話花【咲く花舞う花巡る季節】-向日葵の見上げる頃俯く頃に-

葵冬弥(あおいとうや)

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向日葵の蕾の頃

向日葵の蕾の頃③

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「えっ、あ、いや、その……」

うわー、しかもさっき舞と監督役やってた人だ。

「1年生みたいだけど、どうかしたの?」

言葉は優しそうなのに、眼鏡の奥のキツそうな視線に狼狽える。

「あ、葵ちゃん?」

ドアの向こうから舞が声を上げた。

「会長、さっきの大丈夫だった?後のは全部やっておいたから」

葵さんがドアの方に向いて返事する。

「あ、ありがとー。うん、制服が汚れただけだよ。着替えついでにシャワーも浴びちゃった」

「あ、ズルい」

「葵ちゃんも今のうちに浴びたら?午前中はもう何も無いでしょ?」

「うーん、それもそうね」

スン、と自分の服の匂いをかいだ。

「じゃ、お言葉に甘えるわね」

「はーい」

「あ、そうそう」

「ん?」

チラリとこちらを見る。

睨まれたみたいで一瞬ドキッとする。

「一年生の子が来てるんだけど、知ってる?」

「あぁ、うん、さっき補習に来てた子でしょ?」

「そう言われてみれば……」

顔を寄せてマジマジと見られる。

「さっきので分からないところ聞きに来たみたいなの。あ、えっと、もう大丈夫、開いてるから入って良いよ」

何も持ってきてないけどね。

「あ、はい、分かりました」

とりあえず、調子を合わせる。

「ふーん、偉いわね」

感心の声をかけられた。

その目は相変わらず睨んでるみたいだけど。

ボクは後ろから視線を感じながらいそいそと舞の部屋のドアを開けて入る。

「はぁー……」

後ろ手にドアを閉めると暑いのに冷たい汗が背中を這った。

息が詰まりそうだった。

あぁいう人苦手なんだよね……。

「あ……」

「ん?」

下げていた目線を上げると、そこにはバスタオルを肩にかけてパンツを履こうとしてる舞が…………ーーーん????

ちょっと待ってどういう????

「咲弥くんのエッチ……!」

小声で上目遣いに抗議される。

「ちょ、なんっーー」

「しーっ」

口を手で塞がれて、舞は自分の口の前に人差し指を立てる。

久しぶりの舞の香りが強く鼻を刺激して鼓動が跳ね出す。

しかも、舞は下着だけつけたほぼ裸だ。

艶やかな色白の肌が眩しく輝く。

思わず見とれそうになる。

いや、見とれてる。

透き通るような金髪、パッチリとした眼に碧く透き透った瞳、桜色の唇、女の子なら誰もが憧れるだろう容姿。

久しぶりにこんなに近くでマジマジと見た。

前に合った時より、さらに魅力的になっている。

生唾が喉を通る。

落ち着け、落ち着け、と唱えても反対に鼓動は高鳴り、顔はどんどんと熱くなっていく。

「ふぅー……ちょっと待っててね」

口から手を離すとタタタタッと奥に姿を隠す。

ボクはその場に立ち尽くしてただ早まる鼓動と熱くなった顔を落ち着けるのに注力した。

今日半日だけでなんか刺激強過ぎるよ……。

「お待たせっ」

奥から制服に着替えた舞が姿を現す。

この後も生徒会の仕事なんだろうな。

ちょいちょい、と手招きされるままに奥に歩を進める。

舞の部屋は広いのにあまり物が無くてシンプルだった。

ちょっと意外。

そして一人部屋なのに私の部屋より広い。

生徒会特権かな。

「まま、座ってよ」

舞は高そうなソファーに座って横を叩く。

そこにおずおずと腰掛けると、ドーンと言って肩に寄りかかってきた。

相変わらず距離が近い。

「いやー、急にくるからビックリしちゃったよ」

顔はこちらには向けず、その煌びやかな金色だけが目に入る。

「ご、ごめん……」

「ずーっと学校では無視されるし」

「してないし」

「じーっと熱い視線送っても気づかないし」

「知らないし」

「スペシャルスマイルで笑いかけてるのに嫌そうな顔するし」

「気持ち悪いし」

「あ、ひどーい」

あははは、と笑っているけどそれは前に聞いていたのとは何処か違っていた。

違和感が、お腹の中で気持ち悪さとなって渦巻く。

「ねぇ、マーー」

「ねぇ、咲弥くん」

ボクが発し終わるより早口で被せられる。

「なに?」

だから、ボクはいつものように引いて舞の言葉を待つ。

「どうして来たの?今まで来なかったのに」

「え?」

さっきまでのと違ってその言葉には温度は無かった。

ううん、むしろ冷たい。

その冷たさにボクはどう答えて良いか、応えたら良いのか、とっさには分からなかった。

「え、えっと……」

久々に話せて変わってないことが分かったからなのもあるけど、そんなこと言えるわけもないし。

「ごめん、何でもないよ。忘れて。じゃあ、私、生徒会の仕事の前にご飯食べなきゃなんだけど、一緒に食べる?」

「う、うん……」

舞は立ち上がってボクの手を取って立たせるけど、その時に浮かべてる笑顔はやっぱりただ綺麗な作り物のような笑顔で違和感だった。

口の中で言葉にならない何かを噛み潰しながら、舞に促されるままに階下の食堂に向かう。

わずか数分の滞在時間。
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