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3月1日、黒い賞状筒を持って佇む絵里に、ヒカリと嬢ちゃんが寄って来た。
「本当にいいの?言わなくて」
嬢ちゃんが困った様子で眉を下げた。ヒカリは無言のまま絵里を見つめている。卒業前に何度も言われた言葉だった。
絵里も一度も思わなかった訳ではなかった。卒業したら逢える回数も減ってしまう。
卒業式が終わり、高校生でいれる最後の時間。
絵里はガッツに自分の気持ちを伝えるべきか何度も自問自答した。その上での決断だった。
このままでいい、そう絵里は願ったのだ。
絵里は自分のデスクの荷物整理に追われていた。
高校で使う教科書に多数の参考書、それに自分の好きな純文学の本も。
仕事場にあまり荷物を持ちこむタイプではないつもりでいたが、机から出るわ出るわ、本やプリントの嵐。溜息をつきながら荷物を段ボールに詰めては不要なプリントをシュレッダーにかけた。
第一希望の国立大学教育学部に合格した絵里は、勉強だけでなくサークルやバイトにも精を出して最後の学生生活を楽しんでいた。
学部は違うものの、嬢ちゃんも同じ大学に合格してお互いに喜びを分かち合った。
大学3年に上がったころにはサークルやバイトを制御して勉強に励んだ。
当初、絵里は小学校の先生になるために教育学部に入ったのだが、学生生活を送っていくうちに高校の先生になりたいと思うようになり、努力の末なんとか教員試験にギリギリの順位で合格することができたのだった。
嬢ちゃんはその後もヒカリとのお付き合いを順調に続けており、難関の公認会計士を目指して勉強をしながら就職する道を選んだ。
意外だったのは学年一の秀才、ヒカリだった。
彼は合格確実といわれた東京の国立大学に落ちてしまい、一浪した後に再度受験した時にも不合格になってしまったため、地元の私立大学の法学部に進学した。
彼の模試の成績から考えると落ちるはずのないものであったが、最後まで分からないのが受験であり、人生である。
絵里は高校の教師として幾人もの卒業生を見てきたので今となっては理解ができるが、当時はとても驚いたことを覚えている。
ガッツに至っては地元の私立大学に現役で合格した後、地元の県庁に合格して毎日遅くまで仕事に励んでいる。
大学生の時は何度か4人で会う機会もあったが、絵里が教員試験に、嬢ちゃんが資格取得のための勉強を始めた時には、ほとんど会うこともなくなっていた。
大学の入学当初には嬢ちゃんと行動を共にすることの多かった絵里も、学部が違うことで話す機会も減っていき、四年生になった時にはすれ違う時に挨拶を交わす程度になっていた。
絵里にとって極めつけだったのはガッツだった。
彼は大学に入ると彼女を作り、その後も付き合いを続けていたのだった。
当初、ガッツに彼女ができたことを知った絵里はショックを隠しきれず、しばらく泣きあかしたが、30歳を越えた今となってはいい思い出だと思っていた。
絵里も恋愛に縁がない訳ではなかった。
大学時代に同じサークルの男や教師になってからも同僚の男性教師と付き合っていたが、結局上手くいかず、現在も独身だった。
「三嶋先生、春で異動みたいですよ」
先輩の男性教師に紙を手渡され、絵里は驚いた。
2校目の高校に赴任して丸2年しか経っていなかった。
予想よりもかなり早い異動に戸惑いつつ、異動先が書かれた紙を見て更に驚いた。そこには自分の母校の名前が書かれていたのだ。
母校に戻れる。
絵里の喜びは一入だった。あの時の衝撃を思い出すと今でも笑みを隠すことができない。
「本当にいいの?言わなくて」
嬢ちゃんが困った様子で眉を下げた。ヒカリは無言のまま絵里を見つめている。卒業前に何度も言われた言葉だった。
絵里も一度も思わなかった訳ではなかった。卒業したら逢える回数も減ってしまう。
卒業式が終わり、高校生でいれる最後の時間。
絵里はガッツに自分の気持ちを伝えるべきか何度も自問自答した。その上での決断だった。
このままでいい、そう絵里は願ったのだ。
絵里は自分のデスクの荷物整理に追われていた。
高校で使う教科書に多数の参考書、それに自分の好きな純文学の本も。
仕事場にあまり荷物を持ちこむタイプではないつもりでいたが、机から出るわ出るわ、本やプリントの嵐。溜息をつきながら荷物を段ボールに詰めては不要なプリントをシュレッダーにかけた。
第一希望の国立大学教育学部に合格した絵里は、勉強だけでなくサークルやバイトにも精を出して最後の学生生活を楽しんでいた。
学部は違うものの、嬢ちゃんも同じ大学に合格してお互いに喜びを分かち合った。
大学3年に上がったころにはサークルやバイトを制御して勉強に励んだ。
当初、絵里は小学校の先生になるために教育学部に入ったのだが、学生生活を送っていくうちに高校の先生になりたいと思うようになり、努力の末なんとか教員試験にギリギリの順位で合格することができたのだった。
嬢ちゃんはその後もヒカリとのお付き合いを順調に続けており、難関の公認会計士を目指して勉強をしながら就職する道を選んだ。
意外だったのは学年一の秀才、ヒカリだった。
彼は合格確実といわれた東京の国立大学に落ちてしまい、一浪した後に再度受験した時にも不合格になってしまったため、地元の私立大学の法学部に進学した。
彼の模試の成績から考えると落ちるはずのないものであったが、最後まで分からないのが受験であり、人生である。
絵里は高校の教師として幾人もの卒業生を見てきたので今となっては理解ができるが、当時はとても驚いたことを覚えている。
ガッツに至っては地元の私立大学に現役で合格した後、地元の県庁に合格して毎日遅くまで仕事に励んでいる。
大学生の時は何度か4人で会う機会もあったが、絵里が教員試験に、嬢ちゃんが資格取得のための勉強を始めた時には、ほとんど会うこともなくなっていた。
大学の入学当初には嬢ちゃんと行動を共にすることの多かった絵里も、学部が違うことで話す機会も減っていき、四年生になった時にはすれ違う時に挨拶を交わす程度になっていた。
絵里にとって極めつけだったのはガッツだった。
彼は大学に入ると彼女を作り、その後も付き合いを続けていたのだった。
当初、ガッツに彼女ができたことを知った絵里はショックを隠しきれず、しばらく泣きあかしたが、30歳を越えた今となってはいい思い出だと思っていた。
絵里も恋愛に縁がない訳ではなかった。
大学時代に同じサークルの男や教師になってからも同僚の男性教師と付き合っていたが、結局上手くいかず、現在も独身だった。
「三嶋先生、春で異動みたいですよ」
先輩の男性教師に紙を手渡され、絵里は驚いた。
2校目の高校に赴任して丸2年しか経っていなかった。
予想よりもかなり早い異動に戸惑いつつ、異動先が書かれた紙を見て更に驚いた。そこには自分の母校の名前が書かれていたのだ。
母校に戻れる。
絵里の喜びは一入だった。あの時の衝撃を思い出すと今でも笑みを隠すことができない。
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