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第11話 武具店パンツァーフォー
しおりを挟む「あ、危なかった・・・・・・」
肩で息をしつつも、脅威が去った(僕の方から去って行ったんだけどね)ことに安堵した。
危うく顔面が陥没するところだった。
やっぱり、夜の街って物騒だよなー
フレッサとかフレッサとかフレッサとか。
「さて、改めてどこへ行こうかね・・・・・・」
夜のタソックの街は、昼の賑やかさとは打って変わってとても静かで不気味・・・・・・みたいなことは全然無くて、夜も負けじと賑やかだ。
と言っても、街を闊歩しているのはほぼ同業者、つまり冒険者だ。
基本的に、冒険者に昼夜の区別は無い。
起きたいときに起きて、気が向くままにクエストに出かけ、クエストを達成したら、酒場でどんちゃん騒ぎ・・・・・・というのが冒険者だ。
自由業ってヤツね。
しかし、やはり自由と言うのは危険と隣り合わせになるのがお約束だ。
確かに冒険者は他の仕事に比べて自由だけど、致死率は他の仕事より遥かに高い。
なんでそんなものに僕はなってしまったのか、と言われれば『やっぱ異世界と言えば冒険者だよね!』と言う非常に安易な、ひどく言えば、その場もノリでなってしまったのだ。
その選択をまるで後悔していないかと言われれば嘘になるけど、絶対に止めたいとも思っていない。
なんだかんだで、生活出来ているしね。
今後は知らんけど。
「お、あったあった。」
目当ての店を見つけ、中に入る。
『武具屋パンツァーフォー』
念のために言っておくと、戦車は扱ってはいない。
一説に寄れば、この店名はとある転生者が付けたものだとかなんとか。
「・・・・・・センスは、悪くないかな?」
武具屋に付けるには、特に悪くはないとは思う。
異世界には著作権なんて関係ないし、そもそもあのアニメがある前から合った言葉だしね。法的にも問題はないだろう。
「ここは、いつでも大盛況だな。」
タソックには24時間営業の店があると前に言ったけど、その手の店は冒険者関係の店に多い。
そして、この武具屋もそれに漏れず、元気に営業中だ。
壁には様々な装飾が施された剣が、数多の0が並ぶ値札と共に飾られている。
もちろん僕には縁が無い代物だ。
僕が目指すのは、店の隅っこにある小さなお徳用コーナー。
ここにあるのは、武器としては最低ランクのEにカテゴライズされる武器達だ。
バラ売りでは無く、基本的に5本で1セットで1000マニーで売られている。
子供の小遣いでも買えてしまうお値段だ。
だが、まるで使えないと言う訳ではなく、そこら辺の包丁よりはよく切れるということで、ダガーは主婦層に人気がある。
その値段の手頃さから、ほとんどの――転生者以外の冒険者はまずこれにお世話になることが多い。
僕は今でも世話になっているけどね。
買いに行くのは1週間後の予定だったけど、今日文字通り粉砕されてしまったので、今買いに来たと言うわけなんだけど・・・・・・
「僕、コイツらから卒業できる日は来るのかね?」
ダガーの束を掴みながら、そう呟いた。
うーん、どうなんだろう。
他のもっと良いダガーに変えられるとしたら、嬉しい反面少し寂しい気がする。
「ま、それは実現してから考えろって話だけど。」
さらに、ダガーに塗れる2種類の毒を一瓶ずつ手に取る。
ダガーは火力がやや少なかったり、リーチが短いなどのデメリットが存在するけど、その小回りの良さと手数の多さ、そして刃に毒が塗れるというメリットもあるので、僕は愛用している。
それらを抱えて、会計に向かう。
その途中、壁に飾られていた物に、いつも自然と目が引きつけられてしまう。
そこにあるのは、一振りのダガーだ。
入り口に飾ってあるような煌びやかさは無いけど、かえってそのシンプルなデザインが、その武器の凄さを引き立てているのだと思う。
ドラゴンダガー『飛龍』
その艶やかな刃は鉄製のものでは無く、ワイバーンの爪で出来ている。
ワイバーンはドラゴンの1種で、空中戦では無敵の強さを誇るモンスターだ。
