5 / 48
初登校
しおりを挟む
高校の校舎は想像以上に小さかった。
あくまで思っていた以上に、というだけだ。
高校といってもここは分校だ。仕方がない。どこにでもあるような3階建ての鉄筋造りの校舎が一つと、体育館があるだけだ。その貧相な校舎とは裏腹に、グラウンドは無駄に広大で、整備が行き届いていないせいか隅の方は所々雑草が生えてしまっている。
本来なら転校前に教科書の配布や学校に関する簡単な説明があると思うのだが、何しろ突然の転校だったうえ、田舎特有ののんびりした気風も加え、学校側からは始業式から登校し、ゆっくりと学校生活に慣れてくれれば良いという、都会では信じられない寛大な配慮を頂いた。
「びっくりした?」
隣りから真菜が見上げる。
「えっ?」
「だって。ぼーっとしながら学校を眺めてたから。
今まで通ってた高校に比べれば小さくて田舎だろうし。あっ、小さい校舎だな、とか思った?
それともこんな山の中に学校があるのかよって思ったの?
でもその通りだよね。私はここで生まれ育ったけど、学校が終わってから皆で遊びに行くところ もなければ、周りは皆顔見知りばっかだから退屈しちゃうしね」
「うん、そうかも知れないな。でも、こんな自然に恵まれた環境に暮らせるのは羨ましいっていう 気持ちもあるよ」
「それは、都会の人が旅行とかでたまに来るから良く見えるってだけ。
ここにずっと住むってなると、苦痛意外の何物でもないと思うな。
スーパーに買い物に行くだけで車で30分以上もかかる訳だし。
当然、コンビニなんて近くにないしね」
そういうものかも知れない。真菜の言葉には、この場所に住む人間の強い説得力がある。
「まあね、でも都会だと自然に触れ合う機会もないよ」
少しだけ反論してみる。
「自然と触れ合うか……。川で遊んだり、カブトムシを捕まえたりってことなんだろうけど。
そういうのは小学生までで卒業だよ」
「じゃあ何をして過ごしてるの?」
素朴な疑問をぶつけてみた。
「うーん、大体パソコンでネットしたり通販で買い物したりゲームしたり……。
あっ、あとはラインでメールのやりとりをしたりって感じかな」
「そんなもんなのか?何だかなぁ」
「はは、幻滅した?そんなものだよ」
驚いた。
田舎で生活している人は自然を利用して生活しているものだと思った。
都会でサラリーマン生活をしていた人が会社を辞めて田舎に生活の場を移し、農業や民宿を始めてその土地の特色を活かしながら奮闘する番組が好きだった。
その影響のせいか、田舎の人は老若男女を問わず、そこでの生活に満足して、人間の数も少ない分ストレスも少ないものだと勝手に決めつけていた。
実際、文明が進みに進んだこの時代では田舎も都会もあまり変わりがないのかも知れない。
真菜と話している間、僕達を追い抜き様に女子生徒2人がこちらを見て立ち去っていった。ど田舎に来る転校生というのは相当珍しいのだろう。
どの生徒も同じような反応をしてくる。これはこれで面白い。それにしても……。
登校時間だというのに、どう見ても圧倒的に生徒の数が少ない。少なすぎる。
「この学校って全校生徒で何人くらいなんだ?」
基樹に訊いてみた。
「おっ?そうだな。九十人くらいってとこかな?なあ更紗」
「そうね、そんなもんね」
思っていた以上に少ない。
「安心しろ、俺達は全員同じクラスだ。といっても各学年一クラスずつしかないからな。何だ?い
わゆるクラスメイトってやつだな」
あくまで思っていた以上に、というだけだ。
高校といってもここは分校だ。仕方がない。どこにでもあるような3階建ての鉄筋造りの校舎が一つと、体育館があるだけだ。その貧相な校舎とは裏腹に、グラウンドは無駄に広大で、整備が行き届いていないせいか隅の方は所々雑草が生えてしまっている。
本来なら転校前に教科書の配布や学校に関する簡単な説明があると思うのだが、何しろ突然の転校だったうえ、田舎特有ののんびりした気風も加え、学校側からは始業式から登校し、ゆっくりと学校生活に慣れてくれれば良いという、都会では信じられない寛大な配慮を頂いた。
「びっくりした?」
隣りから真菜が見上げる。
「えっ?」
「だって。ぼーっとしながら学校を眺めてたから。
今まで通ってた高校に比べれば小さくて田舎だろうし。あっ、小さい校舎だな、とか思った?
それともこんな山の中に学校があるのかよって思ったの?
でもその通りだよね。私はここで生まれ育ったけど、学校が終わってから皆で遊びに行くところ もなければ、周りは皆顔見知りばっかだから退屈しちゃうしね」
「うん、そうかも知れないな。でも、こんな自然に恵まれた環境に暮らせるのは羨ましいっていう 気持ちもあるよ」
「それは、都会の人が旅行とかでたまに来るから良く見えるってだけ。
ここにずっと住むってなると、苦痛意外の何物でもないと思うな。
スーパーに買い物に行くだけで車で30分以上もかかる訳だし。
当然、コンビニなんて近くにないしね」
そういうものかも知れない。真菜の言葉には、この場所に住む人間の強い説得力がある。
「まあね、でも都会だと自然に触れ合う機会もないよ」
少しだけ反論してみる。
「自然と触れ合うか……。川で遊んだり、カブトムシを捕まえたりってことなんだろうけど。
そういうのは小学生までで卒業だよ」
「じゃあ何をして過ごしてるの?」
素朴な疑問をぶつけてみた。
「うーん、大体パソコンでネットしたり通販で買い物したりゲームしたり……。
あっ、あとはラインでメールのやりとりをしたりって感じかな」
「そんなもんなのか?何だかなぁ」
「はは、幻滅した?そんなものだよ」
驚いた。
田舎で生活している人は自然を利用して生活しているものだと思った。
都会でサラリーマン生活をしていた人が会社を辞めて田舎に生活の場を移し、農業や民宿を始めてその土地の特色を活かしながら奮闘する番組が好きだった。
その影響のせいか、田舎の人は老若男女を問わず、そこでの生活に満足して、人間の数も少ない分ストレスも少ないものだと勝手に決めつけていた。
実際、文明が進みに進んだこの時代では田舎も都会もあまり変わりがないのかも知れない。
真菜と話している間、僕達を追い抜き様に女子生徒2人がこちらを見て立ち去っていった。ど田舎に来る転校生というのは相当珍しいのだろう。
どの生徒も同じような反応をしてくる。これはこれで面白い。それにしても……。
登校時間だというのに、どう見ても圧倒的に生徒の数が少ない。少なすぎる。
「この学校って全校生徒で何人くらいなんだ?」
基樹に訊いてみた。
「おっ?そうだな。九十人くらいってとこかな?なあ更紗」
「そうね、そんなもんね」
思っていた以上に少ない。
「安心しろ、俺達は全員同じクラスだ。といっても各学年一クラスずつしかないからな。何だ?い
わゆるクラスメイトってやつだな」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる