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62 アゲとサゲ
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対照的な2人を目の当たりにした話。
某店舗で有期雇用で働いてた時に、アラサー女子:サユキとフウカという2人と親しくなり、話すようになった。
サユキは地味で目立たない物静かな女子で、同世代のサラリーマンの彼氏が居た。
一方フウカはハツラツとしてキラキラした女子で、同じ店舗内に歳下のイケメン彼氏が居た。
ある時、仕事の合間にフウカがこんな事を言った。
「あたしがレジ作業すると、お客さん来なくなるんですよ~」
フウカは、いつぞやの『逆神』の後輩と似たような話をしてきた。私は笑って言った。
「ああ、何かそういう人たまに居るよね」
「あたしのおじいちゃんが、小さい居酒屋やってるんですけど、お盆とかに行った時に良かれと思ってお店手伝う度に、お客さんがパタッと途絶えちゃって。しまいには『あっち行ってろ』って怒られちゃったり」
「へえ、そうなんだ」
「で、お客として行ったお店でも起こるんですよ。バーゲンで混んでるのに、気づいたら周りにお客さんが居なくなって、あたしと友達だけ、とか。
友達は『あんたと行くとどこでも空いてて快適だわ~』って笑われて!」
(店員としてでは無く、お客として行っても起こるのか…。これは『逆神』を超える人材だ)
すると、黙って聞いていたサユキが口を開いた。
「…あたし逆だわ。行くと混んじゃう。空いてる時間狙っても、何か人が多くなる」
「へえ、招き猫みたい」
「極端な時は、『あそこのお店行きたいな~』ってソワソワしただけでそこ、混んじゃう時ある」
「え…。そこまで?」
サユキの言った事は真実だった。彼女がレジ作業をすると、何故か客がやって来て商品の完売欠品が続発するのだ。
接客態度はフウカの方がとても優秀なのだが、客入りはサユキの時が桁違いに多い。
「もっと丁寧に接客したいんですけど、行列が出来ちゃうから、早く捌くのを優先せざるを得ないんですよ」
サユキは休憩の時に、そうこぼしていた。
他にもサユキには伝説が色々あった。彼女が担当した商品が、何故か売れ筋商品になったり。1時間当たりの最高売上額を達成した時は、必ずその時間帯に彼女が居るとか。
荒天で、その日の売上目標が到底達成不可能そうなのに、彼女が居ると何故か達成出来たり。
「いいなあ、本当に招き猫みたい!」
口を尖らせたのは、フウカだ。
フウカにも伝説があった。彼女が担当になった商品は、問屋が製造を終了して廃盤となったり。ビラ配りをすると、受け取ってくれる客が何故か居なくて余ったり。
極めつけは…。
「…ここ半年、ツイてないんですよ。正社員になったのに、業績不振で手取りは非正規時代と変わらないし。通販で不良品を2回も掴まされたし」
作業の合間に愚痴ったのは、フウカの彼氏だ。
「まあ、お給料は景気の良し悪しも反映されるものだからね」
と、返しつつ、半年前と言えばフウカと付き合い始めた頃だと私は振り返る。
(彼氏にも影響するのだろうか。勤め先に影響するぐらいだから、あり得るか?)
「サユキさんの彼氏さんは、どんな会社に勤めてるんですか?」
フウカの彼氏が問うと、サユキは淡々と答えた。
「社員数1桁のちっさい会社だよ。手取りは多分、そちらとあまり変わらないかと」
「ぶっちゃけ幾らすか? 入社何年目ですか?」
突っ込んだ質問をフウカの彼氏がすると、サユキは作業を進めながら答えた。
「金額は知らないけど、入社5年目で最近昇進して役職に就いたよ」
「役職? すごいじゃない!」
「いやいや、小さい会社だから頑張りがすぐ評価されたって言うか。…まあ、私『あげまん』なので」
サユキは、珍しく誇らしげにそう言った。すると。
「…どういう手を使ったんですか?」
フウカの彼氏は、ジトっとした暗い目をしていた。私は寒気を感じつつ口を添えた。
「『あげまん』って言うのは、『男の人のモチベを上げるのが上手な女の人』の事を言うんだよ。ギリ平成の古い言葉ね!」
私とサユキはその日以来、フウカの彼氏に嫌悪感を抱くようになった。
期間満了で私が退社した数か月後、サユキは彼氏と結婚し退社した。フウカとその彼氏の働いていた店舗は、その後1年を待たずに閉店し、撤退していったようだ。
フウカ達は別の店へ転職したが、その店舗も2年後に閉店したらしい。対照的な彼女達が、それぞれ現在何をしているかは分からない。
この出来事で私が怖かったのは、『アゲ』体質のサユキでも『サゲ』疑惑のフウカでもなく、『あげまん』を勘違いしていたフウカの彼氏だ。
もし私が口を添えなかったら、彼はどういう行動を起こしただろう?
