僕達は大人になれない

チャロコロ

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初登校

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 高校の校舎は想像以上に小さかった。
 あくまで思っていた以上に、というだけだ。
 高校といってもここは分校だ。仕方がない。どこにでもあるような3階建ての鉄筋造りの校舎が一つと、体育館があるだけだ。その貧相な校舎とは裏腹に、グラウンドは無駄に広大で、整備が行き届いていないせいか隅の方は所々雑草が生えてしまっている。
 本来なら転校前に教科書の配布や学校に関する簡単な説明があると思うのだが、何しろ突然の転校だったうえ、田舎特有ののんびりした気風も加え、学校側からは始業式から登校し、ゆっくりと学校生活に慣れてくれれば良いという、都会では信じられない寛大な配慮を頂いた。
 「びっくりした?」
 隣りから真菜が見上げる。
 「えっ?」
 「だって。ぼーっとしながら学校を眺めてたから。
  今まで通ってた高校に比べれば小さくて田舎だろうし。あっ、小さい校舎だな、とか思った?
  それともこんな山の中に学校があるのかよって思ったの?
  でもその通りだよね。私はここで生まれ育ったけど、学校が終わってから皆で遊びに行くところ もなければ、周りは皆顔見知りばっかだから退屈しちゃうしね」
 「うん、そうかも知れないな。でも、こんな自然に恵まれた環境に暮らせるのは羨ましいっていう 気持ちもあるよ」
 「それは、都会の人が旅行とかでたまに来るから良く見えるってだけ。
  ここにずっと住むってなると、苦痛意外の何物でもないと思うな。
  スーパーに買い物に行くだけで車で30分以上もかかる訳だし。
  当然、コンビニなんて近くにないしね」
 そういうものかも知れない。真菜の言葉には、この場所に住む人間の強い説得力がある。
 「まあね、でも都会だと自然に触れ合う機会もないよ」
 少しだけ反論してみる。
 「自然と触れ合うか……。川で遊んだり、カブトムシを捕まえたりってことなんだろうけど。
  そういうのは小学生までで卒業だよ」
 「じゃあ何をして過ごしてるの?」
 素朴な疑問をぶつけてみた。
 「うーん、大体パソコンでネットしたり通販で買い物したりゲームしたり……。
  あっ、あとはラインでメールのやりとりをしたりって感じかな」
 「そんなもんなのか?何だかなぁ」
 「はは、幻滅した?そんなものだよ」
 驚いた。
 田舎で生活している人は自然を利用して生活しているものだと思った。
 都会でサラリーマン生活をしていた人が会社を辞めて田舎に生活の場を移し、農業や民宿を始めてその土地の特色を活かしながら奮闘する番組が好きだった。
 その影響のせいか、田舎の人は老若男女を問わず、そこでの生活に満足して、人間の数も少ない分ストレスも少ないものだと勝手に決めつけていた。
 実際、文明が進みに進んだこの時代では田舎も都会もあまり変わりがないのかも知れない。
 真菜と話している間、僕達を追い抜き様に女子生徒2人がこちらを見て立ち去っていった。ど田舎に来る転校生というのは相当珍しいのだろう。
 どの生徒も同じような反応をしてくる。これはこれで面白い。それにしても……。
 登校時間だというのに、どう見ても圧倒的に生徒の数が少ない。少なすぎる。
 「この学校って全校生徒で何人くらいなんだ?」
 基樹に訊いてみた。
 「おっ?そうだな。九十人くらいってとこかな?なあ更紗」
 「そうね、そんなもんね」
 思っていた以上に少ない。
 「安心しろ、俺達は全員同じクラスだ。といっても各学年一クラスずつしかないからな。何だ?い
 わゆるクラスメイトってやつだな」
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