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中学時代の思い出 10
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プリプリ怒る先生の後ろ姿を見届けていると、月野さんが制服の袖を引っ張った。
「ねえ、行こう」
頬を膨らませながら俺を睨んでいる。
何で怒ってるんだ?彼女は俺の返事を待たずにつかつか歩き出してしまった。
「月野さん、……月野さーん」
校門を出ても月野さんの様子は変わらない。
それにしても歩くの早いな、ついていくのが精一杯だ。
彼女は早足のまま通学ルートをはずれていく。そっちに行っても何もないはずだ。
「どこ行くの?」
呼びかけにビクッとした様子で動きを止めた。
「行きたいところ、あるから」
彼女の声が少し優しくなった。歩くペースも落ちる。待ってくれているのだろう。
「月野さん歩くの早いんだね。俺じゃ追いつけないよ」
「もうっ、バカッ」
彼女は口を尖らせたままだったが、機嫌は良くなったようだ。うーむ、女心は難しい。
彼女は学校の裏にある山へ入っていった。
浅野山という小さな山だ。
月野さんはこの山に何度も登っているのか、慣れた様子で軽やかに歩いていく。
20分くらい登ったところで道の細いルートに曲がると、小さな公園のような場所に行きつく。
公園といってもブランコと滑り台しかなく、坂を一部切り崩して平らにしてあるだけの簡素な空間だ。
「やっと着いた」
月野さんは息を整えながらベンチに通学カバンを置いた。
「こんな場所あるんだね。てっきり頂上まで登るかと思ったよ」
「頂上は景色が見えないから、あまり好きじゃないの」
彼女はカバンを置いたまま景色の開けた場所へ移動する。
「へえ、こんな風に見えるんだ。少し登っただけで学校が小さく見える」
すっかり日が暮れた町は民家や街灯の灯りで白く輝いている。
綺麗な夜景というには田舎で灯りが少なく、高い建物も見えない。
遠くには真っ黒に蠢く海が巨大な小さく波打っている。高い位置にいるせいか、学校よりも遥かに冷たい風が顔に当たる。
「あれが国道で、あれが海、それにあそこが本田くんの通ってた小学校だね」
小さな子供のように身振り手振りで説明してくれた。どうやら機嫌はすっかり直ったようだ。俺は「うん、うん」と頷きながら彼女の指差す方向に眼を向けた。
一通り説明を終えると、馬場先生はバスケ部の顧問で練習に夢中になりすぎて先生なのに一番最後までシュート練習をしているとか、山田先生は授業が終わるとひたすら妄想上のイケメンをキャンパスに描いてニヤニヤしているというどうでもいい話をした。
「ねえ、行こう」
頬を膨らませながら俺を睨んでいる。
何で怒ってるんだ?彼女は俺の返事を待たずにつかつか歩き出してしまった。
「月野さん、……月野さーん」
校門を出ても月野さんの様子は変わらない。
それにしても歩くの早いな、ついていくのが精一杯だ。
彼女は早足のまま通学ルートをはずれていく。そっちに行っても何もないはずだ。
「どこ行くの?」
呼びかけにビクッとした様子で動きを止めた。
「行きたいところ、あるから」
彼女の声が少し優しくなった。歩くペースも落ちる。待ってくれているのだろう。
「月野さん歩くの早いんだね。俺じゃ追いつけないよ」
「もうっ、バカッ」
彼女は口を尖らせたままだったが、機嫌は良くなったようだ。うーむ、女心は難しい。
彼女は学校の裏にある山へ入っていった。
浅野山という小さな山だ。
月野さんはこの山に何度も登っているのか、慣れた様子で軽やかに歩いていく。
20分くらい登ったところで道の細いルートに曲がると、小さな公園のような場所に行きつく。
公園といってもブランコと滑り台しかなく、坂を一部切り崩して平らにしてあるだけの簡素な空間だ。
「やっと着いた」
月野さんは息を整えながらベンチに通学カバンを置いた。
「こんな場所あるんだね。てっきり頂上まで登るかと思ったよ」
「頂上は景色が見えないから、あまり好きじゃないの」
彼女はカバンを置いたまま景色の開けた場所へ移動する。
「へえ、こんな風に見えるんだ。少し登っただけで学校が小さく見える」
すっかり日が暮れた町は民家や街灯の灯りで白く輝いている。
綺麗な夜景というには田舎で灯りが少なく、高い建物も見えない。
遠くには真っ黒に蠢く海が巨大な小さく波打っている。高い位置にいるせいか、学校よりも遥かに冷たい風が顔に当たる。
「あれが国道で、あれが海、それにあそこが本田くんの通ってた小学校だね」
小さな子供のように身振り手振りで説明してくれた。どうやら機嫌はすっかり直ったようだ。俺は「うん、うん」と頷きながら彼女の指差す方向に眼を向けた。
一通り説明を終えると、馬場先生はバスケ部の顧問で練習に夢中になりすぎて先生なのに一番最後までシュート練習をしているとか、山田先生は授業が終わるとひたすら妄想上のイケメンをキャンパスに描いてニヤニヤしているというどうでもいい話をした。
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