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2章 進軍!ガリナ王国

7 鈴木、5匹のワンちゃんと戯れる!

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「やべえ!マジでやべえ!」

 俺は迫る狼嵐の三叉の槍をエアトスブレードで受け、冥府の狼王の爪を剣で弾き、飛来するヘルウルフの矢をアームで辛うじて弾けばブラッドファンウルフの氷の礫を鎧の防壁で相殺する。

「コイツら!なんて連携してんだよ!危ね!なかなか攻撃できねーぞ!うわッ!」

 そうやってボス5体の攻撃をなんとか捌いている中、悠々と進軍していくガリナ混成軍の背中を見て更に焦りが増す。

「とにかく現状を打破せねば!タイガーシャウト!」

 スキル、タイガーシャウトを発動させると俺の前面にガオン!と虎のエフェクトが発生し、黄色いオーラが俺を中心に円上に広がる!

「ググッ!」
「ギャウ!」
「グルル……」

 俺を囲って近接戦闘を仕掛けていた冥府の狼王、ブラウルフモンク、狼嵐が範囲スタンスキルに巻き込まれて気絶してその動きを止める!
 俺はすかさず後衛のヘルウルフとブラッドファンウルフに肉薄し、剣を腰に差してエビルタイガーアームの能力〈打撃威力向上〉を発動させた!
 光り輝く拳を目の前で弓を構えるヘルウルフの顔面に突き刺した!

「おおおおオラァ!」

 ドガン!と金属がぶつかるような激しい音をたててヘルウルフの顔面が陥没する。

「次はテメーだあぁぁ!うおおおお!」

 ブラッドファンウルフは肉薄する俺に近距離から毒霧を吐くが、俺の鎧エビルパオームメイルの能力〈状態異常無効〉の前には無意味だ!

「どららららららら!」

 マヌケにも口を大きく開けたブラッドファンウルフの口に手を突っ込み舌を掴んで引っ張り出すと、苦しそうに呻くヤツのボディに全力のボディブローを連続で叩き込む!

「真気ぃぃぃぃ解放ぉぉぉぉぉぉ!」

 真気を解放して全力の拳を振り抜けば、ブラッドファンウルフの胴体を突き抜ける。

 べチャリと大地に落ちたブラッドファンウルフはビクンビクンと痙攣して息絶えた。

「ディスティニーソード!」

 陥没した顔もお構いなしに起き上がって大きな弓を構えたヘルウルフに、剣を抜いた俺が放った無数の光の刃が雨あられと降り注ぎ、切り刻まれたヘルウルフは肉片となって事切れた。

 そこにやっと気絶から立ち直った3体のボスが俺に迫るが、遠距離からの支援のないコイツらのなぞ物の数ではない!

「ブレードナイトメア!」

 俺は一番の難敵となる狼嵐に向けてヒューマンがLv70で覚えるスキル〈ブレードナイトメア〉を放つ!
 エビルナイトブレードから放たれた黒い波動は狼嵐の全身を傷付けながら大きく後方に吹き飛ばした。

「青いワンちゃん!覚悟しろよおお!エアトスブレード!」

 俺は再び不可視の刃を形成し、エビルナイトブレードと同時に振り下ろす!

 冥府の狼王は目に見えるエビルナイトブレードを両腕の爪で受け止めようと身体を動かした所に不可視の刃が肩から斜めに振り下ろされ、切り口から斜めに胴を滑らせて崩れ落ちた。

 俺が武器を振り切った一瞬のスキに背中からブラウルフモンクが棍で突くが俺の防壁がソレを許さない。

 キン!と硬質な音を立てて棍を弾く。

 俺は反転して一気に間合いを詰めエアトスハンマーを厚い胸板に叩き込む!

「グルル」と苦しそうに呻くブラウルフモンクに俺は追撃すべく、エビルパンサーガードの特殊能力〈ブラストキック〉を発動させると俺の両足は真っ赤に燃え、飛び上がってヤツの顔面を踏みつける!

「ガッ!」と短い悲鳴を上げてたたらを踏むブラウルフモンクの顔面は真っ赤に燃えている。
 やがて息が出来なくなったブラウルフモンクはドウ!と大地にひれ伏した。
 念の為首を切り落とせば、今さっき吹き飛ばした狼嵐がゆっくりと戻って来た。

「遅いお帰りだったな!お前の取り巻きは全て片付けたぞ!」
「グルル……」
「さぁ!俺とお前のラストバトルだ!」

 唸る狼嵐に俺は手始めにエアトスハンマーをヤツが騎乗する狼に撃ち込み動きを止める!

「取り敢えずいつまでも上から見下ろしてんじゃねーぞ!」

 俺は再びブラストキック発動させてをヤツが騎乗する狼に向けて回し蹴りを放ち、皮膚を炎上させ、苦しみに藻掻く狼の顔面をエアトスソードで斬り刻む!

 狼は血みどろになり、血飛沫を撒き散らして横に倒れるがその瞬間、ヒラリと宙を舞うと華麗に着地する狼嵐。

「グルル!」
「ハハッ!悔しそうに鳴いてんじゃねーぞ!大体そんな駄犬に乗った状態で俺に勝てると思ってたんじゃねーだろうな?!」
「グルアアアア!」

 俺の言葉が理解出来るのか、はたまたペットが殺された事に腹を立てているのかは分からないが、激しい怒りの波動を全身から発して三叉を振るう狼嵐。

「当たんないぜ!」

 俺はヒラリと槍を避けるとお返しだとばかりに剣を振って狼嵐が纏う金色の鎧に傷を付ける。
 しかし、調子が良かったのも初めの内だけで、狼嵐の激しい槍さばきに戦況は拮抗状態となる。

「くっそー……大したスキルなんてないくせして粘るんじゃねーよ!まったく、リアルになるとこんな技巧派になるとは思わなかったぞ!運営仕事し過ぎだろ!」

 俺は悪態を吐きながらも突き出される槍を受け、避けてと反撃のチャンスを窺う。

 そして数合の打ち合いの中、遂にチャンスが訪れた!

 突き出された三叉の槍を俺の剣が絡めて押さえ込む事に成功し、続くエアトスブレードが押さえ込まれて余裕がない槍の柄をぶった斬ったのだ!

 自慢の得物を失って前にバランスを崩す狼嵐に俺は飛び上がりながら剣で顎を打ち上げる!
 仰け反る狼嵐に飛び上がった俺は上空からの振り下ろしによる兜割りを叩き込む!

 頭部を激しく揺らされてか、ふらつく狼嵐にリキャストタイムが終わったアレを解き放った!

「同じ嵐だ!どっちが上か試してみろよ!エアトスサイクロン!」

 超近距離から放った全力の竜巻は狼嵐に喰いつくとギャリギャリと黄金の鎧を削り出す。
 必死に両足で踏ん張っている狼嵐だったが、サイクロン先生のパワーの前に足が浮くと、最早狼嵐に残された手はなかった。

 遥か上空までサイクロン先生に連れ去られ、ゆっくりと時間をかけて落下してきた狼嵐の肉体は骨格がグチャグチャに変形して虫の息となっている。

「スゲーな。サイクロンを耐えた……いや結局耐えれてないか。もう死ぬ寸前だしな」

 俺は流石サイクロン先生!と讃えると、無様に転がっている狼嵐の頭部を思い切り踏み抜いてトドメを刺した。



 
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