入れ替わった彼女

チャロコロ

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中学時代の思い出 13

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 「伊吹、あんたいつまで寝てんのよ」
 勢いよく扉を開けた母さんが呆れ顔で見下ろしている。
 「おっ?おう。分かった」
 一旦起き上がったが、もう一度布団の中に入る。
 「こらっ、起きんかい」
 パチーン、良い音が鳴った。思いきり頭を叩かれたみたいだ。
 「痛ってー、一瞬記憶がとんだぞ」
 「何言ってんの!記憶がとぶほど勉強してないでしょ」
 ……異議なし。余計頭が痛くなる。
 「そう言えば腹減ってきた。朝飯作ってよ」
 「あさめしぃ?今何時だと思ってんのよ」
 「マジで、そんな時間なの?今何時ですか?」
 「教えなーい」
 くそっ。じゃあ言うなよ!「ホホホッ」と言いながらスキップで階段を降りていく母さんの後ろ姿を見ていると、非常に非常に腹が立つ。
 時間は午後零時を過ぎていた。
 ほんの少しばかりだが、ゆっくりしてしまった。
 時計を見た途端、更にに腹が減ってきた。すぐに燃料補給をしなければ。
 喚起のために窓を開けると、早朝のひんやりした空気と太陽が暖めてくれた空気が混じって室内を通り抜けた。
 空気が澄んでいる時にしか見れない透き通った空に、白くて分厚い積乱雲が綿菓子のようにフワフワ浮いている。
 理科の授業で天気や雲について勉強した時に写真で積雲や積乱雲を見てから、濃い青空と積雲のコントラストに魅せられるようになった。今日は特に端正な空をしている。
 こんなに爽やかな空でも、昨日月野さんと一緒に眺めた夜の街並みには到底及ばない。
 いや、夜景自体は大したものじゃなかった。
 所詮は灯りの少ない田舎町だ。
 彼女が隣りにいたからこそ、この町は輝いて見えたんだ。
 月野遥は俺にとってエンジェルだ。
 神様が俺に彼女を送ってくれたんだ。……何か、我ながらキモイな。
 次は今日のような明るい空を一緒に眺めよう。そう考えると無性に会いたくなってきた、昨日会ったばかりなのに。
 さっそく月野さんにメールを送っておいた。『今日の空は綺麗だよ。君と一緒にこの空を眺めていたい。青空のように澄んでいる君の瞳、雲のように真っ白な心を持った君を愛している』という気持ち悪いメールを送る訳がなく、散々悩んだ挙句、昨日のお礼とまた今度遊ぼうという無難な内容のメールを送っておいた。
 携帯電話をベッドに放り投げて一階に降りようとしたところで、すぐに携帯の着信音が鳴りだした。
 月野さん返事早っ!
 ビーチ・フラッグスのようにベッドにヘッドスライディングして携帯電話を確認すると『佐々木圭吾』と名前が出ていたので、かなーりがっかりしながら電話に出た。
 「はいはい?」
 「おいっ、今どこだよ!家か?」
 明らかに声の調子がいつもと違う。切羽詰まった様子だ。
 「家だけど、どうしたんだよ」
 「……うん」
 急に歯切れが悪くなった。
 「何だよ。今からメシ食うんだよ。遊びなら昼飯食ってから……」
 「月野さんと両親が乗った車が事故を起こしたんだ」
 「はっ……?月野さんは?月野さんは大丈夫だったのかよ?」
 直ぐに事態を飲み込むことができなかった。
 「月野さんは今集中治療室に入ってる」
 「月野さんの両親は無事だったってことか?」
 「……月野さんの両親はまだ分からない」
 「そんなに酷い事故だったのか?」
 「ああ……」
 「今から行くから、病院はどこだ?」
 佐々木の煮え切らない物言いに苛立ちながらも、月野さんが搬送された病院に向かった。
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