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前編
第2話 僕の役目
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大きな馬車が王国の門を出て広い荒野の道を進む。
僕は後ろの大きな荷台に乗っていた。逃げられないように外から鍵がかけられている。ただ、居心地は悪くない。僕は魔王城に生贄として送られているのだが、その役目が魔王の婿養子ということで、見かけでも豪華にして、さも高貴な人が乗っていると思わせる狙いがあるそうだ。
なぜ、僕がこんな目にあっているのか、遡れば三日前、転移したあの日から始まる。
三日前、僕があの変な老人たちに詰問された後、僕は気が付けば王国の城の中にいた。そこで国王にこう告げられたのである。
「我が王国は現在突如現れた魔王に脅迫を受けている。命令に背けば我が国を滅ぼそうというのだ。それは、跡継ぎを作るために優秀な遺伝子を持つ男を一人差し出せというのだ。遺憾ながら、その者はもう生きて帰れないだろう。厳しい役目が待っている。それでも私は国王としてこの国を守る責務がある。遺憾ながらそれが一人の人間で救えるのなら私はその者に犠牲になってもらうしかないと思う。だが、こちらにも考えがある。それは無能の、社会のゴミを差し出して、魔王の一族を弱体化させようという手だ。しかし残念ながらわが国民は皆、優秀で、働き者。それでは魔族の力はさらに強固になるだろう。そこで無能な人間を代わりに送り出して、弱体化した子孫を作らせようと考えたのだ」
「はぁ」
僕は生返事で返す。まだ話が呑み込めていなかった。
「お主は大賢者に会ってであろう。そこで君は無能な人間であることが分かった。君の手で、我が国を救ってくれい」
救えと言われても、納得いかないことが多すぎる。第一に僕の身はどうなるのか。さっきこの国王は生きて帰れないと言った。僕には自由に生きる権利がないらしい。
国王は話が終わると左右の者に指示し、僕は有無も言わさずつまみ出された。
そして、今日にいたる。
馬車に揺られながら、僕は沈んだ気持ちでいた。これから魔王城に送られる。一体相手はどんな姿をしているのだろうか。ぱっと思いつくのは、ゲームとかでよく見る竜のような姿の化け物。僕の役目は種の弱体化なのだが、その前に魔王に喰われてしまうんじゃないか。
馬車には色々嗜好品が置いてあった。僕は葉巻のようなものを手にして、一服した。味も似ている。煙草の類は久しぶりだったので頭が少しぼんやりした。
さらに僕は茶色い液体が入った瓶を開けた。匂いは鼻を刺すようなアルコール臭がする。これは酒だろう。僕はコップに注いで一口飲んだ。アルコールがかなり強いお酒で目が覚めるような衝撃が脳に走った。
しばらくして、僕はすっかり泥酔しながら葉巻をふかし、この理解できない現実から逃避していた。
僕は後ろの大きな荷台に乗っていた。逃げられないように外から鍵がかけられている。ただ、居心地は悪くない。僕は魔王城に生贄として送られているのだが、その役目が魔王の婿養子ということで、見かけでも豪華にして、さも高貴な人が乗っていると思わせる狙いがあるそうだ。
なぜ、僕がこんな目にあっているのか、遡れば三日前、転移したあの日から始まる。
三日前、僕があの変な老人たちに詰問された後、僕は気が付けば王国の城の中にいた。そこで国王にこう告げられたのである。
「我が王国は現在突如現れた魔王に脅迫を受けている。命令に背けば我が国を滅ぼそうというのだ。それは、跡継ぎを作るために優秀な遺伝子を持つ男を一人差し出せというのだ。遺憾ながら、その者はもう生きて帰れないだろう。厳しい役目が待っている。それでも私は国王としてこの国を守る責務がある。遺憾ながらそれが一人の人間で救えるのなら私はその者に犠牲になってもらうしかないと思う。だが、こちらにも考えがある。それは無能の、社会のゴミを差し出して、魔王の一族を弱体化させようという手だ。しかし残念ながらわが国民は皆、優秀で、働き者。それでは魔族の力はさらに強固になるだろう。そこで無能な人間を代わりに送り出して、弱体化した子孫を作らせようと考えたのだ」
「はぁ」
僕は生返事で返す。まだ話が呑み込めていなかった。
「お主は大賢者に会ってであろう。そこで君は無能な人間であることが分かった。君の手で、我が国を救ってくれい」
救えと言われても、納得いかないことが多すぎる。第一に僕の身はどうなるのか。さっきこの国王は生きて帰れないと言った。僕には自由に生きる権利がないらしい。
国王は話が終わると左右の者に指示し、僕は有無も言わさずつまみ出された。
そして、今日にいたる。
馬車に揺られながら、僕は沈んだ気持ちでいた。これから魔王城に送られる。一体相手はどんな姿をしているのだろうか。ぱっと思いつくのは、ゲームとかでよく見る竜のような姿の化け物。僕の役目は種の弱体化なのだが、その前に魔王に喰われてしまうんじゃないか。
馬車には色々嗜好品が置いてあった。僕は葉巻のようなものを手にして、一服した。味も似ている。煙草の類は久しぶりだったので頭が少しぼんやりした。
さらに僕は茶色い液体が入った瓶を開けた。匂いは鼻を刺すようなアルコール臭がする。これは酒だろう。僕はコップに注いで一口飲んだ。アルコールがかなり強いお酒で目が覚めるような衝撃が脳に走った。
しばらくして、僕はすっかり泥酔しながら葉巻をふかし、この理解できない現実から逃避していた。
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