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1章 帝国と姫
23 鈴木、過去の失敗を懐かしむ!
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俺の目の前には、大きな屋敷があった。
襲撃者を助けるフリをして、まんまと拠点まで案内させたのだが、これは随分と大物が掛かったようだ。
「ふぅ……なんとか無事に来れたか……」
「あぁ……改めて礼を言う……」
「なに、気にせず休めよ」
俺はそう言って傷付いた襲撃者から肩をゆっくりと離し、腕を首に回して一瞬の内に首を折る。
「好きなだけね」
俺はここまで案内してくれたマヌケを始末すると、課金ショップを開いて目当ての物をタップした。
「『ハイド薬』これで姿は見えなくなった訳だ」
ハイド薬……これはゲームの領土戦やPKにおいて、必要不可欠なアイテムだ。
これを服用することにより、その身を一時間、空間に溶け込ませて他者から認識されなくなるというものだ。
ハイドを解除するには任意で解除ボタンをタップするか、物理攻撃をするかだ。
本来はジョブでアサシンしか使えないスキルなのだが、当時かなりの人数のアサシンが、その他のジョブを隠れて襲うという事件が乱発し、運営がテコ入れとして実装したと言うわけだ。
これで全員隠れる事が出来るからいいよね?って公式発表があった時は公式HPが鯖落ちする程の攻撃があったとか。
まぁ、俺はそういったPKには利用せず、可愛いキャラクリした女性型アバターをこっそり影から見抜きしていた程度だ。
そして、見抜きしてる最中にハイド薬が切れたのは今となってはいい思い出だ。
(あの後ワールドチャットで変質者認定されたんだよな~)
まぁ、いくらゲームとは言え下半身まる出しで居たのは言い逃れ出来ん事案だったな。あの後、あのネカマちゃんが所属するギルドの連中に会うと、いつも物理的に襲われてたっけ。と失敗した過去を懐かしみつつ屋敷の塀を飛び越えた。
(潜入ミッション!襲撃者の親玉を撃破せよ!って感じかな)
俺は屋敷の巡回を見えない身体をいい事に普通に横を素通りして、堂々と玄関から中に入っていく。
「ん?なんで勝手に開いたんだ?」
「扉の立て付けが悪くなってるんだろ」
なんてマヌケな会話も聞き流しながら、チンタラと屋敷内を散策する。
(なかなか……それっぽい人が見当たらないなぁ……)
俺は屋敷の部屋を片っ端から覗いては移動してを繰り返すと、遂にそれっぽい豪華な部屋を見つけた。
(おお!この部屋だけ異様に家具の質がいいぞ!内装も下は絨毯だし、壁には似顔絵も飾ってあるな)
俺はその豪華な部屋の内部に人が居ないのを確認すると、堂々と物色を始める。
(この似顔絵のヤツがきっとこの屋敷の主だな。しっかし、ガマガエルみたいなツラしてやがんな!)
俺はその気持ち悪い絵を窓から投げ捨てて、部屋の貴重品っぽい物を片っ端からアイテムBOXに投げ込んだ。
(おお!このベッド!弾力がすげー!こんな良い物はガマガエルには勿体無いぜ!)
ベッドも漏れなくアイテムBOXにINしてやると、部屋の中は綺麗さっぱりと物が無くなってしまっていた。
そこにガチャリと音を立てて入ってきたヤツが居た。本物のガマガエル君である。
「おや?」
ガマガエル君は一度部屋を出て──
「流石に部屋を間違えたりせんわいな」
と呟いてガチャリと再び部屋に入り
「なんで何もないんだーー!」
と大声を上げる。マヌケだな。
すると、その声を聞きつけてか、ワラワラと警備兵みたいなのが集まってきた。
「ガマ様!如何しまし──ッ!」
「なッ!」
「ガマ様どうしたんですかい──えぇ!」
などなど、部屋の惨状に現れた警備兵達も目を白黒させている。
って言うか名前まんまだな。
「お前達!まさかグルになってワシのコレクションを持ち出したんじゃないだろうな?!」
「まさか!」
「そんなんしてたら此処には居ませんぜ」
「そうそう。とっくにトンズラしてますって」
首や手を振っては口々にそう言って否定する警備兵達。
ガマと呼ばれた男は、蛙を潰したような顔で地団駄を踏み、顔を怒りに染め上げている。
「ぬああ!一体どうなってるんじゃ!」
「マヌケなガマガエルだな」
その姿に、俺は面白半分に声を出すと
「おい!誰だ!今ワシを馬鹿にした奴は!」
ガマは汚らしくツバを飛ばしながら警備兵達に向かって怒鳴り散らすが、警備兵達はこぞって首をブンブンと振って、違う!俺じゃない!と必死に否定している。
「ヤバイヨヤバイヨー!って言ってよガマちゃん!プッククク」
俺は見えない事をいいことに、全力でガマをからかう。
「何処だ!」
