旧校舎の少女

チャロコロ

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微笑み

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 「授業が終わると、例の女子生徒が縷々子さんに声を掛けて立ち去っていった。その時、 
 離れて行く女子生徒を眼で追うこともなく、席に座ったままの縷々子さんの口の端が吊
 り上がったんだ、以前のような可愛らしい笑顔ではなく粘着質でじめじめとした微笑み。
 それを斜め後ろの席から見ていた俺は背筋が凍りついて頭が真っ白になった。
  その瞬間には逃げるように教室を飛び出していた」
 「そんなに気味の悪い笑い方だったんですか」
 鈴原に、佐々木が違う違うと云わんばかりに首を強く振る。
 「笑い方に恐れ慄いたんじゃない。
  彼女には顔がなかったんだ……。
  それに誰1人気が付いてなかった。
  彼女が微笑んだ時に口だけが再生したみたいに現れて、ようやく違和感を覚えた理由
 が分かったんだよ……。
  あれから54年経った今でも、彼女は、あの時の縷々子さんは生きていたのかどう
 か分からない。
  けどな……、その日、縷々子さんが2つの魂を消した日は、12月1日だったんだよ」
 自殺した生徒の遺書の件についての真相は今となっては分からないが、縷々子さんは3年間の苦楽を共にした仲間や先生から突如犯罪者のように扱われ、クラスメイトの佐々木ですら知らない所で想像を絶する酷い扱いを受けていたのだろう。
 佐々木は敢えてそれを口にしなかっただけかも知れないし、佐々木もその輪に入って縷々子さんをいじめていたのかも知れない。
 いや、そんなことを考えるのはやめよう。
 鈴原は瞼を強く瞑ると、自分を落ち着かせた。今重要なのはそこではない気がしたのだ。
 ただ、単なる恐怖の対象として縷々子さんが語り継がれていることについては同情を覚えた。
 彼女の精神的ショックや恨みは計り知れないものがある。
 それに、縷々子さんが特定の生徒の魂を消すのには、少なくとも理由があることがこれではっきりした。
 あとは、彼女から真相を訊くだけだ。  
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