我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

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25 被害と報い

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 友人から聞いた話。 


 友人の職場で、立て続けに会社の人達に嫌な事が起きた。
 休日にもらい事故をしたり、階段で転んで怪我したり、大病が見つかったり。 

 そこで、会社を代表して女性社員:メグミ(28歳、5年交際した彼氏に最近振られた)が、近場の有名神社へ、会社の厄祓い祈願(ご祈禱)に行くよう頼まれたそうだ。 

 親しいパートのおばちゃんは、『自分の婚活祈願だけしてきちゃダメよ笑』などとセクハラ寸前の軽口を叩いていた。 


 その後、社内では嫌な事は特に起きず、めでたしめでたし…、では無かった。 


 厄祓いから1ヵ月後。経理部の上司が、メグミに『御祈禱で頂いたお札などの神饌を預かりたい』と言った。 

 会社の神棚にお札などを収めたいらしい。ところがメグミは『貰えませんでした』と答えた。 

 祈禱料をおさめて御祈禱をすれば、普通はお札を頂ける(金額によってグレードが違うかもしれないが)はず。

 上司は『いやいや、御祈禱して何も貰えない訳は無い』と言ったが、『何も貰えなかったんです』との一点張りだった。 

 預けた御祈禱料の金額は知らないが、上司の口ぶりから察するに、少額で無さそうだ。
 物を知らない若者が『人生初のご祈禱』を受けたとは言え、こんなミスなどあり得るのだろうか?

 社内では『メグミは神社へ行かず、預かったご祈禱料を横領したのでは?』と噂が立ち始めた。 


 それからすぐ、メグミがウィルス性胃腸炎にかかり欠勤。噂に耐え切れず出社拒否かと思われたが、欠勤4日目に動きがあった。 

 メグミの母が会社にやって来たのだ。母親は上司に深々と頭を下げると、こう報告した。 

『会社の厄祓いで頂いたお札と神饌をお持ちしました。娘がお祓い帰りにうちへ寄った際に見せて貰ったお札が、あまりにも素晴らしかったので、どうしても自宅に置きたくなってしまい、取り上げてしまいました。
私のせいで会社とトラブルになっていると聞き、お返しに来ました。本当に申し訳ございません』 


 礼儀正しい振る舞いに合わない不可解過ぎる言い訳に、居合わせた全員は首を傾げた。
 どこにそんな親が居るのだろう。 


 そして、メグミの母は更に仰天する事を言った。 

『メグミが今日ここに来れなかったのは、胃腸炎で受診した際に妊娠が判り、胃腸炎と相まって水分も摂れないぐらいの、重症悪阻で入院しているからなんです。本当に申し訳ありません』 


 メグミは退院後、会社に迷惑をかけたし体調も著しく不調なので、と退職した。 

 勿論、会社はメグミにも事情を聞きたかったが、ストレスを与えてもしもの事があっても困るので、『おめでとう』と見送るしか出来なかったそうだ。 


 メグミは退社後すぐに入籍。
 相手は遠方の離島在住のリゾート施設経営者だそうで、社内の人間は『御祈禱料を婚活に使って夫と知り合い、母親に使い込みを補填させたのでは?』と陰口を叩いたらしい。 


 その2年後。穏やかな離島を自然災害が襲った。
 メグミ一家は無事だったが、夫の事業は負債を抱え廃業し、社長夫人だったメグミも外に働きに出る事になったらしい。 


「本当に怖いのは、天災で酷い目に遭ったメグミ先輩を誰も気遣わない事だよ。『神社へのお金使い込んだ報いだ』だって。天災は他の人も被害に遭ってるのにね」 

 友人はそう話した。 


 
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