流石に警備兵達ではないと気が付いたガマや、その場に居合わせた警備兵達は、ガランとした部屋を首や目を彷徨わせ、必死に声の発生源を探しているが──当然見つかる訳もない。
「ところでガマちゃん。イザベラ暗殺に失敗してどう?悔しい?ねぇ悔しい?」
「何故それを!」
「全員死んだよ?次はガマちゃんだよ?ねぇどうするの?ねぇねぇどうするの?」
何処からとなく聞こえるであろう、俺の楽しそうな声に顔を赤くしたり青くしたりと忙しいガマ。
警備兵は既に剣を抜いて戦闘態勢を取っている。
「ええい!隠れてないで姿を現せ!」
「わかったよガマちゃん♪」
俺は言われた通りにハイド薬を解除してガマの目の前に姿を現した。
突然目と鼻の先に現れた俺にビクッ!と飛び跳ねるガマを上から叩きつけると「ゲロッ!」と、ガマは潰れた蛙のような声を上げ、床にべチャリと落ちて気絶した。
俺は床に転がったソレを軽く蹴飛ばして壁に寄せると、居合わせた警備兵達に殺気を込めた視線を向ける。
「さて……聞きたい事があるからお前達の雇い主は連れてくけど……どうする?」
そう言って挑発すると、警備兵達は肩を怒らせて剣を構えていつでも突進する構えを見せる。
「野郎!いい気になるなよ!」
「簀巻にして川に流してやんよ!」
「ウホッ!なんたる美少男!」
そう叫んで各自で気合を入れる警備兵達。最後の奴だけは違う所に気合を入れているみたいだが……って舌舐めずりしてハァハァ言ってるよ!思わずケツがキュッ!ってなったわ!
「おい!そのペロペロしてる奴!お前のは切断だかんな!他の奴らもついでに殺してやるからありがたく思えよ!」
そう言って俺が剣を抜くと奴等は俺を囲むようにして一斉に飛び掛かってくる。
「野郎!」
「うらあ!」
「ヤラないか!」
俺はその攻撃を後ろに一歩下がる事で振り下ろされた三つの剣はそれぞれが床を打つ中──まずは一人と正面の男の首を剣を水平に振るって刈り取ると、そのままの勢いで剣を横薙ぎに一閃させ、もう一人の男の頬肉を抉り、頭部を下顎を残して上下にカットする。
そして最後のペロ男は剣を股下から振り上げて、股間もろとも真っ二つに斬り裂いた。
瞬く間に警備兵を殺し尽くした俺は剣を振って血を落とすと、ガマの首を掴んでアイテムBOX内で不良在庫と化していた拠点帰還の巻物を使用した。
襲撃者を助けるフリをして、まんまと拠点まで案内させたのだが、これは随分と大物が掛かったようだ。
「ふぅ……なんとか無事に来れたか……」
「あぁ……改めて礼を言う……」
「なに、気にせず休めよ」
俺はそう言って傷付いた襲撃者から肩をゆっくりと離し、腕を首に回して一瞬の内に首を折る。
「好きなだけね」
俺はここまで案内してくれたマヌケを始末すると、課金ショップを開いて目当ての物をタップした。
「『ハイド薬』これで姿は見えなくなった訳だ」
ハイド薬……これはゲームの領土戦やPKにおいて、必要不可欠なアイテムだ。
これを服用することにより、その身を一時間、空間に溶け込ませて他者から認識されなくなるというものだ。
ハイドを解除するには任意で解除ボタンをタップするか、物理攻撃をするかだ。
本来はジョブでアサシンしか使えないスキルなのだが、当時かなりの人数のアサシンが、その他のジョブを隠れて襲うという事件が乱発し、運営がテコ入れとして実装したと言うわけだ。
これで全員隠れる事が出来るからいいよね?って公式発表があった時は公式HPが鯖落ちする程の攻撃があったとか。
まぁ、俺はそういったPKには利用せず、可愛いキャラクリした女性型アバターをこっそり影から見抜きしていた程度だ。
そして、見抜きしてる最中にハイド薬が切れたのは今となってはいい思い出だ。
(あの後ワールドチャットで変質者認定されたんだよな~)
まぁ、いくらゲームとは言え下半身まる出しで居たのは言い逃れ出来ん事案だったな。あの後、あのネカマちゃんが所属するギルドの連中に会うと、いつも物理的に襲われてたっけ。と失敗した過去を懐かしみつつ屋敷の塀を飛び越えた。
(潜入ミッション!襲撃者の親玉を撃破せよ!って感じかな)
俺は屋敷の巡回を見えない身体をいい事に普通に横を素通りして、堂々と玄関から中に入っていく。
「ん?なんで勝手に開いたんだ?」
「扉の立て付けが悪くなってるんだろ」
なんてマヌケな会話も聞き流しながら、チンタラと屋敷内を散策する。
(なかなか……それっぽい人が見当たらないなぁ……)
俺は屋敷の部屋を片っ端から覗いては移動してを繰り返すと、遂にそれっぽい豪華な部屋を見つけた。
(おお!この部屋だけ異様に家具の質がいいぞ!内装も下は絨毯だし、壁には似顔絵も飾ってあるな)
俺はその豪華な部屋の内部に人が居ないのを確認すると、堂々と物色を始める。
(この似顔絵のヤツがきっとこの屋敷の主だな。しっかし、ガマガエルみたいなツラしてやがんな!)
