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第28話 新しい旋律
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発表会から数日が経った。季節は初夏へと移り、教室の窓からは明るい緑の葉が風に揺れる音が聞こえてくる。
咲良は、あの「ありがとうの歌」が終わったあと、どこか自分の心にぽっかりと空いた隙間を感じていた。
それでも、毎日は止まらず進んでいく。朝は変わらず母の「いってらっしゃい」の声で始まり、白杖とリュックを手に、咲良は今日も一歩を踏み出す。
*
昇降口では、いつもと同じように健太が大きく手を振って迎えてくれた。
「咲良ちゃん、おはよう! 今日はなんか空が気持ちいいな」
奏人もすぐに合流し、手話で「おはよう」と微笑む。
三人で並んで歩きながら、咲良はふと「ねえ、最近、どんな気持ちで毎日を過ごしてる?」と口にした。
健太は少し考えてから、「うーん、発表会のあとはなんか胸がいっぱいになったけど、今は新しいことしたくてウズウズしてるかも」と元気に答える。
奏人はノートに「言葉にできないけど、毎日が前より大事に思える」と書いた。
咲良は、その言葉に静かに頷いた。
「私も、なんとなく世界が前より広くなった気がする。…ちょっとだけ怖いけど」
「オレ、怖くてもいいと思う!」
健太が勢いよく言う。「新しいことにチャレンジしたい気持ちがあれば、きっと大丈夫だって」
「ぼくも、いっしょにがんばる」
奏人も手話で気持ちを伝えてくれた。
*
授業の合間、教室の掲示板には「地域交流音楽会」のポスターが貼られていた。
「ねえ、これ…私たちも出られるのかな?」
咲良がぽつりとつぶやくと、健太が「やろうよ!」と即答した。
「前は学校の発表会だったけど、今度は知らない人もいる場所だよ?」
咲良の声に、健太も一瞬たじろぐ。でも「オレたちなら大丈夫」とすぐに笑う。
奏人も、ノートに「もっと新しい音を作ろう」と記した。
三人のなかで、小さな“挑戦”の芽が静かに育っていくのがわかった。
*
昼休み。咲良は音楽室でピアノの鍵盤をなぞっていた。
「ありがとうの歌」の後、何度か新しい曲の断片が心に浮かんでくる。
まだメロディの全体像はつかめないけれど、それでも指先に“新しい旋律”が確かに芽生えているのを感じていた。
そのとき、クラスの女子が二人、静かに音楽室にやってきた。
「咲良ちゃん、また新しい曲できたら聴かせてね」
「私たちも何かお手伝いできたらいいな」
そう言って、少し照れながらも隣に座る。
咲良は「ありがとう。みんながそばにいてくれるだけで、音がどんどん広がっていく気がする」と微笑んだ。
「今度、私たちにも歌わせて!」
女子たちの明るい声に、咲良の胸はぽっとあたたかくなる。
*
放課後、健太と奏人も合流し、音楽室で小さなセッションが始まった。
ピアノ、手拍子、時々口笛や歌声――楽譜もルールもない“新しい旋律”を、みんなで手探りで作っていく。
奏人がふと、自分の声で「ありがとう」と小さくつぶやいた。
いつもは手話やノートが多かったけれど、その声はみんなの心にじんわりと響いた。
健太はリズムに合わせて「まだまだこれからだな!」と元気よく言い、
咲良はピアノの音にのせて「これが私たちの“次の一歩”だね」とつぶやいた。
音楽室は、子どもたちの新しい挑戦と、少しずつ育つ勇気の音でいっぱいになっていた。
*
家に帰ると、咲良は母に今日のことを話した。
「みんなで新しい曲を作ってるの。どんな曲になるのか、まだ自分でもよくわからないけど――でも、ワクワクしてる」
母は「新しいことは、きっとどきどきもするけど、楽しんでごらん」と優しく言ってくれる。
夜、咲良はベッドで静かに目を閉じ、心のなかでまだ形にならない“新しい旋律”を繰り返した。
*
日曜日。
三人と数人の友達が公園の東屋に集まった。
「今日も新しい曲、作っちゃおうぜ!」
健太が号令をかけ、みんなで手拍子やハミング、時々笑い声を混ぜながら自由な音楽が広がっていく。
咲良は見えない世界のなかで、音や手や空気を“感じること”がどれだけ幸せかを思い出していた。
「なんかさ、未来って、こうしてるだけでちょっと楽しみになるね」
咲良がぽつりと言う。
「オレも! もっとおもしろいこと、いっぱいしたい」
健太は大きくうなずく。
奏人も、そっと「これからもいっしょに」と手話で伝えてくれた。
咲良は、心のなかで新しい音がそっと生まれるのを感じていた。
——言葉にならない気持ちも、
