61 / 276
叢時雨【11月長編】
10
しおりを挟む
鳥居をくぐってまず目に入ったのは、大きな三角の屋根だった。夜だから分かりにくいが、焦げ茶色という地味な色にも関わらず圧倒的な存在感を放っている。
あまりの壮大さに息を飲んだ。玉砂利が踏みしめられる音で我に返ったが、そうでもないといつまでも眺めているところだった。
「すごいな……おみはここで会合に出ているのか」
「そう。昼間は一般の人がいるから、私たちは姿が見えないようにしているけど」
「ふぅん」
大変なんだな、神様も。
「ここが本殿。他にもたくさんあるけど、私はまだ見ていないんだ」
「これだけ広いとなぁ」
全ての建物を見るだけでも半日はかかりそうだ。じっくり見物すると一日じゃ足りないかもしれない。できれば俺も昼間に来たいけれど、この体質じゃあっという間に倒れてしまうだろうな。
一応、眼鏡はかけてきたが。さすがに神無月の出雲は危険すぎる。
「あっちが神楽殿らしい」
「おお、あの有名な」
「で、そこから外に出ると美味しい蕎麦屋さんがある」
「おお……そうか」
一体何を調べているんだ。もう少し出雲大社について学んでいたかと思ったのに。やっぱりおみの頭は食べることでいっぱいなのか。
そんな、半分くらい役に立たない案内を聞きながら本殿へと向かう。本来なら観光客の立ち入りは禁止されているからこっそりと。
「さすがに大きいな」
「全国の神々が集まるから、広くないとな」
「そういえば坂口さんと織田さんも来てるんだっけ」
「うん。忙しそうにしてたから声はかけていないが」
それもそうか。いつもは山でのんびり暮らしているが、本来は七福神と稲荷なのだ。今はそちらのことで手一杯だろう。
特に何の縛りもない俺たちとは違うのだ。
「イネとマイも忙しそうだった。耳が生えるくらいに」
「そりゃ大変だ」
尻尾が出たら休ませないとな、などと考えていると、遠くから聞きなれた声がしてきた。こんな遅い時間で、しかも神聖な場所だというのに全く躊躇しない大声だ。
この声は、まさか。
「噂をすれば、だな」
「おみ、今のお前は言霊が強いんだから気をつけろって言ったのに」
「まあまあ、そう気にするな」
やれやれ。お前はもう少し気にしてくれ。
小さくため息をつきながら、俺とおみは声のする方へと足を向けた。
あまりの壮大さに息を飲んだ。玉砂利が踏みしめられる音で我に返ったが、そうでもないといつまでも眺めているところだった。
「すごいな……おみはここで会合に出ているのか」
「そう。昼間は一般の人がいるから、私たちは姿が見えないようにしているけど」
「ふぅん」
大変なんだな、神様も。
「ここが本殿。他にもたくさんあるけど、私はまだ見ていないんだ」
「これだけ広いとなぁ」
全ての建物を見るだけでも半日はかかりそうだ。じっくり見物すると一日じゃ足りないかもしれない。できれば俺も昼間に来たいけれど、この体質じゃあっという間に倒れてしまうだろうな。
一応、眼鏡はかけてきたが。さすがに神無月の出雲は危険すぎる。
「あっちが神楽殿らしい」
「おお、あの有名な」
「で、そこから外に出ると美味しい蕎麦屋さんがある」
「おお……そうか」
一体何を調べているんだ。もう少し出雲大社について学んでいたかと思ったのに。やっぱりおみの頭は食べることでいっぱいなのか。
そんな、半分くらい役に立たない案内を聞きながら本殿へと向かう。本来なら観光客の立ち入りは禁止されているからこっそりと。
「さすがに大きいな」
「全国の神々が集まるから、広くないとな」
「そういえば坂口さんと織田さんも来てるんだっけ」
「うん。忙しそうにしてたから声はかけていないが」
それもそうか。いつもは山でのんびり暮らしているが、本来は七福神と稲荷なのだ。今はそちらのことで手一杯だろう。
特に何の縛りもない俺たちとは違うのだ。
「イネとマイも忙しそうだった。耳が生えるくらいに」
「そりゃ大変だ」
尻尾が出たら休ませないとな、などと考えていると、遠くから聞きなれた声がしてきた。こんな遅い時間で、しかも神聖な場所だというのに全く躊躇しない大声だ。
この声は、まさか。
「噂をすれば、だな」
「おみ、今のお前は言霊が強いんだから気をつけろって言ったのに」
「まあまあ、そう気にするな」
やれやれ。お前はもう少し気にしてくれ。
小さくため息をつきながら、俺とおみは声のする方へと足を向けた。
16
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。