我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

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8 狐

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 秋になると思い出す、母方の祖母から聞いた話。
 

 昭和1桁生まれの祖母が小学生の頃だから、戦前くらいか。夕方に母親(私から見て曾祖母)から妹(同じく大叔母)と一緒におつかいへ行くよう頼まれた。 


 油揚げと生活用品を買い物カゴに入れて2人で持ち、街灯も無い農道を歩いて帰っていると、何者かに話しかけられた。 

 それは背の高い若い男で、暗いから顔はよくわからなかったが『2人でおつかい偉いね、どこ行くの?○○方面なら、俺も近くまで行くから一緒に行こうよ』と、3人で歩く事になったそうだ。 

 雑談していると、祖母は妙な感覚を覚えた。 

(何か急にカゴが重い?何か入ってきた?) 

 カゴの中を覗くが異常は無い。だが、また進むとカゴが重くなるのを繰り返す。 

 すると大叔母が小声で訴えた。 

「…お姉ちゃん、何かあの人、変だよ」 

 祖母も、明るく饒舌に話すその人を怪しんだ。そして、またカゴが重くなったので祖母は叫んだ。 

「あんた! 何なの!?」 

 驚く事に、男はいきなりその場で宙返りして、田んぼの畔をバク転して逃げて行った。


 街灯も無い宵闇。稲が刈り取られた田んぼの広がる中、回転しながら遠ざかる人物。 意味不明さと恐怖とシュール。


 取り残された祖母と大叔母は、半泣きで先を争う様に自宅まで猛ダッシュした。

 家に帰ってカゴを見ると、油揚げだけ無残に食い荒らされていた。話を聞いた曾祖母は『これは狐の仕業だ』と断言した。 

 曾祖母が言うには、狐は『途中から現れ、合流を自分から持ち掛ける(一緒に行こう!など)』というらしい。 


 戦前はまだ狐が力を持ち、人を化かしていたのか。とても貴重な体験談であると私は思う。
 
 狐で無かったとしても、バク転で逃げる変質者に遭ったなら、一生忘れられない恐怖体験である。
 
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