我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

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35 戒め

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 世の中は出会いと別れのシーズンだが、私の友人との話。 


 友人:カズホは、高卒で働き始めた職場での同期として知り合った。
 穏やかで本好きな彼女とは、20年近く経った現在も良き友人で、私が投稿する作品の読者の1人でもある。 


 同じ職場に勤めていた時のこと。私達はある作業を2人1組で行っていた。 

 ある機械を操作していると。 

「ちょっと電気消して!」 

 女の声がした。 

(何かあった?) 

 私は操作を中断し、カズホに声を掛けた。 

「『消して』って操作止めろって事? どうかした?」 

 ところがカズホは首を傾げた。 

「え、何? 何も言ってないよ」 

「あれ? カズちゃんじゃないなら、キリシマさん?」 

「キリシマさん、今日休みだよ。それに私『消して』って聞いてない」 


 私とカズホは1メートル程の距離なので、空耳でなく実際の声ならば、機械操作中でも聞こえるだろう。
 そもそも、機械の操作を止めたいなら『電気消して』ではなく『操作止めて』だ。 


 空耳か。そう思い、作業を続けていると、隣の区画が騒がしい。
 見ると、隣の区画の真上だけ照明が消えている。 

「…さっきの声って、あれかな? ブレーカーの事で誰か騒いだ?」 

「でもブレーカーなら、あそこの照明だけってのも変だよね。真下の機械、動いてるし」 

 5分程で回復し、その日はそのまま終わった。 

 2日後。 

 同期のキリシマと作業が一緒になり、彼女に例の空耳の話をした。カズホが通りかかったので、私は呼んだ。 

「あ、カズちゃん。キリシマさんに一昨日の話、しててさ」 

 カズホが合流すると、不意にキリシマは言った。 

「あ、でも知ってる? ここ、結構『ある』みたいよ。終業後に足音したり、勝手にインターホン鳴ったり…」 

 その刹那。照明が全て消えた。だが機械は動き続けているので、厳密には停電ではない。 

「わ。一昨日と一緒。今日は室内全部!」 

 その日の照明の不調は20分程続き、しかも原因は不明だった。後日変電所の人と点検をしたが、やはり原因は判らなかったという。 


 月日は流れ、半年後。 

 私は仕事の隙間時間に、カズホと世間話をしていた。話題は職場の先輩から聞いた話に。 

「そう言えばイノウエ先輩、こないだ怖い目に遭ったんだって。会社近くのトンネルあるじゃん? 傍のカーブミラーに、路上に居ない黒の軽自動車が映ってたとか…。
まあ、仕事で疲れて寝ぼけたんじゃな…」 

 その時。また『照明だけの停電』が起きた。私はその時思った。 

(あ、これは。いい加減学ばないといけないんだ) 


 仕事の空き時間や更衣室などで、怖い話や変な現象話をした事は沢山あった。
 相手が誰でも、内容が何でも、停電した事は無かった。 

(人の、嫌がる事はもうやめよう) 

 その日を境に、私は誰彼構わずに怖い話をするのを自重するようになった。 


 ちなみに私が退職するまでの6年間、その会社で原因不明の停電があったのは、その時だけだった。 


 私は、オカルトが好きである。
 でも世の中には、オカルトが嫌いな人も苦手な人もいる。それは、自然なことだ。 

 苦手な人に、押し付けてないか?あまつさえ、好きになってもらおうとしてないか? 

 偶然かもしれないが、あの停電をきっかけに、自分を省みないといけないと思うようになった。 


 だがたまに忘れてるので、戒めとして文章に書いておく。 

 
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