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第3章

3 - 2 鈍感系ハーレムNTRなんて不名誉すぎる!

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「ああ……もう朝か……」

俺は鳥の鳴き声で目を覚まし、ベッドから抜け出しリビングへ行けば───

「おっ今日はミレーヌが当番か」

「おはようございます雷斗様!すぐに朝食を用意しますね!」

そう言うとミレーヌはパタパタと足音を立てキッチンへと移動、待つこと数分で暖かいスープとパンにカリッカリのベーコンとスクランブルエッグが、テーブルに並ぶ。

俺は湯気を立て、香ばしい匂いを放つベーコンやトロふわのスクランブルエッグに舌鼓をうち、優しい一時を過ごした。


食事を終え、コーヒーを一啜り……

「ミレーヌ。俺はこの後アンジュの居る[は組]に行って情報の整理をしてくるから、留守を頼むよ」

「えー!とかなんとか言って!またアンジュとデートしてくるんでしょー!」

「そんな事はないぞ?むしろその手があったかっ!って思ったくらいだ」

「ぶー!雷斗様の意地悪~」

と頬をリスのように膨らませて抗議するミレーヌの頭を撫でご機嫌を取る。
ミレーヌは気持ちいいのか目尻を下げ膨らんだ頬も緩み───

「旅行から帰って結構経つし、そろそろ次の仕事をしようと思ってね。情報の集まる[は組]へ行くってだけだよ」

「はーい。それじゃ私は素直にカナちゃんの面倒見てますね」

「アンナも置いていくから3人で仲良く庭でも弄っててくれ」

と言い残し俺は街へと繰り出したのだった──





「ちわ!久し振り!その後どーだ?」

「お!」「雷斗の旦那!」「ちゅーっす!」

等々……いかついオッサン達が駆け寄って来るが───

「だぁぁ!うざっ!暑苦しいわ!」
と俺はオッサン達をケルナグール

「んで……情報は集まってるのか?」

「旦那から頼まれた奴等はきっちり調べましたぜ!遠征やらで日数もかかったんですが……旦那の旅行が長引いたこともあって、何とか間に合いやしたぜ!」

紙を取り出し俺に渡すオッサンA。

「助かる!ところで、アンジュは居ないのか?」

「ああ……あねさんなら席を外してグフォ!」

「旦那!久し振り~!」

何か言おうとしたオッサンAの後頭部をぶん殴りアンジュが現れた

「あんた!なんで旦那が来た事を伝えないんだい!ええ!?」


「そ……それは……」


「言い訳はいいわけ!」

スーグニカットナったアンジュはゴスッ!ゴスッ!とオッサンAをしばき倒し……

その後オッサンAは血の涙を流しながら退場させられたのだった。

《哀れなオッサンですね……》

(全くだな……)


「旦那……この後時間ある?良かったらさ……その……ランチでも行かないかい?」

「ああ。アンジュと久々に会えたし食事位の時間なんてなんでもないよ」


「じゃあ準備してくるから待ってるんだよ!」

と言うやアンジュはダッシュで部屋に戻って行った。


それを見計らってオッサンBが一言

「雷斗の旦那……あねさんと今後も仲良くしてやってくだせぇ……」

「ああ。勿論そのつもりだ」

「宜しく頼んます!」

とオッサンBは右手を差し出し……

俺はその右手を掴み握手を───


ミシミシミシ!


(イッテ!くっ……こいつ……)

と俺の右手に圧力を加えているオッサンBを睨むと

ニヤッ

クソ!なんて悪い顔をしてやがるんだ!
そっちがその気なら───ふんぬっ!

俺は握り潰されかけた右手に力を込めると──


バキバキバキ!


「ぐおお!」

オッサンBの右手からは聞こえてはいけない音が聞こえ、オッサンBの顔が苦痛で歪み──


ニヤッ


と俺がお返しに悪い面をしてやれば──


「ぐぎぎ」


と歯を食い縛りながら耐えるオッサンBが白眼を向いた辺りで

「【リカバリー】」

と念じてオッサンBの右手を癒してやると血の涙を流しながら──


「……あねさんを……よろしく頼んます……」


それを見ていたオッサンズは
「良くやった!」
「お前は頑張った!」
「男の中の男だぜ!」

オッサンBを囲みながら熱い涙を流す───

(あ……暑苦しい……)

《とても純粋でキレイな涙じゃぁないですか!》

(はぁぁぁぁ?)

《あのようなキレイな心を持った方達に雷斗さんはなんて所業を……》

(おい!)

《男の熱い友情!すばら!》

(……なら俺じゃなくてあいつらに憑けば?)

《禿げたオッサンは無いですね》

(おまっ!一瞬前は素晴らしい!って言ってたじやねーか!だというのにその言い草!仮ににも女神でしょ!)

《女神にだって選ぶ権利ってものがありますよ。例え心がキレイで素晴らしくても、禿げたオッサンはNGです》

こいつ……

《はっ!まさか雷斗さん!》

(ん?)

《禿げたオッサンに野獣の如く蹂躙される私を見て興奮する性癖があるんですか!なんて人なんでしょう!この変態!NTR!》

(まてまてまて!俺に変な属性付けるな!)




