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木の芽雨【5月長編】
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おみのままは、どこにいるの?
その質問に答えられないまま、俺は言葉を失ってしまった。知らない、分からないと言ってしまえばよかったのかもしれない。しかしそれはあまりにも突き放しすぎだろう。
でも嘘をつくのも嫌だ。適当なことを言っておみを傷つけたくない。どっちつかずな自分が嫌で仕方なかった。
「りょーた?」
「え、あ」
「どしたの?」
「いや……その」
何か言わないと。必死に言葉を探すけれど何も浮かんでこない。冷や汗だけがジワジワ滲んでくる。
ごくり、と生唾を飲み込んだ時。
「あ、うみちゃん泣き止んだ!」
「泣き止んだねうみちゃん!」
隣の部屋からウカさんと宇海が戻ってきた。先程までギャン泣きしていた宇海はすっかり泣き止んだようで、気持ちよさそうにウカさんの腕の中で眠っている。
それを見たおみも「うみちゃー!」と駆け寄って行ったので、そのまま話は立ち消えになってしまった。そこに安心している自分がいる。このまますっかり忘れてしまって、もう二度と訊ねないで欲しいとも思ってしまう。
でも、そんなこときっと無理なんだろうな。
「うみちゃーいないいない、ばー!」
「きゃっきゃっ」
「次イネやってー!」
「いくよー」
おみの両親。今まで考えたこともなかった。でも、向き合わないといけないのかもしれない。例えおみの願い通りの答えでなくとも。
それが、おみの成長に必要なのであれば。
「じいちゃんに聞けばわかるかな」
こんな時ばっかり頼るな、と言いたげな声が、遠い空から聞こえてくる気がした。
その質問に答えられないまま、俺は言葉を失ってしまった。知らない、分からないと言ってしまえばよかったのかもしれない。しかしそれはあまりにも突き放しすぎだろう。
でも嘘をつくのも嫌だ。適当なことを言っておみを傷つけたくない。どっちつかずな自分が嫌で仕方なかった。
「りょーた?」
「え、あ」
「どしたの?」
「いや……その」
何か言わないと。必死に言葉を探すけれど何も浮かんでこない。冷や汗だけがジワジワ滲んでくる。
ごくり、と生唾を飲み込んだ時。
「あ、うみちゃん泣き止んだ!」
「泣き止んだねうみちゃん!」
隣の部屋からウカさんと宇海が戻ってきた。先程までギャン泣きしていた宇海はすっかり泣き止んだようで、気持ちよさそうにウカさんの腕の中で眠っている。
それを見たおみも「うみちゃー!」と駆け寄って行ったので、そのまま話は立ち消えになってしまった。そこに安心している自分がいる。このまますっかり忘れてしまって、もう二度と訊ねないで欲しいとも思ってしまう。
でも、そんなこときっと無理なんだろうな。
「うみちゃーいないいない、ばー!」
「きゃっきゃっ」
「次イネやってー!」
「いくよー」
おみの両親。今まで考えたこともなかった。でも、向き合わないといけないのかもしれない。例えおみの願い通りの答えでなくとも。
それが、おみの成長に必要なのであれば。
「じいちゃんに聞けばわかるかな」
こんな時ばっかり頼るな、と言いたげな声が、遠い空から聞こえてくる気がした。
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