2 / 21
向日葵の蕾の頃
向日葵の蕾の頃②
しおりを挟む
「ん…………っ!」
補習が終わって思い切り伸びをする。
これでまだ初日なんだよなー。
こんな暑い中でやるのは流石に集中力とかの問題で明日からは教室を変える事にしたらしい。
わざわざ空調が壊れてるところでやる事ないもんね。
他の補習仲間達は逃げるように教室から退散していく。
生徒会は教材の片付けをしている。
舞と話したかったけど、まぁ、生徒会の仕事があるなら仕方ない。
また機会あるよね、きっと。
というか、生徒会って夏休みなのにこんな事もして大変なんだな……。
さて、ボクも部屋に帰ろっと。
「おーい、蓮乃ー」
前の机でぐったりしてる蓮乃の腰の部分を両側からつつく。
ガタン、と音を立てて体を起こす。
「それはズルいです」
「ほら、暑いから戻るよ」
恨みがましい目を軽く流して教室を後にする。
後ろから、うーうーと唸りながら蓮乃が付いてくる。
蓮乃は補習仲間にしてルームメイトの一人で、色々ともう慣れた。
だいたいは中等部からエスカレーターで上がる人が多い中で、同じ外部入学だから既に出来上がってるグループに入るより、自然と一緒にいることが多い。
蓮乃はただめんどくさいだけかもしれないけど。
学校を出て寮に向かう。
寮は3棟あって、それぞれに3年生から1年生までがだいたい均等になるように割り振られてる。
その中心に食堂やカフェ、大浴場などがある大きな建物があり、憩いの場になっていて、各学年3クラス分の人数分収められるようになってるから、それなりの広さもある。
よくグランドハウス、もしくは略してグラハスと呼ばれてる。
寮の部屋は2人、もしくは3人部屋で、それぞれ入寮の際に希望等を訊かれて、一応部屋割りが考慮されるらしい。
ボクは舞と一緒の部屋が空いていないか確認する訳もなく、何処でも良いと答えた。
後で知ったけど、生徒会は一人部屋になって、寮じゃなくグランドハウスに部屋を持つ事になるらしい。
仕事で遅くなったりする事があったりするからなのかな、詳しくは知らない。
「ふぃー、ただいまー」
「うぅ……クーラー、クーラーはよ……」
入ってそのままエアコンの前に陣取る蓮乃。
「はいはい」
ボクはエアコンの冷房を点けた。
「ふぉーいーきーかーえーるー」
冷風を浴びて蓮乃の髪がなびき、声も元気になってきた。
「あ、結んであげるよ。今朝は時間なかったし」
「うん、お願いー」
蓮乃はの髪は髪質的に普通に結っても直ぐ解けるので結構コツがいる。
「お団子で良い?」
「うん」
トコトコとエアコンの前に椅子を持ってきてこちらに背を向けて座る。
その背中に道具を持って歩み寄る。
よっぽど暑かったんだな。
蓮乃の髪をセットすると、汗ばんで火照ったうなじが現れた。
「おー、涼しいー。ありがとーサクサク」
「どういたしまして……っと」
ボクもベットに倒れ込む。
軽く目をつぶって疲れた頭を労る。
サクサクというあだ名は名前が朔月 咲弥だからか、昔からよく呼ばれるあだ名で、性格的にもあってると自分でも思う。
蓮乃にいたっては自己紹介した時に美味しそうだよね、と言われた。
美味しそうって何だよ、ボクはお菓子じゃないよ、てツッコンだら驚いた顔して、その後一人でウケてた。
第一印象は変な人だったなー、そういえば。
その髪をまとめてクーラーに冷やされて元気を取り戻した蓮乃は、机にタブレットPCを出して何か作業を始めてた。
また何かのイラスト描いてるのかな。
前に演劇部のパンフレットのイラスト描いたりしてたし、そういうのだと思う。
作業中は絶対に見せてくれないんだもん。
前に無理に覗こうとしたら一週間謝るまで無視されたからね。
寮の同室で気まずくなるのは辛い。
もともと二人で何かする訳ではないから、見た目にはそんなに変わらないんだけどね。
もう一人の同居人の先輩にまで何とかしなさい、て怒られた。
「ふわっ……」
小さく欠伸が漏れる。
こうなると布団の包容力にそのまま身を委ねたくなるな。
部活にも入ってないからこういう時ヒマだ。
何となく手持ち無沙汰で、ベッドから立ち上がって、窓辺に寄ってみる。
「あ……」
グランドハウスに向かって、キラキラ金色の髪を陽光に輝かせて足早に歩く姿が見えた。
「ちょっと出てくるね」
「あーい」
蓮乃の返事を聞き終わるより早く部屋を出て、グランドハウスに向かう。
その足音はどこか弾んでいた。
「はぁ……はぁ……」
全力ダッシュした訳では無いのに、息が切れていた。
衰えたなー……。
一年間部活やってなかったツケだな。
あと、暑い。
外がこんなに暑いことをすっかり忘れていた。
「うひー……」
グランドハウスに着く頃には、折角の冷えた体がもう汗をかきはじめてた。
食堂とかをチラって見ても舞の姿は見当たらない。
と、すると……。
確か、生徒会の部屋は一番上の階だっけ。
「ふぅー……」
階段の前で一息つく。
別に立ち入り禁止になってる訳でもないけど、普段入ることのない領域に少し緊張する。
よし、行こう。
最上階に着くと、下の喧騒は何処か遠く、この階の住人が出払ってるからか、とても静かだった。
舞は部屋にいるのかな。
って……!
