我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

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55 ファーストインプレッション

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 夫から聞いた話。

 私の夫は私と違い、現実主義で幽霊など信じないタイプである。心霊体験もなく、知らずに心霊スポットを通っても何ともなく、怖い夢すら見る事がほとんどない。

 そんな夫が目の当たりにした、不可解な話。


 夫が大学生の頃。同じサークルの同級生にケイコという女子が居た。
 ケイコは特に美人でもなければ成績優秀でもなく、『女子大生によく居る平凡なタイプ』で普通の人だった。

 ただ1点、ケイコは夫の事を親の敵の様に、毛嫌いしていたそうだ。


 夫とケイコは互いに大学のサークルで出会ったのが初めてで、それまで顔を合わせた事は1度も無い。
 接点はサークルのみで、出身地も全然違う。それなのに、初対面で眉間に皺を寄せ、めちゃめちゃ睨んできたそうだ。

 夫の方は別にケイコを意識した事はなかったが、見かける度に睨んで来るので、流石にいい気分では無かった。
 2人は互いの友人とばかりつるんでいて、直接話す事は大学4年間で1度も無かった。



 私はそこまで聞いて、質問した。

「あなたが覚えてないだけで、何か向こうが嫌がる事をしたとか?」

「勿論無いよ。落とし物拾ってあげたとか、何なら名前を呼んだ事も無い」



 あまりにも露骨なので、周囲の友人も気づくようになったある時、夫の友人がケイコとその友人に、夫の事を訊いたそうだ。

「あいつに何か嫌な事でもされたの?」

「ううん、何もされてないよ。でもあの人、何か嫌に感じちゃうの。友達であるあなたには悪いけど、どうにも出来ない」


 理由は分からないが、『顔に出るぐらいの強い嫌悪感』を夫に対してだけ感じるという。
 大学も最終学年になると、夫が悪寒を感じて振り向くと、こちらにまだ気づいてないケイコが遥か後ろを歩いている、みたいに夫もケイコの気配を『嫌悪感』で感じるようになったらしい。



「ほう、それが唯一の不可解体験ですか」

「でもね、ある時に読んだ本で分かったんだけど、『遺伝子が偶然にも近い人』なのかもしれない」

「『近い』?」


 思春期の女子が自分の父親を嫌悪するのは、『遺伝子の近い存在と近親相姦にならないため』の生理的反応とされる。

 夫とケイコは偶然にも遺伝子が似ているため、『間違いが起こらないよう細胞レベルで嫌悪感』が出るようになったのでは?と考えるそうだ。

 夫はこんな事も言った。

「在学中にサークルの後輩から、『もしかしてケイコ先輩とイトコだったりしますか?雰囲気とか匂いが似てるんですけど』って、言われた事があったんだよね」



 個人的には、匂いで人の判別がつくその後輩も気になるが、似ている様で少々違う事を思い出した。

 私が今までの人生で、第一印象に『何とも言えない強い違和感』を抱いた人物は5人程居た。
 年齢、性別、背格好、雰囲気、どれも全て共通点は無い。
 その5人はどうだったかと言うと…。5人中2名はサイコパス的性格や有り得ないトラブルメーカーで、残り3名は盗撮、窃盗など悪事を働いた人物だった。

 ちなみにその内2人に関しては、別の同僚も『何か○さんと△さん、第一印象で合わないなって、何となく思ったんだけど、どう思う?』と何かを感じ取る発言をしていた。



 第一印象で遺伝子の近さを知らずに自覚(?)したり、第六感が発動したのかも、って話。


 ちなみに私が友人に夫を紹介され、初めて会った時に抱いた印象は『この人ともし付き合う事になったら…、まあアリかな!嫌な感じしないし』だった。
 人によっては、それを妥協と言うかもしれないが。

 『この人、ときめかないから無理』、『何かビビっと来ない』、そんな定規で判断していたら、きっと夫を逃していただろう。

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