旧校舎の少女

チャロコロ

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違和感

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 鈴原にはもう1つ気にかかることがあった。笹原が呟いた言葉だ。
 縷々子さんは旧校舎にしか現れない。去年や一昨年の縷々子さんに関する目撃談を話半分で訊いていた鈴原も、目撃された場所は全て旧校舎だった。
 縷々子さんが今まで新校舎で目撃されたことがないのは、新校舎に入る必要がなかった。
あるいは入ることができなかったが、何らかの理由で入ることができるようになったと考えるべきだろう。どちらにせよ、消えてしまった木島を取り戻すためには縷々子さんについて調べる必要がある。
 それにしても……。
 鈴原は不思議な違和感を覚えた。
 縷々子さんという存在が現れ、クラスメイトの1人が眼の前でいなくなってしまったというのに、生徒の表情は思った以上に明るい。
 昨日は教室には戻りたくないと言っていた女子生徒達も、何事もなかったかのように談笑している。
 一生に1度も味わうことができないであろう不思議な出来事を目の当たりにしたのにも関わらず、彼女たちは突如無限の精神力を得た神様かの如く完全に立ち直っているように見える。
 たった一人、陰のオーラを放つ君島を除いては。
 「おっす」
 鈴原の挨拶に君島が頷く。
 「あんたはいいわねー。私はデリケートだから昨日も寝れなくて身体もだるいし。今日
 もここに来るのが嫌で仕方なかったわよ。あーあ、私も鈴原みたいに飄々と生きていた
 いわ」
 頬杖を付きながら鈴原を見上げる君島。
 「なんだそりゃ、俺は俺で色々考えてるつもりなんだけどな。それに、お前がそんな顔 
 して登校してきたら心配するに決まってんだろ」
 鈴原は気にする様子もなく応える。
 「……ありがと」
 「それより、今は木島を取り戻すことを考えようぜ。
  このままだと木島どころかもっと多くの人間がいなくなってしまうかも知れないぞ。
  そのためには縷々子さんのことを調べないと始まらねえしなあ。
  今日の放課後時間あるか?笹原も入れて3人でやるぞ」
 「そうね、これ以上怖い思いしたくないし……」
 「何何?何の話?」
 振り返ると、登校したての笹原が興味深げに2人の様子を伺っていた。
 「笹原も手伝ってくれよ。今君島と縷々子さんのことを調べようって話をしててな」
 「縷々子さん?何で?あー、この前咲良ちゃんが縷々子さんの後ろ姿を見たって言ってたから?」
 「そうじゃねえよ。いや、それもあるけど。木島の件もあっただろ」
 「木島?木島がどうかしたの?」
 笹原の他人事のような態度に鈴原は苛立った。
 「昨日木島がいなくなったの眼の前で見ただろ?」
 「木島が……?」
 眼を丸くする笹原。が、すぐに笑うと小声で囁いてきた。
 「2人でやりなよ。チャンスじゃん」
 「はあ?何でそうなるんだよ。笹原も手伝えよ、どうせ暇だろ?」
 「失礼な、僕はこれでも一応受験生ですよ。
  そんなことより、もう僕達も子供じゃないんだから、さっさと気持ち伝えたら?
  どうせもうすぐ卒業しちゃうんんだし。咲良ちゃーん、って抱き締めたら上手くいくかもよ」
 「笹原、お前何か勘違いしてねえか?」
  抱き締めるポーズをする笹原を払いのけた。
  鈴原の言葉に嘘はなかった。彼は君島に対して恋愛的な感情を抱いていなかった。
  しかし、何故か君島を放っておくことができなかった。彼女は所謂か弱い性格でもなければ男子 生徒に媚を売るタイプでもない。幼馴染でもない。
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