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侵入
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先生の一言で教室内が静まりかえったかと思うと、
「ぎゃー」
という轟音のような女子生徒の悲鳴が静寂を破った。
驚いた君島が教室内を振り返ると、彼女は思わず息を飲んだ。
旧校舎にいたはずの縷々子が、教室の中に立っていた。
生徒の視線が縷々子に集まる。
君島の位置からは後ろ姿しか確認できないが、俯き加減に長い髪を垂らした縷々子は、廊下側の席に座っている男子生徒の前に立っていた。
木島竜輝だった。
縷々子は木島を真っ直ぐ見据えていた。木島は最初こそ固い表情をしていたが、次第に表情を緩ませると縷々子に導かれるように腰を軽く浮かび上がらせた。
「ダメッ」
君島は咄嗟に叫んだ。何がダメなのか自分でも分からない。
だが、木島が魅せられたことで連れていかれてしまう、君島はそう感じた。だが縷々子に夢中になっている木島に、君島の声は届かない。
木島は気味の悪い笑みを浮かべると、席を立った。中性的できれいな顔立ちの彼の、こんな表情は見たことがない、君島の腕にゾワッと鳥肌が立った。
縷々子はゆっくりと両手を合わせると、その手の隙間から透明な液体が漏れてきた。その液体はゆっくりと膨らみ始め、一滴の大きな液体になると、潤いを持ったそれは拳大くらいの大きさになったところでゆっくりと落ちて、水風船のように床に弾けた。
その瞬間、鼓膜を引き裂くような爆発音が教室中に響いた。
その破裂が引き金になり、暴風と共に気流が上昇して机上にあった教科書や筆箱、壁に固定されている掲示物が飛び散り、意思を持つように飛び回った。
液体が暴風に触発されたかのように赤く変色すると炎が発生し、またたく間に火炎旋風になって木島を包むと、彼は炎と共に上昇すると消えてしまった。
何事もなかったかのように静まりかえる教室。
刹那の出来事だった。
君島がはっとして辺りを見回すと、散乱していたはずの教科書は机の上に戻っており、掲示物も元通り壁に貼り付けられていた。
幻覚だったの?君島は自分に問いた。
他の生徒も同じものを見たのか、全員がポカンとした顔をしている。
「たっ、たっちゃん。たっちゃん……?」
最初に声を上げたのは、木島の彼女の川原だった。
そこで全員がようやく気付いた、一つだけ変わったことを。
木島がいなくなっていた。
「わ、わっ、わー」
男子生徒が絶叫して教室を飛び出すと、それに続いて他の生徒も雪崩のように出て行った。教室に残ったのは君島や先生、鈴原達の一部だけだった。鈴原が木島の席に近寄って机を触ってみる。燃えたどころか、焦げた跡も見当たらない。
「そんな……」
鈴原が茫然と佇むと、笹原が蒼白な顔で呟いた。
「……きた」
「はっ?」
声が小さくて訊き取れなかった。鈴原が訊き返すと、笹原は小さい声のまま、今度ははっきりと口を開いた。
「縷々子さんが新校舎に入って来た」
「ぎゃー」
という轟音のような女子生徒の悲鳴が静寂を破った。
驚いた君島が教室内を振り返ると、彼女は思わず息を飲んだ。
旧校舎にいたはずの縷々子が、教室の中に立っていた。
生徒の視線が縷々子に集まる。
君島の位置からは後ろ姿しか確認できないが、俯き加減に長い髪を垂らした縷々子は、廊下側の席に座っている男子生徒の前に立っていた。
木島竜輝だった。
縷々子は木島を真っ直ぐ見据えていた。木島は最初こそ固い表情をしていたが、次第に表情を緩ませると縷々子に導かれるように腰を軽く浮かび上がらせた。
「ダメッ」
君島は咄嗟に叫んだ。何がダメなのか自分でも分からない。
だが、木島が魅せられたことで連れていかれてしまう、君島はそう感じた。だが縷々子に夢中になっている木島に、君島の声は届かない。
木島は気味の悪い笑みを浮かべると、席を立った。中性的できれいな顔立ちの彼の、こんな表情は見たことがない、君島の腕にゾワッと鳥肌が立った。
縷々子はゆっくりと両手を合わせると、その手の隙間から透明な液体が漏れてきた。その液体はゆっくりと膨らみ始め、一滴の大きな液体になると、潤いを持ったそれは拳大くらいの大きさになったところでゆっくりと落ちて、水風船のように床に弾けた。
その瞬間、鼓膜を引き裂くような爆発音が教室中に響いた。
その破裂が引き金になり、暴風と共に気流が上昇して机上にあった教科書や筆箱、壁に固定されている掲示物が飛び散り、意思を持つように飛び回った。
液体が暴風に触発されたかのように赤く変色すると炎が発生し、またたく間に火炎旋風になって木島を包むと、彼は炎と共に上昇すると消えてしまった。
何事もなかったかのように静まりかえる教室。
刹那の出来事だった。
君島がはっとして辺りを見回すと、散乱していたはずの教科書は机の上に戻っており、掲示物も元通り壁に貼り付けられていた。
幻覚だったの?君島は自分に問いた。
他の生徒も同じものを見たのか、全員がポカンとした顔をしている。
「たっ、たっちゃん。たっちゃん……?」
最初に声を上げたのは、木島の彼女の川原だった。
そこで全員がようやく気付いた、一つだけ変わったことを。
木島がいなくなっていた。
「わ、わっ、わー」
男子生徒が絶叫して教室を飛び出すと、それに続いて他の生徒も雪崩のように出て行った。教室に残ったのは君島や先生、鈴原達の一部だけだった。鈴原が木島の席に近寄って机を触ってみる。燃えたどころか、焦げた跡も見当たらない。
「そんな……」
鈴原が茫然と佇むと、笹原が蒼白な顔で呟いた。
「……きた」
「はっ?」
声が小さくて訊き取れなかった。鈴原が訊き返すと、笹原は小さい声のまま、今度ははっきりと口を開いた。
「縷々子さんが新校舎に入って来た」
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