——新しい旋律に変えていける。
明日もまた、小さな勇気とともに歩きだそうと、咲良はそっと思うのだった。
咲良は、あの「ありがとうの歌」が終わったあと、どこか自分の心にぽっかりと空いた隙間を感じていた。
それでも、毎日は止まらず進んでいく。朝は変わらず母の「いってらっしゃい」の声で始まり、白杖とリュックを手に、咲良は今日も一歩を踏み出す。
*
昇降口では、いつもと同じように健太が大きく手を振って迎えてくれた。
「咲良ちゃん、おはよう! 今日はなんか空が気持ちいいな」
奏人もすぐに合流し、手話で「おはよう」と微笑む。
三人で並んで歩きながら、咲良はふと「ねえ、最近、どんな気持ちで毎日を過ごしてる?」と口にした。
健太は少し考えてから、「うーん、発表会のあとはなんか胸がいっぱいになったけど、今は新しいことしたくてウズウズしてるかも」と元気に答える。
奏人はノートに「言葉にできないけど、毎日が前より大事に思える」と書いた。
咲良は、その言葉に静かに頷いた。
「私も、なんとなく世界が前より広くなった気がする。…ちょっとだけ怖いけど」
「オレ、怖くてもいいと思う!」
健太が勢いよく言う。「新しいことにチャレンジしたい気持ちがあれば、きっと大丈夫だって」
「ぼくも、いっしょにがんばる」
奏人も手話で気持ちを伝えてくれた。
*
授業の合間、教室の掲示板には「地域交流音楽会」のポスターが貼られていた。
「ねえ、これ…私たちも出られるのかな?」
咲良がぽつりとつぶやくと、健太が「やろうよ!」と即答した。
「前は学校の発表会だったけど、今度は知らない人もいる場所だよ?」
咲良の声に、健太も一瞬たじろぐ。でも「オレたちなら大丈夫」とすぐに笑う。
奏人も、ノートに「もっと新しい音を作ろう」と記した。
三人のなかで、小さな“挑戦”の芽が静かに育っていくのがわかった。
*
昼休み。咲良は音楽室でピアノの鍵盤をなぞっていた。
「ありがとうの歌」の後、何度か新しい曲の断片が心に浮かんでくる。
まだメロディの全体像はつかめないけれど、それでも指先に“新しい旋律”が確かに芽生えているのを感じていた。
そのとき、クラスの女子が二人、静かに音楽室にやってきた。
「咲良ちゃん、また新しい曲できたら聴かせてね」
「私たちも何かお手伝いできたらいいな」
そう言って、少し照れながらも隣に座る。
咲良は「ありがとう。みんながそばにいてくれるだけで、音がどんどん広がっていく気がする」と微笑んだ。
「今度、私たちにも歌わせて!」
女子たちの明るい声に、咲良の胸はぽっとあたたかくなる。
*
放課後、健太と奏人も合流し、音楽室で小さなセッションが始まった。
ピアノ、手拍子、時々口笛や歌声――楽譜もルールもない“新しい旋律”を、みんなで手探りで作っていく。
奏人がふと、自分の声で「ありがとう」と小さくつぶやいた。
いつもは手話やノートが多かったけれど、その声はみんなの心にじんわりと響いた。
健太はリズムに合わせて「まだまだこれからだな!」と元気よく言い、
咲良はピアノの音にのせて「これが私たちの“次の一歩”だね」とつぶやいた。
音楽室は、子どもたちの新しい挑戦と、少しずつ育つ勇気の音でいっぱいになっていた。
*
家に帰ると、咲良は母に今日のことを話した。
「みんなで新しい曲を作ってるの。どんな曲になるのか、まだ自分でもよくわからないけど――でも、ワクワクしてる」
母は「新しいことは、きっとどきどきもするけど、楽しんでごらん」と優しく言ってくれる。
夜、咲良はベッドで静かに目を閉じ、心のなかでまだ形にならない“新しい旋律”を繰り返した。
*
日曜日。
三人と数人の友達が公園の東屋に集まった。
「今日も新しい曲、作っちゃおうぜ!」
健太が号令をかけ、みんなで手拍子やハミング、時々笑い声を混ぜながら自由な音楽が広がっていく。
咲良は見えない世界のなかで、音や手や空気を“感じること”がどれだけ幸せかを思い出していた。
「なんかさ、未来って、こうしてるだけでちょっと楽しみになるね」
咲良がぽつりと言う。
「オレも! もっとおもしろいこと、いっぱいしたい」
健太は大きくうなずく。
奏人も、そっと「これからもいっしょに」と手話で伝えてくれた。
咲良は、心のなかで新しい音がそっと生まれるのを感じていた。
——言葉にならない気持ちも、
——新しい旋律に変えていける。
明日もまた、小さな勇気とともに歩きだそうと、咲良はそっと思うのだった。
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