「旦那!待たせたね!」

俺が自称某と熱戦を繰り広げて居た所にアンジュが着替えを終えて戻って来た。


アンジュは先程のパンツ系と皮のコート等の動きやすい服装から───

淡い白桃色のフレアスカートにフリルが可愛い薄手のコートへとコスチュームチェンジ

薄い色の服によってアンジュのキレイで長い赤髪が一段と映える。


「おっ……さっきのホットパンツもいいが、そういう女の子っぽいのもいいじゃないか!」

「旦那……それじゃさっきのあたいが女っぽくないみたいに聞こえるんだけど?」

───ゴゴゴゴゴ───

「あ……いや……ごほん!……さあ!行こうか!」

「ちょっと旦那!誤魔化したね~!」

「はははっ!ほら行くよ!」

と俺はアンジュの手を取り街へと繰り出した……



それを見ていたオッサンズは……

「ぐぬぬ……」
「あねさん……ううう……」
「ぬおおおお!羨ましい!!」

揃って男泣きで見送ったのだった───



そして俺とアンジュはレストランに入り軽く食事を取りながら───

「そういえば旦那……」

「ん?」

「もうアンナとミレーヌとはシタのかい?」

「ぶふぉぅ!ゴホッゴホッ!」

「その調子だとまだ手を出してないのかい……」


俺は吹き出したスープを拭きながら

「というか婚約であって結婚した訳でもなし、順序を飛ばすのはどーなんだよ」

「いやだって……そうじゃないとあたいの順番ごにょごにょ……」

「なんだって?小さくて聞こえなかったんだが?」

「何でもないよ!旦那も女の一人や二人!とっとと手込めにでもなんでもしちまいなよ!」

「ほぁっ!」

「何時までも手を出されないと女の方だって不安になるじゃないさ!」


ピシャーーーン!

な……ん……だと……

アンジュのセリフに俺はまるで雷に撃たれたかの様な衝撃を受けた!


俺が衝撃の余り固まって居ると───

「いいかい旦那……女にだって性欲はある……だというのに相手が手を出してくれない、かといってあの子達の場合、立場的に自分から手を出すこともできない……旦那はこのままだとどーなると思う?」

「わからんが……」

「一人で寂しく済ますかもしれないが……こっそり他の男に走らないとも限らないよ?所謂間男とか……ね」


ガーーーーン!

な……なんてことだ!いやしかし……二人に限ってはそんな事はない……はず……

「わかったらとっとと抱いてやんなよ?」その後はあたいも……ごにょごにょ

「なんだって?最後の方が聞き取れなかったのだが……」

「なんでもないよ!」

と何故かアンジュは顔を真っ赤にして叫ぶ……何故だ……

《はぁぁ……とんだ主人公補正ですね……》

(は?)

《いえいえ、ありがちだな~と》

(ダ女神よ、何が言いたい?)

《乙女心を少しも理解出来ないなんて、ハーレム系の癖に鈍感系って面倒だな~と思っただけですよ?》

(はぁぁぁぁぁ?誰ぁが鈍感か!)

《言わせんな恥ずかしい》

(こいつ……そのセリフ!使い所間違ってるからな!)

まあいい……とりあえず忠告をくれたアンジュには感謝せねば……な

「アンジュ。忠告ありがとう」

言うと俺は素直に頭を下げる


「旦那……それじゃぁ……お礼をおねだりしてもいいかい?」


「ああ。俺に出来る事なら」


するとアンジュは頬を薄桃色に染め伏し目がちに……



「キス……して……」


「ここで……か?」

まだレストランなんだが……


んっ───と瞳を閉じるアンジュ

くっ!可愛すぎる!まさに効果はバツ牛ンだ!


俺はまるでセイレーンにたぶらかされた船乗りのように……身をテーブルから乗り出し、ふらふらと吸い寄せられるように俺は……唇をアンジュの唇へと触れさせた───


俺が唇を離すと、アンジュは上目遣いで俺を見つめ──


「旦那……その……ありがと……」


ズギューーーン!


《これはお持ち帰り待ったなしですよ雷斗さん!今すぐ!さぁ今すぐに宿にでもなんでも連れ込みましょう!そして野獣のように猛り狂った雷斗さんがアンジュさんの初めてを奪うんです!さぁさぁ!》


バカのお陰で一瞬で冷静になったわ。

(うるせーなぁ……って……今なんつった?)

《だからアンジュさんを宿に連れ込むんですよ!》

(違う。その後だ)

《アンジュさんの初めてを雷斗さんが──》

(それだ。アンジュってまだ……その……)

《処女ですね。というかキスも雷斗さん以外とはした事がありませんよ?》

(なっ───)

《責任──取りましょうね?》

聞かなかった事にしよう───今は───


「よし……周囲の目が気になって来たし、そろそろ出るよ!」


俺が照れ隠しに席を立ち上がってそう伝えると、そんな俺を見てアンジュはニヤッと口角を上げ──

「あいよ」

とご機嫌に鼻歌混じりで俺の後に付いてくるのだった───


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