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第29話 広がる音、つながる手
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初夏の陽射しがグラウンドに降り注ぎ、教室の窓には緑の葉が優しく影を落とす。
咲良はピアノの鍵盤をそっとなぞりながら、まだ見ぬ“新しい旋律”に心を弾ませていた。
放課後の音楽室には、いつもの三人だけでなく、何人ものクラスメイトが集まるようになった。
「今日もやる?」
健太が元気よく声をかけると、
「うん、今日は歌詞の続きを考えてみたいな」と咲良が応える。
奏人も「手話で伝えられるフレーズを作りたい」とノートに書き、みんなに見せた。
「この前の“ありがとうの歌”もよかったけど、
今度はみんなで作る歌にしようよ!」
女子のひとりが提案する。
「オレ、リズムならまかせて!」
「メロディにハモリをつけてみたい」
「手話の振り付けもやってみたいな!」
音楽室はたちまちわくわくした空気で満ちていく。
咲良は「音楽って、こんなふうに広がっていくんだ」と、胸が熱くなるのを感じていた。
*
ピアノを囲んで輪になると、ひとりがメロディをつくり、もうひとりが歌詞を考える。
奏人は、手話で伝わりやすい動きを何度も繰り返し、健太はリズムを体全体で刻む。
最初はみんなバラバラだった音や言葉が、
少しずつ重なりあい、一つの“新しい歌”の輪郭が見え始める。
途中、意見がぶつかったり、
「これじゃ伝わらないかな」「やっぱり難しいかも」とため息も漏れる。
それでも誰も投げ出さなかった。
「こうやってみたら?」
「うまくいかなくても、もう一回やればいいよ!」
小さな失敗やすれ違いさえ、
みんなで笑い飛ばすうちに“みんなで作る音楽”そのものが宝物になっていく。
*
休憩時間。
教室の窓から見える空は、どこまでも高く澄んでいた。
咲良は窓辺でそっと母のことを思い出す。
「ねえ、咲良ちゃん、何考えてるの?」
女子のひとりが声をかける。
「ううん、ただね、みんなと一緒にいると、
世界がどんどん広がっていくなぁって思って」
咲良は笑顔で答える。
「私も! 咲良ちゃんがいると、
新しいことにどんどんチャレンジしたくなるんだ」
そんな何気ない会話さえ、音楽と同じくらい心にしみる。
*
練習が終わった帰り道。
健太は「さっきの手話のフレーズ、もうちょっと練習したいな」と言い、
奏人は「手話も音楽も、みんなとなら何でもできる気がする」と手話で伝える。
「ほんとだね」
咲良は静かにうなずく。
三人が並んで歩くとき、
見えない世界も、手でつながればちゃんと前に進める――
そんな実感が、じんわりと胸に広がっていく。
*
家に帰ると、咲良はピアノの前で今日の出来事を思い返す。
新しい歌の断片、みんなの声や手拍子、すれ違いと笑い合い。
「この気持ち、どうしたらみんなに伝わるかな」
そう思いながら、ゆっくりと鍵盤をなぞる。
「おかえり。今日も楽しそうだったね」
母がやさしく声をかける。
「うん。みんなといると、できないこともできそうな気がするんだ」
咲良は微笑む。
「それが一番大事だよ」
母はそう言って咲良の頭をなでてくれた。
*
日曜日、公園の東屋には、クラスメイトや近所の友達も集まるようになった。
「今日はどんな歌にしよう?」
「昨日考えたメロディ、やってみようよ!」
青空の下、ピアノの代わりに手拍子とハミング、手話の振り付けだけで合奏が始まる。
「ほら、どんなふうに音が広がるか見てて!」
健太がリードし、奏人が手話で“広がる音”を表現する。
咲良は、空と友達の声と風を“音楽”として感じていた。
音や声やぬくもりが、
手をつなぐことでどこまでも遠くまで届いていく――
それはまるで、世界がひとつに溶けていくような感覚だった。
*
帰り道、奏人が小さな声で「これからも、みんなで音楽つくろうね」と言った。
咲良は「うん。もっともっといろんな人と、つながっていきたい」と答えた。
健太も「オレたち、きっとどこまでも行ける気がする!」と大きな声で笑った。
夕暮れの帰り道、三人の手はしっかりとつながれていた。
——広がる音、つながる手。
——小さな輪が、少しずつ大きな世界へと広がっていく。