「あー……」
部屋が分からない。
ドアの横には正方形のプレートに1から5まで号室を表す数字がそれぞれ書かれてるだけだった。
「うーん……」
困った。
たぶん、生徒会長だから最大の5か最小の1であるとは思うけど……。
ノックしてみて舞じゃなかったらどうしよう……。
生徒会に親しい人なんてもちろんいない。
人見知りを発動した臆病な心が鼓動をだんだんと速めていく。
オロオロしてると、階段登りきってすぐの1番の扉の奥からスリッパの音が近付いてきた。
「あ、葵ちゃ……あれ?誰もいない?確かに足音が音したんだけど……」
開く直前にドアの影に息を押し殺して隠れた。
でも、その少し開いたドアの向こうから聞こえた声は幸いにも舞の声だった。
「舞?」
小さく問いかけてみる。
緊張してたせいで思ったよりも小さかったかもしれない。
「え?」
ドアの開いてる方に歩み寄る。
「舞」
「あ、ちょ、ちょっと待って」
バタンと目が合った瞬間に閉められた。
えーーーーーーーーーーーーーー……………………!?
ちょっと思い描いた感動的な再会シーンはもろくも崩れ去った。
ちょっと涙まで零れそうになってたのに……。
あ、いや、やっぱり、今の無しで……!
何とも思ってない……!
感動的なとか何も考えてない……!
あまりのショックと混乱で誰にもする必要のない言い訳を並べ立てた。
「あら、どちら様?」
お陰で後ろから階段を登ってくる人の気配に気づけなかった。
補習が終わって思い切り伸びをする。
これでまだ初日なんだよなー。
こんな暑い中でやるのは流石に集中力とかの問題で明日からは教室を変える事にしたらしい。
わざわざ空調が壊れてるところでやる事ないもんね。
他の補習仲間達は逃げるように教室から退散していく。
生徒会は教材の片付けをしている。
舞と話したかったけど、まぁ、生徒会の仕事があるなら仕方ない。
また機会あるよね、きっと。
というか、生徒会って夏休みなのにこんな事もして大変なんだな……。
さて、ボクも部屋に帰ろっと。
「おーい、蓮乃ー」
前の机でぐったりしてる蓮乃の腰の部分を両側からつつく。
ガタン、と音を立てて体を起こす。
「それはズルいです」
「ほら、暑いから戻るよ」
恨みがましい目を軽く流して教室を後にする。
後ろから、うーうーと唸りながら蓮乃が付いてくる。
蓮乃は補習仲間にしてルームメイトの一人で、色々ともう慣れた。
だいたいは中等部からエスカレーターで上がる人が多い中で、同じ外部入学だから既に出来上がってるグループに入るより、自然と一緒にいることが多い。
蓮乃はただめんどくさいだけかもしれないけど。
学校を出て寮に向かう。
寮は3棟あって、それぞれに3年生から1年生までがだいたい均等になるように割り振られてる。
その中心に食堂やカフェ、大浴場などがある大きな建物があり、憩いの場になっていて、各学年3クラス分の人数分収められるようになってるから、それなりの広さもある。
よくグランドハウス、もしくは略してグラハスと呼ばれてる。
寮の部屋は2人、もしくは3人部屋で、それぞれ入寮の際に希望等を訊かれて、一応部屋割りが考慮されるらしい。
ボクは舞と一緒の部屋が空いていないか確認する訳もなく、何処でも良いと答えた。
後で知ったけど、生徒会は一人部屋になって、寮じゃなくグランドハウスに部屋を持つ事になるらしい。
仕事で遅くなったりする事があったりするからなのかな、詳しくは知らない。
「ふぃー、ただいまー」
「うぅ……クーラー、クーラーはよ……」
入ってそのままエアコンの前に陣取る蓮乃。
「はいはい」
ボクはエアコンの冷房を点けた。
「ふぉーいーきーかーえーるー」
冷風を浴びて蓮乃の髪がなびき、声も元気になってきた。
「あ、結んであげるよ。今朝は時間なかったし」
「うん、お願いー」
蓮乃はの髪は髪質的に普通に結っても直ぐ解けるので結構コツがいる。
「お団子で良い?」
「うん」
トコトコとエアコンの前に椅子を持ってきてこちらに背を向けて座る。
その背中に道具を持って歩み寄る。
よっぽど暑かったんだな。
