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「スズキ、頭を上げよ。それではまともに話も出来ん」
董卓は土下座するスズキに対して声を掛けるが、スズキは土下座したままだった。
何しろ、董卓は権力を握ってから拷問や虐殺などの暴虐の限りを尽くした存在なのだ。
スズキはそんな董卓を豚顔のオーク扱いしてしまった事でビビりまくっていて、頭を上げる事など出来なかった。
「おぬしが儂の事を知っているのなら、儂の悪行を恐れているのだろう。だがなスズキよ。おぬしは儂の怪我を治してくれた恩人だ。そんなおぬしに手を上げるつもりは無いぞ。だから頭を上げよ」
董卓が落ち着いた声でそう話し掛けると、スズキは恐る恐る顔を上げた。
「・・・でも、俺、董卓さんの事をオークと間違えましたよ」
「それは出会い頭の咄嗟の事であろう。気にしてはおらん。それより、その『おーく』とやらの事を詳しく聞きたい。そこの『ごぶりん』の様に突然襲ってくるのか?」
董卓はオーク扱いされた事よりも、オークそのものの方が気になっていた。
「そうですね。ゴブリンやオークに限らず、基本的に魔物は人間を襲います。食べるために。それと、ゴブリンやオークなどは女性を性的対象にもしていますね。奴らは人間の女性も妊娠させる事が出来るので」
「なるほどな。ならば見付け次第、息の根を止める方がいいのか」
董卓は『魔物』という存在が人間と相容れないものだと理解した。
「そうですね。戦って勝てるならそうした方がいいです。報奨金も出ますし」
「そうなのか。なら、そこのごぶりん二体でどれくらいの金になる?」
「うーん、ゴブリン二体だと、一食分くらいにしかならないです」
「そうなのか。儂は一文無しなんだが」
「これからお金になりそうな獲物か、薬草みたいな金になる物を見付けないといけませんね。俺も貯えが無いので・・・」
「世知辛いのう」
「全くです」
董卓とスズキは二人してため息を吐いた。
「ところで、『おーく』とやらはどれくらいの金になるのだ?」
「オークですか?オークなら肉も売れるので一か月分の生活費には十分なると思いますよ」
「何?『おーく』は肉も売れるのか?」
「はい。オーク肉は上等な豚肉って感じで売買されています」
「そうか!なら、『おーく』を探さないとな!」
董卓はオークを仕留めると十分な金になると聞いて目の色を変えた。
「ただ、オークは強いので遭遇しても勝てるかどうか・・・」
「どれ程強いのだ?」
「そうですね。俺はまだオークに遭遇した事は無いけど、同じレベルの人間なら四、五人で相手をしないといけないと聞きましたね」
「四、五人で相手をしないといけないか。なかなかだな」
董卓はオークが油断ならない強さを持つと思いながらも、自分なら倒せるのではないかと思った。
「ところで、『れべる』とは何だ?」
「あ、董卓さんの時代にはゲームなんて無いから馴染みが無いですよね。『レベル』は戦う事で上がる、強さの目安みたいなものです。そうだ、董卓さん、『ステータス』って言ってもらえますか」
「『すてーたす』?」
名前 :董卓
種族 :人間
年齢 :23歳
レベル :1
HP :2028/2028
MP :103/103
攻撃力 :381
防御力 :412
魔法攻撃力 :86
魔法防御力 :113
敏捷性 :68
器用さ :267
スキル :騎乗Lv10、弓術Lv9、騎射Lv10、投擲Lv5、体術Lv7、剣術Lv6、棒術Lv6、身体強化Lv1、土魔法Lv1、風魔法Lv1
固有スキル :言語理解、ヘソファイヤーLv1
「うおっ、何か出たぞ」
「それが『ステータス画面』ですよ。基本的に自分しか見えません」
「そうなのか?」
「そうなんです。何か助言出来る事があるかもしれないので、地面にステータスを書いてもらえますか?俺も自分のステータスを書いていきますので」
「いいぞ。見ても分からん項目があるしな」
そうして、董卓とスズキは地面に小さな木の枝でステータスを書いていった。
「・・・」
「どうしたんですか?名前の所で止まってますけど」
「うーむ、名前に何か足りない気がするのだ」
