おお勇者よ、封印を解くとは何事だ!?

半熟紳士

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第12話 魔王様はご機嫌斜め

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「のう、蛍。薄情者という言葉を知っているか?」

 爽やかな朝日に照らされながら、僕は正座されられていた。

 そして目の前には、頬を膨らませてお冠の魔王エアリーズ・ソルレヴェンテ様。

2話ぶりのご登場だ。

「なんでも、薄情な者を薄情者と言うらしいのー」

「は、はあ・・・・・・」

 意味まんまじゃねーか、とかは突っ込まないでおこう。

 酒場から帰ってきた僕をエアリは目の下にクマを作りながら待っていた。待ち伏せていた。

 で、今、お説教をされている真っ最中と言う訳だ。

「おお? ここにいるではないか。妾を置いて街に繰り出していた薄情者が!」

 じろっと僕を睨むエアリ。

 うーんこれはマズい。

 今にも大噴火しそうな勢いだ。

「いや、それは深い訳が・・・・・・」

「やかましいわー!」

 すぱこーんと、僕の頭にハリセンが直撃した。

「妾は半径2メートル以内に人がいないと安心して眠れないのじゃぞ!? それを承知でこっそり出かけるなど・・・・・・! いじめじゃいじめ! 蛍はいじめっ子じゃ!」

 ハリセンを連続で叩きつけながら、エアリはどかんと大爆発していた。

 しかし、やっぱり子供っぽいよなあ、こいつって。

「そんな設定知らないよ・・・・・・そもそも僕が出かけたのは武器を買うためだから、そう怒られる必要なくない?」

 本当は、邪念に惑わされないためなんだけど、そんなことが説明できる訳が無いので、そこ

は編集カットして弁解もとい言い訳をした。

 が、それでもエアリは納得がいってないらしい。

「ある! それなら妾を起こして言えば良かったではないか! そうしたら付いていってやったというのに・・・・・・!」

「ぐっすり眠ってて起きそうに無かったからな。そんなときにエアリだって起こされたくないだろ?」

「起こされたくないときには、ハリセン乱舞を食らわせるから心配はいらぬのじゃ。」

「心配しかねえよ! 嫌なときは100パー食らうってことじゃんそれ!」

「それも臣下の務めじゃ。」

 うんうん、と一人で納得しているエアリ。

 当然、僕は納得していない。

 このワガママ暴君め。

「これからは一人で勝手に出かけることは控えよ。妾が寂しいからな!」

 いちいち残念だな、この魔王。

「えー・・・・・・」

「えーじゃなくてはいじゃ!」

「はいはい。」

 はいは1回じゃろーと不満げなエアリだけど、機嫌は少し直ったようだ。       「それで、昨日の話の続きなんだけど。」

 エアリが落ち着いたところで、本題に入る。

「昨日の? はて、何のことじゃ?」

 忘れんの早ない?

「レベル上げの話だよ、レベル上げ。」

「おお! そうじゃったな。お主をちゃちゃっとぱぱっとレベル2にしなくてはいけないんじゃった。いやはや、怒りと空腹ですっかり忘れていたわい。」

 腹を撫でながらそんなことを言うエアリ。

 タイミング良く、ぐうと腹が鳴る。

「・・・・・・腹減ったのか?」

「うむ! かなりの。」

 いやだから胸を張って答えんでも・・・・・・

「と言うことじゃ。食事に向かうぞ、蛍。」

「はいはい・・・・・・」

 まあ、僕もお腹が空いていたことだし、朝ご飯に行くにはぴったりの時間だしね。

「あ、言っておくけど、今の時間帯は結構込んでるからな。すぐに食べられるかは分からないぞ?」

「ぬっ魔王たる妾を待たせるじゃと?」

「ぬっじゃない。一応おまえお尋ね者みたいなもんなんだからな?」

 しかも国が動くレベルの。

「蛍よ、お主は心配症じゃなあ。魔王の臣下になった今、お主がビクついていいのは妾がいないときだけじゃ。普段は堂々としていればよい。」

 それ1番情けないヤツじゃん・・・・・・

「お主の不安は最もじゃがの、妾が、彼の偉大な魔王エアリーズ・ソルレヴェンテであるとバレなきゃよいのであろ?」

「うわーそれ自分で言っちゃうかー」

 痛々しくて涙がで出てきちゃうぜ。

「しょうがないじゃろー 実際に妾偉大だったし。」

「へーそうなんだすごいね(棒)」

「ぬあー! 妾が馬鹿にされたあああああ!」





 再びご機嫌斜めになってしまったエアリをなだめ、僕達は再び酒場『酩酊兎』に来ていた。

 ここは食事系のメニューも充実しているので、食堂としても利用できるのだが・・・・・・

「・・・・・・エアリ。」

「んー? なんじゃ蛍。」

 呑気にメニューを見ているエアリに、僕は言う。 

「やっぱメチャクチャ目立ってるよね。」

「ん? おお、そうじゃのう。」

 きょろきょろと周囲を見渡すエアリに、僕は頭を抱えた。



 案の定、と言うか何と言うか。

 屈強な冒険者の憩いの場となっている酒場の中でも、エアリはものすごく浮いていた。

 もう天井突き破って、大空へ羽ばたいてしまうんじゃ無いかと危惧するような浮きっぷりである。

 この世界の冒険者の男女比率は五分五分で、酒場に女の子がいることは特に珍しいことでは無い。

 ・・・・・・が、エアリは他の女冒険者達とは一線を画していた。

 女冒険者達の中にも美人は多い。

 フレッサも頭は残念だけど、十分美人にカテゴライズされる。

 しかし、エアリの可愛さはそれとはベクトルが違うのである。

 何と言うか、お姫様的な可愛さなのだ。

 魔王だけど。王様だけど。

 いや、でもエアリにも王様になる前もあった訳だしあながちこの表現は間違っていないかな?                   

 と、言う訳で。

 今僕達は――もといエアリは男女問わず冒険者達の注目を集めていた。

 おい、誰だあの子? とか、なんで蛍と一緒にいるんだとか、そんな声が耳に入ってきて、なんとも居心地が悪い。

「よし、決めた! 妾はこのラビッタ生姜焼き定食にするぞ。蛍はどうするんじゃ?」

「え? ああ、僕は焼きサーモン定食で・・・・・・って違う!」

 ばん、とテーブルを叩いた。

 おおう、とエアリはお冷やを守る。

「なんじゃなんじゃ。妾は魔王ぞ? 目立つことは慣れておる。上に立つ者の宿命よ。」

「いや、今はマズいんだよ! その服で気配とか消せないのかよ?」

 覇王具トレークハイトじゃ、とエアリは訂正するが、そこまで名前にこだわるのはなぜなんだ?

「残念ながら、そのような機能は持ち合わせておらぬ。妾は正面突破で戦っていたからの、隠密とかそういうのはあっさりじゃ。」

「それさっぱりな。」

 それにしても困った・・・・・・

「隠密スキルでも使おうかな?」

「阿呆、妾が寂しいでは無いか。」

「おまえが寂しいのかよ・・・・・・」

「あのな、妾達はここに住むのじゃぞ? お主は外に出るたびに隠密スキルを発動させるつもりか?」

「ぐ・・・・・・」

 全くの正論に、僕は口を閉ざすしか無い。

「ほれ、くよくよ考えてもしょうがなかろう? こういう時はおいしい物を食べるのが1番じゃ。おーい店員ー」

 片手を上げて店員さんを呼ぶエアリを見ると、段々こいつが魔王であることが疑わしくなってくる。

 ・・・・・・魔王、だよな?
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