蓮乃の髪をセットすると、汗ばんで火照ったうなじが現れた。
「おー、涼しいー。ありがとーサクサク」
「どういたしまして……っと」
ボクもベットに倒れ込む。
軽く目をつぶって疲れた頭を労る。
サクサクというあだ名は名前が朔月 咲弥だからか、昔からよく呼ばれるあだ名で、性格的にもあってると自分でも思う。
蓮乃にいたっては自己紹介した時に美味しそうだよね、と言われた。
美味しそうって何だよ、ボクはお菓子じゃないよ、てツッコンだら驚いた顔して、その後一人でウケてた。
第一印象は変な人だったなー、そういえば。
その髪をまとめてクーラーに冷やされて元気を取り戻した蓮乃は、机にタブレットPCを出して何か作業を始めてた。
また何かのイラスト描いてるのかな。
前に演劇部のパンフレットのイラスト描いたりしてたし、そういうのだと思う。
作業中は絶対に見せてくれないんだもん。
前に無理に覗こうとしたら一週間謝るまで無視されたからね。
寮の同室で気まずくなるのは辛い。
もともと二人で何かする訳ではないから、見た目にはそんなに変わらないんだけどね。
もう一人の同居人の先輩にまで何とかしなさい、て怒られた。
「ふわっ……」
小さく欠伸が漏れる。
こうなると布団の包容力にそのまま身を委ねたくなるな。
部活にも入ってないからこういう時ヒマだ。
何となく手持ち無沙汰で、ベッドから立ち上がって、窓辺に寄ってみる。
「あ……」
グランドハウスに向かって、キラキラ金色の髪を陽光に輝かせて足早に歩く姿が見えた。
「ちょっと出てくるね」
「あーい」
蓮乃の返事を聞き終わるより早く部屋を出て、グランドハウスに向かう。
その足音はどこか弾んでいた。
「はぁ……はぁ……」
全力ダッシュした訳では無いのに、息が切れていた。
衰えたなー……。
一年間部活やってなかったツケだな。
あと、暑い。
外がこんなに暑いことをすっかり忘れていた。
「うひー……」
グランドハウスに着く頃には、折角の冷えた体がもう汗をかきはじめてた。
食堂とかをチラって見ても舞の姿は見当たらない。
と、すると……。
確か、生徒会の部屋は一番上の階だっけ。
「ふぅー……」
階段の前で一息つく。
別に立ち入り禁止になってる訳でもないけど、普段入ることのない領域に少し緊張する。
よし、行こう。
最上階に着くと、下の喧騒は何処か遠く、この階の住人が出払ってるからか、とても静かだった。
舞は部屋にいるのかな。
って……!
「あー……」
部屋が分からない。
ドアの横には正方形のプレートに1から5まで号室を表す数字がそれぞれ書かれてるだけだった。
「うーん……」
困った。
たぶん、生徒会長だから最大の5か最小の1であるとは思うけど……。
ノックしてみて舞じゃなかったらどうしよう……。
生徒会に親しい人なんてもちろんいない。
人見知りを発動した臆病な心が鼓動をだんだんと速めていく。
オロオロしてると、階段登りきってすぐの1番の扉の奥からスリッパの音が近付いてきた。
「あ、葵ちゃ……あれ?誰もいない?確かに足音が音したんだけど……」
開く直前にドアの影に息を押し殺して隠れた。
でも、その少し開いたドアの向こうから聞こえた声は幸いにも舞の声だった。
「舞?」
小さく問いかけてみる。
緊張してたせいで思ったよりも小さかったかもしれない。
「え?」
ドアの開いてる方に歩み寄る。
「舞」
「あ、ちょ、ちょっと待って」
バタンと目が合った瞬間に閉められた。
えーーーーーーーーーーーーーー……………………!?
ちょっと思い描いた感動的な再会シーンはもろくも崩れ去った。
ちょっと涙まで零れそうになってたのに……。
あ、いや、やっぱり、今の無しで……!
何とも思ってない……!
感動的なとか何も考えてない……!
あまりのショックと混乱で誰にもする必要のない言い訳を並べ立てた。
「あら、どちら様?」
お陰で後ろから階段を登ってくる人の気配に気づけなかった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる