪の毛が逆立った気がした
よ。
人間というのは、本当の恐怖を感じた時大声は出せないものだと実感したよ。私は『ひ
えっ』っていう情けない声を上げると全力で手を払いのけたが、腰が抜けてしまって立
ち上がれなくなった」
「それマジでやばいやつだ」
佐々木が呟いた。
「のけぞったまま動けなくなった私に男の子がゆっくり近付いてきたんだ。小さな足を
のそのそ動かしながら。普段なから可愛いと感じる動きも、その時の私にとっては恐怖
でしかなかった。男の子は真っ直ぐ私を見つめていた。赤ちゃんのような純粋な眼で。
見てはいけないと思いつつも、本能は眼を逸らすことを許さない。何でかは分からない
が、ここで眼を逸らすと死が訪れると感じたんだ。吸い寄せられるように男の子の眼を
凝視していると、突然頭の中で映像が流れてきた」
肝試しに行くのが心底嫌になってきた。涙ぐんでいる女子もいる。
「まるで昔のフィルム映像のようだった。映像の中ではお父さんとお母さんと男の子の
三人家族が仲良く記念写真を撮る映像が流れてきた。そしてすぐに別の映像に切り替わ
って髪の長い女の人が俯きながら正座している映像、するとすぐに三人家族の映像に戻
る。しばらくすると、また髪の長い女性が座っている映像、その繰り返しだった。何の
目的で作られた映像なんだろう?そう思っていると、次第に映像の切り替わる時間が
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にも女は揺らめきながら確実に歩み寄ってくる。彼女は俯いたままばさばさの長い黒髪
を振り子のように左右に振り、手足はだらりと伸びきって力を感じさせない。『やめてく
れ、頼む、来ないでくれ』私の懇願をあざ笑うように女はズザ、ズザザ、ズザザという
不快な足音を立てている。
恐怖で心臓がボールのように弾んで腹痛まで併発してきた。気持ちは後ずさりをして
いるが、両手で顔をわし掴みにされているように映像から逃れることができない。女は
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を止めるとゆっくり顔を上げた。私はそこから眼を離すことができなかった。眼を閉じ
ることも……。見ておかなければいけないと思ったんだろうな。女の額、眉毛、瞼が順
番に視界に入ってくる。女は眼を閉じているようだった。
女の顔が明らかになるにつれて、私は違和感を覚えた。この女どっかで見たことがあ
る……」
話し疲れたのか、先生が一度深呼吸をした。佐々木は自分の顔に懐中電灯の灯りをあてて点滅させている。真顔なのが不気味だ。
「女は完全に顔を上げて、私と顔を合わせた。この時分かったんだ。この女はもう一つ
の映像に出てきた三人家族のお母さんだ、って。その顔は家族でいた時とは別人のよう
にやつれていた。この家族には何かがあったのか?そう思った瞬間、女が閉じていた眼
を大きく見開いて言ったんだ。
『ユ・ル・サ・ナ・イ』って」
女子のキャーという絶叫が響いた。耳を塞いでいる生徒や、他の生徒の腕にしがみつく生徒もいる。
「ふと気がつくと、ポケットの中に入れていた携帯電話が震えていた。妻からの着信だ
ったんだ。私と女生徒は気を失っていたんだ。あわてて辺りを伺ってみたが、男の子も
女もいなくなっていた。あれは夢だったのか?そう思いながら電話に出ると、妻は開口
一番『大丈夫?』と訊いてきたんだ」
「何で?」
真鍋さんが両腕を擦る。
「妻が言うには『寝ていた息子が突然起きて、私にさようならと言ってお辞儀をした』
と言うんだ。それがどうしたんだ?単に寝ぼけていただけだろうって言うと、妻は『前
お父さんが亡くなった時も息子が同じことをした』と言ったんだ、それで嫌な予感がし
て電話してみたんだと」
「それって……」
月野さんが安堵して微笑む。
「そう、女に殺されそうになった私を妻は救ってくれたんだ。私は自分に起きたことを
伝えるか迷ったが、妻を怖がらてもいけないと思い、大丈夫だと応えて電話を切ろうと
すると、ガーという耳触りなノイズが電話口から聞こえてきたから、何となく耳を傾け
たんだ。すると、はっきりとした声で言ったんだ。
『何だ、死ななかったんだ』
ってな。それは明らかに映像の中に出てきた女の声だった」
話を訊き終えた佐々木が絶叫した。
「先生の奥さんマジ怖えっ!」
最後まで話訊けよと言われながら皆にポカポカ叩かれる佐々木。
おいおい、こんな話を聞かされた後に肝試しに行くのかよ。
いや、別に全然怖くなんかねえんだけどよ。
今日は日柄も悪いことだし、カレーも旨かったし。
ねえ、みんな?肝試しは中止にしよう?
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