フウカにはそんな男との縁が切れて、真っ当な男性との縁が出来て欲しいと私は願っている。
某店舗で有期雇用で働いてた時に、アラサー女子:サユキとフウカという2人と親しくなり、話すようになった。
サユキは地味で目立たない物静かな女子で、同世代のサラリーマンの彼氏が居た。
一方フウカはハツラツとしてキラキラした女子で、同じ店舗内に歳下のイケメン彼氏が居た。
ある時、仕事の合間にフウカがこんな事を言った。
「あたしがレジ作業すると、お客さん来なくなるんですよ~」
フウカは、いつぞやの『逆神』の後輩と似たような話をしてきた。私は笑って言った。
「ああ、何かそういう人たまに居るよね」
「あたしのおじいちゃんが、小さい居酒屋やってるんですけど、お盆とかに行った時に良かれと思ってお店手伝う度に、お客さんがパタッと途絶えちゃって。しまいには『あっち行ってろ』って怒られちゃったり」
「へえ、そうなんだ」
「で、お客として行ったお店でも起こるんですよ。バーゲンで混んでるのに、気づいたら周りにお客さんが居なくなって、あたしと友達だけ、とか。
友達は『あんたと行くとどこでも空いてて快適だわ~』って笑われて!」
(店員としてでは無く、お客として行っても起こるのか…。これは『逆神』を超える人材だ)
すると、黙って聞いていたサユキが口を開いた。
「…あたし逆だわ。行くと混んじゃう。空いてる時間狙っても、何か人が多くなる」
「へえ、招き猫みたい」
「極端な時は、『あそこのお店行きたいな~』ってソワソワしただけでそこ、混んじゃう時ある」
「え…。そこまで?」
サユキの言った事は真実だった。彼女がレジ作業をすると、何故か客がやって来て商品の完売欠品が続発するのだ。
接客態度はフウカの方がとても優秀なのだが、客入りはサユキの時が桁違いに多い。
「もっと丁寧に接客したいんですけど、行列が出来ちゃうから、早く捌くのを優先せざるを得ないんですよ」
サユキは休憩の時に、そうこぼしていた。
他にもサユキには伝説が色々あった。彼女が担当した商品が、何故か売れ筋商品になったり。1時間当たりの最高売上額を達成した時は、必ずその時間帯に彼女が居るとか。
荒天で、その日の売上目標が到底達成不可能そうなのに、彼女が居ると何故か達成出来たり。
「いいなあ、本当に招き猫みたい!」
口を尖らせたのは、フウカだ。
フウカにも伝説があった。彼女が担当になった商品は、問屋が製造を終了して廃盤となったり。ビラ配りをすると、受け取ってくれる客が何故か居なくて余ったり。
極めつけは…。
「…ここ半年、ツイてないんですよ。正社員になったのに、業績不振で手取りは非正規時代と変わらないし。通販で不良品を2回も掴まされたし」
作業の合間に愚痴ったのは、フウカの彼氏だ。
「まあ、お給料は景気の良し悪しも反映されるものだからね」
と、返しつつ、半年前と言えばフウカと付き合い始めた頃だと私は振り返る。
(彼氏にも影響するのだろうか。勤め先に影響するぐらいだから、あり得るか?)
「サユキさんの彼氏さんは、どんな会社に勤めてるんですか?」
フウカの彼氏が問うと、サユキは淡々と答えた。
「社員数1桁のちっさい会社だよ。手取りは多分、そちらとあまり変わらないかと」
「ぶっちゃけ幾らすか? 入社何年目ですか?」
突っ込んだ質問をフウカの彼氏がすると、サユキは作業を進めながら答えた。
「金額は知らないけど、入社5年目で最近昇進して役職に就いたよ」
「役職? すごいじゃない!」
「いやいや、小さい会社だから頑張りがすぐ評価されたって言うか。…まあ、私『あげまん』なので」
サユキは、珍しく誇らしげにそう言った。すると。
「…どういう手を使ったんですか?」
フウカの彼氏は、ジトっとした暗い目をしていた。私は寒気を感じつつ口を添えた。
「『あげまん』って言うのは、『男の人のモチベを上げるのが上手な女の人』の事を言うんだよ。ギリ平成の古い言葉ね!」
私とサユキはその日以来、フウカの彼氏に嫌悪感を抱くようになった。
期間満了で私が退社した数か月後、サユキは彼氏と結婚し退社した。フウカとその彼氏の働いていた店舗は、その後1年を待たずに閉店し、撤退していったようだ。
フウカ達は別の店へ転職したが、その店舗も2年後に閉店したらしい。対照的な彼女達が、それぞれ現在何をしているかは分からない。
この出来事で私が怖かったのは、『アゲ』体質のサユキでも『サゲ』疑惑のフウカでもなく、『あげまん』を勘違いしていたフウカの彼氏だ。
もし私が口を添えなかったら、彼はどういう行動を起こしただろう?
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