俺はその気持ち悪い絵を窓から投げ捨てて、部屋の貴重品っぽい物を片っ端からアイテムBOXに投げ込んだ。
(おお!このベッド!弾力がすげー!こんな良い物はガマガエルには勿体無いぜ!)
ベッドも漏れなくアイテムBOXにINしてやると、部屋の中は綺麗さっぱりと物が無くなってしまっていた。
そこにガチャリと音を立てて入ってきたヤツが居た。本物のガマガエル君である。
「おや?」
ガマガエル君は一度部屋を出て──
「流石に部屋を間違えたりせんわいな」
と呟いてガチャリと再び部屋に入り
「なんで何もないんだーー!」
と大声を上げる。マヌケだな。
すると、その声を聞きつけてか、ワラワラと警備兵みたいなのが集まってきた。
「ガマ様!如何しまし──ッ!」
「なッ!」
「ガマ様どうしたんですかい──えぇ!」
などなど、部屋の惨状に現れた警備兵達も目を白黒させている。
って言うか名前まんまだな。
「お前達!まさかグルになってワシのコレクションを持ち出したんじゃないだろうな?!」
「まさか!」
「そんなんしてたら此処には居ませんぜ」
「そうそう。とっくにトンズラしてますって」
首や手を振っては口々にそう言って否定する警備兵達。
ガマと呼ばれた男は、蛙を潰したような顔で地団駄を踏み、顔を怒りに染め上げている。
「ぬああ!一体どうなってるんじゃ!」
「マヌケなガマガエルだな」
その姿に、俺は面白半分に声を出すと
「おい!誰だ!今ワシを馬鹿にした奴は!」
ガマは汚らしくツバを飛ばしながら警備兵達に向かって怒鳴り散らすが、警備兵達はこぞって首をブンブンと振って、違う!俺じゃない!と必死に否定している。
「ヤバイヨヤバイヨー!って言ってよガマちゃん!プッククク」
俺は見えない事をいいことに、全力でガマをからかう。
「何処だ!」
流石に警備兵達ではないと気が付いたガマや、その場に居合わせた警備兵達は、ガランとした部屋を首や目を彷徨わせ、必死に声の発生源を探しているが──当然見つかる訳もない。
「ところでガマちゃん。イザベラ暗殺に失敗してどう?悔しい?ねぇ悔しい?」
「何故それを!」
「全員死んだよ?次はガマちゃんだよ?ねぇどうするの?ねぇねぇどうするの?」
何処からとなく聞こえるであろう、俺の楽しそうな声に顔を赤くしたり青くしたりと忙しいガマ。
警備兵は既に剣を抜いて戦闘態勢を取っている。
「ええい!隠れてないで姿を現せ!」
「わかったよガマちゃん♪」
俺は言われた通りにハイド薬を解除してガマの目の前に姿を現した。
突然目と鼻の先に現れた俺にビクッ!と飛び跳ねるガマを上から叩きつけると「ゲロッ!」と、ガマは潰れた蛙のような声を上げ、床にべチャリと落ちて気絶した。
俺は床に転がったソレを軽く蹴飛ばして壁に寄せると、居合わせた警備兵達に殺気を込めた視線を向ける。
「さて……聞きたい事があるからお前達の雇い主は連れてくけど……どうする?」
そう言って挑発すると、警備兵達は肩を怒らせて剣を構えていつでも突進する構えを見せる。
「野郎!いい気になるなよ!」
「簀巻にして川に流してやんよ!」
「ウホッ!なんたる美少男!」
そう叫んで各自で気合を入れる警備兵達。最後の奴だけは違う所に気合を入れているみたいだが……って舌舐めずりしてハァハァ言ってるよ!思わずケツがキュッ!ってなったわ!
「おい!そのペロペロしてる奴!お前のは切断だかんな!他の奴らもついでに殺してやるからありがたく思えよ!」
そう言って俺が剣を抜くと奴等は俺を囲むようにして一斉に飛び掛かってくる。
「野郎!」
「うらあ!」
「ヤラないか!」
俺はその攻撃を後ろに一歩下がる事で振り下ろされた三つの剣はそれぞれが床を打つ中──まずは一人と正面の男の首を剣を水平に振るって刈り取ると、そのままの勢いで剣を横薙ぎに一閃させ、もう一人の男の頬肉を抉り、頭部を下顎を残して上下にカットする。
そして最後のペロ男は剣を股下から振り上げて、股間もろとも真っ二つに斬り裂いた。
瞬く間に警備兵を殺し尽くした俺は剣を振って血を落とすと、ガマの首を掴んでアイテムBOX内で不良在庫と化していた拠点帰還の巻物を使用した。
応援ありがとうございます!
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