我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

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88 救急車

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 以前、母が救急車の夢を見て、家族の急病を察知した話を書いた。その話を読んだ知人から似た話をされたので、その話を。


 ある時、元同僚:サヤカさんから電話がかかってきた。彼女は、小学生の娘さん2人と旦那さんと義両親と暮らす、ごく普通の主婦だ。

『あのさ、ちょっと相談したい事あるんだけど…』

 互いの近況などの話の後、サヤカさんはこんな話を切り出した。
 3週間程前、サヤカさんのお舅さんが風邪を拗らせ、肺炎を起こし入院する事になった。容体は順調に回復し、退院を2日後に控えた時、急な眠気に襲われたサヤカさんが昼寝をしていると、短い夢を見たという。


 サヤカさんは自宅の外に居た。家の前の道路を背に、自宅の建物を見ていた。ふと異様な気配を感じ、振り返ると白くて大きなワゴン車が家の前で止まった。

 ところが、車は思ったより向こうで止まったのか、振り返っただけではよく見えない。

(え、止まったのは何の車?)

 もっとよく確認しようと向き直ろうとすると、今度は家の前(サヤカさんと家の間)に誰かが立っているのが見えた。

 その人間が誰なのかよく分からなかったが、膝くらいの丈のスカート(ボトム)を穿いた女で、呆然とした雰囲気に見えた。

 夢は、そこで終わった。


「白くて大きいワゴン車…。救急車っぽいですよね」

『でしょ?赤色灯は見えなかったけど、窓も白い車だったのは確かなの。あなたのお母さん、家族の急変を予知した時に、救急車の夢を見たって話読んだから。お義父さん自体はもう退院したけど、ちょっと心配で』

「確かに心配になりますよね。夢占い的にも『救急車』ってあまり良くないですもんね…」

 救急車の夢=家族の急変なのはうちの母の場合なので、サヤカさんに当てはまるとは思えないが、見たのが退院の2日前というのが何とも不気味だ。

 私は1つ気になったので、質問した。

「『家の前に立ち尽くした女の人』も気になるんですが…」

『何か夢の中では、その女の人は娘のどっちかみたいな感じしたんだよね。2人とも短い靴下にスカート合わせてるのが多いから。呆然としてるって事は、運ばれる対象ではないって事かな』

 ちなみにサヤカさんの下の娘さんは、過去に食物アレルギーで救急搬送された事がある。

『ちょっと注意して過ごしてみる』

 サヤカさんはそう言って電話を終わらせた。


 そのふた月後、退院した義父さんは重病が見つかり、再入院する事となった。
 退院する2~3日前にちょっとした症状が発現、主治医に言ったが対症療法で軽く済まされ、退院後の再診で精密検査を願い出て判明したという。

 現在、サヤカさんの義父さんは自宅と病院を行き来して、闘病中だ。後日、サヤカさんに改めて聞いてみると。

「退院したお義父さんから症状があるって話をされた時に、夢の事を思い出したの。それで『検査して欲しい』って旦那と説得したんだ。重病は重病だけど、初期に近いやつでね。その段階で見つかって治療してもらえて、本当に良かった」


 『女は家を守るもの』という古めかしい言葉があるが、妻であり母たる者、家族の状況には敏感であれ、と見えない者からのお告げがあるものなのか。
 短時間勤務だろうが、専業主婦だろうが、子が無かろうが、『主婦』という者の役割について考える事となった話。

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