「あ、董卓さんだったら字(あざな)じゃないですか?」
「おお、そうだ!字だ!・・・だが、字がどんなものだったのか全く思い出せん」
「董卓さんもですか。俺も名前の一部が思い出せないんですよ」
「そうなのか?」
「ええ。『スズキ』って俺の苗字なんです。個人を表す『名』を消されたんですよ!董卓さんなら『董』だけにされたって事です!これっておかしくないですか?名前の一部が消されるにしたって普通は『苗字』でしょ!『名』の方を消したら俺が俺って分からないじゃないですか!『スズキ』って呼ばれて何人が振り向くと思ってんだよ!この世界には一人しか居ないかもしれないけど!しかも、漢字ですらないし!モブ扱いにしても酷過ぎるだろ!」
「おお、そうか。それは腹がたつな」
「でしょ!」
異世界に転生した際に省略された名前にブチ切れるスズキには、董卓もたじたじだった。
「それにしても、儂かなり若返っておるのか」
「俺も転生して少し若返りました。異世界転生の定番ですね」
董卓は年齢の欄に書かれた数字を見てから、自分の手をじっと見た。その手の張りは確かに若い時のものだった。
そうして、二人は再びステータスを地面に書いていく。
見慣れぬステータス画面を書くのに手こずる董卓。
スズキはそのステータスを横目で見ながら青褪めていった。
名前 :スズキ
種族 :人間
年齢 :21
レベル :5
HP :98/98
MP :61/61
攻撃力 :35
防御力 :38
魔法攻撃力 :57
魔法防御力 :49
敏捷性 :33
器用さ :41
スキル :棒術Lv1、状態異常回復魔法Lv2、群衆察知Lv1、生活魔法Lv2、物品鑑定Lv3
固有スキル :言語理解
「董卓さん物凄く強いですね」
「おお、そうか」
董卓はスズキから『物凄く強い』と言われて照れた。
武人として戦場を駆け回っていただけに、強いと褒められるのは純粋に嬉しかったのだ。
「ええ、レベル1でも中ボスって呼んでいいと思います。モブで雑魚な俺と違って・・・」
スズキは董卓とのステータスの差に項垂れるのだった。
董卓は土下座するスズキに対して声を掛けるが、スズキは土下座したままだった。
何しろ、董卓は権力を握ってから拷問や虐殺などの暴虐の限りを尽くした存在なのだ。
スズキはそんな董卓を豚顔のオーク扱いしてしまった事でビビりまくっていて、頭を上げる事など出来なかった。
「おぬしが儂の事を知っているのなら、儂の悪行を恐れているのだろう。だがなスズキよ。おぬしは儂の怪我を治してくれた恩人だ。そんなおぬしに手を上げるつもりは無いぞ。だから頭を上げよ」
董卓が落ち着いた声でそう話し掛けると、スズキは恐る恐る顔を上げた。
「・・・でも、俺、董卓さんの事をオークと間違えましたよ」
「それは出会い頭の咄嗟の事であろう。気にしてはおらん。それより、その『おーく』とやらの事を詳しく聞きたい。そこの『ごぶりん』の様に突然襲ってくるのか?」
董卓はオーク扱いされた事よりも、オークそのものの方が気になっていた。
「そうですね。ゴブリンやオークに限らず、基本的に魔物は人間を襲います。食べるために。それと、ゴブリンやオークなどは女性を性的対象にもしていますね。奴らは人間の女性も妊娠させる事が出来るので」
「なるほどな。ならば見付け次第、息の根を止める方がいいのか」
董卓は『魔物』という存在が人間と相容れないものだと理解した。
「そうですね。戦って勝てるならそうした方がいいです。報奨金も出ますし」
「そうなのか。なら、そこのごぶりん二体でどれくらいの金になる?」
「うーん、ゴブリン二体だと、一食分くらいにしかならないです」
「そうなのか。儂は一文無しなんだが」
「これからお金になりそうな獲物か、薬草みたいな金になる物を見付けないといけませんね。俺も貯えが無いので・・・」
「世知辛いのう」
「全くです」
董卓とスズキは二人してため息を吐いた。
「ところで、『おーく』とやらはどれくらいの金になるのだ?」
「オークですか?オークなら肉も売れるので一か月分の生活費には十分なると思いますよ」
「何?『おーく』は肉も売れるのか?」
