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春の雨【3月長編】
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揚げ物や包丁を使うものは俺が担当するとして、それ以外のものはおみに任せることにした。簡単なものなら作れるだろうし、一緒にした方がきっと楽しいだろう。
まずは今回のメインとも言える、おにぎりを作ってもらおう。
「久しぶりに釜で炊いたなぁ」
「おっきいねぇ」
「六人分だからな」
「ほほー」
昔使っていたらしい大釜で、一升分の米を炊いた。朝早くから裏庭のかまどに火を起こし、時間をかけて炊いたからきっと美味しいだろう。今はじっくりと蒸らしている。
蓋をあけると湯気と一緒にお米の甘くて美味しそうな香りがしてきた。ううん、これだけでもうお腹が空いてしまいそうだ。
「つやつや!」
「すごいな」
「おいしそー」
「じゃあもっと美味しいおにぎりを作ってもらおうかな」
「うぃ!」
おにぎりは熱々が美味しいと言われるが、お弁当に詰めるから粗熱は取らないといけない。それに、手が火傷するほど熱いお米を握るのはさすがに難しい。
なので、おみにも簡単に握れるようにお茶碗を二つ用意した。
「ここに塩を振ってみて」
「うぃ」
「そうそう、それくらい」
程よい塩が入れられる。そこに熱々のご飯をよそった。おみの手だったらこれくらいがちょうどいいかな。
そこにもう一つのお茶碗で蓋をして、準備万端だ。
「中のお米を上手にコロコロさせて」
「ころころ」
「形がまとまったら、手で優しく握るんだ」
「やさしく……にぎぎ……」
「これで完成」
「おおー!」
実際にやってみせると、おみが目を輝かせた。具材を入れるのも簡単だし、手も熱くならない。粗熱も取れるからお弁当にも詰めやすくいいことだらけだ。
さっそくおみにお茶碗を渡し、俺は他の用意をすることにした。朝から漬け込んでいた鶏肉を唐揚げにして、ついでにエビフライも作る。揚げ物はまとめてしたいから下準備が必要だな。
「あとはチーズ、きゅうり、ちくわ……詰めるのはおみに任せるか」
そういえばミニトマトもあったな。簡単なマリネならすぐに作れるし、後でやってみよう。そうだ、ウィンナーも焼こうかな。タコさんウィンナーならおみも喜ぶかもしれない。
そんなことを考えている間に、おみは黙々とおにぎりを作っていた。どうやらこの作業が気に入ったようだ。つまみ食いもせず真剣に握り続けている。
「結構できたな」
「おみ、しょくにんだから」
「職人かぁ」
「むん」
小さな手で、にぎにぎとおにぎりを作っている。どこか不格好なおにぎりだけど、その歪さがなぜか愛おしい。
具材は梅干し、昆布、おかかの三種類。おみが選んで中に入れている。おにぎりが小さいから具材がはみ出しているところもあるが、これもまたご愛嬌。
「楽しみだなぁ、おみのおにぎり」
「んふふ、こんどつくってあげる」
「やった」
思いがけず、楽しみな約束が出来た。おみが俺に何かしてくれるというのも最近増えてきて、その度におみの成長と愛情を感じる。
冬と春の間はどこかもの寂しい気持ちになっていたけれど。今年の春は楽しいことがたくさんありそうだ。
まずは今回のメインとも言える、おにぎりを作ってもらおう。
「久しぶりに釜で炊いたなぁ」
「おっきいねぇ」
「六人分だからな」
「ほほー」
昔使っていたらしい大釜で、一升分の米を炊いた。朝早くから裏庭のかまどに火を起こし、時間をかけて炊いたからきっと美味しいだろう。今はじっくりと蒸らしている。
蓋をあけると湯気と一緒にお米の甘くて美味しそうな香りがしてきた。ううん、これだけでもうお腹が空いてしまいそうだ。
「つやつや!」
「すごいな」
「おいしそー」
「じゃあもっと美味しいおにぎりを作ってもらおうかな」
「うぃ!」
おにぎりは熱々が美味しいと言われるが、お弁当に詰めるから粗熱は取らないといけない。それに、手が火傷するほど熱いお米を握るのはさすがに難しい。
なので、おみにも簡単に握れるようにお茶碗を二つ用意した。
「ここに塩を振ってみて」
「うぃ」
「そうそう、それくらい」
程よい塩が入れられる。そこに熱々のご飯をよそった。おみの手だったらこれくらいがちょうどいいかな。
そこにもう一つのお茶碗で蓋をして、準備万端だ。
「中のお米を上手にコロコロさせて」
「ころころ」
「形がまとまったら、手で優しく握るんだ」
「やさしく……にぎぎ……」
「これで完成」
「おおー!」
実際にやってみせると、おみが目を輝かせた。具材を入れるのも簡単だし、手も熱くならない。粗熱も取れるからお弁当にも詰めやすくいいことだらけだ。
さっそくおみにお茶碗を渡し、俺は他の用意をすることにした。朝から漬け込んでいた鶏肉を唐揚げにして、ついでにエビフライも作る。揚げ物はまとめてしたいから下準備が必要だな。
「あとはチーズ、きゅうり、ちくわ……詰めるのはおみに任せるか」
そういえばミニトマトもあったな。簡単なマリネならすぐに作れるし、後でやってみよう。そうだ、ウィンナーも焼こうかな。タコさんウィンナーならおみも喜ぶかもしれない。
そんなことを考えている間に、おみは黙々とおにぎりを作っていた。どうやらこの作業が気に入ったようだ。つまみ食いもせず真剣に握り続けている。
「結構できたな」
「おみ、しょくにんだから」
「職人かぁ」
「むん」
小さな手で、にぎにぎとおにぎりを作っている。どこか不格好なおにぎりだけど、その歪さがなぜか愛おしい。
具材は梅干し、昆布、おかかの三種類。おみが選んで中に入れている。おにぎりが小さいから具材がはみ出しているところもあるが、これもまたご愛嬌。
「楽しみだなぁ、おみのおにぎり」
「んふふ、こんどつくってあげる」
「やった」
思いがけず、楽しみな約束が出来た。おみが俺に何かしてくれるというのも最近増えてきて、その度におみの成長と愛情を感じる。
冬と春の間はどこかもの寂しい気持ちになっていたけれど。今年の春は楽しいことがたくさんありそうだ。
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