我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

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 年度末の時期、春の夜にふと思い出す。私は『怪談話の完成』を、身をもって経験した事がある。
 小学生2年生の頃の話だ。 


 学校行事をきっかけに仲良くなり、3年生の女子何人かと遊んだ時期があった。その中の1人にマドカという少女が居た。 

 マドカは小柄で、学年が1つ下の私と同じくらいの背だった。髪質も似ていて、同じ髪型にして2人で並び後ろから見ると、担任でさえも間違えるほどだった。 

 彼女は怖い本が好きで、私も一緒に図書室で『学校の怪談』的な本を読みあいっこする事もあった。 


 その年の暮れ、マドカが亡くなった。

 自宅が火事になり、逃げ遅れた。
 自宅まで、互いに行き交う様な親しい間柄でも無いので、私は葬儀には行かなかった。朝礼で黙祷だけした。 

 マドカの両親は火事をきっかけに離婚し、双方ともに引っ越した。 

 母から聞いた話では、マドカの母が電化製品の異常を指摘したにも関わらず、マドカの父が使用を継続して、ショートが原因で失火したらしい。
 自宅のあった所は、更地となった。 


 すると、地元である噂が流れ始めた。

 夜、現場近くを通りかかると、焼け焦げたぬいぐるみを抱いた少女の霊が現れるという。
 住民達は離婚して散り散りになった両親を探して、マドカが彷徨っていると囁いた。 


 折しも、3年生に進級する少し前。用事で夜21時過ぎに親戚の家から帰るため、マドカの家の傍を通る事になった。
 私は車窓にへばりついた。 

 灯りのある家々の中、黒くぽっかりと更地があった。そこには何もなく、勿論霊の姿も無かった。 


 私達はトイレの花子さんを信じていた。時が止まりずっと小学3年生の彼女と、成長し続けて小学3年生も通過していくだろう私。
 通り過ぎる一瞬、幼いなりに私は色んな事を考えた。 

 着せ替え人形が大好きだったのに、ぬいぐるみを抱いてるという怪談話になってしまった彼女を、私は憂いた。 


 それは、噂話というものは真実を勝手に捻じ曲げたものであるという事を、初めて知った瞬間でもあった。

 
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