クエストを受注するにはレベル3に上がっている必要がある。
ワイバーンの爪には強力な麻痺毒とダメージ毒が仕込まれていて、その爪をベースに作った『飛龍』のウリも、その2種類の毒だ。
この2つの毒を好んで使っている僕にとっては、喉から手が出るほど欲しい1品である。
・・・・・・んだけど、やはり良いものはどうしても高いという宿命がある。
値段を見ると、30万マニーと書かれていた。
強力な武器にしては手頃な値段だが、僕にとっては1億円と1兆円を比べるようなものだ。
どっちも高いことには変わりがねーよ、みたいな。
「30万・・・・・・さすが、Bランクの武具だなー」
ダメ元で、財布の中身を確認する。
そして僕は、驚きの余り目を見開いた。
「あった!?」
あった、30万マニーという、普段の僕からは考えられない大金が、財布には確かに存在していた。
今日のクエスト報酬の残り27万5000マニーと、いざという時に、と取って置いた2万5000マニー
合わせて、丁度30万マニー
「え、嘘でしょ? これ買えちゃうじゃん!」
何という急展開。ぴったり賞とかもらえちゃいそうだ。
今すぐ腕に抱えている物を元の棚に戻せば、買えてしまう。
憧れのダガーを、手にすることが出来る。
「・・・・・・でもなあ。」
クエスト報酬の27万5000マニーは、僕のものでは無い。
今、宿屋で惰眠を貪っているエアリのものだ。
一応、金の管理を任されているけど、あくまでそれは自由に使っていいと言う訳ではないよな。
だけどこのダガーを買えば、大きな戦力アップであると言うことは否定できない。
「どうしよっかな・・・・・・」
飛龍を買ったら有り金すべて失うことになるが、クエストに行けばその問題は無くなる。
迷わないために外に出たはずなのに、外でも迷っている。
もう金ケ崎真宵にでも改名したほうが良いんじゃ無いかと思うほどの迷いっぷりだ。
買うか買わないのか、2つの選択肢が脳内をグルグルと回る。
好きなキャラのピックアップガチャを引くために課金するか否か、並に迷う!
しかもこれは、引いたら確定で手に入るガチャだ。
それはもはやガチャとは呼ばない気がするが、それはさておくとして。
「か、買っちゃおうか・・・・・・?」
すーっと手が意思を持ったように飛龍に伸びる。
だが待てよ?
今までお徳用ダガーしか使っていなかった人間が、急にウン10万円のダガーを腰に下げていたら、周囲の人間はどう思うだろうか?
特にフレッサとか。
次会ったら顔面ひしゃげるまで殴ると言っていたが、追加で骨の1本2本持って行かれるかもしれない。
「・・・・・・」
すーっと、手が飛龍から離れた。お帰り僕の手よ。
「やっぱダメか・・・・・・」
嘆息した。
悔しいけど、飛龍は諦めるしかないようだ。
頬を張りながら、あこがれのダガーを後にする。
後ろ髪を引かれる、という言葉があるけど、そんなの生ぬるい。
後ろ髪だけで無く、前髪も、いっそのこと全ての髪が引かれる思いだ。
「い、いや、1日100マニーずつ貯めていけば・・・・・・8年後には手に入るんだ!」
なげー
気が遠くなると言うほどではないけど、なんかもうリアルに長い。
だけど、それを手にする頃には、僕はまだ24歳だ
冒険者としてはまだ若手に入る部類だ。
「うん、なんか希望が見えてきたぞ!」
8年先だけど。
8年・・・・・・
「・・・・・・うん、まあ100年よりは短いよね。」
そんな身もふたもないことを言いながら、お会計を手早く済ませ、外に出た。
まだ秋に入ったばかりだけど、少し肌寒い。
「酒場にでも行って時間を潰すか、もしくは仮眠しようかな。」
今なら、フレッサもいないだろうし。
そう決めた僕は、近にある行きつけの酒場『酩酊兎』に飛び込んで、酒を注文し、それを飲んでいる内に睡魔に襲われ、そのまま深い眠りについた。
・・・・・・僕がいなくなったことに気付いたエアリが、心配してあちこち探し回っていたことを知るのは、翌朝のことだった。
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