明日もまた、新しい歌を作りながら、
咲良たちは自分たちだけの“旋律”を響かせていく。
咲良はピアノの鍵盤をそっとなぞりながら、まだ見ぬ“新しい旋律”に心を弾ませていた。
放課後の音楽室には、いつもの三人だけでなく、何人ものクラスメイトが集まるようになった。
「今日もやる?」
健太が元気よく声をかけると、
「うん、今日は歌詞の続きを考えてみたいな」と咲良が応える。
奏人も「手話で伝えられるフレーズを作りたい」とノートに書き、みんなに見せた。
「この前の“ありがとうの歌”もよかったけど、
今度はみんなで作る歌にしようよ!」
女子のひとりが提案する。
「オレ、リズムならまかせて!」
「メロディにハモリをつけてみたい」
「手話の振り付けもやってみたいな!」
音楽室はたちまちわくわくした空気で満ちていく。
咲良は「音楽って、こんなふうに広がっていくんだ」と、胸が熱くなるのを感じていた。
*
ピアノを囲んで輪になると、ひとりがメロディをつくり、もうひとりが歌詞を考える。
奏人は、手話で伝わりやすい動きを何度も繰り返し、健太はリズムを体全体で刻む。
最初はみんなバラバラだった音や言葉が、
少しずつ重なりあい、一つの“新しい歌”の輪郭が見え始める。
途中、意見がぶつかったり、
「これじゃ伝わらないかな」「やっぱり難しいかも」とため息も漏れる。
それでも誰も投げ出さなかった。
「こうやってみたら?」
「うまくいかなくても、もう一回やればいいよ!」
小さな失敗やすれ違いさえ、
みんなで笑い飛ばすうちに“みんなで作る音楽”そのものが宝物になっていく。
*
休憩時間。
教室の窓から見える空は、どこまでも高く澄んでいた。
咲良は窓辺でそっと母のことを思い出す。
「ねえ、咲良ちゃん、何考えてるの?」
女子のひとりが声をかける。
「ううん、ただね、みんなと一緒にいると、
世界がどんどん広がっていくなぁって思って」
咲良は笑顔で答える。
「私も! 咲良ちゃんがいると、
新しいことにどんどんチャレンジしたくなるんだ」
そんな何気ない会話さえ、音楽と同じくらい心にしみる。
*
練習が終わった帰り道。
健太は「さっきの手話のフレーズ、もうちょっと練習したいな」と言い、
奏人は「手話も音楽も、みんなとなら何でもできる気がする」と手話で伝える。
「ほんとだね」
咲良は静かにうなずく。
三人が並んで歩くとき、
見えない世界も、手でつながればちゃんと前に進める――
そんな実感が、じんわりと胸に広がっていく。
*
家に帰ると、咲良はピアノの前で今日の出来事を思い返す。
新しい歌の断片、みんなの声や手拍子、すれ違いと笑い合い。
「この気持ち、どうしたらみんなに伝わるかな」
そう思いながら、ゆっくりと鍵盤をなぞる。
「おかえり。今日も楽しそうだったね」
母がやさしく声をかける。
「うん。みんなといると、できないこともできそうな気がするんだ」
咲良は微笑む。
「それが一番大事だよ」
母はそう言って咲良の頭をなでてくれた。
*
日曜日、公園の東屋には、クラスメイトや近所の友達も集まるようになった。
「今日はどんな歌にしよう?」
「昨日考えたメロディ、やってみようよ!」
青空の下、ピアノの代わりに手拍子とハミング、手話の振り付けだけで合奏が始まる。
「ほら、どんなふうに音が広がるか見てて!」
健太がリードし、奏人が手話で“広がる音”を表現する。
咲良は、空と友達の声と風を“音楽”として感じていた。
音や声やぬくもりが、
手をつなぐことでどこまでも遠くまで届いていく――
それはまるで、世界がひとつに溶けていくような感覚だった。
*
帰り道、奏人が小さな声で「これからも、みんなで音楽つくろうね」と言った。
咲良は「うん。もっともっといろんな人と、つながっていきたい」と答えた。
健太も「オレたち、きっとどこまでも行ける気がする!」と大きな声で笑った。
夕暮れの帰り道、三人の手はしっかりとつながれていた。
——広がる音、つながる手。
——小さな輪が、少しずつ大きな世界へと広がっていく。
明日もまた、新しい歌を作りながら、
咲良たちは自分たちだけの“旋律”を響かせていく。
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