我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

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 ホラーエッセイを書き続けているが、自分に霊感は無いと思う。あくまで、『オカルトに興味があるため、不可解体験に敏感になっている』感じだと自覚している。

 とは言え、血縁に実は霊感が強い者が居る。その彼にまつわる話。



 エイジと言う母方従兄は、私の8つ上である。性別も年齢も違うので、私自身もあまり接点が無く、顔を合わせるのは年に数えるほど。

 大人になった現在は、互いに離れた所に暮らしているので、ここ数年は顔も会わせず、会話すらもしていないのが残念であるが。

 エイジはそれでも年の離れた私と、子供の頃は時に遊んでくれる事もあった。見た目は少々厳ついが、繊細な性格で可愛らしい物も好む、ギャップ男子であった。

 伯母から聞いた話。

 その日、高校生だったエイジの帰りが遅いので、伯母は心配して見晴らしの良いベランダに出て、エイジの姿を探していた。
 とっぷり日の暮れた頃、エイジが家の脇の道にようやく現れので、伯母はベランダからお小言を降らせたそうだ。

「ちょっと! あんた遅すぎだよ⁈ いま何時と思ってるの!!」

 ところが、エイジはわざと顔を背け、家を通り過ぎてしまった。エイジが帰宅したのは、それから15分後。伯母は玄関へ行くと、エイジは言った。

「ごめん、塩かけてくんない?」

 伯母はそれで全てを察し、塩を手渡した。

「『今回』は何だったの?」

「首だけ。なかなか離れてくれなくて、遠回りして時間がかかった」


 訊くと、友人に『心霊スポット』へ出かけた者が居たそうだ。
 友人は『何も起きないし、霊すら居ないからつまんなかった!』と言ってたが、見えてないだけで『落ち武者みたいな首』が、彼の周囲を飛び回ってたそうだ。

 エイジはうっかりその『首』と目が合ってしまい、まとわりつかれたそうで、帰りつつ撒こうと色々試し、帰りが遅くなってしまったらしい。

 当時小学校高学年だった私は、その話を訊き、伯母に質問した。

「どうやって憑りついたやつ、取ったの?」

 ところが近くに居たエイジは、

「ごめん、話したくない。話すの嫌だから」

と、短く私に答えた。

 何となくその時、私は『彼の言う通り、聞かないで居よう』という気持ちになった。目に見えない、ルール的なものが見えた気がしたからだ。

 エイジは怖い事があっても、その話をする事は無かった。霊感があっても、怖い物は嫌な人らしい。 
 なので、私も彼の恐怖体験などは直接聞く事は無かった。



 私が大人になってからの時のこと。

「あたしの友達のウメダさんて、ちょっと霊感強いのね。それで、この前おばあちゃんちの写真見たら『この家、東側に寂しくなる場所、あるでしょ?』って言われてさ。どういう意味なんだろう?」

 たまたま携帯で撮った母方実家の家屋を見たら、そう指摘されたという。ウメダさん自身も、上手く言葉に出来ないらしく、母は私と妹にそんな話をして来たのだ。

 私は言った。

「東側ねえ、前に夢で何か出てきたかな? 
あ、そう言えば…。昔エイジお兄ちゃんと、おばあちゃんちで鬼ごっこしたことあるんだけど、何故か『エイジお兄ちゃんが入れない』場所、があったな」

「何それ。狭いとこ?」

「ううん、庭を通った先にある、台所脇の部分の花壇の前ね。エイジお兄ちゃんが走って追っかけてきても、私がそこに行くと、そこの手前で止まって、来なくなっちゃう」


 あれは私が6歳ぐらいか。春の花が綺麗に寄せ植えされた、祖母お手製の花壇の前。
 私が得意げにそこの前で振り返ると、エイジは私から1.5メートル離れた地点で、困った様な笑顔を浮かべて立ち尽くす、と言った記憶が蘇る。


 アレルギーの可能性も有り得るが、花壇に花があっても無くても、エイジは何故かそこに近づいて来ないのだ。

 妹も言った。

「確かにエイジお兄ちゃん、遊んでたボールが花壇に飛んで行くと『拾って』って頼んで来たね。…何が見えていたんだろう?」


 果たして、見えない事が幸せなのか、見える事が幸せなのか…。恐らく、私はエイジに会っても花壇に何が居たのかは聞かないだろう。

 知らない方が良いのかも、しれないからだ。

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