「はい。オーク肉は上等な豚肉って感じで売買されています」
「そうか!なら、『おーく』を探さないとな!」
董卓はオークを仕留めると十分な金になると聞いて目の色を変えた。
「ただ、オークは強いので遭遇しても勝てるかどうか・・・」
「どれ程強いのだ?」
「そうですね。俺はまだオークに遭遇した事は無いけど、同じレベルの人間なら四、五人で相手をしないといけないと聞きましたね」
「四、五人で相手をしないといけないか。なかなかだな」
董卓はオークが油断ならない強さを持つと思いながらも、自分なら倒せるのではないかと思った。
「ところで、『れべる』とは何だ?」
「あ、董卓さんの時代にはゲームなんて無いから馴染みが無いですよね。『レベル』は戦う事で上がる、強さの目安みたいなものです。そうだ、董卓さん、『ステータス』って言ってもらえますか」
「『すてーたす』?」
名前 :董卓
種族 :人間
年齢 :23歳
レベル :1
HP :2028/2028
MP :103/103
攻撃力 :381
防御力 :412
魔法攻撃力 :86
魔法防御力 :113
敏捷性 :68
器用さ :267
スキル :騎乗Lv10、弓術Lv9、騎射Lv10、投擲Lv5、体術Lv7、剣術Lv6、棒術Lv6、身体強化Lv1、土魔法Lv1、風魔法Lv1
固有スキル :言語理解、ヘソファイヤーLv1
「うおっ、何か出たぞ」
「それが『ステータス画面』ですよ。基本的に自分しか見えません」
「そうなのか?」
「そうなんです。何か助言出来る事があるかもしれないので、地面にステータスを書いてもらえますか?俺も自分のステータスを書いていきますので」
「いいぞ。見ても分からん項目があるしな」
そうして、董卓とスズキは地面に小さな木の枝でステータスを書いていった。
「・・・」
「どうしたんですか?名前の所で止まってますけど」
「うーむ、名前に何か足りない気がするのだ」
「あ、董卓さんだったら字(あざな)じゃないですか?」
「おお、そうだ!字だ!・・・だが、字がどんなものだったのか全く思い出せん」
「董卓さんもですか。俺も名前の一部が思い出せないんですよ」
「そうなのか?」
「ええ。『スズキ』って俺の苗字なんです。個人を表す『名』を消されたんですよ!董卓さんなら『董』だけにされたって事です!これっておかしくないですか?名前の一部が消されるにしたって普通は『苗字』でしょ!『名』の方を消したら俺が俺って分からないじゃないですか!『スズキ』って呼ばれて何人が振り向くと思ってんだよ!この世界には一人しか居ないかもしれないけど!しかも、漢字ですらないし!モブ扱いにしても酷過ぎるだろ!」
「おお、そうか。それは腹がたつな」
「でしょ!」
異世界に転生した際に省略された名前にブチ切れるスズキには、董卓もたじたじだった。
「それにしても、儂かなり若返っておるのか」
「俺も転生して少し若返りました。異世界転生の定番ですね」
董卓は年齢の欄に書かれた数字を見てから、自分の手をじっと見た。その手の張りは確かに若い時のものだった。
そうして、二人は再びステータスを地面に書いていく。
見慣れぬステータス画面を書くのに手こずる董卓。
スズキはそのステータスを横目で見ながら青褪めていった。
名前 :スズキ
種族 :人間
年齢 :21
レベル :5
HP :98/98
MP :61/61
攻撃力 :35
防御力 :38
魔法攻撃力 :57
魔法防御力 :49
敏捷性 :33
器用さ :41
スキル :棒術Lv1、状態異常回復魔法Lv2、群衆察知Lv1、生活魔法Lv2、物品鑑定Lv3
固有スキル :言語理解
「董卓さん物凄く強いですね」
「おお、そうか」
董卓はスズキから『物凄く強い』と言われて照れた。
武人として戦場を駆け回っていただけに、強いと褒められるのは純粋に嬉しかったのだ。
「ええ、レベル1でも中ボスって呼んでいいと思います。モブで雑魚な俺と違って・・・」
スズキは董卓とのステータスの差に項垂れるのだった。
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