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藤の雨【5月短編】
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「ぱぱーん! どう?」
「おお。似合うな」
「えへへー」
目の前でくるくる回るおみは、新しく作ってもらった服を着てご機嫌だ。いつもとは違う、所謂水干と呼ばれる服だ。
俺が織田さんに頼んだわけではなく、試作品として作ったものを譲ってもらった。さっそく着込んだおみは、尻尾をふりふりしながらお披露目会をしている。
「こんなにたくさんいいんですか?」
「いいのよ。むしろ貰ってくれて助かるわ」
どうやらなかなかの自信作のようで、そう言う織田さんの口調は自信に満ちている。今回譲ってもらったのは全部で三着。
若葉色、藤色、そして今着ている空色だ。どれも今の季節にぴったりの色合いで、おまけに動きやすいのかおみも楽しそうに跳ねている。
「水干は着やすいし動きやすいし、見た目も可愛いわねぇ」
「公家の子供が着ていたと聞いたことがあります」
「そうなの。アタシも昔作ってたのよ。作り方を忘れてなくてよかったわァ」
織田さんの言う「昔」とは、おそらく言葉通りの昔なのだろう。その当時おみも着ていたのかな。
普段の着物も可愛いけど、水干もいいなぁ。
「おみちゃん、お家の中でも動き回るからちょうどいいかもしれないわね」
「たしかに……最近はちびすけと追いかけっこしてます」
「あらまぁ。仲がいいのね」
そんなちびすけは、見慣れない服に戸惑っているのか少しおみと距離を取っている。新しい服は馴染みのない匂いがするから落ち着かないらしい。
それでもきっと、すぐに馴染むんだろうな。
「おだしゃ、ありがとじゃいます」
「また作ったら着てちょうだいね」
「うぃ」
「よかったなぁ、おみ」
夏が近づくこの山で、一足早く初夏が色付いた。
「おお。似合うな」
「えへへー」
目の前でくるくる回るおみは、新しく作ってもらった服を着てご機嫌だ。いつもとは違う、所謂水干と呼ばれる服だ。
俺が織田さんに頼んだわけではなく、試作品として作ったものを譲ってもらった。さっそく着込んだおみは、尻尾をふりふりしながらお披露目会をしている。
「こんなにたくさんいいんですか?」
「いいのよ。むしろ貰ってくれて助かるわ」
どうやらなかなかの自信作のようで、そう言う織田さんの口調は自信に満ちている。今回譲ってもらったのは全部で三着。
若葉色、藤色、そして今着ている空色だ。どれも今の季節にぴったりの色合いで、おまけに動きやすいのかおみも楽しそうに跳ねている。
「水干は着やすいし動きやすいし、見た目も可愛いわねぇ」
「公家の子供が着ていたと聞いたことがあります」
「そうなの。アタシも昔作ってたのよ。作り方を忘れてなくてよかったわァ」
織田さんの言う「昔」とは、おそらく言葉通りの昔なのだろう。その当時おみも着ていたのかな。
普段の着物も可愛いけど、水干もいいなぁ。
「おみちゃん、お家の中でも動き回るからちょうどいいかもしれないわね」
「たしかに……最近はちびすけと追いかけっこしてます」
「あらまぁ。仲がいいのね」
そんなちびすけは、見慣れない服に戸惑っているのか少しおみと距離を取っている。新しい服は馴染みのない匂いがするから落ち着かないらしい。
それでもきっと、すぐに馴染むんだろうな。
「おだしゃ、ありがとじゃいます」
「また作ったら着てちょうだいね」
「うぃ」
「よかったなぁ、おみ」
夏が近づくこの山で、一足早く初夏が色付いた。
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